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≫ロックマンワールド5
■発売元 カプコン
■ジャンル アクション
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 3990円(税込)
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 無し(※パスワードコンティニュー方式)
■その他 スーパーゲームボーイ対応
■総説明書ページ数 24ページ
■推定クリア時間 4〜8時間
AD20XX年。4度目のDr.ワイリー世界征服計画はロックマン達の活躍により、またも失敗に終わり、再び世界に平和が戻った。事件後、ワイリーは消息を絶ち、人々も彼の存在を次第に忘れていった。

その数カ月後の事。ライト博士のお使いで街に買い物に出かけ、その帰路についていたロックとロールの前に突如、謎の戦闘用ロボットが現れる。ロボットは自らを『アース』と名乗り、ロックに攻撃を仕掛けてきた。間一髪、攻撃をよけたロックはロックマンにチェンジし、スーパーロックバスターを発射するのだが、アースはそれを軽々と跳ね除けてしまう。呆然とするロックマンはその後、アースの攻撃をまともに受けて致命傷を負い、その場に倒れてしまった。

数時間後、世界中の町は宇宙からやって来た『スペースルーラーズ』と名乗るロボット軍団の攻撃を受け、次々と占領されていった。 ライト博士の研究所にて、一命を取り留めたロックマンは、彼らにスーパーロックバスターが通用しなかった事をライト博士に説明。それを聞いたライト博士は、彼らのボディを構成する未知の物質にダメージを与える新たな武器『ロックンアーム』をロックマンに提供、装備させる。
かくして、新たな武器を装備したロックマンは『スペースルーラーズ』に占拠された町を取り戻す為、戦いへと向かう。果たして、『スペースルーラーズ』の目的とは?
▼Points Check
--- Good Point ---
◆過去四作より継承された、携帯ゲーム機の特性と制約を巧みに活かしたゲームデザイン
◆登場ボス、ステージなど、全てが新規に作られた、オリジナル色の濃い目のゲーム本編
◆射程の短さ、パーツによる強化機能など、意欲的なな新要素を取り入れた新チャージショット『ロックンアーム』
◆ロックンアームのパワーアップなど、新要素追加でただの救済処置では終わらない作りへと進化を遂げた『Dr.ライト研究所』ことアイテム購入システム
◆ユニークな攻撃の数々でプレイヤーに襲い掛かってくる、魅力あふれる今作完全オリジナルのボスキャラクター達
◆同じく過去のシリーズでも見受けられない、個性的なもの満載の特殊武器
◆シューティングステージも導入するなど、よりバラエティ豊かで遊び応え抜群の作りへと進化を遂げたステージ構成
◆ステージ数、密度の増強により、過去最大級の物量となった総計ボリューム
◆旧シリーズの直感的にキャラクターを動かせる楽しさをしっかり継承した、良好な操作性
◆前作譲りの懐の広さと一筋縄では行かぬ手強さが光る、珠玉のゲームバランス
◆細部まで徹底的に描き込まれた、白黒ドットの芸術とも言える仕上がりのグラフィック
◆ワールド2以来の全曲オリジナルという、新鮮味溢れるラインナップが光る音楽
◆ワールド3以降より継承された、相変わらずの撃ち込み感抜群の効果音
◆会話付きのイベントデモが増え、今まで以上に濃い目に描かれるようになったストーリー
◆シリーズ総決算とも言える、素晴らしいファンサービスが光る最終ステージ
◆ロックマンシリーズのお約束を根底からぶち壊したラスボス戦(必見!)

--- Bad Point ---
◆使い勝手が悪く、使用機会に恵まれない新サポートキャラクター『タンゴ』
◆前作に引き続き、一部シーンにおける派手な処理落ち(特にタンゴを出した時が酷い)
◆会話付きのデモが増えた一方で、前作の派手さは消え失せてしまった演出周り(一概に悪いとは言えないが、前作経験者から見たら物足りなさは感じる)
◆一部、地形配置の嫌らしいが飛び抜けてるステージの存在(特にビーナスステージ)
◆前半と後半における、従来のロックマンの法則から悪い意味で外れたボスの存在(何と、弱点武器が手に入らない為、必然的にバスターでの戦いを強いられる)
◆前作同様に複雑で、メモ必須のコンティニュー用パスワード
▼Review ≪Last Update : 10/6/2013≫
シリーズ総決算にして、最大級の変革!

何もかもが新しい屈指の一作、ここに推参!


前作にて、正伝シリーズ顔負けの完成度を見せつけた、携帯機向けロックマンシリーズ『ロックマンワールド』の第五作目にして、事実上の最終作。(※2013年現在)

まさかの全編オリジナル。
シリーズ集大成のシステムとボリュームで送る、前作に負けず劣らずの傑作だ。

ゲーム内容は横スクロールで展開する、ステージクリア型アクションゲーム。ロックマンを操作し、前後半に分けられた8つのステージに挑み、ボスを倒して特殊武器を入手しながら最終ステージを目指していくというものだ。
システム周りは、正伝シリーズに引けを取らない、非常に高い完成度を誇っていた前作のものを踏襲。『Pチップ』によるアイテム購入システムとそこでしか手に入らない新アイテムの数々は、今作でも登場。お馴染みの前半、中間、後半に分けられた構成もそのままに、正統進化を図った内容に仕上げられている。しかし、今作ではこれまでのシリーズにおけるお約束が廃止された。それは、正伝シリーズ二作からのボスの選出だ。これまでは正伝1作ごとに4体のボスが選ばれ、それぞれが前半、後半に登場する構成となっていた。前作もそのお約束に倣い、『ロックマン4』と『ロックマン5』から4体のボスが選出され、前半と後半に登場した。故に今作ではこれまでの流れからすれば、『ロックマン5』と『ロックマン6』から選出されたボスが登場すると、これまでのシリーズをプレイして来た方ならば予想するだろう。
だが、今作ではその流れに倣わず、どちらの作品からもボスを選出しなかった。では、どうしたのかいうと、全てのボスをオリジナルの新キャラクターにしてしまった。つまり、今回のボス達は全員新参者。正伝シリーズに登場した事などあるはずが無いボス達がプレイヤーの前に立ちはばかる、100%オリジナルの面子へと変貌を遂げてしまったのである。
言うまでもなく、ボスが全員新参者という事で、ステージも完全な新作だし、道中で登場する敵キャラクター達も大半がニューフェイス。更にステージ上の仕掛けもファミコン版では見覚えの無いものばかり。音楽も全部新曲だ。その為、今作にはこれまでのシリーズに漂っていたリメイクの匂いが皆無。一応、過去のシリーズにも最終ステージなど、幾つかオリジナルのステージがあったほか、『ロックマンキラー』というオリジナルのボスが登場したりしたが、今回はそれが本編の全てという事で、過去の経験は一切役に立たず。ボスにせよ、見た事の無い動きをする為、正伝シリーズを経験済みのプレイヤーでも苦戦は必至。完全オリジナルならではの新鮮な手応えを存分に堪能できる作りとなっている。
更にオリジナルなのはそれらだけに留まらない。ロックマンのアクションも今作オリジナルのものになっている。具体的にはチャージショットなのだが、何とロケットパンチ。自分の腕を飛ばす攻撃を行うのだ。しかも、このロケットパンチこと『ロックンアーム』は、発射後にロックマンの手元に戻る仕組みとなっているので、今までのバスターとよりも射程距離が短い。離れた敵への攻撃がし難いチャージショットとなっているのだ。一応、通常のロックバスターはあるので、それで戦えば従来通りのプレイは可能だ。ただ、そのような仕様というのもあり、主にボス戦は接近戦になり易い。その為、これまでとは趣の異なる戦い方が求められてくるようになっている。今までが簡単に距離を取れる作りであっただけに、主にシリーズ経験者ほど、その特徴的な仕様に対して戸惑いを覚えるかもしれない。まさにこれぞ拳を飛ばす攻撃と言ったところ。今までのシリーズにないプレイスタイルを演出する、斬新な攻撃アクションに仕上げられている。
また、このロックンアームは『Dr.ライト研究所』で強化する事も可能。敵を掴んで連続ダメージを与えたり、飛距離を伸ばしたりなど、より強力なショットに強化できるというのも、大きな特徴の一つだ。無論、強化するかしないかはプレイヤーの自由。その幅の広さは、今作でも健在だ。
この他、サポートキャラにも新キャラクターとして、猫の『タンゴ』が登場。ビートの地上版とも言えるキャラクターで、強力なローリングアタックでロックマンをサポートしてくれる。更にお馴染みのラッシュにも、新形態として『ラッシュスペース』が登場。実を言うと、過去のワールドシリーズのイベントシーンに登場していた形態なのだが、これが今作にて、遂に操作可能になった。実際に操作できるのは、特定のステージだけなのだが、そこではロックマンシリーズ初のシューティングゲームを楽しむ事ができる。僅かな登場ではあるが、その新展開もまた、各新要素と並行して要チェックだ。
このように、もはや正伝シリーズの一つにカテゴライズされても良いのではないか、というぐらいに新鮮味満点。それでいて、これまでのシリーズで培われた魅力やシステムもちゃんと引き継いでいたりなど、オリジナルであってもらしさは何一つ失われていない。まさにこれぞ正真正銘の集大成。歴代シリーズで培われた独自の要素と試みの数々が、一点に集約されたとも言える、非常に魅力的な内容になっている。

例によって、今作最大の魅力は全編100%オリジナルの新鮮味抜群の内容だ。過去の正伝シリーズで登場したボスなど、ファミコン版から引っ張ってきた要素がほとんど皆無なので、シリーズ経験者は言うまでもなく、初心者も新鮮な気持ちで楽しめる作りになっている。
特にボスキャラクター達は全員が新参者というだけに、シリーズ経験者でも大いに苦戦すること必至。攻撃のバリエーションにしても、今までのシリーズに無い新しいアイディアがふんだんに盛り込まれている。突如、スライムになって高速移動を始めたり、足場のブロックを持ち上げて投げてくるに加え、穴を増やして足場を徐々に狭まらせていくなど、とにかく一つ一つの個性と新鮮味が凄い。その奇想天外且つ大胆な攻撃の数々には、新参者ならではの本気とシリーズに新風を吹き込もうとする制作スタッフの本気を痛感させられること、間違いなしだ。
また、先ほどにも触れたが、新しいチャージ攻撃『ロックンアーム』の実装により、これまで以上に接近戦になり易い調整が図られているのも地味に見逃せないところ。飛ばせる範囲が限られているというその性能からは、どんなに離れた位置からでも当てられる従来のチャージショットには無い、スレスレの緊張感というものを嫌というほど体感させられるだろう。
勿論、弱点となる特殊武器で攻めれば、どんなに個性的な攻撃を仕掛けてくるボスであろうとも秒殺可能。そんなロックマンとしてのお約束もそのまま。幾らオリジナルだからとは言え、シリーズ伝統の魅力までは削らんとするその抑制する姿勢にもスタッフの本気とロックマンへの深い理解というものを痛感させられる次第だ。
更にオリジナル要素ばかりでなく、前作から継承されたシステムの改善と強化が図られている辺りも見逃せない。特に『Dr.ライト研究所』ことアイテム購入システムに関しては、ロックンアームの強化要素の導入により、全体的な難易度だけでなく、プレイスタイルにまで変化を及ぼすシステムへと発展を遂げたのが実に秀逸。強化しなければ接近戦主体のスリル満点の展開が、強化すれば相手を文字通り掴み倒す快感を味わえる展開が楽しめるようになるなど、本編に一粒で二度美味しい魅力を加味させているのが見事だ。元々、このシリーズは二周目以降のプレイでも楽しめる自由度の高さ、奥深さがあったが、今作はこの強化要素の導入によって、これまで以上に遊び甲斐が向上している。
遊び甲斐に関しては全体的なボリュームにしても、シリーズの集大成とも言える密度。ステージの総数自体は前作とは大差無いのだが、一つ一つのステージ内に張り巡らされた仕掛けの物量と濃度が増した事で、全体的な充実感が向上。前作も前作で結構な密度だったが、今回は更にその上をいくレベルとなっている。また、先ほどにも少し取り上げたが、ロックマンシリーズとしては初めてとなるシューティングステージが登場するほか、強敵との直接対決というボス戦だけに絞ったステージも登場するなど、構成周りにおいてもオリジナルならではのユニークなアイディアが炸裂している。更に最終ステージに至っては、シリーズの総決算とも言える熱い死闘とも言える展開が用意されている。それがどう言ったものなのかはネタバレになるので伏せるが、これまでのロックマンワールドシリーズをプレイしてきた方にとっては、最高のファンサービスと言ってもいい展開となっている。総決算というキーワードで、勘の良い人ならば直に気付くかもしれないが、とにかく必見である。過去のシリーズにも中間ステージに最終ステージなど、完全オリジナルの要素があったが、敵キャラクターはボスの出展先に当たる原作のキャラがメインであるなど、リメイクの域を抜け出せてない部分が僅かに散見された。そんな原作に対する縛りが無くなった今作は、まさにスタッフのやりたかったと思われる事のオンパレード。それでいて、シリーズのお約束をちゃんと残すなど、作品としてのらしさを損ねぬ丁寧な作り込みも施し、過度な暴走を抑えているという徹底振りは芸術的の一言に尽きる。
このシリーズは元々、カプコンではない外部の会社が開発を担当してきた作品だが、この気を配った作り方には原作を大事にしつつ、自分達のやりたい事を限界までするという真摯な姿勢というものが込められている。今作はまさにそんな姿勢とロックマンへの愛の集大成と言うに相応しい出来と言っても何らおかしくはないだろう。前作も前作で素晴らしい出来だったが、今回も負けず劣らずの完成度。職人技と愛が炸裂した作品に仕上げられているのだ。

その他、操作性も前作のスーパーロックバスター発射後に発生する仰け反りが無くなり、大幅にレスポンスが向上。3基準の取っ付き易いものに回帰している。ゲームバランス、難易度周りも適度に歯応えのあるカプコンらしい調整具合。ただ、前作よりもステージ上のトゲトラップの量が増えたというのもあり、シビアさが僅かに増している。シビアというと、三作目である『ロックマンワールド3』のようなきついものを経験者なら連想するかもしれないが、かのイライラ棒みたいな針に糸を通すかのような場面は僅かしか無いので、そんな神経がすり減らされるほどではない。大体、正伝シリーズで言えば『ロックマン2』に近い感じとなっている。ただ、それでも厳しいという事実は否定できない。なので、甘い考えで挑むと痛い目に遭うので要注意だ。
更にパスワードコンティニューシステムは、今回も前作と同じ仕様。メモは必至と言えるほどに複雑だ。色んな要素が盛り込まれた代償なので、仕方が無いところではあるが、その入力手数の長さは地味にストレスに感じるかもしれない。
グラフィックに関しては基本的にこれまでのシリーズのものを踏襲しており、見た目の変化はほとんどない。ただ、今作は『スーパーゲームボーイ』に対応した事で、色つきでプレイできるようになった点は地味に大きな進化と言える。
また、前作ではド派手な一枚絵が沢山登場するという、シリーズでも屈指のクオリティとインパクトを誇っていたが、今回はその一枚絵の数が大幅減少。少々、物足りない感じになっている。ただ、その分をボリュームに当てているほか、爆発系の演出等は相変わらずの仰々しさなので、プレイしていてそれほど気にならないのはせめてもの救いだ。

音楽に関しては、先の繰り返しになるが全て新曲。シリーズとしては『ワールド2』以来のラインナップとなっている。念の為、音源に関しては3以降のクオリティを維持。耳障りな作りにはなってないのでご安心あれ。曲自体も印象的なものが多く、中でも最終ボス戦の曲はシリーズ屈指とも言える熱い曲になっているので要チェックだ。
他にストーリーも今回は会話デモが増えた事で、今まで以上に濃くなっている。展開自体も意表を付くものが幾つかあり、特に最終ボス戦は実に衝撃的。「オリジナルだからと言って、そこまでやるのか!」と、プレイした誰もが驚嘆の声を挙げてしまうこと請け合いだ。
活躍の場に恵まれない新しいサポートキャラクター『タンゴ』、ボスの一人、ビーナスのステージにおけるトゲトラップの陰湿さ、中間ステージの密度減少など、練り込み不足な欠点もあるが、完全オリジナルならではの新しいアイディアの数々、洗練されたシステム周りなど、完成度はピカイチ。シリーズファンに向けたファンサービスや演出も盛り沢山で、集大成としても申し分の無い今作。職人的な作り込みと新しさが光る珠玉の傑作だ。シリーズファンは言うまでも無く、アクションゲーム好きなら要プレイ。シリーズ総決算の本気と愛をご堪能あれ。お薦めの逸品だ。
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