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≫モグラ〜ニャ
■発売元 任天堂
■開発元 パックスソフト・ニカ
■ジャンル パズルアクション
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 4095円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1〜2人
■セーブデータ数 2つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■その他 ゲームボーイ専用通信ケーブル対応、スーパーゲームボーイ対応
■総説明書ページ数 20ページ
■推定クリア時間 10〜12時間(エンディング目的)、18〜23時間(完全攻略目的)
ある所に『モグラ〜ニャ』というモグラがいた。
彼は可愛い奥さんのモグリ〜ナ、そして7匹の子供達と平和な日々を過ごしていた。
そんなある日、奥さんと子供達が外で遊んでいた時のこと。彼女達の前に恐ろしい農夫(?)『じんべえ』が現れた。驚いた奥さんは子供達を守ろうとしたが、じんべえの圧倒的な力の前に敗北。子供達と共に連れさらわれてしまった。

じんべえが去ってから戻ってきたモグラ〜ニャは、じんべえの置き手紙を見て子供達と奥さんがさらわれた事を知る。じんべえの非道に怒りを露わにしたモグラ〜ニャは家族を救出する為、じんべえが待つ『じんべえランド』へと向かった。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆地上と地下を行き来して謎を解く、モグラならではの強みが反映された独自のゲーム性
◆多重構造ならではの練られた行動ルートと仕掛け配置が光る、珠玉のマップデザイン
◆全8レベル、マップ総数200以上の圧倒的なボリューム(マップ踏破、特殊アイテム回収などのやり込み要素も充実)
◆『ゼルダの伝説』を髣髴とさせる、優し過ぎず難し過ぎずの絶妙なゲームバランス(謎解きの難易度も丁度良い手強さ)
◆森、砂漠、更には工場地帯と、ぶっ飛んだマップロケーション(嘘っぽさ全開)
◆黒い玉の軌道を変えるパネル、地上・地下共に侵入不可能なトゲ、掘った穴を塞ぐタルなど、マップごとの謎解きの面白さを引き立てる個性的な仕掛け群
◆謎解き要素も取り入れるなど、独特の戦う面白さに富んだボス戦(メンツも無駄に濃い)
◆丁寧な操作解説、看板によるヒントなど、充実した救済処置の数々
◆微笑ましさ満点のデモシーン(キャラクターのリアクションの可愛らしさは必見)
◆地味ながら、ゲーム本編を大いに盛り上げる演出(ボス撃破時の仰々しい効果音など)
◆可愛らしく、嘘っぽい世界観にマッチした、楽しげな音楽
◆ボタンを溜めて放す、癖になる気持ちよさを秘めた、シンプルで取っ付き易い操作性
◆攻防の駆け引きが熱い、対戦ミニゲーム

--- Bad Point ---
◆存在意義不明の『降参アイテム』(使用するメリットまるで無し)
◆スーパーゲームボーイ非対応仕様の対戦ミニゲーム(スーパーファミコンのコントローラ二つでも遊べる作りだとより魅力的になってただけに残念)
◆二つだけど、地味に少ないセーブファイル
◆後半以降、急激に広くなるマップ(攻略に2時間以上を要する所も…)
◆個性が弱過ぎる上、種類も少な過ぎる敵キャラクター達
◆看板を逐一チェックしなければ確認できない、面倒な設計のエンディングのクリア成績表示
▼Review ≪Last Update : 12/26/2010≫
農夫が運営する、極悪テーマパークにようこそ。

細かいことは気にするな。


傑作『ドンキーコング』を制作したスタッフが送る、新作パズルアクション。ゲームボーイの新バージョン『ゲームボーイポケット』と同時発売されたゲームでもある。

二重構造を活かした独特のマップ構成が光る、隠れた傑作だ。

ゲーム内容は2D見下ろし視点で展開する、ステージクリア型のパズルアクションゲム。プレイヤーはモグラのモグラ〜ニャを操作し、マップ上に配置された鉄球を持ち運び、出口を塞ぐ壁を壊していくというものだ。
本編は10以上ものマップで構成された、『レベル』の攻略を軸に展開。各レベルの最終目的は最深部に位置する『ボス部屋』で待ち構えるボスを倒すこと。それを達成るとレベルクリアとなる。用意されているレベルは全部で8つ。その内、 レベル1は強制で、レベル2からレベル7まではプレイヤーの好きな順に始められる選択方式になっている(※レベル8は、7までの全レベルをクリアすると解放される)。各レベル全体を構成するマップは、パズルマップ、ボス部屋、休憩ポイント(中間地点)などの複数の種類が存在。メインとなるのはパズルマップで、出口となる場所を塞いでいる『壁』を壊すのが主な目的。壁を壊すと、次のマップへと進む事ができる。
壁を壊す方法は単純。マップ上に配置された鉄球を近くまで運び、投げてぶつけるだけだ。それだけでアッサリと壁を壊せる。ただ、壊すのは簡単だが、鉄球を壁まで持ち運ぶのはそうでもなく。基本的に壁から離れた場所に鉄球は配置されており、その間には特殊なギミックや敵モンスターと言った障害が仕掛けられている。そんな障害を乗り越えながら運んで行かねばならぬので、直に壊そうと思ってもそう上手くは行かず。試行錯誤する事の重要性を押し出した、まさにパズルアクションというに相応しいレベルデザイン、バランス調整が図られている。目的は単純だが、容易には行かぬ内容。ゲームの名前は緩いが、中身はかなり本格派の作りになっているのだ。
また、舞台となるマップは基本的に一つ一つが地続き。レベル全体が一つの繋がった世界となっており、ゲームの展開は何処と無くRPGっぽい。しかも、マップ一つ一つを攻略した末に到達するのがボス部屋。そして、それを倒すとレベルがクリアとなる仕様。この時点で任天堂のゲームが好きな人ならピンと来るとかもしれないが、実は今作のゲーム性は『ゼルダの伝説』そっくり。具体的に言えば、ゼルダのダンジョンを解いてるのと全く同じ感覚が味わえるのである。特にマップに仕掛けられた謎を解いて道を切り開く過程はまさにゼルダのそれ。それだけを取り出し、一つのゲームを作ったとも言える仕上がりになっている。無論、システムから何から何までゼルダという訳ではなく、内容は今作独自のものではあるが。しかし、ゼルダが好きな人なら、今作をプレイしていると既視感を覚えるのはまず必至。ある意味、ダンジョンの攻略だけに専念できるようにしたも同然なその内容には、内から燃える思いが沸き起こるかもしれない。
更に舞台となるマップには、今作独自の仕掛けも沢山盛り込まれている。実は今作の主舞台となるマップは、地上と地下の二重構造。地上と地下、それぞれに個別のマップが用意されている。主人公がモグラであるからこその斬新な仕掛けが凝らされているのだ。そのような構造になっている故に本編では、地上と地下を行き来しながらのプレイも求められてくる。鉄球が地上からでは入れない所に鉄球が行ってしまった場合、地下に潜り、そこから鉄球がある所へ向かったりと。まさにモグラの特権とも言える、過程を解いていく快感が堪能できる。また、地下へ潜る事はパズルだけに留まらず、地上にいると確実にダメージを受けてしまうボスの攻撃を潜って回避するなど、アクション周りのテクニックとしても活用できる。そんな応用性の広さも大きな特徴だ。加えて地下マップは、石で出来た地面以外なら自由に穴を掘り、移動する事が可能。だが掘る同時に穴が出来上がり、それを埋める事はできない為、場所が悪いとそれが鉄球の進路を塞いでしまう。しかも、鉄球は穴に落ちると元あった場所に強制的に戻されてしまうので尚更危険。自由に掘れるとは言え、使い所は慎重に考える必要あり。独特のアクションでありながら、主たるパズル性にも強い影響を及ぼすなかなかニクい設計になっている。どのタイミングで穴を掘って地下に潜り、鉄球を運ぶか、その過程を考えるのも何処と無く新鮮で、今作がモグラのゲームであると主張しているのも面白いところだ。
基本は鉄球を運んで壁を壊すと、至ってシンプル。そして地続きするマップを進みながらレベルの攻略を目指すという事で、ゼルダに近いゲーム性となっている。だが、一筋縄では行かぬ調整とレベルデザインを施したマップ、モグラの特性を活かした二重構造のマップに穴掘りアクションと、独自の要素も充実。まさに何処か懐かしくて、新しい。そして、手強い。そんな三拍子で揃えられた、ユニークなパズルアクションゲームなのである。

そんな今作の魅力は、モグラの特性を最大限に活かし切ったゲームデザインだ。特に二重構造マップは、まさに主人公がモグラだからこそ表現できた唯一無二のオリジナリティを放っているのが実に印象深い。アイディアとしても、ありそうで無かった面白さがあり、独特のゲーム性とマップ攻略のユニークさを引き立てている。
この二重構造の特性をフルに活かし切ったマップ作りの上手さも、もはや職人技の域だ。地上と地下を自然に、そして慌しく移動するよう、練りに練られた鉄球を持ち運ぶルートの設計、パズルとアクションを絶妙なバランスで織り交ぜた個々のパズルのネタと、さすがはこの手のゲームには『ゼルダの伝説』シリーズで手馴れている任天堂だけにある、非常に上手い作りとなっている。パズル自体の難易度も簡単過ぎず、難し過ぎずの良好な調整具合。適度な歯応えと心地良い達成感を堪能できるのが実に見事だ。この辺も任天堂のお家芸と言ったところである。ゼルダもそうだが、このプレイヤーを最後の最後まで楽しませようとする細かい作り込みを徹底する姿勢には本当、溜息が出る。
マップのギミックも、投げた鉄球の軌道を変えるパネルに地上からは侵入できない柵など、今作ならではのゲーム性を際立たせるものが充実。ネタ出しのタイミングも絶妙で、プレイヤーの関心を引き付けて離さない。各レベルのロケーションも敵は農場を取り仕切る農夫であるにも関わらず、森あり、砂漠あり、更には工場にお城もありと、ぶっ飛びまくっているのも面白い。如何にもゲームらしい嘘っぽさが炸裂したお遊びだ。
全編において徹底された考える面白さへのこだわりも素晴らしい。主に鉄球を持ち運ぶ過程において、常に一手一手を考え込む間を設けているのが秀逸。ある程度、直感に頼って運んでいても、無意識に考え込んでしまう展開に陥るよう、途中から流れが見えてくるよう、マップの構造を作っているのだから驚かされる。「適当に鉄球を運ぶだけで終わってもらっちゃ困る」と訴えかけてるかのような、先の先を見据えた設計は、まさにそんなこだわりの賜物。今作がパズルアクションである事を強調する、並外れた意気込みを痛感させられる。
鉄球を持ち運ぶ過程だけでなく、各レベル最後のボス戦にもそんなこだわりは活かされている。ボス戦自体は普通の真剣勝負で、相手の隙を突き、ダメージを与えていくのが基本となる。しかし、そのダメージを与える手段というのがボスごとに異なる。あるボスは着地位置に穴を掘って身動きを止めなければならなかったり、またあるボスはマップ上の仕掛けを動かさなくてはならないなど、パズル的なテクニックが求められてくるのである。とは言え、そんなに頭をフル回転しなければならぬほど難しい訳では無いのだが、真剣勝負でもパズルアクションとしての体裁を守り通そうとする姿勢には良い意味で溜息が出るばかり。ダメージを与える手段も練られていて、穴を掘って身動きをとらせなくするなど、パズルマップでは限界があったネタをこちらで実現してしまっているのが面白い。システムやネタを余す事無くフル活用しようとする、職人の意地が炸裂している。ボス自体もユニークな面子が多く、「早く、こいつと会って戦ってみたい」という、関心を抱かせるほどの強烈なインパクトに満ちているのも魅力的だ。メインのパズルマップの構成やロケーションのみならず、こう言った部分でもプレイヤーを楽しませようとする姿勢が貫かれている。本当、このプレイヤーに最後まで面白いと思わせる為の配慮と設定の上手さには感心するばかりだ。
モグラならではのゲーム性を演出する為、そしてプレイヤーを最後の最後まで楽しませる為、そのいずれの狙いも今作では入念な作り込みとバランスの調整、ネタの提供によって完璧に近いレベルで実現されている。ただ新しいだけでなく、ゲームとしても安心して楽しめる上にストレスを感じて苦にならないものへ仕上げようとする、徹底したこだわり。そして、パズルアクションとしての体裁を守り通そうとするゲームデザイン面でのこだわり。それほどまでに今作はレベルの高い内容になっているのである。そのどれもが互いを潰し合う事無く、統一したものとしてまとめ上げられているのには本当、圧巻の一言。制作スタッフの職人的センスというものを大いに実感させられるばかりだ。

操作性も良好。アクション自体は少なめで、バリエーションに乏しいが、ボタンを溜めて放す鉄球投げのアクションは癖になる気持ちよさがある。歩行速度も速く、ストレスを感じる事無くモグラ〜ニャを動かせるのも良い感じだ。
チュートリアルやヒントなどの救済処置も豊富。アクションの操作から突破方法など、事細かに教えてくれるので、初心者でも安心して楽しめる作りとなっている。また操作解説、ヒントはマップ上に建てられた看板をチェックすると見れる。つまり、看板を見なければ本編だけに集中できるという訳だ。そんなプレイヤーに選択を求める奔放さも見事。色んなプレイヤーにストレス無く遊んでもらいたいという、制作スタッフの配慮がよく現れている。
ボリュームもマップ総数は200以上と、コアユーザーも圧巻の充実振り。更にマップ踏破、アイテム収集などの寄り道要素も完備。ただレベルをクリアするだけでも十分に歯応えがあるにも関わらず、そんなのまで用意されているからコンプするとなると結構大変。全てを終えた時には真っ白に燃え尽きるかもしれない。
グラフィック、音楽もそこそこの出来。特に音楽はなかなか良い曲が揃っており、各レベルごとの展開を盛り上げてくれる。演出もクリア後のデモシーンなど、凝った出来。モグラ〜ニャが子供達に振り回される様は見ていてなかなか微笑ましい。また、マップ上に配置された看板に書かれたテキストもかなり個性的な仕上がりとなっている。中でも各レベル序盤のボスの自己紹介看板は一見の価値アリである。(特にレベル4の自己紹介看板)

また通信ケーブルを使った対戦ミニゲームも収録。攻めると守るの側にそれぞれが付き、得点を競い合うシンプルな内容だが、これが何気に熱い。ソフトが二本無いとプレイできないのがネックだが、一度でも味わってみる価値アリ。なかなか侮れない内容になっている。
その他、モグラ〜ニャや大ボスのじんべえ、そしてボスキャラクター達などの可愛らしくて妙に濃い登場キャラクター達、随所に仕込まれた小ネタなど、ゲーム以外の箇所にもスタッフの妙なこだわりが炸裂。
敵モンスターの数と個性が弱いこと、救済アイテムの一つ『こうさんアイテム』の存在価値が無いなどの欠点もあるが、総じて高レベルでまとめられたパズルアクションゲームである今作。モグラならではの特性を活かしたマップ構成にアクション、そしてゼルダチックな味わいに富んだパズル、絶妙なバランスと、何処をとっても丁寧に作られたゲームボーイを持ってる方ならプレイする価値大いにアリの傑作だ。特にゼルダが好きな人ならハマること請け合い。是非、お試しあれ。
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