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≫ポケットモンスター赤・緑
■発売元 任天堂
■開発元 ゲームフリーク、クリーチャーズ
■ジャンル ロールプレイング
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 4095円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1〜2人
■セーブデータ数 1つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■その他 ゲームボーイ専用通信ケーブル対応、スーパーゲームボーイ対応
■総説明書ページ数 44ページ
■推定クリア時間 12〜15時間(エンディング目的)、90〜140時間(完全攻略目的)
ポケットモンスター(通称:ポケモン)と呼ばれる不思議な生物が住む世界。
ある日、マサラタウンに住む主人公はポケモンの研究を続けるオーキド博士への憧れから、ポケモンを探しに行こうと町の外へ一歩を踏み出そうとした。しかし、そこをオーキド博士に呼び止められる。そして博士の家へと連れてこられた主人公は、そこでライバルの少年と会う。彼は博士の孫であり、呼びつけられたというのだ。

二人が揃った後、博士は三匹のポケモンの内、好きなのを一匹持って行き、ポケモン図鑑を完成させてくれと頼む。かくして自分だけのポケモンを手にし、冒険への一歩を踏み出した主人公とライバル。彼らの行き先には何が待つのか。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆仲間を集めながらストーリーを進める、他に類を見ない構成が成されたゲームシステム
◆昆虫を集めるのとソックリな楽しさと熱中度を兼ね備えた、ポケモン収集
◆好きなポケモンに愛を注ぐ楽しさと奥深さに富んだ、やり込み甲斐抜群のポケモン育成
◆能力や個性も多種多様と驚愕の作り込みが成された、全150匹のポケモン達
◆カートリッジごとに本編で登場ポケモンが大きく変わる、独創的な試み
◆通信ケーブルの特徴、強みを最大限に反映させた、交換・対戦システム
◆主人公は後方支援に徹し、仲間の『ポケモン』が攻撃などの役割を務める、個性的なルールが光る戦闘システム
◆属性の相性で有利・不利が決まる、分かり易さと奥深さを兼ね備えた戦闘バランス
◆極めるとほぼ一生モノになる総計ボリューム(エンディングまでは短いが、図鑑の完成などと言ったやり込みが充実)
◆かの『MOTHER』シリーズを髣髴とさせる、街とフィールドが地続きで構成されたマップ
◆長過ぎず短過ぎずの丁度良いボリュームで構成されたダンジョンマップ
◆『自転車』による高速移動、特定の技による街へのショートカットなど、痒い所まで手の届いた親切機能の数々
◆ゲームボーイでありながら、なかなかの派手さに富んだエフェクトグラフィック
◆ほのぼのとした曲調が印象的な音楽
◆TRPGを髣髴とさせるストレートな最終目的が光るストーリー

--- Bad Point ---
◆『自転車』を使用するまでの煩わしい選択過程(常に道具メニューを開かねばならない)
◆同じく『秘伝技』を使用するまでの煩わしい選択過程(これもメニューを開く必要が)
◆突然レベルが急上昇するなどと言った、致命的なバグの存在
◆ドット感出し過ぎな戦闘画面で表示されるプレイヤー側のポケモングラフィック
◆一度でも逃すとその後、二度と会えない厄介なポケモンの存在
◆緊張感に欠ける、野生ポケモン戦の音楽(もう少し盛り上げても良い気が)
▼Review ≪Last Update : 12/26/2010≫
そしてゲームボーイは復活した。

今作発売から翌年の事だけど。


『ジェリーボーイ』、『マリオとワリオ』など、ファミコンやスーパーファミコンなどで様々な傑作を世に送り出したゲームフリークが6年以上もの歳月を費やして開発した、完全新作のRPG。

ゲームボーイの通信機能を最大限に活かしたシステムが光る、育成RPGの歴史的名作だ。

ゲーム内容はイベントクリア型のロールプレイングゲーム(RPG)。プレイヤーは自身の分身となる主人公を操り、舞台となる世界の各地で起こるイベントや戦闘を乗り越えていく。RPGとしてはまさに王道と言える作りである。しかし、基本こそ王道のRPGを踏襲しているものの、詳細システム周りは、非常に独自色の強いものとなっている。
その象徴が戦闘システム全般。今作は主人公の設定からして、他のRPGと一線を画している。何と戦闘能力を一切持ってない。武器は使えないし、魔法もまた然り。まさに絵に描いたような一般人、言い方を変えれば非戦闘要員なのだ。そんな一般人な為、フィールドで敵に遭遇したとしても、攻撃などの行動を取るのは不可能。そのままタコ殴りにされて死の運命を待つしかないのである。しかし、それでは戦闘どころかゲームそのものが成り立つはずが無く。敵に遭遇したら死ぬしか選択肢がないとか、RPGとして本末転倒も良い所だ。間違ってもそういう内容にはなってない。
だが実際、主人公に戦闘能力は無い。敵に攻撃を行うのは本当に不可能だ。それでも、敵を倒すことはできる。そのやり方は至ってシンプル。お供として連れてるモンスター『ポケットモンスター(ポケモン)』に任せるだけ。今作ではそんな具合にお供のモンスターが戦闘で敵と戦い、主人公はその後方支援に徹する、ユニークな構図を描いたシステムとなっているのである。その構図を別の言葉で例えるならば、友達の持つ昆虫と自分の昆虫を戦わせると言った感じか。自分だけが持つモンスターで相手を圧倒するという、何処と無く懐かしい遊びを再現したかのようなものに仕上げられている。
戦闘ルールも個性的。最終的に自分の手持ちポケモンが全滅してしまうとその時点で負けと、主人公が非戦闘員である特徴を活かしたものに設定されている。勝利条件に関しては戦闘の種類によって変化。フィールド上の草むらなどで遭遇する『野生のポケモン』との戦闘は、そのポケモンの体力をゼロにすれば勝ち。フィールドの道路などで脇を通ると近寄ってくる『ポケモントレーナー』との戦闘は、相手の手持ちポケモンを全滅させれば勝利と、内容によって異なる仕組みになっている。更に各戦闘は求められてくる戦略も、展開も別物。種類は少ないとは言え、それぞれ異なる戦う面白さと手応えが堪能できるのも魅力的だ。特徴的なルールもさる事ながら、ポケモンを持ち歩く設定を効果的に反映させた設計、独自の戦略性などもこのシステムの大きな売りである。
また、草むらなどで遭遇する『野生のポケモン』は、『モンスターボール』と呼ばれるアイテムで捕獲する事が可能。そこで捕獲したポケモンは主人公の仲間となり、新たな戦力として活躍してくれるのである。しかも、ポケモンは全部で150匹もの種類が存在。それでいてその150匹全てが、モンスターボールで捕獲する事でプレイヤーの仲間になってくれるのだ。一般のRPGなら仲間の数は大体4〜8ぐらいがザラのところが、今作ではその約20倍。加えて一体一体には、きちんと個性付けを行ってるという凝りっぷり。文字通り、今作が怪物クラスのゲームであるのは、この作りから見ても明らかだろう。仲間がどんどん増える上にその数も膨大と、もはやそれはゲームボーイのゲームという範疇を超えてるとしか他に言い様が無い。独特の戦闘システムもさる事ながら、こんなとんでもない要素まで詰め込まれているのである。
但し、例によって150匹全てを仲間にするのは一筋縄ではいかない。中には一回しか捕獲チャンスのないポケモンも居るので、仮に逃してしまったり、倒してしまったりすればそれまで。かなりシビアな設定が行われている。加えて今作は「赤と緑」の異なるカートリッジが存在。ゲーム内容はどちらも一緒だが、それぞれ登場するポケモンが変わる特異なシステムが実装されており、片方のカートリッジだけで150匹全てを集めるのは決して無理。全てを集めたくば、二つのカートリッジをプレイし、別売の『通信ケーブル』を使って他のカートリッジに交換(転送)するか、別のカートリッジを持ってる友達に助力を願って交換などを行うかなど、ゲームボーイの特性を最大限に使いこなすプレイが求められてくる。一つのカートリッジでコンプリートできない点はコアなプレイヤーには賛否が分かれるかもしれないが、ゲームボーイの機能をフルに使うその作りは実に挑戦的であり、独創性も抜群。純粋にRPGとして新しいだけでなく、ゲームボーイならではの特徴も効果的に反映させてるのも、今作の大きな特徴の一つと言える。
このように基本的なRPGとしての作りは王道。だが主人公は後方支援に徹し、お供のポケモンが戦う戦闘システム、150匹ものポケモンを仲間にできる大胆な要素、通信ケーブルを使った交換と二種類のパッケージなど、他に類を見ない個性的なシステムや要素が盛り沢山。もはや、ただのRPGと称すのは無理も同然。これぞまさにゲームボーイらしいRPGというに相応しい、非常に個性の強いRPGに仕上げられている。

そして、今作最大の魅力はそのゲームボーイらしさを徹底追及したシステムの数々である。通信ケーブルを使った交換、二つのカートリッジごとに異なるポケモンの種類、そして150以上ものポケモン達など、いずれもゲームボーイという携帯ゲーム機だからこそ実現した独自性に富んでるのが印象深い。
特に通信ケーブルによる交換、カートリッジごとにポケモンが異なるというシステムは、据え置き機向けのゲームでは到底真似できない強みが発揮されている。携帯ゲーム機独自の外に持ち運べる手軽さ、二つの本体をケーブルで繋げる通信システム、その二つの特徴を持つゲームボーイだからこそ実現したようなものだ。持ち運びに不便で、通信も気軽に行えぬ据え置き機(※90年代当時)では、このような快適且つ独特のプレイ環境を作り出そうにも無理があっただろう。まさに場所を問わず手軽に遊べるゲームボーイだからこそ、実現し得た賜物だと言える。
カートリッジに関して言えば、ゲームボーイの場合はその差し替えが手軽であるのも、仕様が実現できた要因の一つ。持ち運びに適してなく、差し替えて遊ぶにも本体をテレビと繋げていなければならぬ据え置き機だったら、この仕様が酷なものと化してたのは多分、間違いないだろう。まさにゲームボーイ(携帯ゲーム機)さまさま。その特性をフル活用して独自の環境を構築した志の高さには感服する限りだ。
そんなゲームボーイの携帯ゲーム機としての強みが活かされているのも見逃せないところ。小さな画面の中に150匹ものポケモン達が生息し、更に捕まえて育てるにつれ、自分だけの存在へと成長していく嬉しさ。持っているだけで親近感が湧くそれは、ゲームボーイであるからこその味わいに満ちているのが印象的だ。システム周りにもその親近感を抱かせる為の工夫が徹底されているのが見事。主にポケモンごとに設定されたID番号とその数値によって変化するステータスなどは、彼らが実際にカートリッジ内に生息しているという現実感を演出している。冷めた言い方をすると、モンスターと言っても所詮はデータの塊な訳だが、それに血を通わせて本当の生物のような存在感を出したのは素直に驚かされる。また、ステータスの違いがある為、一つ一つを育てて検証する楽しみもあるなど、やり込み甲斐の深さを引き立ててるのも秀逸だ。成長曲線が思わぬ方向に曲がったりなど、極端な動きを見せずにちゃんと特徴を殺さぬ調整が図られているのにも作り込みの深さがうかがい知れる。どれ位、それに時間をかけたのか、考えるだけでも気が遠くなりそうだが、ただのデータの塊としてでなく、生物として仕立てようとしたのには恐れ入る。機能面を活かす一方で、世界観の構築も怠らぬ徹底振りはまさに愛の賜物と言った所だろうか。そんな恐るべき現実感も、このゲームでは描かれているのだ。
純粋なRPGとしての出来も申し分ない。任天堂の『MOTHER』シリーズを髣髴させる、町とフィールドが地続きしたマップ構成、自転車にショートカットと言った移動の利便性への気配りなど、細かい所まで丁寧に作られている。
戦闘システムも戦略性が高く、やり応えがある。特にポケモンごとの属性を考慮した相性で左右される展開は終始、プレイヤーに心地良い緊張感を提供してくれる。弱点属性で攻めれば一方的な展開になる反面、相殺する相性だとせめぎ合いになったりと、やり方次第で難易度が大きく変化する味付けもユニークだ。連戦形式のトレーナーとの戦闘も、一人一人の手持ちポケモンに個性が現れており、名前などの基本設定に則った調整が図られているのも秀逸。ポケモンだけでなく、人間のキャラクターにも生活感を演出させたその気配りにはもはや溜息すら出る。
携帯ゲーム機の強みを最大限に活かしたゲームデザイン、生活感を演出させる細かな気配りの数々。そして、RPGとしての手応え。その作り込みには、携帯ゲーム機でRPGを作ったとしても、それだからこそできる表現をぶち込まなければ据え置きのゲームと変わらない、という熱い意気込みが満ち溢れている。携帯向けのRPGだから可能な表現とは、そしてゲームシステムとは。今作は、それらを徹底追及したまさに唯一無二のRPGと言っても大袈裟ではないだろう。何の為にゲームボーイでRPGなのか、その意味がここまで込められたゲームも滅多に無いだろう。それほどまでにゲームボーイとしての独自性と表現が満載。ここでしか味わえぬ面白さが盛り沢山なのである。

また、ゲームボーイの中に生活感に溢れた世界を作るという事で、今作はストーリーも結構、素っ気無い内容。ポケモン図鑑を完成させるのと、トレーナーとしての頂点を目指すのが目的の凄くゲーム然とした作りとなっている。その為、ストーリーを追う楽しさみたいなのは皆無。そこに期待してプレイすると肩透かしに遭うのは否定できない。
だが、アッサリしてる故に世界を巡る楽しさは相当なもの。如何にもRPGとも言える、気ままに冒険を楽しめる感覚は、昔ながらのRPGが好きだった方ならばツボに来ること、間違いなしだろう。ちなみにストーリーはアッサリしてるとは言え、悪の組織を壊滅するなどイベントはユニークなものが満載。唐突な展開に一喜一憂する楽しみは万全だ。
その他、操作性やゲームバランスも良好。戦闘のテンポも設定で演出カットモードに切り替え可能など、気配りが効いている。繰り返しになるが、町へのショートカット、自転車などの移動周りへの配慮も万全だ。
グラフィックはさすがにゲームボーイなだけに地味だが、戦闘のエフェクトは結構頑張っていて、迫力がある。音楽もノリの良い明るい曲が揃っている。特に戦闘周りは要チェックだ。

全体のボリュームもエンディングを目指すだけなら大体15時間ほど。しかし、クリア後の隠しダンジョンやポケモン図鑑の完成など、やり込み要素が豊富に収録されており、非常に長く遊べるのも魅力的な売りだ。
その他にも、あの『マリオとワリオ』がある場面で小道具という形で登場するなど、ゲームフリークのゲームを知る人ならばニヤリとなること必至な小ネタも盛り沢山。
自転車の選択手順、そしてやたら多いバグなど詰めの甘いところも散見されるが、ゲームボーイである事を最大限に活かしたゲームシステムに世界観、独自の戦闘システムなど、育成RPGのスタンダードとも言えるその内容はかなりの出来栄えだ。小さな画面の中で描かれた生活感たっぷりの世界、そして斬新な手応えにも秀でたシステムと、見所満載の今作。ゲームボーイを持ってる人ならばプレイするのは義務と言っても良いほどの名作だ。自分だけのポケモンを見つけて育てる楽しみ、やってみなきゃ分からない。お薦めです。
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