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≫ドンキーコング2001
■発売元 任天堂
■開発元 レア
■ジャンル アクション
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 3990円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1〜2人
■セーブデータ数 3つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■その他 ゲームボーイカラー専用(※カラー以前のゲームボーイでは遊べません、ゲームボーイ専用通信ケーブル対応、赤外線通信機能対応、ポケットプリンタ対応
■総説明書ページ数 28ページ
■推定クリア時間 5〜7時間(エンディング目的)、35〜45時間(完全攻略目的)
ある強い嵐の夜の事だった。
ディディーはバナナ倉庫の見張りをしていた。
そこへバナナ泥棒軍団クレムリンがやってきて、倉庫のバナナを盗んで行ってしまった。
更に倉庫の見張りをしていたディディーはクレムリンによってタルに閉じ込められ、ジャングルの茂みに投げ込まれてしまった。

翌日、荒らされたバナナ倉庫を見たドンキーはクレムリンが落としていったバナナを手がかりに、ジャングルの奥へと入って行ったのであった…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆ハード性能の劣るゲームボーイカラーでスーパーファミコンの『スーパードンキーコング』を見事に作り上げた、高い再現度
◆ゲームボーイカラーの限界を極めたと言っても良い、圧倒的なグラフィック
◆ゲームボーイ版スーパードンキーコングシリーズ待望のオートセーブ機能実装
◆オートセーブ実装でシビアさが緩和され、アクションゲーム初心者も安心して楽しめるように大きく改善が図られたゲームバランス
◆グリーンバナナ、シール集めなどの収集アイテム追加で、大幅にやり甲斐が増したやり込み要素
◆やり込み要素の強化で、オリジナル以上に密度が増した総計ボリューム
◆つい長時間やり込んでしまう中毒性に秀でた新しいミニゲーム『ファンキーフィッシング』

--- Bad Point ---
◆『スーパードンキーコング』のリメイクである事を伏せたパッケージ及び説明書(公式サイトも含む。新作だと勘違いしかねない酷い作り)
◆頻繁に発生する処理落ち(美麗なグラフィックの代償)
◆『スーパードンキーコングGB』の使い回しばかりの手抜きな音楽(新曲も一応あるが…)
◆リメイク故、過去三作に比べると圧倒的に劣るゲーム全体の新鮮味(コースも全てスーパードンキーコングと共通しているので尚更)
◆たった1つしかない新コース(せめてあと2〜3個は入れるべきだった)
◆画面比率の所為で初見殺し度が増し、難しくなってしまった『ネッキーの森』
◆『ファンキーフィッシング』以外のミニゲーム(どれも味気なくて面白味に欠ける)
◆クリア特典が地味で中身も味気ないキャンディーのチャレンジゲーム
◆『スーパードンキーコングGB』の船ステージの曲を流用している所為で、全く持って盛り上がらない最終ボス戦(緊張感ゼロ)
◆大半が地面に埋まっている為、ドンキーコングでないと絶対に回収できないシールアイテム
▼Review ≪Last Update : 12/25/2011≫
許し難き未公表。

何故、リメイクだと言わなかった。


『スーパードンキーコングGB』から続く、ゲームボーイ版スーパードンキーコングシリーズの第四弾。開発はこれまでと同様、イギリスのソフトハウス『レア』が担当。

新作に見せかけて実はリメイクという偽装工作が許し難い問題作だ。

ゲーム内容は横スクロールで展開するステージクリア型のアクションゲーム。ドンキーとディディーの二匹を操作し、多彩な仕掛けが張り巡らされたコースを攻略していくというものだ。
基本的なゲームシステムは、これまでにゲームボーイで発売されてきたドンキーコングシリーズを踏襲。正伝シリーズの伝統に則ったワールド&エリアマップ、相棒(パートナー)の存在を示すアイコンなどは今回も起用されている。
一方でセーブシステムは全く異なる仕様に変更。何とオート方式に改められ、一つのコースをクリアすると自動的にセーブが行われるようになった。過去の三作では特定のアイテムを集めないといけない、スーパーファミコン版と同様、特定のポイントでしか行われないなど、携帯機のゲームとしてはミスマッチな仕様となっていたが、遂に今回、携帯機のゲームにマッチした理想的なセーブシステムが起用された。これにより、ゲームとしての手軽さと遊び易さは劇的に向上。正伝も含めたシリーズ最高レベルにして完成形と言っても過言でない、快適なプレイ環境が構築されている。更に今回はセーブシステムだけでなく、ワールドマップへの移動手段も改善。前作の『ワープ』、前々作及び正伝シリーズの『ファンキーフライト(飛行機)』を使う必要がなくなり、最初のコースの上に表示される入口アイコンの上で決定ボタンを押すだけでワールドマップに移動可能となった。これにより、使用する為に消費するアイテムを集める必要が無くなったほか、前のワールドのコースに戻って残り人数を上げると言った事が手軽にできるようになり、作業感と事故の発生頻度が大きく緩和された。これも色々と面倒だなと感じてたプレイヤーにとっては嬉しい改善点と言えるだろう。しかも今回は先の通り、セーブがオート方式になので、セーブポイント間近でゲームオーバーになってワールド最初のコースからやり直しという悲惨な目にも遭い難くなったので尚更だ。何故、今までこうしなかったのかとツッコミを入れたくなる所もあるが、この改善は非常に有り難い限り。これまで難易度が高いという噂に敬遠していた新規プレイヤーの方もすんなりと入っていける、間口の広いスーパードンキーコングがここに誕生となった。
しかし、そうシステムや環境周りがシリーズ最高レベルに進化した一方、ゲーム内容の方はとても残念な事になっていたりする。というのも、今作は今までのゲームボーイ版シリーズとは異なり、完全新作ではない。シリーズの元祖、『スーパードンキーコング』をゲームボーイカラー向けに作り直したリメイクなのだ。その為、本編に登場するコースとその地形は『スーパードンキーコング』と同じ。これまでのように同じ名前のコースであっても、スーパーファミコン版とは地形が別物という、経験者も新鮮に楽しめるサービスが何一つ無いのである。
故に今回もこれまでと同じ路線と思ってプレイすると、背後からハンマーで殴られたようなのショックを受ける。しかも、パッケージや公式サイト、説明書を読めば一目瞭然だが、今作はスーパードンキーコングのリメイクである事を公にしていない。言葉が悪いが、偽装しているのである。最悪としか言い様が無い。そもそも、リメイクならリメイクと公に記すのが常識でもあろうに何故、隠すのか。理解に苦しむ。これではユーザーを騙す目的で隠したと思われても致し方が無い。そうも最低な偽装が行われているのもあり、今作は大変”汚い”。情報を知らない人ほど大損する、下劣なリメイクなのである。これまでもこれまでで、見た目はスーパーファミコン版のゲームボーイ移植作のように見せかけて実は新作という、偽りあ りな所があったが、オリジナル経験者が新鮮な気持ちで楽しめる利点があった為、許容の余地はあった。しかし、今回は新鮮な気持ちで楽しめる箇所が少なく、許 容の余地は皆無に等しい。これでは非難されても致し方が無いと言えるだろう。
ただ、全てがスーパーファミコン版と同じという訳ではなく、グリーンバナナ集め、新ミニゲームと言った追加の新要素もある。先の通り、システムも別物だ。だが、これまでのオリジナルコースと比較すると魅力は皆無で、手抜きと見られても仕方が無いレベルである。最高のプレイ環境を実現する一方、ゲーム内容はまさかの退化。それもパッケージに偽装を施す最低な行いを仕出かす始末。元が名作なだけにアクションゲームの質は磐石だが、これまでゲームボーイで展開されてきたシリーズの中では傑出したあくどさが炸裂している。まさに黒過ぎるスーパードンキーコング。全てにおいて悲しさ炸裂の腹立たしい作品となってしまっているのである。

言うまでも無く、今作はその偽装こそが最大の欠点。リメイクでありながら、作品そのものの魅力を完膚なきまで汚してしまっている。ドンキーシリーズの長きに渡る歴史に泥を塗る、史上最低にして最悪の行為だ。
第一、リメイクなら、それを公表するのは常識中の常識だろう。現に同じく任天堂から販売されたリメイク作品、『ゼルダの伝説 夢を見る島DX』は、『夢を見る島』のカラー対応版である事をパッケージ及びプロモーションにてちゃんと紹介している。
このような事実を公表すると、ユーザーはどんな恩恵を得るか。主にオリジナル経験済みのファンが対象となるが、リメイクだと分かれば、オリジナルで十分満足している方は余計な出費をせずに済む判断を下せるのだ。また、リメイクであるのなら、どんな所が変わっているのかという興味を抱かせる事もできる。要はユーザー側の都合の考慮、ゲームの魅力を底上げする効果が得られる訳だ。特に前者は非常に重大な事で、それが分かる事によって変に財布を痛める事故を防ぐ事ができる。資金に苦しんでいる人にしてみれば、余計な出費を抑えられる情報は有り難いものなのである。ゲームの売上を低下させるデメリットがあるのも事実だが、分かる事で冷静な判断が下せるというのはとても大きな事と言えるだろう。
なのに今作はその判断を下す余地を作らなかった。信じられない事である。これでは今作の販売戦略を考えたスタッフが、ユーザーを騙す目的で売り捌こうと考えていたと思われても仕方が無い。第一、自分達は今作が『スーパードンキーコング』のリメイクである事を知っていたはず。なのに何故、それを公にしなかったのか。グリーンバナナ集めなどの新要素があり、新作とも言える内容だから、公にする必要無しとでも思ったのか。仮にそうだとしたら、馬鹿にするなの一言である。経験者ならすぐ『スーパードンキーコング』だと分かる内容なのに、それを紹介しないとか、申し訳ないがおかしいとしか言い様が無い。それも説明書などで事実を隠している事からして、騙す気満々だと見られて当然だ。タイトルを『ドンキーコング2001』という、新作だと勘違いさせるようなものにしている時点でも明らか。しかし、既にゲームボーイで『スーパードンキーコングGB』という名のシリーズが出ているので、ここに関しては擁護の余地はある。
でも、別名にして説明を怠った事は擁護の余地無しだ。ユーザーに対して必要な情報を公にせず、新作だと誤解するようにしたこの行為は、リメイク作品の歴史における史上最低の一例と言っても良いだろう。普通ならとてもやれた事ではない。稀なケースだ。それを今作の発売元、任天堂は事もあろうにやらかした。実に信じられない話だ。冗談抜きに今回の販売戦略を考えた任天堂のスタッフには猛省を促す次第。こんなふざけた事をやらかし、実際に騙された人間からの怒りの声として、ここに記させて頂く。正直、ゲームのレビューなのにこうも販売戦略の批判を書く自体、変な話だが、あまりにもその部分が酷かったので、こうして書かせてもらった。しつこいが普通に良識ある方ならこんな事、やれたものではない。リメイクならリメイクと、公にして宣伝するだろう。だが、今作のような当たり前の事をやりもしなかった下劣な一例が過去に存在したのだ。その事実を筆者はここに残させていただく。理由は単純で許し難い話だから。是非、この一例は後世に繰り返さぬよう、販売戦略を担当するメーカーの方は旨に刻んで欲しい。それが筆者の切なる願いだ。
こんな汚れに汚れたゲームだが、肝心の内容は力作だと言い切れる出来だ。何と言っても、ゲームボーイカラーというスーパーファミコンより劣る性能のハードで、あのスーパードンキーコングを完全再現してしまっている事のには驚かされる。特にグラフィックの質の高さは、冗談抜きに数あるゲームボーイカラー専用ソフトの中では史上最高レベル。色数の少なさをものともしない、驚異的な描き込みは圧巻の一言に尽きる。このグラフィックを拝見するだけでも、今作をプレイする価値は十分にあると言っても良いだろう。また、敵の出現量などもカラー専用の強みを活かし、ほぼスーパーファミコン版と共通しているというのも地味ながら凄い。この辺の再現度の高さは、さすが技術力の高さに定評のあるレア社だけにあると言ったところである。

また操作性も過去のシリーズと共通した、快適で動かすだけでも楽しいものに仕上げられている。対し、ゲームバランスに関しては画面比率の変化とオートセーブを取り入れた反動か、オリジナルよりも地味に高められている。ただ、オートセーブの恩恵でクリア済みのコースをやり直しになる事故は起き難くなったので、オリジナルより遊び易くなっている。スーパーファミコン版を諦めたプレイヤーも、オートセーブ搭載の今作ならリベンジできるかもしれない。 新要素回りも、ミニゲーム周りは非常に良い出来。特に暇潰しに最適で、やり始めるとなかなか止まらない中毒性を秘めた『ファンキーフィッシング』は遊び応え抜群なので是非とも要チェックだ。
全体ボリュームにしても、グリーンバナナ集めやコアユーザー向けの高難易度が追加された所為で僅かにパワーアップ。グリーンバナナに関しては、ほとんどがスーパーファミコン版では覚えのない場所に配置されているのがほとんどな為、経験者でも新鮮な気持ちで楽しむ事ができるはずだ。更にさりげなく、今作オリジナルのコースも一つだけ用意されている。それも結構な難易度で、トラウマコースとも言える仕上がりになっているので必見だ。
その他、音楽に関してはあろう事か、大半は『スーパードンキーコングGB』の使い回しで新鮮味は皆無。正直、手抜き同然の出来だ。ただ、元の出来が良いだけに全体的なクオリティは高め。それに新曲もしっかりと収録されている。中でも森林コースで流れる曲は要チェックだ。

演出周りも基本的にスーパーファミコン版を忠実に再現しており、出来は上々。一部、ハード制約の都合で削られた演出もあるが、全体的には何ら遜色の無いレベルに仕上げられている。
ただ、一方で快適性には難があり、グラフィックの影響なのか、時折処理落ちが生じるのは辛い。主に敵が一同に襲い掛かってきた時などに発生する事が多く、対処法を誤ると余計な事故に繋がる事もしばしば。そもそものコンセプトが無茶も無茶なので、こういう現象が生じるのも致し方が無いと言えるが、願わくば絵よりも快適性を重視して欲しかった所だ。
そんな具合にゲームボーイカラーで再現したスーパードンキーコングとしての完成度は非常に高い。制約が多くても、力技でかの名作を再現してしまった手腕には本当に驚かされるばかりで。それだけにこの魅力を壊滅的なまでに損ねる偽装が行われているのが残念。偽装さえなければ、ゲームボーイカラー末期にレア社が放った力作として紹介できる逸品だった。結局、任天堂側が行った下劣な行為により、それがかき消されてしまったのは悲劇としか言い様が無い。
一応、ゲーム自体は遊べる出来で、ゲームボーイカラーの限界を突き詰めた内容に仕上がっている。しかし、公にされて無いが今作はリメイク。わざわざゲームボーイカラーでスーパードンキーコングは…という方は、無理にプレイしない方が良いゲームだ。逆にあの名作をどう再現したのか、興味を持った方は是非、プレイしてみて欲しい。
そして最後に。任天堂は二度とこんな偽装リメイクは出さないで頂きたい。事実は事実として、しっかりと世に公表して欲しい。それを切に願う。
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