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≫ロックマンワールド
■発売元 カプコン
■ジャンル アクション
■CERO A(全年齢対象)
■定価 ゲームボーイ版:3675円(税込)
バーチャルコンソール版(3DS):400円(税込)
■公式サイト ≫VC版(3DS) / ≫カプコンオンラインゲームズ
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 無し(※パスワードコンティニュー方式)
■総説明書ページ数 ニンテンドウパワー版所持の為、不明
■推定クリア時間 2〜5時間
トーマス・ライト博士が生み出したスーパーロボット『ロックマン』により、謎の天才科学者ドクター・ワイリーの野望は阻止され、世界に平和が戻った。だが、ワイリーは密かにライト博士の開発した作業用ロボット数体を再び盗み出し、戦闘用ロボットに改造。懲りなく世界征服を企んでいたのだ。
一連の事態を知ったロックマンは、ワイリーの企みを再度阻止するべく、ロボットが暴れている街へと向かった。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆携帯ゲーム機の特性、制約を巧みに活かしたゲームデザインと前半後半に切り分けた本編構成
◆敵配置、ステージ構成、細かな演出など、携帯機でもしっかり再現されたロックマン特有の魅力とゲーム性
◆ファミコン版のリメイクでは終わらせぬ、豊富な独自要素、試みの数々
◆初代『ロックマン』を踏襲した、撃って避けるのシンプルな面白さを追求したアクション
◆前半いつものロックマン、後半少し異質な展開と、程好く捻りを利かせたレベルデザイン
◆メモし易いだけでなく、覚え易い長さにまとめられたコンティニュー用パスワード
◆残像の問題を考慮した、意図的な調整が光る操作性
◆正伝シリーズと比較しても屈指の難しさながら、やり込めばやり込むほどに突破口が見えてくる、いつものカプコンらしさが炸裂したゲームバランス
◆白黒ながらも、細部まで丁寧に描き込まれたグラフィック(特にドット絵の質が高い)
◆アレンジ主体ながら、新曲も適度に織り交ぜた、ナイスな仕事が炸裂した音楽
◆携帯機の制約など何のそのな気合いが込められた演出周り

--- Bad Point ---
◆クリア可能ではあるが、シリーズ初心者には血の滲むような努力を強いられる難易度設定(特に終盤2ステージの難易度は鬼畜スレスレ)
◆難易度の高さを引き立てる、乏しい救済処置の数々(せめてE缶は用意して欲しかった)
◆容量的な制約とは言え、専用ステージが遊べないのが寂しい後半4体のボスキャラクター達
◆難易度のみならず、ボリューム的にも大き過ぎる感が否めない終盤の2ステージ
◆シリーズ全体で見ても、結構短めな総計ボリューム(だが、密度は申し分無し)
◆意図的とは言え、挙動が鈍いのもあって賛否が分かれ易い操作性
▼Review ≪Last Update : 8/4/2013≫
4つを1つにしてみました。

結果的に地獄が生まれたのです。


じゃんけん遊びをコンセプトとした特殊武器システム、自由度の高いゲーム展開、そしてアクション性の高さ等で人気を博したカプコンの看板アクションゲーム『ロックマン』シリーズのゲームボーイ初進出作。シリーズで初めて、外部の制作会社がメイン開発を担当した作品でもある。

容量の制約はあれど、きちんとロックマンの魅力を表現しきった秀作だ。

ゲーム内容は横スクロールで展開する、ステージクリア型アクションゲーム。主人公のロックマンを操作し、自由に選択できる全4つのステージに挑戦。ボスを倒して特殊武器を手に入れ、残りのステージを攻略しながら、最終ステージを目指していくというものである。
基本システムはシリーズの原点である初代『ロックマン』を踏襲。ロックバスターとジャンプだけのシンプルなアクション、ボスを倒す事で手に入る特殊武器、それによるボスごとの相性の概念などはそのまま引き継がれている。ゲーム開始の時点で、好きなステージから始める事ができるステージセレクトシステムもそのままだ。しかし、ファミコンからゲームボーイへとスケールダウンした所為により、画面構成は狭くなったほか、一定時間足場を作り出す『マグネットビーム』などのサポート武器は削られてしまっている。ステージセレクトで選べるボスも4体までと少なくなっている。但し、ボス自体は『ロックマン2』以降と同様に8体が登場。また、登場するボス達は初代『ロックマン』と『ロックマン2 Dr.ワイリーの謎』から厳選された4体。極端に言ってしまえば、今作はファミコン版のリメイクとも言うべき内容となっている。
但し、初代とその続編のボスがセットで登場するなど、全体的にはリメイクというよりも過去のシリーズのネタを基にして作られた新作の色が強い。実際、二作品のボスが登場するというだけでも十分に新作色があるし、本編では新しいボスキャラクター『ロックマンキラー』なる者も登場する。更に、同じボスが登場するとは言え、そのステージ構成は原作であるファミコン版とはまるで別物。その為、ファミコン版の時の知識は全く役に立たない。それ故、ファミコン版を何度もクリアしたプレイヤーでも、十分過ぎるほどの新鮮味を堪能できる設計。単純にファミコン版の内容をゲームボーイに落とし込んだだけに見えるが、その実態はそれだけでお終いにしない、練りに練られた内容に仕上げられている。
ステージ構成の違いのみならず、ゲーム展開全般の構成にも独自の工夫が凝らされている。先ほど、今作ではステージセレクトで4体のボスしか選べないと紹介したが、これはゲームボーイの液晶サイズでは、ファミコン版のように8体の選択マスを入れ込めない事からその数を削減している。無論、ボスのグラフィックを取っ払い、縮小させれば入るには入るが、ファミコン版の雰囲気を残したい意図もあってか、今作ではファミコン版そのままのデザインを起用している。そしてこの制約を逆手に、今作は二部構成方式を起用。4体のボスを全て倒すと、長めの中間ステージが出現。そこで、残り4体のボスと戦うという独自の展開を盛り込んだのである。残り4体のボスと戦うという事で、少しネタバレになるが、それらのボス個別のステージは用意されてない。直に戦闘となる、味気ない格好となっている。ただ、残り4体が一同に襲い掛かってくる展開はなかなか新鮮、且つ豪快で、ファミコン版には無いスリルが満ち溢れている。4体を倒すと中間ステージが現れる流れも制約を逆手に取った策として上手く機能していて、短めの本編に厚みを加えているのも印象的だ。少し無理矢理過ぎる感も否めないが、最初に4体と戦い、残り1ステージで4体全員と戦う流れはこの制約あってこそ生まれた賜物。この流れもファミコン版ロックマンには無い新しさと面白さを演出しており、新鮮な刺激を提供してくれる。そこまで斬新と言えるほどのものではないが、ゲームボーイ版ならではの工夫という事で見逃せないポイントだ。
他に雑魚敵にも新しいメンツが居たり、今作限定の特殊武器が存在するのも見逃せない新規要素と言える。
初代と続編の要素を絡め合わせたという事で、リメイクっぽさがあるが、その実態はこれまでの通り、リメイクのようで違う、独特の作りとなっている。それでいて、ファミコン版にはない新しい演出、独自の工夫が盛り込まれており、新作と言っても何らおかしくない新鮮味がたっぷり。まさにゲームボーイならではのロックマン。このハードだからこその遊びを盛り込もうとする意気込みとこだわりに満ち溢れた、魅力溢れる内容に仕上げられている。

そして、今作最大の魅力は、携帯機に合わせたコンパクトなゲームデザインながら、しっかりとロックマンの基本的なゲーム性を表現し尽くした作り込みの深さと工夫の上手さに尽きる。狭い画面構成、削られた既存要素、そして前半と中間、後半に分けられた特徴的な本編構成など、一見すると正伝ロックマンとはまるで別の作品、グレードダウン版の印象が強めではある。だが、「撃って避ける」を基本としたシンプルながらも奥深いアクション、歯応えのある難易度は紛れもなくロックマン。小さくなっても、シリーズ特有の手応え、充実感には一切変化が無い、非常に丁寧な作り込みとロックマンに対する愛が注ぎ込まれた内容に仕上げられている。
特に前半と中間、後半に分けられた本編構成は、まさに発想の勝利とも言うべき工夫の上手さが炸裂した出来栄えだ。中間におけるボスとの連戦など、正伝シリーズでも類を見ない大胆さと刺激に満ち溢れた、唯一無二のレベルデザインとして完成されている。一応、ボスとの連戦自体は『ロックマン2』の時点で誕生しており、正直な所、ネタ自体の鮮度は古い方ではある。ただ、未だ戦った事がないボスが連続して登場する、というのが大きな特徴。要は、それまでの経験を活かした戦いができない。事前知識無しで、4体のボスと戦う事になるのだ。その為、緊張感は『ロックマン2』の連戦と比較しても遥かに上。一切の気の緩みも許されないプレイが求められる展開に仕上げられている。更に、この連戦前には非常に難易度が高く、長い道中ステージを突破しなければならない。しかも、ここでゲームオーバーになれば、問答無用で最初からやり直し。ボスとの連戦に敗北し、ゲームオーバーになってしまった場合でも同じ事になる、きつ過ぎる設定になっているのだ。気の緩みが許されないのはボスの連戦だけにあらず。ステージの方も桁違いの緊張感なのだ。大胆で刺激に満ち溢れているというのも、これでよくお分かりになるだろうと思う。さながら、パスワードコンティニューのない初代『ロックマン』に匹敵するほどの厳しさ。とてつもない歯応えを堪能できるのである。とは言え、今作は『ロックマン2』以降から標準装備されたパスワードコンティニューのシステムを実装しているので、初代ほどのプレイ環境面でのシビアさは無い。ただ、難易度設定は先の通りに炸裂しまくり。ステージ総数が正伝シリーズより少なめでありながらも、十分過ぎるほどの充実感が得られる構成に仕上げられている。
何も中間に4体のボスを集中させず、ステージを短くし、余った容量で残り4体のボスのステージを用意する手もあっただろう。しかし、それほど規模を縮小しては、ロックマン特有の手強さと密度の濃いゲーム展開が薄れてしまう。そう言った「らしさ」をゲームボーイという小さなゲーム機でも失わせない意図があってか、今作は多少、ボリュームが減ろうとも、ゲーム性や難易度の部分でしっかりロックマンを作り上げる事に徹している。中間に4体のボスと連続して戦う展開そのものに、味気なさと無理矢理さがあるのは否めない。また、難易度もさすがに高く設定し過ぎなところもある。だが、制約があるからと言って大人しくスケールダウンに徹せず、逆にそれを活かして印象的な展開を作り、プレイヤーに衝撃を与える内容に仕立て上げたその判断は実に見事。携帯機のゲームだからと言って、手軽にしなければならないという暗黙の了解などない。だから、例え制約で小さくせざるを得ないところがあろうとも、しっかり遊べて満足感が得られるものにする。その吹っ切れ気味の作りには、ゲームボーイで記憶に残る作品を作ろうとした熱い思い、そしてゲームに対するこだわりが込められている。ロックマンとしても、難易度設定やアクションの手触り感など、基本をしっかりと抑えており、シリーズ作品をよく理解した作り込みが成されているのが大変素晴らしい。それでいて、画面構成などにゲームボーイとしてのコンパクトな雰囲気を残しているのも見事。まさにこれぞ職人技と言ったところである。
小さくても本格的なゲームをというこだわり、ロックマンとしてのらしさをきちんと出そうとする気配りの数々、そしてシリーズに新風を吹き込むアイディアの数々。何処にも、携帯機向けのゲームだからと言って妥協した所が無く、単体のアクションゲームとしても、ロックマンシリーズの一作としても完成度の高いのに仕上げられている。まさに携帯ゲーム機特有のコンパクト感、ロックマンシリーズ特有の歯応えが絶妙に絡み合った作品と言っても良い出来栄え。ゲームボーイでもロックマンは普通に遊び応えありというのを痛いほどに思い知らされる、独特の魅力とシリーズへの愛が詰まった作品になっている。また、シリーズとしても前半と中間、後半に分けられた構成など、ユニークなアイディアが炸裂しており、唯一無二の独自性を醸し出している。単にファミコン版のシリーズ二作のボスキャラを出演させた総集編的な内容で終わらせない、そのオリジナリティの高さもシリーズファンなら要チェックだ。

また、操作性も良好。ファミコン版とは異なり、多少、ロックマンの挙動が重くなったほか、移動速度も遅くなって軽さが失われているが、複雑さは皆無。非常に取っ付き易く、キャラクターを動かす楽しさを存分に堪能できるものに仕上げられている。また、移動速度が遅めである為、残像に悩まされ難いというのも大きな強み。ゲームボーイの液晶上の問題を考慮した、非常に良心的な配慮が凝らされているのも見事だ。
アクション自体も初代ロックマンとその続編の2基準としているのもあり、非常にシンプル。それ故に動きの華やかさは欠けるが、シンプル故に攻撃の回避、仕掛けの突破などが直感的に対応できる分かり易さがあるのが大きな魅力。敵の攻撃パターン、ステージ上の仕掛けが多彩なのもあり、単調に感じ難いものになっているのも非常に印象的だ。その辺のノリは事実上、初代ロックマンと2の再現でもあるのだが、それが今作でもしっかりと表現されている辺り、製作スタッフが如何にロックマンを理解しているかと言うのを実感させられる。
そんなアクションの単調さを和らげているステージも、スケールこそゲームボーイの液晶を考慮して小さめだが、敵やギミックの配置がやたら個性的、且つ嫌らしい調整が図られている為、攻略し甲斐抜群。中間ステージの連戦構成故にボリューム面では不足気味ではあるが、その分をステージの難しさに回していて、非常に遊び応えのある内容となっている。それだけに攻略した時の達成感も相当なもの。全体の少なさを思わせない確かな充実感を得られるだろう。
グラフィック、音楽の質も高い。グラフィックは正伝と同じ作風だが、液晶サイズを考慮してキャラクターのドットを大きめに描くなど、見栄えを良くする為の配慮が凝らされているのが見事。音楽も基本的に初代ロックマンと続編2の音楽のアレンジが主体だが、新曲もばっちり収録。完成度もなかなかなので、こちらもグラフィックと並行して要チェックだ。

演出周りもなかなかのもので、数は少ないが、大きな絵で描かれたデモシーンが挿入されたり、大型ボスが登場したりと、なかなか頑張っている。特にデモシーンはなかなかインパクトのある仕上がりになっているので要チェックだ。
その他、オリジナルボス『ロックマンキラー』も出番こそ少ないものの、攻撃パターンなどはしっかりとロックマンシリーズのボスの動きを踏襲した仕上がりになっており、戦い甲斐抜群。ロックマンキラーのみならず、他にも雑魚敵やギミックで新しいものが登場していたり、最後に登場するワイリーも完全新作のマシーンで襲い掛かってくるなど、オリジナル要素もしっかりと作られていて、シリーズの新作としても申し分のない仕上がりとなっている。
制約上、仕方がないが構成に強引さがあったり、2以降のシリーズでお馴染みの救済アイテム『E缶』が無いのと設計の陰湿さから、かなりの難易度になってしまっているなど、気がかりな点も散見される。だが、ロックマンシリーズの新作としての完成度は非常に高く、ゲームボーイという携帯機でもらしさを残すこだわりの作り込みの数々は圧巻の一言に尽きる。
シリーズのツボも抑えつつ、携帯機特有のコンパクトさに甘んじる事のない歯応えと充実感をも備えた今作。アクションゲーム好きは勿論の事、ロックマンシリーズのファンならば要プレイの傑作である。ゲームボーイでも全く変わらないロックマンの世界、そして制約を活かしたアイディアの数々にはここでしか味わえない魅力がたっぷり。妥協一切無し、本気のアクションゲームをその手で実感してみよう。お薦めの逸品です。
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