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≫ゼルダの伝説 ふしぎの木の実 大地の章 / 時空の章
■発売元 任天堂
■開発元 カプコン(第一開発部)
■ジャンル アクションアドベンチャー
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 3990円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1〜2人
■セーブデータ数 3つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■その他 ゲームボーイカラー専用(※カラー以前のゲームボーイでは遊べません、ゲームボーイ専用通信ケーブル対応
■総説明書ページ数 48ページ(※両作共通)
■推定クリア時間 40〜50時間(二作共通通常エンディング目的)、95〜110時間(真エンディング目的)、150〜200時間(完全攻略目的)
ホロドラム、ラブレンヌの二つの平和な世界で大事件が発生。
ホロドラムでは、大地の巫女ディンが闇の将軍ゴルゴンと名乗るものに誘拐。
ラブレンヌでは、時の巫女ネールが闇の司祭ベランによってその身体を乗っ取られてしまった。そして、巫女の力を失った各世界では様々な異変が起き始めた。

不思議な力により、各世界に導かれたリンクは、巫女と世界を救う冒険に単身旅立つ。
果たしてリンクは二つの世界と二人の巫女を闇の手から救い出せるのか。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆春夏秋冬に四季を変える、仰々しい演出と地形変化が面白い『四季のロッド』による謎解き
◆『神々のトライフォース』の光と闇の世界の進化系に仕上がった『時の竪琴』による謎解き
◆ゲームボーイとは思えぬ、とんでもない広さへと拡大したフィールドマップ(地形バリエーションも多彩)
◆同じく液晶サイズなんて何のそのの広さとなり、密度と歯応えが倍増したダンジョン
◆二つのタイトルを遊ぶ意義を強く示しているほか、それぞれに多種多様なイベントが追加される特典要素もあって、遊び応えも申し分ないリンクシステム
◆動かすだけでも楽しい反応の良さと良好なボタン配置が光る、珠玉の操作性
◆夢をみる島から引き継がれた、プレイヤー好みの装備をしたリンクを作れる自由度の高さが秀逸な装備システム
◆マップ拡張と二部構成の恩恵で、歴代シリーズ最高クラスにまで跳ね上がった総計ボリューム
◆指輪集め、隠しダンジョンなど、盛り沢山で歯応え抜群のやり込み要素
◆夢をみる島と同じ作風ながら、色彩から演出面に至るまで劇的に進歩したグラフィック
◆アクション重視の大地の章、パズル重視の時空の章と棲み分けが図られたゲームバランス

--- Bad Point ---
◆悪く言えば、プレイヤー側への負担が大きいリンクシステム(ソフト二本購入が必須)
◆歯応えは倍増したが、逆に手軽さが失われて面倒臭くもなったダンジョン構成
◆手強過ぎる上、終盤になると複雑さも倍増する謎解き(特に時空の章は行き過ぎ)
◆一部、反則同然の謎解きの解法の存在(これも時空の章で顕著)
◆悪く言えば、遊び尽くすには相当なパワーが必要とされる総計ボリューム
◆夢をみる島の流用がほとんどで新鮮味に欠ける音楽(新曲も結構あるが、総じて地味)
◆アクション性が強く、苦手な人には厳しい調整の『大地の章』のボス戦
◆個別の能力の解説が無い上、装備した際の特典も実感し難い中途半端な指輪システム
◆成長の法則が謎過ぎる収集要素『ガチャの木』(どうやらランダム仕様っぽい)
◆平凡で味気ないシナリオ(一部、伏線の無い唐突な展開が描かれるなどの奇妙な所も)
▼Review ≪Last Update : 12/25/2011≫
濃密”こってり辛口”ゼルダの世界。

シリーズ屈指のボリュームで送る大長編。


『ストリートファイター』や『ロックマン』、『バイオハザード』などで知られるカプコンと任天堂のコラボレーションによって誕生した、ゲームボーイ版ゼルダの伝説第二弾にしてシリーズ最新作。

ゲームボーイとは思えぬ圧倒的な密度で送る、大作過ぎるゼルダの伝説だ。

ゲーム内容は2D見下ろし視点で展開するアクションアドベンチャーゲーム。主人公のリンクを操作し、数々の謎が張り巡らされたダンジョンを攻略しながらストーリーを進めていくというものである。基本システムはゲームボーイのゼルダの前作に当たる、『夢をみる島』を踏襲。ABボタンにアイテムを振り分ける装備システム、それによる変化に富んだ操作性と多彩なアクションはそのまま引き継がれている。だが、その他の要素は全面的に刷新。更に数多くの新システムと試みも豊富に取り入れ、全体的には夢をみる島をベースにした大作ゼルダとも言うべき内容に変貌を遂げている。
例えばマップだが、前作に当たる夢をみる島ではゲームボーイの液晶サイズを考慮し、一画面内に可能な限りの要素を注ぎ込んで収めた、コンパクトな作りとなっていた。今作でもフィールドではその路線を継承しているのだが、ダンジョンは一転。スーパーファミコンの『神々のトライフォース』を踏襲した、一画面には収まりきらぬ広大な作りに改められている。それにより、ダンジョン全体のスケールがパワーアップ。広範囲に渡って探索を行わねばならなくなり、密度からやり応えに至るまで、何もかもが前作以上になっている。更にゼルダシリーズの十八番たる謎解きのネタも複雑且つ、歯応えのあるものへと進化。NINTENDO64の『時のオカリナ』や『ムジュラの仮面』を髣髴とさせる、濃密辛口な構成へと変貌を遂げている。それに伴い、ダンジョンの攻略に費やすプレイ時間も拡大。酷い所では個人差もあるが丸一日、或いは二日以上費やさなければ攻略できない所も。夢をみる島で例えるならば、終盤のダンジョンを超越する密度のダンジョンが出てくると言った感じだ。終盤という単語だけでも明らかだが、今回が只ならぬ内容であるのは、容易に想像が付くだろう。そんな作りへと変貌を遂げたのもあり、全体の難易度も上昇。夢をみる島の謎解きが生温いと感じた方にとってはまさに天国、十分な手応えを感じた方にとっては地獄とも言うべき、とんでもないものになっている。
更にタイトルからして明らかだが、今作は二部構成。『大地の章』と『時空の章』、それぞれ異なる世界を冒険し、ストーリーを進めていく、とんでもないボリュームになっているのである。
この二つのシナリオは一本のゲームソフトとしてそれぞれ独立している。いわゆる、『ポケットモンスター』の『赤・緑』のバージョン分けみたいなものなのだが、ポケモンとの最大の違いは二本共中身が違う事。ストーリーもダンジョンも、出てくるアイテム、更にはゲームバランスの味付けに至るまで、何もかもが独立しているのだ。更に極めつけ、今作は完全なエンディングを迎えたくば、2つともプレイしなければならない。今作にはこの二つのシナリオを結び付ける『リンクシステム』なるパスワードによる引き継ぎ要素があり、このパスワードを2本目の作品に入力する事で黒幕との最終決戦が追加され、真のエンディングが見れるようになるのだ。このパスワードこと『あいことば』は、大地と時空、どちらかを最後までクリアし、エンディングを見終えた後に表示される。それを最初に大地をクリアしたのなら時空のゲーム開始時に入力する事で、続きのストーリーが時空のシナリオ上で語られるようになるのである。もう大作どころの話じゃないのは明らかだろう。夢をみる島どころか、ゼルダシリーズ過去最高クラスのボリュームとなっている。それも二作全部プレイしなければならない為、軽い気持ちでプレイできる内容でもない。ダンジョンなどの難易度も高めに設定されているだけに尚更だ。 そして極め付けとして、二作共に謎解きの性質も別物。大地では季節を変化させる『四季のロッド』を使った謎解きがメイン、時空では『時の竪琴』による過去と現在を行き来する謎解きがメインであるなど、同じ方程式は一切通用しないように作られている。バランスの付け方にしても大地はアクション重視、時空はパズル重視と違いのでますますどうにもならない。
地形や謎解きのスケールアップで終わらせず、全体のボリュームまでかの時のオカリナに迫る勢いという化け過ぎにも程がある密度。携帯機のゼルダの二作目という事で、夢をみる島のような内容を期待する方もそれなりにいるだろう。しかし、実際にプレイすればそれは盛大に裏切られる。ゲームボーイという枠を超越した壮大な冒険、謎解きがこのゼルダには盛り込まれている。まさに大作。歯応え抜群どころか、折れる勢いの驚愕の内容になっているのである。

そんな規格外なボリュームこそが今作最大の魅力。広大なダンジョン、一筋縄ではいかぬ難易度の謎解き、そしてバージョンごとに異なる世界観とギミックと、何もかもが携帯ゲーム機の枠を超えているというか、超え過ぎ。前代未聞の密度と完成度を誇っている。
特に目を見張るのは、バージョンごとの違い。『ポケットモンスター』のようにシナリオは共通しているけど、出現モンスターが違うという微少なものではなく、シナリオから登場するダンジョンなど、何もかもが違うというとんでもない仕様。実質、新作二本分のぶっ飛んだ構成には、誰もが「何でここまで作った!?」と突っ込みたくなるほどのインパクトに秀でている。
バージョンごとに違った遊びを盛り込み、何一つ共通点を残そうとしない妥協無き作り込みも圧巻の一言。大地の章では四季を変化させて謎を解く楽しみ、時空の章では過去と現在を行き来しながら謎解きと世界の変異を堪能する楽しみ。どれも独立したコンセプトを持ったゼルダの伝説の新作として、十分遊べる内容に完成されているのだから驚きだ。しかも、ゲームバランスの方針や謎解きの性質に至るまで二本毎に異なるものにする徹底振り。片方だけ遊ぶだけでも十分な満足度が得られるのに、両方プレイしないと真のエンディングと決着を迎えられないのも、地味ではあるが、ありそうでなかった事を実現させようとした意気込みの表れと言えるだろう。如何にして今作がポケモンヒット後、世間に溢れたバージョン違いを売りとするゲームと差別化させるか。これらの徹底したこだわりと作り込みの数々からは、そんな唯一無二の作品を作り、衝撃を与えようとした開発スタッフの努力と苦心を実感する事ができる。そもそも、異なる内容のバージョンを作る事自体、新作を二本作るのと同じ。ポケモンのような微少な違いならまだ真似できる余地はあれど、今作のようなものでは真似するにも相当なパワーが無くてはどうしようもないだろう。そんな簡単には真似できないバージョン違いを売りとしたゲームを今作を開発したカプコンのスタッフは実現させてしまった。これを拍手で賞賛しないのはさすがに無礼に当たるだろう。二つ遊ぶ事に意味を持ち、二つごとに異なる遊びを味わえる、唯一無二の魅力を持ったこの内容。このような驚きの特徴を持っているだけでも、今作が数あるゲームボーイのゲームの中でも屈指の大作タイトルであるというのは揺ぎ無い事実だと断言できるだろう。
しかし、さすがに大作にし過ぎた感も否めない。確かにボリュームこそ真のエンディングを目指してのプレイであれば、歴代ゼルダシリーズの中では屈指だ。だが、ダンジョン構成のスケールアップと謎解きの複雑化が災いし、全部を遊び尽くすのに相当なパワーが要る内容になってしまっているのは大きな欠点だと言わざるを得ない。
特にダンジョン構成のスケールアップは無理にやる必要が無かった。それもあり、一つのダンジョンを攻略するのに1時間、酷い場合は丸一日を要するほどとなり、何処も手軽に遊べなくなってしまった。また、謎解きも全体的に複雑なものばかりなのが頂けない。大地の章は概ね悪くないのだが、時空の章ではそれが顕著で、かなりダレ易い。元々、謎解き重視のコンセプトなので、この調整自体は腑に落ちるものなのだが、ダンジョンのスケールへの考慮が甘く、行き過ぎの感が否めない。また、解法が理不尽な謎解きがあるのも致命的。その解法を暗に促す伏線を張ってない辺りにも配慮の甘さが滲み出ている。ゼルダと言えば謎解きというのはもはや十八番だ。しかし、その謎解きは冷静に考えれば自然に解けるバランスと適切な複雑さを持ってして成り立っているもの。残念ながら、今作にはその配慮が見受けられず、プレイヤー視点が欠落していると言わざるを得ない。ある意味、開発が任天堂でなく、カプコンというのも影響したのかもしれないが、もっと気持ちよさとテンポを意識し、且つ腑に落ちる解法でまとめて頂きたかった。ここもまた、ダンジョンと同様にコアユーザー視点に傾いた仕上がりになってしまっているのが何とももどかしい限りだ。 あらゆる意味でゲームボーイの常識を覆す作品であるのは間違いない。しかし正直な所、ゲームとしてはシステムのベースとなった『夢をみる島』には劣る印象だ。もう少し、手軽さがあれば話は違ったのだが、全体的にコアユーザー視点に偏り過ぎな出来。その分、やり応えが増強したが、かなり人を選ぶ作りになってしまってる感は否めない。それほどまでに今回は悪い意味で濃厚。試みは面白いが、ちょっと頂けないゼルダになってしまっているのだ。高い満足度を得られる内容ではあるのだが…非常にしんどい。ライトなプレイヤーでも十分に楽しめるゲームとはとても言い難い作りである。

また、『リンクシステム』も試みは面白いがやはり、二作プレイしないと真のエンディングが迎えられないという構成は賛否が分かれる。それも先の通り、ボリュームが尋常でないので、余程のやる気を持って挑まねばならないから尚更。この辺もまた、ライトなプレイヤーにはしんどい要素だと言えるだろう。ただ、一概にこれを否定できないのも事実。魅力を底上げさせる為にも本当、ボリュームと謎解き周りをもう少し、適切なレベルにして欲しかったものだ。
その他、操作性は夢をみる島をベースにしているので、これと言って欠点はない。対し、ゲームバランスは先のダンジョン構成、謎解きの複雑さもあり、お世辞にも絶妙とは言い難いまとまり具合。おまけに今作はボス戦の難易度が高めに設定されており、アクションゲームが苦手なプレイヤーに厳しい調整になってるのもしんどい。その分、手応えが上がっているが、もう少し弱くしても良かったのではないか。ちょっとこの辺はカプコンの悪い所が炸裂してしまっている感じだ。
グラフィックに関しては、夢をみる島と同様の作風で、実質的には使い回しとなっている。ただ、カラー専用なだけに精度が向上しているほか、ストーリー上のイベントでアニメーション付きの一枚絵が挿入されたりなど、非常に派手な仕上がりになっている。特にアニメーション付き一枚絵はかなり凝った作りなので一見の価値ありだ。

一方で音楽は地味の一言。というのも、大半は夢をみる島の使い回し。新鮮味皆無なのである。無論、新曲もそこそこ入ってはいるのだが、いずれもインパクトに欠ける。ある意味、ゲームボーイのゼルダの新作でもあるから、こうなるのも致し方がないのかもしれないが、せめてタイトル画面とフィールドの曲は新しいものにして欲しかったところだ。
その他、シナリオも全体的に平凡で味気ない。また、今回は指輪システムなるものがあり、装備する事で能力強化が行われるのだが、この効果が装備画面で確認しても分からないなど、配慮の甘さが出てしまっているのがもどかしいところだ。それ以外にリンクシステム用の『あいことば』が長過ぎるというのもあるが、これは仕様上止むを得ないので目を瞑る。 何にせよ、シリーズ屈指の大作であるのは間違いない。しかし、同時に難易度もシリーズ屈指で、相当なパワーが必要とされる内容。軽い気持ちでプレイするのは非常に危険なゼルダなのは間違いない。 全てにおいてゲームボーイの常識を覆す密度。しかし、やり過ぎな所も多い今作。ゼルダを愛して止まないプレイヤーなら要プレイ。対し、シリーズ初心者には間違ってもお薦めできない一本である。今作をプレイするのなら、まずは『時のオカリナ』や『ムジュラの仮面』で強靭な精神力を身につけてからにしよう。全てはそれからだ。
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