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  4. スーパーストリートファイターIV 3D EDITION
≫スーパーストリートファイターIV 3D EDITION
■発売元 カプコン
■開発元 ディンプス
■ジャンル 対戦格闘
■CERO B(12歳以上対象) ※暴力、セクシャル描写あり
■定価 4800円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1〜2人(※観戦モード:1〜6人)
■セーブデータ数 1つ
■3D表示 あり
■その他 ローカルプレイ対応、ダウンロードプレイ対応、インターネット対応、すれちがい通信対応
■総説明書ページ数 63ページ
■推定クリア時間 15〜30分(エンディング目的)、50〜60時間(完全攻略目的)
軍事企業『S.I.N』によって開かれた世界格闘選手権は、その発表当初より暗い噂が付きまとっていた。滅亡後も裏世界で恐れられる秘密結社『シャドルー』、恐るべき能力を持つ新兵器、そして格闘家の連続失踪事件との関連。

個人の思惑と組織の利害が複雑に絡み合う大会の裏側で、最後に勝つ者は誰なのか。
幾重にも張り巡らされた罠の中に、真の黒幕の哄笑が響き渡る…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆特殊な技が追加されながらも、基本は1対1で先に相手を打ち負かした方が勝ちという、シリーズの伝統に則った取っ付き易さを尊重した基本ゲームルール
◆初心者でも簡単に必殺技を繰り出せる手軽さと爽快感を満喫できる、大胆な試みが異彩を放つ『LITE操作』
◆総勢35人以上ながら、旧シリーズからの面々も健在で、コマンドも当時のままという配慮が秀逸なキャラクター達
◆コマンド入力の練習が可能な『トレーニング』、その応用を学べる『チャレンジ』、難易度選択機能など、行き届いた初心者への配慮の数々
◆すれちがい通信による戦闘要素が異彩を放つ新要素『フィギュアコレクション』
◆常時待ち受け、観戦など、充実且つ大胆な試みが成されたオンライン対戦周りの機能の数々
◆LITE操作でも相手の出方に応じた的確な立ち回りが要求されるなど、手軽であっても対戦格闘の醍醐味を損なわないよう調整が成されたCOM戦の難易度バランス
◆メダル集め、全キャラクターのストーリー制覇など、充実したやり込み要素の数々
◆HD版より劣化した部分もあるが、それでも携帯機とは思えないほど質が高いグラフィック
◆オプションで内部の3D機能を切る事によって秒間60フレームが実現する、地味ながらも3DSの底力(及び製作スタッフのハードに対する精通ぶり)を実感させるシステムの存在
◆爽やかで熱い楽曲が盛り沢山の音楽(過去の曲も収録するなど、ファンサービスも万全)
◆豊富なアニメムービー、毛筆調のエフェクトなど、凝った作り込みが光る演出全般

--- Bad Point ---
◆LITE操作の弊害により、異常なまでに強くなってしまったタメ系の必殺技(ボタン長押し操作で発動する技)とそれらを持ち技としているキャラクター達
◆タメ技問題で、キャラクターの極度な偏りが生じてしまっているLITE操作限定のオンライン対戦(PRO操作に設定すればマッチングは回避できるが…)
◆コマンド入力の手順が記されていないのが少し勿体無いLITE操作のタッチインターフェース
◆ハード形状の問題もあってか、ややぎこちない手応えが際立つPRO操作
◆初心者には逆に誰を使えばいいのか混乱しかねない、35人のキャラクター達(最初から全員解禁済みでなく、段階に応じて解禁されて行くのが順序立てとしては良かった)
◆立体視の奥行き感はインパクトがあるが、空気な感も否めない新要素『3Dバーサス』
◆ハード制約の都合により、動きが無くなって地味になった背景グラフィック
▼Review ≪Last Update : 1/20/2013≫
俺より強い奴が…後ろに居る?

或いは、窓から突貫して来る?


2008年にアーケードで稼動した後、プレイステーション3、Xbox360に移植されたカプコンの看板対戦格闘ゲーム久々の続編『ストリートファイターIV』のアッパーバージョン、『スーパーストリートファイターIV』にニンテンドー3DS向けのアレンジと新要素を加えた作品。

豊富な通信機能と手軽で敷居の低い操作性が異彩を放つ、カプコン渾身の一作だ。

ゲーム内容は横スクロール方式の対戦格闘アクションゲーム。35人ものファイター達のいずれかを操作し、ライバルとの一騎打ち(ストリートファイト)に挑むというものである。最終的に相手の体力が無くなれば勝利。そして三本勝負(※設定で変更可能)の内、二本先取すれば次の相手との戦いへと移る仕組みとなっている。
基本的なシステムは、過去のストリートファイターシリーズを踏襲。ベースは『スーパーストリートファイターII-X』以降のシリーズで、専用ゲージを溜める事で発動可能になる強力な必殺技『スーパーコンボ』、その上位版で『リベンジゲージ』を50%溜める事で発動可能になる『ウルトラコンボ』、スーパーコンボゲージを少し消費して繰り出す『EX必殺技』、そして必殺技をキャンセルして連続コンボへと繋げる『スーパーキャンセル』等のシステムは今作にも引き続き採用されている。そこに新たな要素として『セービングアタック』を追加。極端に言えばカウンター技。技の出始めに中パンチ・中キックボタンを両方押すとその間ガードポーズ(構え)を取り、ボタンを離すか一定の時間が経過した後に専用の反撃技を繰り出せるようになった。更にその発展系としてスーパーコンボゲージを消費する形で発動する『EXセービング』、相手のセービングを無効化する『アーマーブレイク』なる技も用意。シンプルながらも、奥の深い駆け引きを演出する魅力溢れる新要素に仕上げられている。こう言った様々な要素が実装されているが、基本的なゲーム性はシリーズの完成形にして原点に当たる『ストリートファイターII』と大して変わらない。その為、経験者であれば難なく馴染める。シリーズ初心者にしても、ルール自体がシンプルなので、身構える必要無し。歴史のあるシリーズならではの安心感に溢れた作りとなっている。
なお、『セービングアタック』を始めとする新要素は、正確には『ストリートファイターIV』にて初めて実装されたもの。今作は『スーパー』という事で、それらの威力等に調整を加えたものになっている。また、選べるプレイヤーキャラクターも新キャラクターを追加した35人と大幅倍増。更に『ストリートファイターIV』には無かった『ボーナスステージ』が復活。シリーズ経験者のノスタルジーを喚起する、ニクいサービスも凝らされている。
そして今作『3D EDITION』だが、基本はオリジナルの『スーパーストリートファイターIV』と一緒で、そこに幾つかの新たなゲームモードを追加した、強化版的な内容になっている。新たに追加されたモードは『3Dバーサス』と『フィギュアコレクション』の二つ。前者は斜め見下ろし方向からの視点による、立体感的な戦闘が楽しめるモードで、3DSの立体視機能を使った独自の内容となっている。後者は他のモードで手に入れたポイントを使ってフィギュアを集める、やり込み要素的なもの。ただ、この集めたフィギュアを5体だけ選出し、すれちがい通信で戦わせる『フィギュアバトル』なるものも用意されており、単なるやり込み要素では終わらない奥深さを持ったモードに仕上げられている。
また、『インターネット対戦』のモードに『オンライン待ち受け』なる機能を導入。3DS本体の無線通信をONにした状態で他のモードで遊んでいる最中、相手が唐突に乱入し、そのまま勝負へと移行する機能が追加された。更にこれはオンラインのみならず、ローカル通信にも対応。電車内で今作を遊んでいるもう一人のプレイヤーが乱入してきても勝負が発生する、地味に衝撃的な仕様になっている。まさに手軽に何処でも対戦可能。携帯機の強みと3DS特有の通信機能をフル活用したモードへと進化を遂げている。
そして、更なる新要素として『LITE操作』。タッチスクリーンに記された専用パネルをタッチするだけで必殺技を繰り出せるという、衝撃の操作スタイルが導入されている。これにより、格闘ゲームに苦手意識のある方でも簡単に必殺技を繰り出せ、尚且つその爽快感と駆け引きの楽しさが味わえるようになっている。シリーズ経験者、熟練者からして見ればとんでもない機能、陰湿な言い方をすれば『ゆとり』的な操作だが、これの導入により、今作ではシリーズとしては群を抜いた敷居の低いプレイ環境を実現。歴代シリーズの中でも最も初心者が挑戦し易いストリートファイターとなっている。勿論、経験者向けのボタン操作『PRO操作』も完備。それに『LITE操作』では、タッチ操作で出せる技は最大4つまでという制限がある為、無敵という訳でもなく。そう言った制約もきちんと考えられているなど、意外と侮り難いものに完成されている。
その他、オリジナルでは特定の条件を達成しなければならなかった一部のキャラクターが最初から解禁済みと言った違いもある。また、HD機から携帯機に移行したのに伴い、グラフィックにおいてステージ上の背景が動かなくなったという劣化点もあったりするが、その部分を豊富な新要素でカバー。見た目以上には気にならない仕上がりになっている。
何よりも、HDの環境下で作られたゲームが携帯機で動き、普通に遊べるというだけでも驚きだ。それでいて、シリーズを遊んだ事のない人への配慮も万全。先の繰り返しになるが、今作ほど初心者が挑戦し易いストリートファイターもなかなか無いと言っても良いほどだ。それほどまでに単なる移植では済まされない魅力的な要素が盛り沢山。高度な職人技と格闘ゲームの更なる発展に対する愛が炸裂した内容に仕上げられている。

例によって今作の売りは、LITE操作によって演出された圧倒的な敷居の低さだ。格闘ゲーム特有の魅力である一方で、最も嫌われ易い点でもある必殺技の出し難さ。これをタッチだけで出せるようにし、格闘ゲーム初心者からジャンル自体に抵抗感を抱いてたプレイヤーまで、気軽に技を繰り出す楽しさを味わえる作品に完成されている。
特に技が上手く出せなく、イライラした経験を持つプレイヤーにとって、自分が思い描いた通りに技を繰り出せる快感と嬉しさはかなりのもの。十字キーの斜め入力とボタンの同時押し等に悩まされる事も無く、あの『波動拳』から『昇竜拳』と言った技をサクサク繰り出せるので、純粋にキャラクターで暴れ回る楽しさを堪能することができる。どちらかと言うと、格闘ゲームは一般的なアクションゲームとは異なり、キャラクターを動かす楽しさ以上に上達の快感を出す為の操作系とするのがお決まりみたいなものとなっているが、その上達までの道のりは結構遠いもの。簡単な必殺技でさえ、複雑な入力を求められるので、直に技を繰り出したいという欲求に応えられない辺り、手軽に楽しみたいと考えるプレイヤーには不向きなジャンルであるのは否定できない事実だ。だが、そのもどかしさこそあっての対戦格闘ゲームでもある。それ故に今作の操作自体が邪道中の邪道なのは言うまでも無い話だが、直に技を繰り出して爽快な気分浸りたいプレイヤーに向け、手軽な操作を設けた事自体は決して非難されるものではない。むしろ、この操作のおかげで、ストリートファイターシリーズのみならず、格闘ゲームの魅力と醍醐味が伝え易くなったのは、ジャンル全体にしても極めて大きな進歩と言っても良いだろう。実際、技が簡単に出せるようになった事で、それまで技の出し難さで隠されていた戦略的なゲーム性が、今作では手軽に味わえるようになっている。どのタイミングで攻撃を仕掛け、こちら優勢で事を運ばせるか。それを操作をマスターしたプレイヤーだけでなく、マスターできてない初心者でも体験でき、ジャンル特有の奥深い部分が見え易くなったのは、シリーズにとってもジャンルの未来にとっても大きな事だと言えるだろう。
また、LITE操作で繰り出せる技は4つまでという制限も絶妙。全ての技を使った、華麗な戦いをしたくばコマンド操作も練習しなければならないなど、暗にその必然性を訴えかけている辺りがニクい。この操作でなら、メインモードである『アーケード』の最高難易度も楽勝という訳ではないバランス調整も見事。出せる技に限界があるだけでなく、防御行動と言ったアドリブも求められてくるので、どうしてもその辺のテクニックを習得する必要がある。防御に関しては、タッチ操作に対応してないので尚更だ。一番簡単な難易度の場合は別なのだが、そんな必殺技を出せる手軽さを出す一方で、ゲーム的には全く易しくせず、修練の必要性を訴えかける調整が施されている辺りに、只の救済処置で終わらせまいとする徹底したこだわりと格闘ゲームの奥深さを訴えかける思いを感じる事ができる。格闘ゲームは修練すればするほどに奥深さが増していく。それを難易度設定と制限でしっかりと演出しているのも、今作の侮り難し見所だ。
ただ、初心者向けを意識し過ぎたあまり、キャラバランスが崩壊している点は痛い。特にタメ技(ボタン長押し操作で発動する技)系を使うキャラクターが、LITE操作だとタッチ一発でそれらの技が出せてしまう為、軒並み最強キャラと化すのが非常に痛い。この為、『インターネット対戦』でLITE操作の相手を探すと、大半の方がそのタメ系のキャラを選択するという問題が発生してしまっている。一応、設定をPRO操作にする事で、LITE操作のキャラクター全てを拒否できるのだが、この辺はもう少し制限を設ける調整して頂きたかったところだ。また、タッチパネルにはコマンドを載せても良かったのではないだろうか?入力練習のきっかけを促す為にも、それ位はやっても良かっただろう。そこがちょっと勿体無くもある。
とは言え、気軽に対戦格闘の醍醐味を堪能できる敷居の低さと取っ付き易さは相当なもの。シリーズとしても、歴代最高クラスの敷居の低さを実現しており、格闘ゲーム入門編としても申し分の無い作りになっている。それでいて、上級者に対する配慮も万全で、極める楽しさと奥深さはバッチリだ。まさに万人向けストリートファイターここに誕生したり。少し荒削りな所もあるが、シリーズの歴史に大きな変革をもたらす、極めて完成度の高い内容に仕上げられている。

ボリューム周りもエンディングを目指すだけならあっという間。だが、『チャレンジ』やメダル集め、フィギュア集めと言ったやり込み要素が大量に用意されている為、極めるとなると相当な時間を必要とされる。また、全35人のキャラクター達には個別のストーリーが用意されているので、それらを全部見終えるだけでも相当な充実感を得る事ができる。短くとも、奥深さ底知れず。意外とやり応えのある内容になっている。
また、難易度も5種類用意されており、手軽な遊びから真剣勝負まで、あらゆるスタイルの遊びに対応。先も述べたが、上位の最高難易度はLITE操作でも苦戦必至のバランスとなっているなど、悪戯に温さを出している部分も皆無。強い奴を求める上級者も納得の歯応えを堪能できるバランスに仕上げられている。
グラフィックの質も非常に高い。特にキャラクターのモデル全般は本体同時発売ソフトとは思えないほどの出来で、HD機で発売されたシリーズとも引けを取らない。立体視による演出も迫力満点で、特にウルトラコンボ全般は必見だ。
更に今作ではゲーム内のオプションで3D表示をOFFに設定する事により、秒間60フレームでキャラクターが動くようにもなる。そんな3DSのハード機能を最大限に活用した要素が実装されているのも、地味ながらも見逃せない見所である。

演出回りも各キャラクターのストーリーに専用の短編アニメーションが用意されているほか、台詞もフルボイスであったりなど、非常に凝った作り込みが成されている。そして音楽も対戦を大いに盛り上げる、爽やかで熱い楽曲が満載。久々にストリートファイターシリーズに触れるという方に向けて、その琴線を刺激する懐かしの音楽もアレンジして収録するなど、ファンサービスが徹底されているのもニクい限りだ。
その他、ルールは単純ながらも行動順の編成、相性など、意外と奥深い戦略性に富んだ『フィギュアコレクション』のバトルなど、魅力的な要素は満載。通信対戦周りもラグが発生し難いなど非常に完成度が高く、その無駄に充実した機能と快適性には、3DSが立体視だけでなく、通信周りも優秀な能力を持ったハードである事を存分に思い知らされるだろう。
LITE操作の弊害でタメ技を使うキャラクターのバランスが突出してしまっている難点はあれど、完成度は非常に高く、立体視から通信機能、タッチスクリーンに至るまで、本体同時発売ソフトとは思えないほど、3DSの特性を使いこなしたゲームに完成されている。敷居も低く、初めて格闘ゲームを遊ぶという方も気負い無く楽しめる作りとなっている今作。シリーズ初心者から久々にシリーズに触れるプレイヤーには特にお薦めの力作だ。対戦志向の上級者プレイヤーにはキャラバランス周りが崩れてる為、お薦めし難い部分はあるが、出来は申し分無し。3DSの通信機能の凄味を体験するにも十分な内容なので、それ目的でプレイするのもお薦めです。
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