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≫テトリス
■発売元 任天堂
■ジャンル パズル
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 2625円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1〜2人
■セーブデータ数 無し(※バックアップ機能・パスワードコンティニュー無し)
■その他 ゲームボーイ専用通信ケーブル対応
■総説明書ページ数 23ページ
■推定クリア時間 5〜6時間(Bタイプモード)
一度始めたら止めように止められぬパズルゲーム『テトリス』が、いつでも何処でも遊べるようになってしまった。自らの限界に挑戦するいつものテトリスに加え、対人戦限定の対戦プレイまで楽しめるようになり、貴方は眠れなくなる…?
▼Points Check
--- Good Point ---
◆ブロックを積み上げ、列を作って消すだけの分かり易いゲームルール
◆一度始めると止められなくなる中毒性に秀でた『Aタイプモード』
◆短時間でサクッと楽しむのに最適な手軽さが光る『Bタイプモード』
◆十字キー、ABボタンのいずれかしか使用しない、シンプルで取っ付き易い操作性
◆ゲーム初心者から上級者まで、幅広く高みを目指せる秀逸なゲームバランス
◆テトリスシリーズ初となる対戦モード(攻撃の概念など、システムも凝った作り)
◆当時としてはなかなか凝った作りのデモシーン
◆ロシア民謡中心で構成された、味わい深い音楽
◆NEXTブロック消去、高速モードなど数は少ないが、やり込みプレイを盛り上げるスペシャルオプション群

--- Bad Point ---
◆バックアップ機能が無い為、得点記録が行えない(止む無い欠点)
◆システムは面白いのに対人戦以外が行えない対戦モード
◆数の少ない音楽(あと1〜2曲あっても良かったような)
▼Review ≪Last Update : ≫
「ビコビコビューン♪」

某氏はテトリスが決まった時の効果音がこう聞こえるらしい…。


単純明快なルールと操作性で大ヒットを記録した伝説のパズルゲーム『テトリス』のゲームボーイ移植版。シリーズ初の携帯ゲーム機向けテトリスでもある。

後のテトリスシリーズ全てに大きな影響を与えた、歴史的な名作だ。

ゲームルールは、至ってシンプル。画面上部から落下してくる、様々な形をしたブロック『テトラミノ』をフィールド上に積み重ね、隙間なくテトリミノをはめ込み、一段ずつ消していくというものである。基本的に過去、ファミコンなど、様々なハードで発売された『テトリス』とルール面での大きな相違点は無い。ゲームボーイ向けにオリジナルのテトリスをそのまま落とし込んだ、無難な移植となっている。
収録されているゲームモードは『Aタイプモード』、『Bタイプモード』、そして『対戦プレイ』の全三種類。この内、『対戦プレイ』だけは、プレイする際にはもう一台のゲームボーイ本体と専用の通信ケーブル、そしてもう一本の今作が必要。ハードの仕様上、ソフト一本だけでは楽しめないので、やや敷居の高い作りとされている。また、コンピュータ対戦などの一人プレイヤーを対象とした機能も無く、遊べるモードもAタイプとBタイプに限られてくる。
正直なところ、ソフト一本で手軽に対戦を楽しみたい、というプレイヤーにとって、今作は酷なテトリスであると言っても良いかもしれないだろう。しかし、だからと言って一人プレイで遊べるAとBの二つのゲームモードが面白くない訳でもなく。二つ共に優れた面白さを誇るゲームモードに完成されている。
前者『Aタイプモード』は、いわゆる持久戦。延々と落ちてくるテトリミノを積み重ねては消し、最終的に何ライン消せるかを競い合う。テトラミノの初期の落下速度、フィールドは全10レベル60ラウンドが用意されており、多彩な状況下での持久戦が楽しめる。徐々に速度が増していくまったりプレイも良し、いきなり高速で始めるマゾプレイも良しと、自由度の高さはかなりのもの。内容は単純だが、豊富な設定の恩恵もあり、奥深い遊びが楽しめるモードに仕上げられている。
また、己の限界に挑戦する、持久戦ならではの中毒性も伊達じゃない。特に数回のプレイを経て、限界を極める魅力を知ってしまうと、数十分間の暇潰しでプレイしたはずが、5時間もやってしまったとか、平気で起こるようになる。止め時が作れなくなってしまう。しかも、ルールが単純で理解し易いだけでなく、積み間違いなどのトラブルもちょっと頭をひねるだけで簡単に修正可能で、もう記録を伸ばすのはダメという状況も作られ難いから尚更。電車内でこれを遊ぶのが、如何に危険であるかはもはや語るまでも無いだろう。単純明快な持久戦とは言え、その中毒性と奥深さは群を抜くレベル。単調さも少しあるが、ある意味、今作を象徴するゲームモードだと言ってもおかしくはないだろう。
後者『Bタイプモード』は、Aタイプの持久戦とは間逆のステージクリアの区切りが付けられたゲームモード。25ラインを消すまで、何処までスコアを伸ばせるかを競い合う。自らの限界に挑戦するというコンセプトは共通するが、プレイに区切りが付けられるので、持久戦とは違い、こちらは暇潰しに適した作りになっているのが特徴。気軽にテトリスを楽しみたい、というプレイヤーには大変マッチした内容に仕上げられている。
勿論、サクッと遊べるだけでなく、25ラインという決まった条件下で、どれほどのスコアを叩き出すかを考える戦略性など、持久戦のAタイプとは異なる、独自のゲーム性も魅力的だ。ボリュームもAタイプと並行して全10レベル60ラウンドと充実しており、やり甲斐もなかなかのもの。中毒性の面では、延々と遊べるAタイプには劣るが、手軽に遊べる敷居の低さや戦略性の深さなど、暇潰しのテトリスとしての特徴に秀でている。そんなに深々とやり込む気は無い、ちょこっとやりたいプレイヤーにしてみれば、打って付けのモードと言えるだろう。
本格的にやり込みたいのならAタイプ、手軽にやるならBタイプと各モードは棲み分けもバッチリで、プレイヤーの好みに応じた工夫が凝らされているのもなかなか秀逸。ルールは単純とは言え、単純だからこそ簡単に遊べ、やり込めるという独特の強み。他のファミコンなどで発売されたテトリスでも健在だったその面白さと高いゲーム性は、携帯ゲーム機向けとして作られた今作にも生きている。例え画面は小さくなれど、伝統の面白さはそのまま。改めて、テトリスというゲームのルールが腐らぬものであるか、それを痛感させられる出来栄えとなっている。

しかし、そんなハードが変わっても面白さに不変が無いのは、今作では小さな魅力に過ぎない。もっと大きな魅力と言ったら、そんな不変の面白さを持つテトリスが、何処でも遊べてしまうこと、それに尽きる。
だが、それは2010年の今だと珍しい話ではない。今やテトリスは携帯ゲーム機だけでなく、携帯電話でも遊べたりと、もはや場所もハードも選ばなくなってしまったからだ。そんな今の基準で考えれば、このゲームボーイ版テトリスの何処でも遊べる魅力というのは、そんなに映えるものだとは言い難いだろう。しかし、1989年の時点で考えれば、今作はテトリスとしてはあまりにも革新的なタイトルなのである。世界で初めて、「何処でも遊べるテトリス」を提唱したからだ。
それまで、テトリスは家庭用ゲーム機やパソコンなどのハードを中心にシリーズ展開が成されていた。極端に言うならば「家庭内でしか遊べないゲーム」として普及していたのだ。
元々、当時は携帯機というもの自体が無かったので、遊ぶ場が家に限られているのは仕方が無いものがあった。しかし、当時からテトリスにはまっていたプレイヤーからすれば、家以外でしかプレイできないが故のもどかしさが募り、外に出ると頭の中でテトラミノが落ちてくる様が浮かんでくることにさぞかし、苦しめられたかと思われる。さすがに仕事中や学校の授業中はまだしも、何もする事のない空き時間にテトリスが遊べないことの苦しみは、絶え難いものがあっただろう。そんな、外で何もする事が無い合間に遊べるテトリスがあっても良いのではという事で、ゲームボーイという初の携帯ゲーム機と共に今作が投入された。そんな今まで、空き時間に遊べなかったテトリスを遊べるようにした今作の価値は相当なものがあったのは言うまでも無いだろう。外で遊べない事に苦しむプレイヤーに対し、言葉に出来ないほどの救いの手を与えた。その功績はあまりにも大きい。
同時にテトリスとは、外でも遊びたくなるゲームという事も今作は実証し、後の携帯電話などへの移植の流れを作ったのも大きな功績の一つと言えるだろう。ある意味、今作なくして後のテトリスの普及は考えられなかったかもしれない。
確かに今で考えれば、この「何処でも遊べる」という強みは弱い。だが、後のテトリスに与えた計り知れない影響を考えれば、今作はまさにターニングポイント的傑作と言っても大袈裟ではないだろう。テトリスとしての面白さも小さいながらも健在だし、家で遊んでいたテトリスが外でも遊べる事自体にも大きな感動がある。
今作は発売と同時にすぐに完売し、ソフトの生産が間に合わない為に急遽、海外版が代理として発売されたというエピソードがあるのだが、それもまた外で遊べるテトリスを求めるユーザーが多かったかを如実に現していると言えるだろう。
ある意味、今作の登場と後の大ヒットは必然だったのかもしれない。

また、単に「外で遊べる」だけが今作の魅力ではない。テトリスシリーズ史上初の「妨害」の概念を取り入れた対戦モードも、「外で遊べる」に匹敵する魅力の一つだ。これも今では珍しくなくなってしまったが、実は今作、シリーズで初めて対戦モードを実装、及び相手を攻撃するシステムを導入したテトリスでもあるのだ。
一応、対戦モード自体は一部のテトリスに搭載されていたが、それはコンピュータから送り出されるブロックに何処まで耐え切れるかという、いわゆる持久戦となっていた。基本的に先に詰まってしまった方が負け。対戦であるのにやるのはテクニックの競い合いと、何処となく地味さの漂うものになっていた。それに対し今作では、先に30ラインを消した方が勝ちというものにルール全般を見直し。更に消したテトラミノの量に沿って、相手にお邪魔用テトラミノを送り込めるという攻撃の概念を取り入れ、持久戦では味わえなかった派手な展開を楽しめるようにしたのである。相手への攻撃が可能になった事で、当然ながら対戦の白熱度はアップ。互いにぶつかり合う楽しさ・面白さを演出し、持久戦には無いゲーム性を確立させたのである。それまで、じっくり個々のフィールで戦うのが基本の対戦を経験してきたプレイヤーにとって、今作の対戦が如何に刺激的な作りであったかは言うまでもなく。地味さに憑かれてた対戦プレイに派手さを付け加え、より戦略的なプレイと中毒性を提供した今作のモードは、まさにシリーズとしては画期的な試みである。やっぱり友達と一緒に争うのが面白いだろと、そんな基本的な面白さを追求する為、あえて持久戦のルールを廃し、この独自のルールを考案、及び導入した今作のスタッフの仕事はまさにグッジョブの一言に尽きる。
例によって、2010年現在ではこの試み自体、画期的であるとは到底言い難い。しかし、それまで持久戦が基本となりつつあったテトリスに真の意味での対戦を提供し、後のシリーズでもそれが基本となった事からして、今作が如何に強烈な影響を与えたかをうかがい知ることができる。もし、これで後も持久戦こそがテトリスの対戦の全てなんて続いていたら最悪、今ほどのヒットも考えられなかったのでは無いだろうか。
外でも遊べる、対戦が白熱すると、後のテトリスやパズルゲームの在り方にも様々な影響を与えた要素が多い今作。
時代が違う故に古臭さは相当なものだ。しかし、今作が及ぼした数々の要素は、まさにテトリスやパズルゲームの歴史を知るにおいて、決して見逃すことのできないものと言うに等しいだろう。小さいくせして、結構な大物なのである。

その他、ゲームバランスや操作性なども、及第点の出来栄え。後者は近年の落下ボタンが無い為、快適性の面ではやや落ちる。しかし、手軽に触れるというテトリス特有の利点は活きているので、さほど気になるものではない。グラフィックや音楽も特段、目立つものは無く、地味の一言に尽きる。しかし、今作の場合はゲームこそが最大の主役なので、この辺が地味なのもある意味、必然と言っても良いだろう。
さすがに今のテトリスと比べると、見劣りはする内容である。だが、携帯ゲーム機初のテトリスという価値、攻撃の概念を取り入れた対戦プレイなど、後のシリーズに大きな影響を与えた要素が多く、単に古臭いで一蹴するのは失礼千万。それに例え見劣りしても、Aタイプモードにおける強烈な中毒性など、テトリス本来の魅力はそのままだ。
ゲームボーイならではの「何処でも遊べる」という魅力を全面にアピールし、テトリスの大きなターニングポイントとなったこのゲームボーイ版。遊び手は全く選ばない。パズルゲームが好きな方から初めての方は言うまでもなく、最近になってテトリスを始めた方も体験して欲しい歴史的な名作である。今、携帯機で普及しているテトリスも、全てはこれがきっかけだった。テトリスファンを名乗るプレイヤーなら、今作のプレイは必然だ。是非、やるべし。
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