Written in Japanese. Japanese fonts required to view this site / Game Review & Data Base Site
  1. ホーム>
  2. Review Box>
  3. Nintendo 3DS>
  4. キュービックニンジャ
≫キュービックニンジャ
■発売元 AQインタラクティブ(現:マーベラスAQL)
■ジャンル からくりアクション
■CERO A(全年齢対象)
■定価 3990円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 1つ
■3D表示 あり
■その他 すれちがい通信対応
■総説明書ページ数 18ページ
■推定クリア時間 4〜5時間(エンディング目的)、20〜30時間(完全攻略目的)
遥か東にある隠れ里。
この里を治める姫君がある日、悪の組織に誘拐された。後に姫君が組織の隠れ家『カラクリ要塞』に囚われている情報を掴んだ里の忍者達は、姫君を助け出すべく、要塞へと足を踏み入れた。

なお、入口はトイレである。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆キューブ型の忍者を出口まで運ぶ、シンプルで取っ付き易い基本ゲームルール
◆ステージ全体を傾けてキャラクターを動かす、ジャイロセンサーに重点を置いた3DS用ソフトとしては珍しい操作性
◆外出先でプレイする際などに有り難い、スライドパッド操作専用の『マナーモード』
◆カラクリ満載のビー玉迷路というコンセプトが活かされた、攻略し甲斐のある全100以上ものステージとその構成
◆ゲーム展開に華を添えるだけでなく、救済処置としても完成された必殺技『忍術』
◆センサー操作の特性を活かししたものなど、多彩でユニークなステージ上のギミック群
◆パズル的な面白さとセンサー操作特有の緊張感が絶妙に織り交ぜられたボス戦
◆通常型から縦長、バウンド型など、プレイスタイルが異なる個性付けが成されたプレイヤーキャラクターの忍者達
◆短時間で終わる故の中毒性の高さが異彩を放つ『タイムアタック』
◆一発アウト制とセンサー操作特有の緊張感が秀逸なゲームモード『サバイバル』
◆QRコードを生成し、ネット上にアップすれば自作ステージを配布できるのが面白い『ステージエディット』
◆一瞬のミスが命取りとなるシビアさとお手軽感が心地良いゲームバランス(難易度設定)
◆忍者という和の世界観にいい意味でミスマッチなスタイリッシュでクールなグラフィック
◆そのグラフィックにマッチした、何処か静かで爽やかな楽曲が満載の音楽
◆捕らわれた姫を助け出す王道の内容でありながら、奇妙な描写が随所に成されたストーリー
◆色んな意味で斬新過ぎるエンディングのスタッフクレジット

--- Bad Point ---
◆フレンド同士でなければ行えないという、謎過ぎる仕様のすれちがい通信
◆使える物と使えない物との落差が激し過ぎる『忍術』(結界以外は使い所に恵まれない…)
◆ステージ構成や操作など光るものは多いが、全体的に地味さも否めないゲーム性
◆エンディングを目指すだけならアッサリ気味の総計ボリューム(数の割にはあっという間)
◆エディットステージ保存枠の少なさ(ソフト側にはたったの1つしか残せない)
◆やや固い感も否めない操作レスポンス(特にマナーモードでのプレイ時にそれが顕著になる)
◆傾きの角度でキャラを制御するというゲーム性と一発アウト制との相性の問題で、若干の理不尽さもあるゲームバランス(特にストーリー後半のステージで顕著)
◆それなりに数はあるが、やや作業的な印象も否めない『ストーリー』のやり込み要素
▼Review ≪Last Update : 2/17/2013≫
何故、キューブなのか。

その答えは3DSのホーム画面にあるかもしれない。


ニンテンドー3DSのジャイロセンサーに着目する形で製作された、完全新作のアクションゲーム。AQインタラクティブがパブリッシャーとして最後にリリースしたタイトルでもある。

シンプルなゲーム性と個性的な操作で魅せる、3DS屈指の異色作だ。

ゲーム内容は横スクロールで展開する、ステージクリア型アクションゲーム。四角形のキューブ型忍者を操作し、様々なカラクリが張り巡らされたステージを攻略していくというものである。
収録ゲームモードは4種類。『ストーリー』、『タイムアタック』、『サバイバル』、『カスタムステージ』が用意されている。メインは『ストーリー』で、エリアごとに設けられたステージをストーリーに沿って攻略していく。残る『タイムアタック』、『サバイバル』、『カスタムステージ』の三つは最初の時点では選ぶ事ができず、『ストーリー』の進行に応じてアンロックされていく仕組みとなっている。その為、全てのモードを遊びたいというのなら『ストーリー』の進行は必須。異なるモードが用意されているとは言え、基本的にはステージクリア型の遊びに特化した作りとなっている。
そんな本編の舞台となるステージのクリア条件も、出口に到達すれば良いだけと至極単純。各エリアの最後に設けられたボス戦ステージだけはボスを倒すのが条件となっているが、それ以外は全て出口への到達。まさに王道中の王道のルール設定になっている。
しかし反面、プレイヤーキャラクターである忍者に関しては非常に特殊な個性付けが施されている。というのも、移動能力が無い。四角形の形をしている為か、歩く事も走る事もできないのだ。では、どうやって忍者を動かすのかと言うと、ステージ全体を移動させたいと思う方向に向けて傾ければいい。そうする事によって、忍者が傾けた方向に移動を始めるのである。その傾けるという言葉で既に明らかだが、今作ではキャラクターを操作するに当たって、本体内蔵のジャイロセンサーを使う。言うならば、今作は『ビー玉迷路』をモチーフとしたアクションゲームで、忍者という名のビー玉を出口まで持ち運ぶ事を主な目的としたゲームになっているのである。ゲームに詳しい方に向けて言うなら、2000年に任天堂がゲームボーイカラー専用ソフトとしてリリースした『コロコロカービィ』に近いゲームというと想像し易いと思われる。ただ、ビー玉迷路と言ったように、そのゲーム性は真っ赤な別物。キャラクターがステージの傾きに応じて動く為、微調整が効き難くなっている点もまた然りで、本体を傾けた角度の差が露骨に現れる、もどかしい手応えに満ち溢れたゲームに仕上げられている。地味な所だが、画面構成が見下ろし視点ではなく、横スクロールの視点であるのも違いを現す部分。更にステージによっては手前、奥と言った3D的な仕掛けも施されているなど、単にビー玉迷路のノリを踏襲したゲームになっていないのも大きな特徴の一つである。
同様の事は忍者自身の性能全般(システム周り)においても言える。単に傾ければ動くだけのビー玉同然の存在という訳ではなく、ステージ上に配置された『巻物』を獲得する事により、『忍術』を繰り出せるようになるなど、ちゃんと忍者らしい芸達者な一面も持っている。術自体も行く手を阻む敵を一掃する『八方手裏剣の術』、三回までミスを防いでくれる『結界の術』など、数こそ少ないがその能力は非常に優秀。これを駆使して難関を突破すると言った場面も本編では幾つかあり、単なるビー玉迷路をモチーフにしたゲームでない事を嫌というほど思い知らせる作り込みが成されている。
また、三回までミスを防いでくれると紹介したように、今作では近年のゲームでは珍しい一発アウト制を採用。敵やトラップに触れると、一瞬でやられてしまうなど、意外に脆い設定になっている。その為、高難易度ステージにおける緊張感もかなりのもの。そんな昔懐かしいゲームのノリが踏襲されているのも、今作の特徴。単純なゲーム性の裏にシビアな一面アリとも言うべき、理に適ったゲームデザインが図られている。他にステージ上のトラップ(カラクリ)も、火炎プロミネンス、バウンドブロック、トイレ(!?)と言ったヘンテコで個性的なものが盛り沢山。
更に『ストーリー』をクリアする事でアンロックされる3種類のモードも、最速クリアや持久戦など、本編とは異なる遊びが満載。更に『カスタムステージ』ではストーリーで手に入れたパーツを使って、オリジナルのステージを作成できる上、作成したステージは『QRコード』を生成する事により、インターネット上で他のプレイヤーに向けて配布する事まで可能。そんな地味に衝撃的な機能まで今作には実装されている。
ニンテンドー3DSはその名の通り、立体視による映像表現を最大の特徴としているが、それ以外にも豊富な通信機能やジャイロセンサーと言った多彩な機能を実装しているハードでもある。今作はその内のジャイロセンサーに特化したゲームデザインを執り行っており、3DSのゲームとしては珍しく、立体視を売りとしない作品になっている。一応、立体視自体には対応しているのだが、切った状態でプレイするのが基本であるなど、かなり異端の作りではある。まさに3DS向けのゲームとしては異色作と言うに相応しい作り。映像ではなく、操作の面白さを特色とする、何とも個性的で独特の味わいに富んだゲームに仕上げられている。

そんな今作の魅力は例によって、ジャイロセンサーによる独特のもどかしさと心地良さに富んだ操作性とシンプルながらも奥深いゲーム性の二つだ。
先の通り、ゲームルール自体は至極単純。忍者を出口まで到達させれば良いだけなのだが、ジャイロセンサーでステージ全体を傾け、動かすという独自の操作が一筋縄では行かない手強さと思い通りに動かすにも苦労があるもどかしさを演出しており、簡単なルールだからと言って舐めてかかると痛い目に遭うという、いい意味で嫌らしいゲームバランスを確立しているのが実に秀逸。簡単に遊べるのに、目標達成は困難というのはまさに『ビー玉迷路』のそれで、その魅力と面白さを非常に綺麗且つ、上手くゲームへと落とし込んでいる。
また、ただのビー玉迷路でない事を強調するかの如き、ゲームならではの嘘っぽい要素の数々も素敵の一言に尽きる。特にステージ上のカラクリは、現実のビー玉迷路では真似できないネタのオンパレード。火炎プロミネンス、旋風ファンなど、無茶苦茶なものが多数登場し、プレイヤーの進行を徹底的に妨害する。カラクリの配置を変えたり、カラクリそのものをプレイヤーが操作して進路を確保するなど、ジャイロセンサーで動かすのは忍者だけじゃないと訴えかけるかのようなパズル要素の数々も各ステージの展開に華を添えており、シンプルなゲーム性に奥行きを与えている。それらの個性的なカラクリが登場するのもあってか、レベルデザインも非常に洗練されている。ステージ自体のスケールは小さく、中にはほんの数秒で終わってしまうものもあったりするのだが、カラクリが多彩でぶっ飛んでいるのもあってか、プレイヤーを全く飽きさせない。更にエリアごとにカラクリのコンセプトが設定されているなど、個性付けにしてもしっかり施されているので、先に進めば進むほど、それまでに無い体験が味わえる構成になっているのも見事だ。ステージの総数にしても全部で100以上と膨大でありながら、使い回しと思しきものはほんの僅かしかないなど、丁寧な作り込みが光る。
そして、それでも物足りないと思えば、エディットとQRコード機能による新ステージ入手で幾らでも遊べてしまうというのも贅沢の一言に尽きる。特にQRコードによるステージ配布&入手の機能はその新しさもさる事ながら、読み取り機能も備えた3DSのカメラを効果的に活かしたものに完成されているのが見事。有効活用というにはこの上ない仕上がりとなっている。また、ステージ以外に『タイムアタック』のゴーストデータもQRコードを生成して配布する事が可能。QRコードを生成し、インターネット上にアップロードするだけで簡単に配布できてしまう、その手軽さは大変衝撃的。3DSというよりは、QRコードがエディット機能というシステムを如何に手軽なものへと変えるかという事を存分に思い知らされるだろう。
ただ、作成したステージがソフト本体に一つしか残せず、QRコードで頂いたステージも1つしか残せないのは残念。一応、QRコードの画像さえ残していれば良いだけなのだが、いちいち撮影するのも面倒なので、できれば最低でも3つは残せるようにしておいて欲しかった。また、この一連のデータは『すれちがい通信』での配布もできるのだが、それがフレンド同士でないと不可能という制限が設けられているのも謎過ぎる。そんな制約を設けず、自由にやれた方が色々盛り上げただろうに、水を刺すも同然な事をしてしまっているのは理解に苦しむ限りだ。そんな残念な所が幾つかありはするが、それでも本体発売から間もない頃にQRコードを使った機能を取り入れた姿勢自体は大きな評価に値するものではある。
ゲーム面でもジャイロセンサーの操作に着目し、荒唐無稽なビー玉迷路とも言うべき、懐かしくも新しい手応えに富んだゲームを突き詰めた事自体も大きな評価に値する部分。正直、ゲームとしての真新しさは弱い方ではあるが、3DSではこのようなゲームも作れるという事を示したのは非常に大きい。勿論、ゲームとしてもしっかり作られており、プレイヤーを飽きさせないレベルデザインなど、独特の味わいを持った作品として完成されているのが見事だ。
3DSは立体視だけじゃない事を訴えたゲームとして、本体と同時発売された『スーパーストリートファイターIV 3D EDITION』があるが、あちらが通信機能に特化したとなれば、今作はジャイロセンサーとカメラ(QRコード読み取り)の二つを突き詰めた作品と言ったところ。少し物足りないところもあれど、その意欲的な試みの数々とシンプルながらも奥深いゲーム性は今作でしか味わえないものがある。そういう意味でも、本当に唯一無二のゲームに仕上げられている。

また、ジャイロセンサーで操作するのはちょっと…という方に向け、『マナーモード』なるスライドパッド操作のモードも用意。外出先でもこの操作なら気楽に楽しめるなど、悪戯にセンサー操作を売りとしない姿勢にも好感が持てる。更にこの操作に限り、立体視が楽しめると言った独自の魅力が備わっているのもナイスな配慮だ。
全体的な難易度設定も一発アウト制を起用しているだけに少し高めだが、普通にクリアするだけなら、慎重なプレイを心掛ければ難なくクリア可能なバランス。難し過ぎず、優し過ぎずの適度なものにまとめられている。ただ、傾き方を間違えたが為に即死なんてパターンも時にあり、やや理不尽に感じる所もあり。逆にそれにさえ気を付ければ回避可能なのだが、そういう事が時々ある為、ストレスを感じ易い作りになっているのがタマにキズだ。
ボリュームもステージ総数が100以上と一件、かなり充実しているそうに見えるが、意外にもエンディングを目指すだけならあっという間。ただ、タイムアタックなどのやり込み要素や別の忍者キャラクターを使ったシナリオなど、意外とその密度は濃い。極めようと思えば結構遊べる内容になっている。
グラフィックも忍者という和をテーマしているのに、全体的なデザインはシャープでスタイリッシュな感じであるなど、ギャップの激しい作りになっているのが非常に印象的。音楽も題材の割には爽やかなテイストの曲が多く、いい意味で忍者らしくないラインナップになっているのが面白い所だ。

演出周りもゲーム性の特徴もあって地味。しかし、ボスを倒した際にプレイヤー側に向かって飛んで来たり、エリアの始めに変なストーリーが語られたりなど、抑える所はしっかりと抑えている。特にボスはその動きも含め、迫力満点。倒し方にも工夫が必要とされ、センサー操作ならではの緊張感と戦術性が演出されているのが非常に印象的だ。
他にも大きさ、身長差などの違いによって全く異なる操作性の面白さに富んだ仲間の忍者達、変なセンスが炸裂した説明書など、色んな部分に魅力が満載。 スライドパッドへの切り替えにも対応しているとは言え、キャラクターを動かすゲームではない為、多少ながら手応えに好みは分かれる。ゲーム的にも地味な為、ドバッと来る派手な面白さにも欠ける。そこもまた、賛否が分かれるだろう。
しかし、立体視ではなく、ジャイロセンサーにこだわったゲームデザインにQRコードによる配布機能など、全体的には非常に見所が満載の内容になっている。3DSは立体視だけじゃない、こんな事も出来るんだと存分に思い知らされる今作。
侮り難き良作だ。その手軽さから、ライトユーザーの方に特にお薦めだが、コアなプレイヤーも十分にやり込める余地もあり。一度でも良いので、プレイする価値のある一品だ。
≫トップに戻る≪