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≫スティールダイバー
■発売元 任天堂
■開発元 ヴィテイ
■ジャンル 潜水艦アクション
■CERO A(全年齢対象)
■定価 4800円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1〜2人
■セーブデータ数 1つ
■3D表示 あり
■その他 ダウンロードプレイ対応
■総説明書ページ数 15ページ
■推定クリア時間 4〜6時間(エンディング目的)、20〜30時間(完全攻略目的)
19XX年。
弱小国家に侵略を企てる軍事国家の侵攻を止めるべく、
各国の精鋭乗組員を集めた潜水艦部隊が平和維持の為、
秘密裏に組織された。

後にその部隊は…『スティールダイバー』と呼ばれた。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆操縦パネルのレバー類を動かし、潜水艦を目的地まで辿り着かせるというシンプルなルールと操作系の独特さが異彩を放つ『潜水艦モード』
◆タッチペンのみながら、直感的に動かせないギャップの激しさと極める面白さに富んだ独特過ぎる操作性
◆操作を極める面白さを助長させる、中毒性&やり込み甲斐満点のタイムアタック
◆潜水艦操作とタイムアタックの奥深さを引き立てるチャレンジ要素『スタッフゴースト』
◆バリエーション豊か且つ、嘘っぽい世界観が異彩を放つステージ構成
◆メインモードとは異なる特殊な形状をしたステージが楽しめる『チャレンジモード』
◆速度重視、バランス型、防御型など、全く異なる性能と癖を持った三種類の潜水艦
◆装着する事で速度や防御力が上がるなど、カスタマイズする面白さに富んでいるだけでなく、救済処置としても上手く機能した『デカール』による装備システム
◆ジャイロセンサーによる快適且つ、楽しい操作が異彩を放つ『潜望鏡モード』
◆相手の位置が見えない故の緊張感と先の読めない展開が秀逸な『海戦モード』の対人戦
◆高めながらも、やり込む度に奥深さが増していくスルメな味に満ちたゲームバランス
◆水槽の中に広がる世界という独特の描写が面白い、立体視機能ON時のグラフィック
◆海の中を進んでいく設定と見事にマッチした、環境音主体の静かな音楽
◆潜水艦を操縦するゲームとしての雰囲気を引き立てる、英語音声による無線会話の演出

--- Bad Point ---
◆極める度に面白さが増す魅力があるとは言え、基本的には癖が強過ぎる操作性
◆物足りない総計ボリューム(特に潜水艦モードだが、ステージがメインとチャレンジを合わせて16しかない)
◆ステージをクリアする度に挟まれる、ランキング登録画面の煩わしさ(毎回、ネームエントリーしなければならない)
◆ボリュームの時間稼ぎとしか思えない、潜水艦モードの最終ステージ解禁条件
◆ほとんどおまけミニゲームで終わってしまっている『潜望鏡モード』(ステージによってはボス戦があったりなど、もう少し構成に変化を付けても良かったのでは?)
◆一定量、同じ種類のものを集めないとその効果を発揮しないなど、ボリュームの水増しをしている意図が垣間見える『デカール』による装備システム
◆運要素が強く、理不尽さすらある『海戦モード』のCOM戦
◆『海戦モード』の戦闘システム(潜望鏡モードで行うというのがまた地味にダルい)
▼Review ≪Last Update : 1/27/2013≫
セットで回転チェアもどうぞ。

別にあれば操作し易くなる訳ではありません。


2004年のE3にニンテンドーDS用ソフトとして参考出品され、その後、紆余曲折を経て、3DS用ソフトへと生まれ変わった、潜水艦を題材にした完全新作アクションゲーム。開発は任天堂情報開発本部と『シータ』、『ロックンロールクライマー』を手掛けた有限会社ヴィテイが担当。

特徴的な操作とそれを極めるスルメな奥深さが光る、渋い良作だ。

ジャンルの異なるゲームモードで構成されている為、一括りにできない所もあるが、基本的なゲーム内容は横スクロールで展開する、ステージクリア型アクションゲーム。潜水艦を操縦して海中を進み、様々な障害を潜り抜けながら目的地(ゴール)への到達を目指すというものだ。
収録ゲームモードは『潜水艦モード』、『潜望鏡モード』、『海戦モード』の全三種類。なお、先ほど述べた概要は『潜水艦モード』のもの。他の二つは全く別ジャンルの内容となっている。事実上のメインとなるのは『潜水艦モード』。先の通り、横スクロールで展開するステージクリア型アクションゲームのモードで、基本的に『ミッション』と称されたステージを順に攻略していくというものである。まさに横スクロールアクションの王道に則った内容だが、自機が潜水艦で、ステージも全てが水中であるなど、人間等のキャラクターを動かす作品とは一味も二味も違う作りになっているのが大きな特徴。乗り物アクションゲームとも言うべき、地味ながらも不思議な新しさに富んだモードになっている。
ただ、それ以上にこのモードで特徴的なのが操作性だ。何と、潜水艦の操縦はタッチペンだけで行う。それも、下画面に表示された『操縦パネル』にあるレバー類を調節しながら動かす、独特のものになっているのだ。基本的に潜水艦はパネル上の『深度レバー』、『出力レバー』の二つを調節して動かしていく事になる。『深度レバー』は上下方向のみ動かせるレバーで、これを調節すると潜水艦が潜行、浮上の行動に移行。対し、もう一つの『出力レバー』は左右方向のみ動かせるレバーで、調節すると潜水艦が前進、後退の行動に移行する仕組みになっている。これら二つのレバーをプレイヤーは地形等の状況に応じて調節し、ステージを進んでいく事になる。また、パネル上には他にも『傾斜ハンドル』、『魚雷ボタン』、『マスカー』と言ったものが設置されており、主に敵への迎撃と回避、方向調整等を行う時に使用が求められてくる。更に敵の魚雷が被弾、或いは障害物に接触して水漏れが発生した際は、その穴をタッチペンで塞ぐなど、少し奇抜な操作が求められてくる事もある。タッチペンしか使わないというその基本仕様から、ゲームに不慣れな方でも手軽に触れる作りを想像してしまうが、その実態はペンしか使わない事を逆手に取ったかのような仕上がり。想像以上に慌しい操作系になっている。何だか難しそうな感じだが、実際、難しい。しかも、潜水艦には慣性がかかる。その為、下手に速度を上げ過ぎると、方向転換の際に間に合わず、壁に衝突してしまう。当然ながら、壁や地面に潜水艦が接触すればダメージ。なので、雑な調節をしながら動かすと、あっという間に海の藻屑。最近の任天堂のゲームにしては珍しいほどプレイヤー自身のスキルが問われる、硬派寄りの作りになっているのである。
そうもプレイヤーの思うが侭に動いてくれない為、練習は必須も必須。むしろ、それをせずにプレイするのは無謀と言っても良い位だ。まさに「潜水艦を動かす」という事にこだわったゲームデザインと言ったところ。敷居が低いと見せかけて、実態は「羊の皮を被った狼」という個性の強い内容になっている。
また、このモードでは各ミッションクリア後に『潜望鏡モード』によるボーナスミッションが挟まれる。『潜望鏡モード』は極端に言えばミニゲーム。3D主観固定視点で展開するシューティングゲームで、潜望鏡をタッチペンで回転させ、目前を通過していく敵の戦艦などに魚雷を発射し、撃沈させていくというものになっている。
その作り故に内容は浅めだが、潜望鏡の操作は本体内蔵のジャイロセンサーにも対応しているという特徴があり、実際に潜水艦の潜望鏡を動かしているかのような手応えと動かす楽しさを味わう事ができる。ジャイロセンサーによる操作自体もスムーズ且つ、しっかりと狙いを定められるなど、なかなかに爽快。ミニゲームも同然なだけに『潜水艦モード』ほどの深みはないが、ジャイロセンサーによる操作の面白さなど、3DSのハード周りの魅力を堪能するには申し分無し。意外と侮り難い魅力を持ったゲームモードに仕上げられている。
更に三つ目で『海戦モード』があるが、これは他の二つとは一線を画す、同時ターン制の戦略シミュレーションゲームとなっている。特徴として、相手の居る位置が分からない策敵仕様になっており、その為に『ソナー』などの装備を使って敵の位置を探ると言った、変わった駆け引きが展開される。また、本編はCPUとの対戦以外に最大二人までの対人戦のモードも搭載されており、CPUとは異なる奥深い心理戦を楽しめるのも大きな特徴。他の二つとは違い、完全に独立したモードで、補足感が否めないところもあるが、こんな変わったモードが収録されているのも、今作の見所である。
以上、少し端折ったが、これが今作の概略。潜水艦を除く二つはほぼおまけ同然だが、それでも操作性やルール周りなど、独自の魅力を持った内容に完成されている。また、メインの潜水艦もその操作性とゲームルールにより、横スクロールアクションでありながら、一筋縄では行かない手強いゲーム性を兼ね備えた内容に仕上げられている。
まさに、かつてスーパーファミコンで発売されたレースゲーム『ワイルドトラックス』のコンセプトを継承した新作?ゲーム自体はアクションゲームな為、全くの別物だが、操作の難しさと困難を克服する楽しさなどは、それに非常に近い。ある意味、懐かしの作品の後継作現るとも言える懐かしの作風と新しさを併せ持ったゲームに仕上げられている。

そんな『ワイルドトラックス』に倣うが如く、今作の魅力もまた、乗り物を操縦する難しさと楽しさを追求した、『潜水艦モード』における癖の強い操作性にある。更に付け加えると、上達の手応えを実感させる為の工夫の上手さもその一つだ。
先も述べたが、潜水艦を思うが侭に操作するには練習が必須。初めての時点ではレバーをどのタイミングで、どれ位の位置にまで調節すればいいのかの加減が全く分からない上、説明書等でもそれを一切教えてくれないので、自分で感覚を掴まなければならない。一応、最初の方のミッションは地形が簡易で、別に操作をマスターせずともクリアできるよう気を遣った難易度設定が成されているのだが、それでも全く初めての時点で無傷突破するのは余程の実力者でない限りは無理。大半のプレイヤーはかなりの頻度で制御ミスを起こし、船体に傷を付ける事になってしまうだろう。
そういう意味では欠点と言えなくも無いのだが、逆に調節するタイミング等が分かってくると、動かす面白さが加速的に上昇。クリア済みのミッションに再度、挑戦してみると、以前よりも ダメージも無く、更に早いタイムでクリアできるようになるなど、自身の上達の結果が露骨過ぎるほど画面いっぱいに現れる。そして、その華麗なプレイで他のクリア済みミッションの記録更新に挑みたくなるなど、どんどんやり込む気力が増していくのだ。まさに癖の強い操作性ならではの中毒性。不自由な部分を持った作りであるが故のマスターする快感、自分のものにしてしまいたいという独占欲が噴出する、いい意味で憎たらしさ溢れる作りになっている。
そんなプレイヤーに上達を実感させる為の工夫の数々も非常に上手い。先ほど、タイム云々と言ったが、各ミッションではクリア時のタイムが記録されるようにもなっており、その最短記録を競い合うタイムアタック要素も今作には実装されているのだ。これがまた非常に熱く、プレイヤーの挑戦意欲を無駄に刺激する。しかも、極めた結果がダイレクトに現れるだけに、自分の成長を確実に実感する事もできるというおまけ付き。要素自体は新しいものでもなく、むしろ伝統的なものと言っても良いほどだが、操作の癖の強さと絶妙に絡み合って、極めてリプレイ性の高い要素に仕上げられている。
更に、この手の要素を取り入れた最近の任天堂のゲームで思い出されるのが『スタッフゴースト』だが、それも今作に実装。その記録に挑戦する、辛口なやり込み要素も実装されている。また、この『スタッフゴースト』はプレイヤーを導くガイド機能の役割も果たすなど、救済処置としての側面を持っているのも面白い所。特に操作に不慣れな時に使うと、今作の操作の癖や曲がるタイミングなどを早い内に掴む事ができるだろう。そんな意外な使い道を設けているのにも、今作の操作を上達する楽しさを色んな人に味わって欲しいというこだわりを実感させられる。
とは言え、慣れるまでの難しさは結構なもの。そう1時間ほどで簡単にマスターできるほど、簡単ではない。だが、思い通りに動いてくれないが故の生々しい手応え、それを自分のものにする楽しさは申し分が無く、スルメな味わいがある。また、ベストタイムと最速ゴーストの記録更新を目指すと言ったレースゲーム的なやり込みも充実しており、操作を極めた後なりの遊びがしっかりと設けられているのにも、単に潜水艦を動かしてゴールを目指すだけのアクションゲームでは終わらせまいとする、制作スタッフの執念的なこだわりを痛感させられる。
ボリュームが少ないなどの惜しい点も散見されるのだが、普段、操縦する機会など滅多に無い潜水艦を動かせる嬉しさ、そしてその操縦をマスターする快感は今作でしか味わえないものがある。万人が楽しめる作りとは言い難い所があるが、カプコンの『バイオニックコマンドー(ヒットラーの復活)』のような独特の操作を売りにしたゲームに惹かれるプレイヤーなら、間違いなくハマる内容であると言っても良いだろう。また、今作と同様に操作をマスターする面白さを突き詰めた『ワイルドトラックス』をやり込んだプレイヤーにしても然り。コンセプトこそ違えど、その操作する楽しさともどかしさを最優先にした作りには、懐かしい気持ちに浸れるかもしれない。

その他の『潜望鏡モード』にしても、『潜水艦モード』ほどのスルメ的な味わいこそ無いが、ジャイロセンサーによる快適且つ、楽しい操作性が秀逸。しかし一方、『海戦モード』は蛇足感が否めず、特にCPU戦はほとんど運任せなゲームになってしまっているのが痛い。更にテンポも悪く、マス目移動時において度々、カット不可能な短めのデモが挟まれるのがイライラ感を高める。対戦ツールとしては面白い内容ではあるのだが、『潜水艦モード』と『潜望鏡モード』で独自色を出しているのなら、その路線をもっと突き詰めるべきだっただろう。結果的にこれを入れたが為に他のモードのボリュームが犠牲となってしまっているのが残念でならない。
とは言え、『潜水艦モード』のステージ構成の出来は悪くない。少ないとは言え、一つ一つの個性が尊重された作り込みが成されており、数々の驚きの仕掛けでプレイヤーを楽しませてくれる。また、難易度設定も海戦モードは不十分だが、その他は難し過ぎず、優し過ぎずの丁度いいバランス。操作に慣れてない頃は高く感じるが、慣れるほどに緩くなっていく、上達の楽しさを売りとしたゲームならではの調整はお見事の一言に尽きる。
グラフィックも立体視と組み合わさった時の水槽っぽさが大変印象的。何処と無く、玩具っぽい雰囲気を醸し出したその独特過ぎる映像は要チェックだ。音楽もステージの序盤にジングル的な曲だけを流し、後は環境音主体の雰囲気重視になるなど、独特の試みが成されているのが非常に印象深い。また、それによる潜水艦を操縦している手応えも抜群。嫌でも今作が潜水艦のゲームであるという事を思い知らされるだろう。

演出周りも地味ではあるが、英語音声による無線会話が適時入ったりなど、潜水艦のゲームとしてのらしさを徹底的に追求した作り込みが成されているのが素晴らしい。また、ストーリーは皆無なのだが、潜水艦の操縦士のデザインなどに何処と無く、スターフォックスっぽい作風が炸裂しているのは地味にインパクトがある。何気にデザインしたのがそのスタッフであるというのも面白いところだ。
『海戦モード』の蛇足感、それが足を引っ張ったとされる全体的なボリュームの乏しさが本当に勿体無いが、ゲームとしてのやり込み甲斐は抜群。隠し要素として敵配置などが全て改められた高難易度モードも用意されているなど、極めようと思えばかなり長く遊べる作りになっている辺りにも、今作がスルメ的な面白さを追求しているという姿勢が現れている。癖は強いが、操作の面白さと極める度に増していく深みなど、侮り難き魅力に富んだ今作。
普通のアクションゲームは飽きたという方こそ、是非、プレイしてみて欲しい渋過ぎる良作だ。3DSのハード特性を堪能するゲームとしても適した作り。特にジャイロセンサーを使う潜望鏡操作は、思わず笑みがこぼれてしまうほどの楽しさなので、機会があったら試してみて欲しい。地味にお薦めの一品です。
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