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  4. 超執刀カドゥケウス
≫超執刀カドゥケウス
■発売元 アトラス
■ジャンル SF外科手術アクション
■CERO B(12歳以上対象) ※出血、殺傷、暴力描写等あり
■定価 5040円(税込)≪※Best版:2980円(税込)≫
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数
■セーブデータ数 3つ(※フラッシュメモリバックアップ)
■総説明書ページ数 25ページ
■推定クリア時間 7〜9時間(エンディング目的)、25〜27時間(完全攻略目的)
2018年、幾多もの危機を乗り越えてきた人類の歴史に新たな影が落ちる。

死に至る奇病『ギルス』。

その発生地と原因、治療法共に全てが不明…。
その脅威に立ち向かう、あらゆる病の撲滅を目的とする医療機関『カドゥケウス』。
新米外科医の主人公、月森孝介はある手術がきっかけでカドゥケウスに身を寄せる事となり、ギルスとの戦いに巻き込まれていく事となる…。果たして、彼の運命は…。そして、ギルスの正体とは?
▼Points Check
--- Good Point ---
◆病魔を倒して患者を救う圧倒的な『使命感』が異彩を放つ、斬新なゲームシステム
◆タッチペンだからこそ出来る事を余す事無く表現した、こだわり満載の操作性(ペンしか使わないシンプルさだから、ゲーム初心者にも優しい)
◆腫瘍の摘出に謎の奇病との戦いなどバリエーション豊かな全種類以上ものオペ(手術)
◆メスにピンセット、更にはレーザーなどいずれも多彩で奇抜なアクションが堪能できる、全10種類以上もの手術器具(切り替えもアイコンのタッチ一発で行えて快適)
◆時間の流れを遅くするという、ゲームらしいハチャメチャさが見事な必殺技『超執刀』
◆命の重みと手術の怖さを嘘偽りなく描いた、説得力に富んだ硬派なゲームバランス
◆スコアアタックに超高難易度オペと、やり込み派も絶望するほど充実したやり込み要素
◆少し端折り気味だが、ストレートな『熱さ』が心を揺さぶるストーリー
◆手術器具のレクチャー、執刀手順の詳細など丁寧な配慮が見事なサポート機能群
◆手術にありがちな『気持ち悪さ(グロさ)』がほとんど無い”巧”のグラフィック
◆予測不能な手術の雰囲気を見事に表現した、荘厳で動的な音楽
◆如何にも手術をしている「生々しさ」をリアルに表現した質感溢れる効果音
◆アトラスらしいセンスの良さが光る、奇病『ギルス』達のネーミング

--- Bad Point ---
◆説得力があるとは言え、ゲームが苦手な方には辛い感も否めないゲームバランス
◆リトライ機能の未搭載(最初から手術を再開したいのに出来ないのは地味に辛い…)
◆手術中の台詞スキップ機能の未搭載(これも地味に辛い)
◆処置手順があまりに陰湿極まりないギルス『テタルティ』(気化するのが酷い…)
◆僅かに気持ち悪さが抜け切れてない感が否めない心臓のグラフィック
◆やや不明瞭な形で終結するストーリー(ちゃんと完結はするが…)
▼Review ≪Last Update : 10/11/2008≫
治せない病があってはいけないんだ!

救ってみせる、必ず…!


『女神転生』や『ペルソナ』シリーズでお馴染みのアトラスが送る、ニンテンドーDSの特徴を活かしたその名も『SF外科手術アクションゲーム』。

DSらしいゲーム性、命の重みを実感させる高難易度が見事な名作だ。

ゲーム内容は複数の手術器具を駆使して患者を蝕む病魔と戦う、その名も手術アクションゲーム。プレイヤーは主人公の月森孝介(つきもり こうすけ)となり、裂傷の縫合に異物の除去、腫瘍の摘出と言った多種多様なオペに挑戦。それらを処理していく。
本編は基本的にストーリー(イベント)展開がメインの会話パート、病魔との戦いがメインの手術パートの二つで構成。これらを交互にこなしながら、本編が進行する仕組みとなっている。アドベンチャーゲームが好きな方に対して例えれば、カプコンの『逆転裁判』と似た本編構成だ…と言えばイメージし易いかもしれない。だが、勘違いしないで頂きたいが今作はアドベンチャーゲームではない。先も話したように今作は手術アクションゲーム。テキストを読むよりも、手を動かす事の方が9割を占める内容なので、その辺はどうかご注意頂きたい。
そんな今作の9割を占めている手術パートは、基本的に主人公のパートナーである看護士の指示に従って進行。「患者に負荷をかけないよう、慎重に行っていく」という、手術だからこその特性を全面に押し出した構成となっている。普通のアクションゲームなら指示通りにと言うと、作業の側面が強まってその魅力が激減してしまうものだが、今作は他人からの『指示』が全てを左右する手術をテーマとしているので、そう言ったダメージはゼロ。逆にゲームの魅力が強化されていると言う、それまでのアクションゲームの常識を覆す有様となっている。普通なら作業にしてしまう指示をこうも自然なものとして溶け込ませたのも、全ては手術と言うテーマの賜物。指示を受けて進むゲームでありながら、気持ち良くプレイできるものに仕上げられている。
また手術と言う事で、プレイヤーの敵は腫瘍や裂傷などの病魔達。噛み砕けば「攻撃してこない敵」という事で、安心して倒せそう(処理できそう)という印象を抱くかもしれない。
だが、それは大きな誤解だ。これらは動かない反面、患者のバイタル(体力)を著しく消費させ、早く死なせてしまおうと躍起になってくるので、速やかな処置が求められてくる。しかもそれらは「目に見えるものだけ」じゃない。中には一通り処置し終えて急に発生するもの、特定の臓器に隠れているものと言った副群もいるから、完全に処理し切れるまでは終始、気が抜けないのである。更にゲームが進むと、『ギルス』なる動く謎の寄生虫が出現。それまでの病気とは違い瞬時の判断で的確な攻撃を行くという、本来ではあり得ない手術まで求められてくるのだ。単に指示通りにやって行けば大丈夫みたいなものじゃない。素早い動きが要される、アクションゲームとしての手応えに富んだものとなっているのである。
また手術パートでは基本的に、メスやピンセット、針と糸と言った10種類の器具を状況に応じて使い分けていく。登場する病気は全て、弱点である器具で処置しなければ倒せないものばかり。それ故に素早い判断と切り替えが終始、どのオペでも重要なテクニックとして求められてくる。これも先の病魔達と同様に、アクションゲームとしてその存在感を醸し出しており、実際に触れば改めて、今作がそう言った類のものである事を実感させられるだろう。
更にこれらの器具の切り替えと扱いは全て、タッチペン一本で行う。全ての操作をペンだけで行う…それだけで、煩わしさを抱くかもしれないが、実際は驚くほど快適で、「これなくしてこのゲームは成り立たない」と言わしめるものとなっている。手術器具の切り替えも画面左右脇にあるアイコンをタッチするだけの簡単設計で、それがテンポの良さを後押ししている。メスで切開する事や針と糸で縫合するアクションも、ボタン操作とは違ってかなり本格的に行え、リアルな手応えを実感できるのも大きな魅力。DSだからこそ実現できたその触り心地の良さには一種の感動すら覚える事だろう。
多少省略したが、これが今作の大まかなあらまし。 手術と言う新しいアイディア、DSの特性を生かした操作とゲーム性を押し出した、とても斬新なアクションゲームとなっているのである。今までにないタイプのアクションゲームと言うのもあり、その「病魔に侵された患者を救う」という圧倒的な使命感は実に強烈。アクションゲームの新たな境地を開拓したと言っても過言ではない、魅力溢れる仕上がりとなっている。

しかし、そんな今作の魅力は実はゲームとしての新しさ…ではなかったりする。確かにそれもあるが、それ以上に『命の重みを実感させる高い難易度』に集約される。
単刀直入に言おう。今作の難易度は鬼のように高い。決してカプコンの初代『魔界村』ほどとは言わないが、極めてシビア且つ緊張感満点のゲームバランスとなっている。だから少しでも気を抜いたり、雑なオペをしたりでもしたら、あっという間に患者は死に至ってしまう。タッチペンしか使わない簡単操作とは裏腹に、思わず口が開いたままになってしまうほど厳しさなのである。だが今作が素晴らしいのは、その高い難易度に「人の命の尊さと病魔の怖さ」という明確な意義が込められていることだ。そもそも今作でプレイヤーが対峙するのは、人の命を蝕む病魔達。人間にとっての敵、「命そのもの」を人質とし、それをいとも簡単に潰せる最強最悪の存在である。しかも、彼らはこちらが手を出しても、出さなくても人質に対して容赦ない致命傷を与える怖い一面を持っている。そんな史上最悪の敵が相手である以上、何も問題が起こりもせず、簡単に処理できる事は正直、あり得ない。また現実の病気も同じように、手術そのものが絶対的に安全な行為とは言い切れない。手術とは人の命に手を入れる行為そのもの。もしそこで誤った行為を仕出かせば、その人は一瞬の内に失われてしまうのだ。そんな「人の命に手を入れる」行為をし、雑な事をしても人の命が失われないだなんてそもそも、おかし過ぎる。人の命に雑な手を入れてしまったら、それが失われてしまうのが本来の手術と言うものだろう。
その手術の本質を考慮したかのような難易度設定が今作では行われているのだ。単純に上級者向けに作ったから高めに設定したゲームとは違う。手術がテーマのゲームだからこそのリアルな感覚、倫理的な側面を出さねばならない必然性によって、難易度が高めに調整されているのである。
これは正直言って、見事過ぎるとしか言い様が無い。倫理的な問題、手術の危なさを嘘偽り無く表現するに当たって、これほどまでに有益な手法は他に無いと言っても良い。たかがゲームだからとは言わず、「命に手に入れる事の怖さを知って頂きたい」というメッセージを込めたスタッフのセンスにはまさに脱帽だ。
更に難易度の魅力は、命の重みを感じ取れるだけに留まらない。肝心の「ゲームとして」のバランスも丹念に調整されており、一見絶望的に見えるオペも正しい対処法を持って挑めば、スムーズにこなす事ができるようになっているのはまさに、職人技に他ならない。各オペの構成も難易度の高さを考慮して、比較的短めにセットされており、再プレイ時に苦を感じる事が無いのもお見事。難易度が高い故にクリアした後の達成感も格別で、リアルに「人の命を救った」実感を得られるのも巧みの技の賜物と言ったところだ。
このように今作の難易度はゲームとしての面白さ、「人の命の尊さと病魔の怖さ」という手術を題材にしたゲームならではのテーマ性を、嘘偽り無く表現。大袈裟かもしれないが、ゲームにおける理想的にして究極の難易度とも言うべき、衝撃的な仕上がりとなっているのである。アクションゲームとしての新しさのみならず、難易度での新しさをも表現してしまうとは全く持って恐るべし。改めて、制作スタッフの発想とゲームへの愛には脱帽する限りだ。ここまで凄いのを見せられては、名作と言いたくなるのも止むを得ない。

更に今作で難易度に次いで素晴らしいのがグラフィック。手術という事でグロテスクな印象を抱くかもしれないが、内蔵と言った部位はCGで上手くデフォルメされており、全くと言って良いほどそれを感じさせないものに仕上げられているのである。だから、気持ち悪いのはダメ…と言う方でも全然大丈夫。凄く気を使った仕上がりとなっているのだ。
その他、手術パートでのオペも全部で以上と盛り沢山。各オペではクリア後にスコアも発表されるようになっており、スコアアタック的な遊びが盛り込まれているのも秀逸。とてもやり込み甲斐がある。また、オペは病魔との戦いだけでなく、製薬開発や爆弾解体(!)と言った変則的なものも存在。ただの手術だけでは終わらない、その魅力溢れる展開には思わず、目がくぎ付けになってしまうはずだ。
また、音楽も秀逸。常に状況が移り変わる手術に相応しい動的な曲が盛り沢山で、オペを大いに盛り上げてくれる。そして効果音も手術のゲームらしく「痛々しさ」が感じ取れるものに仕上がっているのがお見事。特に針と糸で縫合する時の重い音は要チェックだ。
ストーリーもやや強引ではあるが、熱いものに仕上げられている。台詞回しやキャラのネーミング等も独自のセンスが出ており、特に謎の寄生虫『ギルス』全般のネーミングは流石、アトラスと言ったところだ。

手術器具の使い方のレクチャーと言ったサポートもバッチリ。またオペを一瞬だけやり易くする必殺技『超執刀』が醸し出す、ゲーム的な嘘っぽさも良い味を出している。しかし、手術パートにおける会話のスキップ機能、手術をまた最初から再開するポーズメニューのリトライ機能が実装されていないのは地味に痛い。いずれも再プレイする際には重宝するものだけに、できれば起用して頂きたかったところだ。また、これはゲームの性質上止む無しだが、ペンを酷使するので長時間プレイにも向かないのも辛いところ。地味に中毒性が高いのもある意味ではマイナス要因と言ったところである。
しかし、それらを抜いてもゲームとしての完成度はかなりのもので、ニンテンドーDSだからこそ実現できたゲームシステムと操作性、説得力に富んだゲームバランスは他に類を見ない面白さに満ち溢れている。
病魔から人を救う使命感を煽られるゲーム展開、緊張感満点の手術パートとゲームバランス、多彩なオペ、シンプルな操作性とDSだからこその見所が満点の今作。アクションゲーム好きは勿論の事、脳トレなどでゲームに初めて触れたライトユーザーの方も挑戦してみるべき価値のある、ニンテンドーDS屈指の「らしい」名作だ。新しいインタフェース、ハード特性によって進化した『ゲーム』がここにある。文句無しにお薦めです。
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