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≫世界樹の迷宮IV 伝承の巨神
■発売元 アトラス(インデックス)
■ジャンル 3DダンジョンRPG
■CERO A(全年齢対象)
■定価 5980円(税別)<廉価版:2980円(税別)>
ダウンロード版:2980円(税別)
■公式サイト ≫こちら ※音が流れます。
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 1つ
■3D表示 あり
■消費ブロック数 5712ブロック以上(※ダウンロード版)
■その他 すれちがい通信対応
■総説明書ページ数 19ページ(※電子説明書)、操作説明シート同梱
■推定クリア時間 40〜50時間(エンディング目的)、70〜120時間(完全攻略目的)
最果ての街『タルシス』。
その街から遥か遠方、前人未到の地には世界樹と呼ばれる巨樹が立っていた。
世界樹には古来より、人々を永劫の楽園へと誘う何かが眠っていると語り継がれている。
その伝承の真偽を確かめるべく、街を統治する領主は大陸全土へ世界樹に至り、その真実を解明せよとの伝令を発した。風のように駆け巡ったその伝令は、幾多の冒険者をタルシスへと引き寄せた。
全ては世界樹の真実を明かし、富と名声を掴む為に。

そしてまた一人、世界樹を求めて、一人の冒険者が街を訪れる。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆新たに『大地マップ』の探索が加わって、より一層彩り豊かな内容へと発展を遂げた本編構成
◆前作の完全一新から一転して、これまでのシリーズの良い所取りで構成した、全10種類の職業
◆獲得できるスキルに制限を設け、前作の壊れ気味なバランスの改善が図られた『サブクラス』
◆迷宮がメインとサブこと『小迷宮』の二つに細分化され、更に起伏に富んだ探索が楽しめるように進化を遂げたレベルデザイン(特に小迷宮の思い切った構造は必見)
◆低難易度モードこと『カジュアルモード』実装により、初心者も安心して楽しめるように配慮が成された、万人向け仕様のゲームバランス
◆新アイテム『食材』で作った料理で一時的に特定のステータスを底上げできるようになるなど、救済措置兼戦略的な要素として新規に盛り込まれたステータスブースト機能
◆基本的な作りは過去作と共通ながら、敵にも前衛と後衛の概念が加わり、戦略性が大幅に増した戦闘システム(更に味方側の前衛と後衛の切り替えもスムーズに行えるようになった)
◆キーアサインが少し奇妙だが、前作の完成されたものをそのまま踏襲した操作性(タッチスクリーンのマップ書き込み操作に関しても前作のレスポンスを踏襲)
◆ソフト無しでのすれちがい通信が可能になったほか、QRコード生成によってインターネット上での交換も容易に行えるようになったギルドカード交換機能
◆前作よりも物量は減ったが、相変わらず本編、やり込み共に充実した総計ボリューム
◆背景の高精細化のほか、敵のグラフィックもフル3Dでアニメーションが付いたものになるなど、見違えるほどにパワーアップしたグラフィック
◆3D描写の強化によって、より迫力の増した演出周り(特に終盤のイベントボス戦は必見)
◆過去三作から一転して、生演奏による作風になった音楽(名曲も豊富。ただ…)

--- Bad Point ---
◆カジュアルモード関係無く、シリーズ屈指の温さを誇る戦闘難易度(いわゆる極悪なボス、敵が減少。歴代シリーズ経験者なら強烈な物足りなさを覚えること必至)
◆戦闘難易度の温さを助長する、強力過ぎるステータスブースト機能(カジュアルモードだけ効果高めという差別化設定が成されてなく、ノーマルモードでも強力な効果を発揮する)
◆もはや『トラップ』の意義が無いも同然のお節介過ぎる警告メッセージ
◆レベルデザインが進化した反面、密度と探索の面白さは歴代最低にまで低下した迷宮構成
◆迷宮探索の面白さを損ねる、ショートカットサインの存在(※クリア後のダンジョンは除く)
◆一部、破壊的な性能を持ったスキルの存在(具体的にはミスティックの『抑制ブースト』)
◆歴代シリーズ屈指の平凡過ぎるストーリー(お馴染みの最終迷宮の意外性も全く無し)
◆著名なクリエイターによってデザインされた事の意味が微塵も現れていない背景グラフィック(正直、いつもの世界樹で、何処に個性があるのかサッパリ分からない出来)
◆クオリティは向上したが、FM音源で無くなった事でシリーズ特有の個性が消滅した音楽
◆ループ処理がされていないなど、一部楽曲における露骨な設定ミスの存在
◆クリア後に発生する巫女イベント(ある意味、ネタ要素)
▼Review ≪Last Update : 3/20/2016≫
おや?巫女様の体調が悪そうだ。

それがどうしてああなるのか…。


硬派で歯応え抜群の難易度、昔懐かしのゲームブックを髣髴とさせるストーリーと世界観、FM音源で製作された音楽などで好評を博し、アトラスの新たな看板タイトルにまで成長した3DダンジョンRPG『世界樹の迷宮』のシリーズ第四作目にして、ニンテンドー3DS初進出作。

シリーズきっての”ヌル過ぎる”世界樹の迷宮である。

基本的なゲーム内容は前三作と同様。3Dの一人称視点で展開されるダンジョンRPGで、最果ての街『タルシス』に訪れた冒険者の一人となり、パーティを編成して前人未到の地にそびえ立つ『世界樹』を目指し、その前に立ちはばかる『世界樹の迷宮』を探索していくというものだ。システム周りも前三作を踏襲。タッチスクリーンに表示された迷宮の地図に自由に情報を書き込めるマッピング機能、スキルの割り振りによってプレイヤー好みのキャラクターを生み出せるメイキングシステム、全10種類以上にも渡る職業などは今作にも引き続き実装されている。加えて、前作で初登場したメイン職業に他の職業の能力を付与できる『サブクラス』、ワイヤレス通信機能を使った『ギルドカード』の交換システム、タッチスクリーン上に移動ルートを書き込み、再生ボタンを押す事で、それに沿った動きが自動的に行われる『オートパイロット』等の新要素も継承。反面、『海域マップ』と『大航海クエスト』、ワイヤレス通信機能を使った最大五人までの協力プレイは廃止。併せてマルチエンディングシステムも撤廃され、ストーリーも一本道構成に改められるなど、全体的には二作目以前の作風への回帰を図った続編に仕上げられている。とは言え、続編としての基本的な作りは前作を踏襲。今回も新しい世界樹の迷宮を意識した、多くの新要素が盛り込まれた作りになっている。
そんな新要素について順に解説していくと、まず『気球艇』を操作する『大地マップ』の追加。前作の『海域マップ』の代わりという形で、今回は地上を空から探索するマップが実装された。しかも、このマップは『海域マップ』と異なり、行動制限無し。自由に隅々まで探索できる、これまでの迷宮とほぼ同等の仕組みを持ったものになっている。更に今回は、この『大地マップ』上に本舞台の『迷宮』が存在。実際にそこまで気球で向かい、降り立って迷宮探索を行っていく流れとなっている。これまでの三作は基本、拠点となる街から外に出ると、そのまま迷宮探索が始まる流れだったが、今回は外に出ると『大地マップ』がスタート。迷宮探索は始まらず、大地マップで迷宮を探し出す所から始まるのだ。その為、今回は本編の構成も前三作とは大きく異なるものへと一新。大地での迷宮探し、迷宮内部の探索の二つを順にこなしていく、新しい構成に改められている。更に『大地マップ』は迷宮同様にマッピングも行われるだけでなく、シリーズお馴染みの中ボス的存在『F.O.E.』も徘徊。加えて『高低差』、『上昇気流』と言った行く手を阻む仕掛けも配備されているなど、如何にも世界樹的な作り込みが徹底されている。無論、大地マップは一つだけでなく、先に進めば進むほど新たな舞台が登場。併せて、新しい仕掛け等が行く手を阻んでくるので、どのように障害を突破し、迷宮まで辿り着くかが求められてくる。前作の『海図』は本編のダンジョンと直結しない、独立した存在だったが、今回はこのように本編と密接に絡む仕組みとなっており、探索の密度、難易度が大幅にパワーアップ。加えて、前三作とはまるで異なる本編の流れも作り上げるなど、新鮮味も抜群。シリーズ初心者だけでなく、前作経験者にも大きな驚きを与える、非常に意欲的な新要素に仕上げられている。
また、本舞台である迷宮の構造も改められている。それが二つ目の新要素『小迷宮』。新たにメインの迷宮以外に一階のみの階層で構成された、小さな迷宮が追加された。この迷宮はストーリーの進行にはあまり関係しない、寄り道的な存在なのだが、ここでしか手に入らない貴重品が隠されていたり、新種の『F.O.E.』と巡り会えたりなど、様々な特典が仕込まれた構造になっている。また、小さい迷宮だけあって、仕掛けもメインの迷宮以上に凝っているなど、個性付けの面でもプレイヤーを驚かせるものになっている。このような小さな迷宮が追加された事により、メインの迷宮探索における攻略の幅が広がったほか、世界観の広がりが感じられるようになっている。また、階層が低いので、探索時に全滅してもさしてショックを受ける事が無いなど、精神衛生面でも優れていたりする。まさにシリーズの根幹たる探索に更なる深みを与える新要素。小規模なりの本気が炸裂した仕上がりになっている。
更にメインの迷宮も仕組みが改められ、エリアごとの階層が5から3に減少。ボリュームダウンが図られた。しかし、減った相応に仕掛けが厄介になっていたり、ボスとの戦いが歪になっている等のパワーアップも施されている。前三作よりも減少した所にシリーズ経験者ほど、不満を覚えるかもしれないが、遊べば全くそうでない事を思い知らされること請け合い。何よりも、大地マップの攻略も絡む本編の内容を考えれば、この量が適切とすら思うかもしれない。ある意味、探索範囲を広げたなりの細分化を行ったとも言える作り。これまでの三作とは異なる手応え、そして進化した探索というものを存分に堪能させられるものに完成されている。
この他、『職業』に関しては前作で全てが完全一新されるという大胆な試みが行われたが、今回は前三作から厳選して選んだ職業プラス、初登場の職業という二作目に比較的近いラインナップになっている。また、育成に絡んだ新要素として、大地マップ等で手に入る新アイテム『食材』を追加。いわゆるステータスブースト機能で、これを調理して食べる事により、特定のパラメーターを強化させたり、耐性を付けると言った事が可能になった。効果は一時的だが、使う事で強敵やボスとの戦いが少し楽になるなど、プレイヤー側での難易度の上げ下げができる。辛口なゲームバランスを持ち味とするシリーズとしては異例の新要素だが、このおかげで今回はシリーズ初心者にも気軽に遊べるバランスを実現。温くするのも手強くするのもありの万人向けのカラーを推し出した新要素となっている。更にこれに加えて低難易度モードの『カジュアルモード』も実装。特定のアイテムが消費されなくなって探索が容易になったり、全滅時のペナルティを軽減できるようになるなど、これまで以上に低い難易度で本編を楽しめるようにもなった。なお、この難易度変更はゲーム中、いつでも可能。なので、手応えが無さ過ぎると感じたら従来難易度の『ノーマルモード』にするのも良し。そんな気楽に切り替えられる所も特色の一つ。これまでのシリーズ以上に自由な遊び方と探索を許容する作りになっている。
これ以外にも戦闘における敵側にも前衛・後衛の概念の導入、敵モンスターのグラフィックの完全3D化、3DS内蔵のすれちがい通信機能で大幅軟化したほか、『QRコード』生成機能を使う事でインターネット経由でも行えるようになったギルドカード交換など、ニンテンドー3DSにハードを移行した事による恩恵を受けてパワーアップを遂げた箇所も豊富。前作も前作で大掛かりな進化を遂げた内容だったが、今作は更にその上を行くと言わんばかりにシステム周りにゲームバランスまで、大きく一新。初心者も抵抗なく遊べる為の救済措置を豊富に実装するなど、シリーズ屈指の万人向けの色が強く推し出した、チャレンジングな続編に仕上げられている。

そんな今作の魅力は、前三作よりも格段に遊び易さが増したゲームバランスである。先の通り、低難易度モードにステータスブースト機能の実装と、これまで硬派さを演出していた箇所の緩和措置が多く実装され、シリーズ未経験者は勿論のこと、今まで3DダンジョンRPGを遊んだ事のないプレイヤーにも優しい作品へと変貌を遂げている。
数ある緩和措置の中でも秀逸なのは、迷宮の細分化。劣化と見て取られても仕方がない変更点だが、このようにした結果、目的地までの距離が近くなったので、探索のモチベーションが殺がれ難くなっている。一応、これまでのシリーズでもショートカットを配置する対策が組まれてはいたが、隅々まで調べないと見つからない所にあったりするほか、敵との戦闘の難易度が高めなのもあり、1階を突破するだけでも結構な疲労感を抱いてしまう部分もあった。それがシリーズの醍醐味でもあるのだが、少々盛り過ぎだった感も否めず。それが探索範囲を狭めた事で、バランスが非常に良くなった。かと言って、戦闘難易度は従来通りな為、全滅の危険と隣り合わせな点は相変わらずなのだが(しかし…?)、目指す場所が近い故にモチベーションが殺がれ難く、「次こそは!」という意欲が湧き易くなったのは大きな進歩と言えるだろう。
また、『小迷宮』の追加で、より華やかなレベルデザインが実現されているのも特筆すべきところ。ストーリーに直接絡んでこない設定なりのやりたい放題感が炸裂しており、これまで以上に歯応え抜群で、バリエーションに富んだダンジョンの探索が楽しめるようになっている。その詳細な作りも大量の『F,O.E』が変な方向に沿って動き回っていたり、素材を集められるポイントが沢山あるけど危険なトラップが多く仕掛けられているなど、本編に組み込んだら過激なゲームバランスになりかねないものばかりなのがユニーク。本編は適切な遊び応えを厳守し、それ以外は恐ろしさを追求。まさに本来、製作者側がやりたい事を突き詰めた差別化が成されているのには、例え初心者に優しくなっても世界樹は世界樹なのだという強いこだわりとアトラスらしいドSなスタンスが現れていて見事だ。また、こうした措置によって、低難易度の選択肢があっても通常難易度に挑んでも大丈夫そうかなと興味を惹かせるようになっているのも秀逸。その興味にすぐ応えられるよう、いつでも自由に変更可能にしている辺りもユーザーの心情を考慮して作り込んだ事を察する事ができる。
しかしながら、今作が執り行った緩和措置が絶賛するほどに素晴らしい出来と言い切れないのが困ったところ。裏を返せば、今作の欠点になってしまっている。特に『食材』によるステータスブースト機能はやり過ぎ。攻撃力及び防御力アップ、状態異常に対する耐性強化、素材回収率のアップなど、効果は様々且つ、妥当なものばかりなのだが、その上昇値が高過ぎる。強力な『F.O.E』すら苦戦する事も無く、楽々倒せるようになるほどなのだ。しかも、これはカジュアルモード限定ではなく、ノーマルモードも共通。普通、カジュアルモードよりも効果を下げるなどの下方修正を行ってこそだろうに、それが全く無されてないというのは調整不足と言わざるを得ない。結果的にこの所為でノーマルモードでも十分に温く、楽々と進めていけてしまうという世界樹らしからぬバランスが実現されてしまっている。バランス崩壊が嫌なら使わなければ良い事だし、こうした事で初心者がノーマルに挑戦し易くなっているメリットもあるのだが、カジュアルモードがあるのなら、そちらとの差別化を執り行うべきだろう。それを行わず、そのまま導入してしまっているのは大変残念だ。低難易度を入れた意義が薄れてしまっている。
更に、これ以外にも緩和し過ぎた箇所はある。任天堂のカービィシリーズ、スマブラシリーズのセーブデータ削除時並にしつこくなったトラップイベント遭遇時の警告メッセージ、ショートカットポイントに露骨に描かれた『サイン』の存在、大量の経験値を獲得できる『F.O.E.』の稀少個体追加など。どれもこれも、過剰に親切にし過ぎと言わんばかりの存在になっている。まだ者二つは許せる部分があるが、トラップイベントは論外の域。前作も警告メッセージはあったが、今作ほど過剰では無く、妥当な量に落ち着いていたので、トラップとしてのらしさは残されていた。今作はその欠片も無い。第一、トラップなのに何でしつこく警告する必要があるのか。過保護という以上にプレイヤーを馬鹿にしているのに等しい。また、トラップにハメられる事もシリーズの醍醐味だというのに、その脅威を無に帰すレベルにまで薄めるとか、何の為の3DダンジョンRPGなのか。初心者に優しくするのなら、カジュアルモード限定でそのようにするだけで良かったのではないだろうか。先のステータスブーストもだが、そう言った強力な機能の数々が普通にノーマルモードにも実装されてしまっているのには本当、実は初心者前提でゲーム作りをしていたのでは、と疑ってしまう。
その他、戦闘難易度も今作は先のステータスブーストの存在と、中盤以降の味方側の強化によって過剰なまでに低下して温くなるなど、いつになく崩壊気味。前作で猛威を振るいってたサブクラスの取得スキルが制限されるなど、改善が図られた箇所も無くは無いのだが、あまりにも初心者前提のバランス取りに徹してしまっている。
過去作よりも遥かに遊び易く、初心者に自信を持ってお薦めできるようになったのは評価すべき所だ。だが、経験者に対するフォローが不十分な点は褒められず、何の為に低難易度を実装したのか、その意義がまるで現れてないバランスになってしまっているのは強烈な違和感を覚える。発売前、公式サイトの開発者ブログにおいて、低難易度モードを入れた理由は通常難易度を幾らでも高くする事ができるから、という言及があったが、その通常難易度が前三作屈指の低難易度とか何の冗談だろうか。システム的な限界があったかもしれないにせよ、そのコンセプトが全く持って反映されてない作りには、ただひたすらにガッカリするばかりだ。

難易度低下に伴い、ボリュームの充実感も過去三作よりも落ちてしまっている。前作のマルチエンディングは無いので、全体的にはバランスの取れた物量になっているほか、クリア後の隠しダンジョンもあったりして充実しているのだが、肝心の戦闘難易度が中盤にかけて急激に温くなるのにに加え、最終ボスですら初見撃破余裕な強さな為、シリーズ経験者ほど物足りなさを覚えるのは必至だ。それでも、少し気を抜いたら痛い目に遭う厳しさは残されているものの、世界樹の迷宮としては「これは違う!」と言いたくなってしまうだろう。クリア後の隠しダンジョンにしても、最深部で待ち受けるボスの調整には経験者ほど首を傾げること必至である。
操作性も3DSになってスライドパッドで移動できるようになった…と思いきや、いつも通りに移動は十字キーでスライドパッドは視点変更を行うだけという、変にズッコケな作り。ただ、これと言ってレスポンスなどに問題は無し。前作の完成された操作系をそのまま採用しているので、ストレス無く遊べる設計になっている。
グラフィックもDSの上位ハードで作られただけあって、質が大幅に向上。敵モンスターのグラフィックも3D化して動くようになったほか、フィールド上の『F.O.E.』も固有のグラフィックで描写されたものになるなど、絵的な派手さも増している。しかし、背景に関してはDS版が少し鮮明になった程度。『未来少年コナン』の美術監督などで知られる、山本二三氏を背景デザインに迎えたと言うが、その恩恵と氏の個性がまるで感じられない仕上がりになっているのには違和感を覚えるところである。起用した意味はあったのだろうか?
また、音楽もこれまで通り、古代祐三氏が作曲している…のだが、何と今回はシリーズ伝統のFM音源ではなく、生演奏による音源に改められてしまい、前作までの強烈な個性が失われてしまった。曲自体の出来は悪くないのだが、シリーズ経験者なら猛烈な違和感を覚えるだろう。また、一部のボス戦曲でループ処理がされていないという設定ミスまである始末。前作まではこんなミスなど無かったのに、一体どうしてしまったのか。戸惑いを禁じ得ない。

一見、必要最低限に見えて、結構衝撃性のあるストーリーも歴代屈指の平凡さ。初代及び二作目での意外性、前作の分岐と絡んだ複雑な構成と神秘的なビジュアルと言った工夫も何も無く、過去のシリーズをプレイしてきた経験者ほど物足りなさを覚える内容になってしまっている。最終ダンジョンにしても意外性の欠片無し。その辺の展開に期待すると酷い裏切りに遭うので、今回に限っては要注意と念を押しておきたい。
その他、演出周りはさすがに上位ハードで作られただけあって大幅に強化。ボスに専用の登場演出があったり、あるボスとの戦いでは背景も動くなど、今までのシリーズに無かった表現がふんだんに盛り込まれている。ただ、最終ボスとの戦いに挑む前の演出が弱いなど、作り込みが足りてない箇所も。正直、気になる人は気になってしまうかもしれない。
総じてより万人向けになったゲームバランス、迷宮細分化によって彩り豊かになったレベルデザイン、これまでとは趣の異なる本編の構成など、大きく進歩を遂げた部分がある一方で、従来シリーズの手強さが急激に薄まってしまっているなど、初心者を意識した部分が露骨に現れ過ぎた惜しい仕上がりになってしまっている。新規のユーザーを獲得する狙いがあるにせよ、それを意識し過ぎるのも考えモノであると痛感させられること請け合いの今作。シリーズファンなら要プレイの一本だが、手応えを求めている方にはあまりお薦めできない、シリーズきっての困った良作だ。逆に初心者には自信を持ってお薦めできる出来。この作品をきっかけに素晴らしくも手強い世界樹の迷宮の世界に踏み入れてみよう。
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