Written in Japanese. Japanese fonts required to view this site / Game Review & Data Base Site
  1. ホーム>
  2. Review Box>
  3. Game Boy>
  4. バイオニックコマンドー
≫バイオニックコマンドー
■発売元 カプコン
■ジャンル アクション
■CERO A(全年齢対象)
■定価 3567円(税込) / バーチャルコンソール版:400円(税込)
■公式サイト ≫VC版(3DS)
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 無し(※パスワードコンティニュー方式)
■総説明書ページ数 40ページ
(≫VC版の説明書はこちら ※PDF注意
■推定クリア時間 1〜7時間
遥か未来、地球上は平和な一時を過ごしていた。
だがある日、突如として現れた総統ワイズマン率いる『ドライゼ軍』が、強大な軍事力をもって全世界に宣戦布告。同時にワイズマンは謎の『アルバトロス計画』を発令した。

連邦軍は『アルバトロス計画』の全貌を突き止めるべく、英雄スーパー・ジョーを単身、ドライゼ公国へと潜入させた。しかし、彼からの連絡は途中で途絶えてしまう。

本件を重大視した連邦は、ジョーの救出及び『アルバトロス計画』を阻止する為、特殊部隊『バイオニックコマンドー』を召集。その『FF(ダブルフォース)部隊』のエース、ラッド・スペンサーをドライゼ公国に潜入させる事を決定した。
かくしてドライゼ公国に潜入したラッド。彼はジョーを無事救出し、ワイズマンの野望を打ち砕く事ができるのか。世界の命運を決める戦いが今、始まった。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆癖は強いが、コツを掴めば自在且つ、大胆にキャラクターを動かせるようになる心地良い上達感と中毒性の高さが際立つ『ワイヤーアクション』
◆落下速度の減速、ジャンプ後のワイヤー発射など、前作に当たる『ヒットラーの復活』からの秀逸な改善点の数々(特に連続ワイヤー発射はなかなか爽快)
◆情報収集、探索など、王道ながらも少しRPGチックな独特の工夫が光る本編構成
◆ワイヤーアクションの醍醐味を徹底追及した、奇抜な地形が光るステージ構成
◆オーソドックスな中枢装置撃破から、丸腰状態での脱出、ライバルとの一騎打ちなど、プレイヤーを飽きさせない工夫が凝らされた珠玉のレベルデザイン
◆歯応え抜群だが、極めるなりの快感と確かな充実感、満足感に秀でたゲームバランス
◆レスポンスの良さと違和感のないボタン配置が光る、良好な操作性
◆前作『ヒットラーの復活』には無かったパスワードコンティニュー機能の実装(これにより、プレイヤーのペースに合わせて本編を進めていけるようになった)
◆エンディングまでは短いが、非常に濃厚な体験を満喫できる充実感満点の総計ボリューム
◆見た目こそ地味ながらも、質の高いドット絵と凝ったデモシーンで魅せるグラフィック
◆曲数は少ないが、一度聴いたら耳に残るほど印象深い楽曲が揃った音楽
◆重々しい爆発音を始めとする、質感満点で確かな手応えに秀でた完成度の高い効果音
◆表現面の制限の多いゲームボーイで、精一杯の派手さを追及しようとする徹底したこだわりと確かな派手さが見事な演出周り(特にエフェクト系)
◆内容こそ『ヒットラーの復活』には劣るが、熱い展開とツボをしっかり抑えたストーリー

--- Bad Point ---
◆アクション初心者の心を平然と「ボキッ」とさせる難易度(理不尽さは皆無だが、非常にきつめ)
◆終盤における高難易度ステージのラッシュ(特に核ミサイル基地、最終ステージの二つは鬼門)
◆慣れると面白いが、それまでに結構な練習時間を必要とする辺りがタマにキズなワイヤーアクションの癖(原典、トップシークレットから続く宿命的なもの…)
◆使用武器が偏り易いなど、調整の不十分さが際立つ武器全般のバランス
◆盾を持ったボス『重装甲兵』の残念な撃破方法(盾をワイヤーで剥ぎ取る事ができない為、倒したい際はゴリ押すしか有効な手がない。)
◆無駄に入り組み過ぎな『中立エリア』の施設内部のマップ
◆『中立エリア』における、強制挿入方式の会話ウィンドウ
▼Review ≪Last Update : 6/23/2013≫
(あからさま過ぎるほどに)強敵推参!

だが、その実力は…。


1988年にファミコン用ソフトとして発売され、独特のワイヤーアクション秀逸なストーリーでユーザーに強烈な印象を残した怪作『ヒットラーの復活 トップシークレット』のゲームボーイ向けリメイク版にして、世界観等の設定を一新した新作。

細かな改良により、更に遊び易さと遊び応えが増した新生ヒットラーの復活だ。

基本的なゲーム内容は横スクロールで展開する、ステージクリア型アクションゲーム。主人公のラッド・スペンサーを操作し、舞台となるドライゼ公国内に点在するエリアを攻略していくというものである。本編はマップ上に点在する、敵エリアを順に攻略していく形で展開。敵エリアはスタート当初より自由に選択できるが、同じカプコンの『ロックマン』シリーズほどの自由度は無く、特定の武器、アイテムが無いと進めないと言った制限が設けられている。なので、基本的には現時点での装備で進めるエリアだけを選び、進めていく感じとなる。
各エリアのクリア条件は、最深部にある動力装置を破壊する事。これに到達するには、エリア内の様々な場所に配置された『通信室』で仲間との交信を行っていく必要があり、一切行わずに進めてしまうと、動力装置への入口が閉ざされたままで進行不能となる仕組みになっている。故に基本的にエリア内を駆け抜けては通信室に入るを繰り返していく事になる。少し煩わしさもあるが、これが今作の主な流れとなっている。ただ、時にはマップ移動中に遭遇した敵部隊との戦闘があったり、味方が大勢居る『中立エリア』で情報収集に当たるなど、意外とその中身は複雑。基本こそ王道のステージクリア型ではあるが、そう言ったアドベンチャーゲーム的な要素も僅かに盛り込まれており、全体的に大変独特且つ、起伏に富んだ構成に仕上げられている。
そして、システム周りも独特の仕上がり。注目は何と言っても、『ワイヤー』を使ったスウィングアクション。今作の主人公ラッドはマリオやロックマンと言った他のアクションゲームの主人公達とは異なり、ジャンプができない。大きな穴はおろか、小さな段差ですら乗り越えられない、大変困った能力の持ち主となっている。これをカバーする為に彼は『ワイヤー』を使用。天井、床、柱などの建築物にこれを突き刺し、ターザンのように振り子運動で勢いをつけ、その反動で穴や段差を飛び越えると言った事を行う。まさに物理運動に身を任せたアクションで難関を突破していくという、新タイプの主人公となっているのだ。そんなワイヤーの発射操作自体は単純で、Aボタンをポチッと押すだけ。これでラッドが向いた方向の斜め上にワイヤーが発射され、そこに突き刺さるものがあると『ガチッ』という音が鳴り、そのまま十字キーを押すと振り子運動へと移行。あとは飛びたいと思う方向に十字キーを押せば、その勢いを保ったジャンプをしてくれる。普通にジャンプする以上に手間はかかるが、仕組み自体は結構単純なものになっている。しかし、その特徴からして、このアクション自体が非常に癖のあるものである事は一切否定できず、当然の如く、最初は誰もがこの操作に混乱する。ワイヤーの長さ、振り子運動の勢いから測られる飛距離など、緻密な計算と調整も求められるので、単に一回経験すれば直感的にできるようになるほどのものでもない。正直、敷居はかなり高い。
だが、慣れてしまえば、他のアクションゲームでは決して味わえない、ダイナミックで爽快なゲームプレイを堪能できるようになる。特に連続スウィングで突破しなければならない場所をノーミスで攻略できた時の達成感と快感は格別だ。
思い通りに動かせるアクションの場合、上手く動かした時の感動は最初に来てしまいがち。以降は「当たり前の動作」となり、動かす感動も薄れていく。だが、今作は癖が強く、応用性に秀でているのもあり、その感動がなかなか薄れず。終始、動かす楽しさが維持される魅力溢れるアクションに完成されているのだ。何度もそのアクションを堪能したい、極めたいという欲も衰えないので中毒性も抜群。初めこそ不便さを感じるかもしれないが、マスターした暁には周回プレイという名の習慣が身についてしまうこと間違いなし。そんな他では味わえない体験と感動は、アクションゲーム好きなら経験して然るべきだ。なお、最初の紹介の通り、今作はファミコンで発売された傑作アクション『ヒットラーの復活』のゲームボーイ版とも言える内容で、先に紹介した本編の流れ、ワイヤーアクションなどは基本的に原作準拠のものとなっている。ただ、全てがヒットラーと同じという訳ではなく、一部の要素には改良が施されている。
第一にワイヤーアクションだが、ほぼ好きなタイミングでワイヤーが発射できるようになった。ヒットラーでは連続スウィング時、次の発射までに僅かな間が発生するようになっていたが、今作ではそれがなくなり、連続して出せる仕様に改良されている。これにより、連続スウィングがより直感的に繰り出せるようになった。更に第二として、ジャンプ時の落下速度も遅めに変更。これで落下しながら次の対象物にワイヤーを引っ掛ける事もし易くなっている。本編にはこの仕様を活かした局面も豊富に追加されており、よりアクロバティックでスタイリッシュなアクション体験を味わえるようになっている。他にも、見下ろし視点だった強制戦闘ステージが横スクロールに変更、世界観がSFアニメ風に一転、パスワードコンティニュー制の採用と言った改良点がある。
ファミコンの傑作のゲームボーイ版、カラーから白黒になったという事で、グレードダウン版と初めは疑うかもしれない。だが、実際は正当進化系というに相応しい内容だ。独特のワイヤーアクションも微修正で爽快感が増したほか、パスワードの起用でのんびりプレイにも対応するなど、大幅にパワーアップ。原作のセンセーショナルな部分は薄れたが、ゲームボーイ版と甘く見ると痛い目に遭う、『新生ヒットラーの復活』というに相応しい作品に仕上げられている。

そして、今作最大の売りは先ほどに紹介した細かな改良の数々によって、ますます極める面白さが増したワイヤーアクションとその本質的な奥深さと気持ちよさだ。
繰り返しになるが、このアクションの敷居は高い。突き刺す位置を見極めたり、長さを調節して振り幅を大きくしたり、小さくしたりすると言った細かな操作等が求められてくる為、1〜2回程度のプレイで完全習得するなど無理も同然だ。正直な所、練習だけでなく、実戦で何度も失敗を重ねなければ習得は困難と言ってもいいほど、難しいアクションになっている。どう見ても万人が楽しめる類のアクションでないのは、もはや言うまでも無いだろう。
だが、これまた繰り返しになるが、連続スウィングで進む場所を素早く突破できた時など、自分の思うが侭に動かせるようになった後の快感は格別。癖の強いアクションだからこそ、その見返りは非常に大きなものになっている。
また、プレイヤー自身の成長をこの上なく実感できるというのも敷居が高いからこその魅力。特に一度クリアした後、再び最初からプレイしてみると、如何に自分が最初の時以上に腕が上達したのかというのを存分に実感する事ができる。それに加え、以前よりも華麗な動きができるようになった自分自身に酔いしれてしまう、なんて事も。それを何度も堪能したいが為、また最初からプレイし始めてしまうなど、極めれば極めるほど味が増していくというのもこのアクションの大きな強みである。まさにスルメ的アクションとでも言うべきか。最後のステージをクリアすればお終いとはならぬ奥深さと旨みが秘められているのだ。癖が強い為に動かし難さに滅入り易い面もあるが、それを諦めずに極めたなりのご褒美が強烈。それほどやり甲斐のあるアクションとなっている。
また、原作『ヒットラーの復活』からの改善点も極める面白さを引き立てる要素として見事に機能している。特にワイヤーをほぼ好きなタイミングで発射できるようになったのは実に秀逸な改善点。これにより、素早い連続スウィングが繰り出せるようになったほか、足場から落下した後、その角に即座にワイヤーを発射して突き刺し、振り子運動に移行して違う足場に飛び移ると言った高度なテクニックが可能となり、アクション自体の自由度、爽快感が大幅に向上している。飛距離が稼げない場面でも、一度、ワイヤーを解除した後、直に発射してギリギリ届く位置に移動するなど、突き刺す場所を間違えても十分、挽回できるのも地味ながら大きな進化。ゲームバランス全体におけるシビアさの緩和に一役買っている。更に落下時の速度が遅くなったのも、落下しながらワイヤーを突き刺し、そのまま足場に着地すると言った高度なアクションの難易度を緩和させていて見事。原作では難しかった部分を気持ちよさ最優先の調整に改めている辺りには、如何に今作が原作以上のものを目指して作られたのかという事を実感させられる。
エリアことステージに関しても、ワイヤーアクションの楽しさと改善点によって可能となった新たなテクニックの必然性を余す事無く盛り込んだ作りになっていて素晴らしい。使い回しもほとんどない上、エリアによってはイベントによって武器の使用が禁じられ、ワイヤーだけで突破しなければならないと言った変則的な展開もあったりと、レベルデザイン周りも練られている。マップ上で発生する敵部隊との戦闘も、本編のエリアとは異なる駆け抜ける面白さに富んだ構成になっているほか、原作のトップビューとは異なり、横スクロール方式というのもあり、遊び易さも上々。サポート周りでパスワードコンティニュー制が採用されて、プレイヤー好みのペースで本編を進めていけるようになったのも非常に有り難いところである。
元々、原作の時点でも十分完成度の高かったアクションがより磨きのかかったものへと進化し、遊び易さまで向上。基本、世界観を刷新したリメイクとは言え、しっかりと新作ならではの強化を図って作り込まれている辺りには、このワイヤーアクション独自の魅力をもっと知ってもらいたいととする意気込み、そしてオリジナル以上の作品を作ろうとする志の高さが満ち溢れている。その妥協なき姿勢には改めて、アクションゲームの制作には定評のある、カプコンの意地というものを実感させられる次第だ。
ワイヤーアクション独自の魅力はそのままに、更にやり込み甲斐が増すなど、リニューアルとしては最高レベルの出来。全てにおいて愛と情熱が込められた作品に仕上げられているのだ。

その他、操作性もアクションに癖はあれど、基本はAボタンとBボタンの二つだけで遊べる単純明快な作りなので、非常に取っ付き易い。また、ワイヤー発射周りの仕様変更と落下時の挙動刷新により、より動かす楽しさが強化されているのも見逃せない部分だ。
ゲームバランスに関しては原作と負けず劣らず容赦ない難しさ。特に後半は僅かなミスすら許さない地形が大量に登場するので、相当な腕をもってして挑まないと攻略はほとんど無理な高難易度となっている。しかし、理不尽さは皆無。基本的にはロックマンなどのカプコン製アクションゲームの十八番、経験を重ねるにつれ突破口が見えてくる絶妙且つ、確かな達成感に富んだバランスにまとめられている。また、難しいが故にワイヤーアクションの極め具合が露骨に反映される辺りも秀逸。そんな意図的な調整が図られているのも大きな見所だ。
また、ボリュームもなかなか。基本難易度が高いのもあり、初見なら5〜7時間は平気でかかるほど密度が濃い。しかし、慣れると大体、30〜40分以内でエンディングに到達できるようになるなど、極めたなりの結果がしっかり反映されるようになっているのが面白い。そこまで長めではないが、歯応えと充実感は抜群。まさに噛めば噛むほどに魅力が増していく、奥深い魅力を秘めたものになっている。
グラフィックも見た目こそ地味だが、オープニングイベント、エリアクリア時には大きな一枚絵が挟まれたりと言った描写もあるなど、結構こだわった作りになっている。ドット絵の質も高い。音楽も曲数こそ少ないが名曲揃い。特に今作のメインテーマとも言える、最初のエリアで流れる曲はとても痛快且つ、熱いものになっているので要チェックだ。

演出も派手で、動力装置を破壊した時には仰々しい点滅があったり、画面が揺れたりなど、表現面で制約の多いゲームボーイでギリギリまで派手さを追及しようとするこだわりが炸裂している。他にストーリーに関しても原作『ヒットラーの復活』には及ばないものの、ライバルとの死闘や仲間との共闘、窮地からの脱出など、熱いシーンが盛り沢山。特に終盤はまさに手に汗握る展開の連続となっているので必見だ。
その終盤の難易度が飛び抜けて高い事や中立エリアにおける会話が強制挿入方式であるなど、少し気になる欠点も散見される。特に終盤は本編屈指の挫折ポイントで、もう少し難易度を下げられなかったのかと悔やまれる。最終ステージの難易度に関しては特に異論は無いが。
そんな難易度面でアクションゲーム初心者の心を圧し折る部分があるが、全体の完成度は申し分無し。ゲームボーイ屈指のハードアクションと言うに相応しい歯応えと爽快感を持った内容に仕上げられている。極める度に味が増していくワイヤーアクション、練り込まれたステージ、そして絶妙なアレンジ具合と、原作『ヒットラーの復活』のリメイクとしても非常に良く出来てる今作。アクションゲーム好きならば要プレイの傑作だ。極めたら止まらなくなる、恐るべきアクションの妙味を存分に実感してみて欲しい。人を選ぶけど、お薦めの逸品です。
≫トップに戻る≪