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≫デスティニーリンクス
■発売元 バンダイナムコゲームス(現:バンダイナムコエンターテインメント)
■開発元 ベック(現:B.B.スタジオ)、ナツメ(現:ナツメアタリ)
■ジャンル アクションRPG
■CERO A(全年齢対象)
■定価 5040円(税別)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人(通信プレイ時:2〜4人)
■セーブデータ数 1つ(※フラッシュメモリバックアップ)
■総説明書ページ数 41ページ
■その他 DSワイヤレスプレイ対応、ニンテンドーWi-Fiコネクション対応(※2017年現在、サービス終了
■推定クリア時間 25〜30時間(エンディング目的)、123〜157時間(完全攻略目的)
時計仕掛けの夢の島「アメイジア」。
その島の人々は「夢のゼンマイ」の力によって、誰もが幸せに暮らしていた。

王国の者のほとんどが知っている古くから伝わる伝説である。

あくまでも「おとぎ話」として思われていたこの島だったが、一人の船乗りが未知の群島に漂着し、そこがかつて「アメイジア」と呼ばれた島であるとの証言が成されたことによって、国中が沸き立つ。
この事を受けて王国政府は「アメイジア調査団」の派遣を決定。
多くの冒険者達が「夢のゼンマイ」を求めて、島へと向かったのだった…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆素材を集めて武器に防具、更には消費型のアイテムまで生成しなければならない、自給自足の生々しさを全編に渡って徹底的に描き切った独特のゲームデザイン&ゲームシステム
◆拠点とダンジョンを行き来してクエスト攻略に挑む、単純且つ分かり易い本編の進行
◆短時間で終えられる携帯ゲーム機特有の手軽さを重視したクエストごとのボリューム
◆誰が選ばれるかはランダム、雇用だけでなく、技の発動にもお金の支払いが発生すると言った独特過ぎる制約と生々しさに溢れたサポートキャラクター「傭兵」
◆オーソドックスな短剣から銃、更には医学書に楽器と盛り沢山で突っ込み所満載の武器
◆正統派のアクション方式ながら、武器ごとに設定された「アクティブスキル」と属性相関の要素によって、シンプルながらも侮り難い戦略性が演出された戦闘システム
◆装備に左右されるが故の力押しを封じ込め、適切な手応えを終始実現させたゲームバランス
◆独特の戦闘システムとゲームバランスの特色が色濃く現れた展開が繰り広げられるボス戦
◆戦闘と探索重視で、パズル系の謎解きは抑えるテンポ重視の設計が図られたマップデザイン
◆自然あり、遺跡あり、更には要塞ありの冒険心をくすぐる魅力的なマップロケーション
◆常時セーブ可能、ダンジョンからの脱出も可能など、携帯ゲーム機のいつでも始められて止められる強みを活かすことが反映された良心的なサポート機能周り
◆手軽でテンポの良い構成とは裏腹の盛り沢山な総計ボリューム(本編だけでも25時間強)
◆思うがままにアクションを繰り出せる、動かす気持ちよさが色濃く現れた良好な操作性
◆生き生きと動くキャラクターのドット絵アニメーションで魅せるグラフィック
◆明るい作風ながら、後半になると切ない曲が増えるという緩急を付ける工夫が炸裂した音楽
◆冒険物語と見せかけ、終盤に哲学的な題材を交えた複雑な展開を見せるシナリオ
◆スピード感のあるカットと主題歌との相性の良さが炸裂したオープニングムービー

--- Bad Point ---
◆裏を返せば素材回収に振り回され、それに時間を取られ易いゲームデザイン
◆出現から消滅するまでの間隔が短い素材系アイテム(その為、回収にやや急かされる)
◆バリエーションに乏しく、お使い・パシリ臭の強いクエスト(特にお使い系は面白味に欠ける上、それが本題のボスの討伐クエスト解禁に強く関与してくるというのが煩わしい)
◆シナリオ進行に関連する・しないの色分けが一切されていないクエスト周りのインターフェース(この為、どうしても本編において手探りが求められる進行が生じてしまう)
◆誰を使ったとしても本編の展開やゲームバランスに決定的な違いが生じない主人公キャラクター達
◆上記キャラクター達の差別化皆無の所為で、全く意味を成してないキャラクターセレクト
◆1つしか作成できないセーブファイル(余計に複数主人公の意義が出せていない)
◆悪く言えば起伏が無く、中盤以降から単調さが増していくマップデザイン
◆仕組みは面白いが、例によって使い勝手の煩わしさと妙なシビアさが好みを分ける「傭兵」
◆複数の要素を読み出す都合なのか、ダンジョン開始前に決まって挟まる微かなロード時間
◆通信無しではコンプリート不可能な実績要素「探検記録」(フレンド登録、レポート交換を70回以上とかあまりにも酷)
▼Review ≪Last Update : 8/6/2017≫
「おとぎ話」の裏には闇がある。

そしてやはり、この噂に聞かれた島にも…(続きは本編で)


機動戦士ガンダム外伝シリーズ、ギレンの野望シリーズなど、バンダイレーベルのキャラクターゲームで知られるベック(現:B.B.スタジオ)開発による完全新作のアクションRPG。一部、グラフィックの制作担当で『奇々怪界 謎の黒マント』、『ザ・ニンジャウォーリアーズ アゲイン』などで知られるナツメ(現:ナツメアタリ)が関与している。

「自給自足」を押し出したゲームデザインと手軽な触り心地が光る良作アクションRPGだ。

ゲーム内容は2D見下ろし視点で展開する、クエスト攻略型アクションロールプレイングゲーム。時計仕掛けの島「アメイジア」に派遣された調査団の一人となり、古の遺産「夢のゼンマイ」を求め、島の各地を探索していくというものだ。
概略の通りに本編は「クエスト」をこなす形で展開。舞台となるアメイジアは拠点の「キャンプエリア」、敵との戦闘などが繰り広げられる「ダンジョン」の二つのフィールドで構成されており、基本的にキャンプエリアでクエストを受注してダンジョンに潜り、条件の達成を目指して進めていく。また、アメイジアには複数の島があり、それぞれの島のダンジョンには親玉のボスが存在。このボスを討伐するのが本編のキー目標となっており、一定量のクエストを攻略するとこのボスを討伐するクエストが発生。これを攻略する事で島の攻略は一段落となり、次の島への道が解放される。そうして次の島に着いたら、再びキャンプエリアでクエストを受注し、ボスの討伐を目指す。以降はその繰り返しだ。クエストの攻略をメインに進行する流れは如何にもRPGだが、感覚的にはアクションゲームっぽい。取っ付き易さと分かり易さの光る作りになっている。
アクションRPGとしてのシステム周りも任天堂の『ゼルダの伝説(※2Dシリーズ)』等に比較的近い。移動が八方向に可能な反面、攻撃は上下左右の四方向に限られているなど、古き良き時代の香り漂う設計だ。しかしながら、RPGを謳っていながらキャラクターのレベルアップは無し。敵を倒しても経験値を得られず、幾ら沢山倒してもプレイヤーは強くならない。代わりとして、今作では武器、防具と言った装備品でプレイヤーに耐性を付与し、強化させていく。ただ、少し特徴的な所で、装備品は店で買えない。店自体は存在するのだが、装備品を手に入れるにもその「素材」を敵を倒したり、採掘ポイントなどから手に入れ、持ってこないと作ってくれないのである。しかも、装備品だけでなく、アイテムもだ。つまり、全て自給自足。自分で必要となる材料を集め、作っていかないとプレイヤーの強化を一切行えないのである。敵を何回も倒して経験値を稼ぐ、作業的なプレイが発生しないのは今作の大きな強みと言えるかもしれないが、そこに一定のハンデを設けるかの如き設定。なかなかに生々しい仕組みになっている。
更に本作は武器の種類も豊富で、片手武器、両手武器、銃、化学書、医学書、楽器の6種類が用意されている。武器ごとに「アクティブスキル」という形で攻撃も個別のものが設定されており、それぞれ一長一短のある差別化が図られている。これに加え、属性相関の概念もあったりと、単純明快そうに見えて意外とその戦術性は複雑。特定の職業でなければ装備できないと言った縛りも無いので、このダンジョン探索においてはどの武器を装備して攻略に挑むかと言った戦略を組み立てる面白さもある。職業間の縛りが無い故に個性を犠牲にしている箇所はあるが、「簡単ながらも底なし」を地で行く設計で極め甲斐は十分。ここもまた、取っつき易さと分かり易さを尊重する作り込みが光る仕上がりになっている。
また、調査団の一人になるとの触れ込みの通り、本作はゲーム開始と同時に自分のキャラクターを作成する事になる。いわゆるキャラクターセレクトシステムも実装されている。選べるキャラクターは八人…「下町の少年」、「見習い錬金術師」、「王宮の新米近衛兵」と言った個性豊かな面々が揃っている。これらの中から主人公にしたい一人をプレイヤーは選び、本編を進めていく形となる。ただ、選んだキャラクターごとに個別のストーリーが用意されていたり、先の通りに職業によっては装備できない武器と言った縛りと差別化を図った要素は皆無。一応、あらすじとして一人一人に個別の物が設定されてはいるが、本編でそのストーリーが描かれる事も無いので、見た目で選んでしまってよい。セレクトという割には非常にアッサリとした作りになっている。
更に本作にはプレイヤーの相棒として活躍してくれる仲間も居ない。基本的に一人旅。しかし、ある程度ゲームが進むと「傭兵」が雇えるようになり、冒険に同行して戦闘支援を行ってくれるようになる。傭兵の雇用は基本的にダンジョン内で「呼び出し」のコマンドを実施する事で行われる。しかし、この呼び出しによってどの傭兵が仲間になるかは完全にランダム。一応、島に居る傭兵は四人居るのだが、その中から三人しか選ばれず、プレイヤーの好みが反映され難い設計となっている。例によって、雇用の際もお金が必要。更に傭兵には「傭兵アクション」なる強力な必殺技があるのだが、これを繰り出すに当たってもお金の支払いが必要になる。まさにフリーランスで活動している人間ならではの切実さが現れた仕様とも言え、仲間になってくれると頼もしいけど、フル活用するとなると相応の代価を払わなければならないという、妙な生々しさを感じさせるシステムになっている。また、傭兵の雇用はネットワークにも対応。ワイヤレス通信で接続したり、Wi-Fiでフレンドコードを登録した友達が傭兵としてゲーム内の港に訪れる「リンク」と呼ばれる要素が用意されている。リンクに友達を登録すると、友達のキャラクターを傭兵として雇うことができるほか、友達が乗っている船の施設を利用し、自分の船の施設では作成できないアイテムを作り出す事も可能。他にもプレイレポートの交換も行えたりなど、双方で競い合う遊びも楽しめる。通信を使わずとも傭兵を使う事は十分に可能だが、使えばもっと楽しい。そんな携帯ゲーム機特有の手軽な通信機能を活かした遊びもしっかりと盛り込まれている。
この他、主人公には船が与えられていて、その中に道具屋、情報屋と言った商人が経営する施設があるのだが、ゲームを進めるとスペースを拡大させたり、特定の装備を生産するのに特化した船にすると言った改造もできるようになる。また、改造はプレイヤー自身の強化にも繋がるので、しっかり行わないとよりよい装備が作れなくなると言った弊害も。そんな本編以外の面でも今作は自給自足のテーマを突き詰める作り込みが成されている。
アクションRPGとしての作り王道。ただ、細かい要素は独自色溢れるものばかりで、徹底して自給自足の厳しさと楽しさを描いたものになっている。それでいて、携帯機特有のお手軽さ、通信機能を活かした遊びも仕込むなど、見た目は懐かしいけど、手応えは新しいという絶妙なバランスで構築されている。ある意味、現代風にされた昔懐かしのアクションRPGと言った趣。ちょっと懐かしく、新しい手応えをプレイヤーに提供する作品になっている。

そんな今作の魅力は、自給自足の面白さも難しさも嘘偽りなく描き切ったゲームデザイン、携帯機のアクションRPGとしての手軽さに対する徹底したこだわりの数々だ。
ゲームデザインの独自性は言わずもがな。所々でプレイヤーに現実的な行動を要求してくる作りになっている。一般的なアクションRPG…RPG色を強く出した作品は、基本的にフィールドを徘徊する敵を倒し続ければプレイヤーが徐々に強くなっていき、お金も溜まってお店で買いたい放題できるようになるのが「当たり前」になっている。とにかく直感の赴くがままに障害を取り除いて経験とお金を積めば積むほど、強くなる。何故、敵を倒す事でプレイヤーが強くなるのか、深堀すれば謎な仕組みだが、それこそがRPGの王道でもあり、当たり前として定着するようになった。そんな当たり前を踏襲せず、現実的なプレイヤー自身の強化を追求したらどうなるのか。その答えを本作は提示している。強くなりたいけど、お店に武器は売られていない。武器を造ってくれる人はいるけど、その為には素材が必要になる。だから、その素材を手に入れる為、危険なダンジョンの中へと潜らなければならない。そうして、苦労して素材を集め、作ってくれる人の元に行けば武器が手に入り、プレイヤー自身が強化される。考えてみると、この流れはRPGの当たり前の流れに対する皮肉となっている。敵を倒した所で経験値は貰えないし、プレイヤー自身が強くなるのはそのプレイヤー自身を守り、強くする為に必要な武器が手に入った時のみ。ある意味、現実的に人が強くなることを反映させたものになっていて、生々しくも異様な達成感のあるゲームプレイを提供するのだ。何で敵を倒すと経験値が手に入ってプレイヤーが強くなるのか。倒したとしても普通に考えて強くならなったりはしないでしょう。単に目前の脅威を取り除いただけでしょう。結果的に装備がプレイヤーを強くする要因なのでは。本作はそんな昨今のRPGにおける当たり前に対する疑問を提起するかのようなゲームデザインを実施しており、独自の手応えを演出しているのである。RPGと言っても、今作はアクションRPGなので、その趣は大分違うが、確かにこれがプレイヤーが強くなることだ、と思わず納得してしまうその作りは実に痛快。アイディア自体は真新しいものでは無く、極端に言えば、似たような事をカプコンの『モンスターハンター』シリーズがやっていたりするのだが、強くなることからアイテムを手に入れる事まで全てが自給自足という徹底した割り切りぶりと大胆さは今作ならではの魅力とインパクトに秀でている。それ故の難しさ、面倒臭さがあるのもまた事実だが、この痛快な作りには、色んな意味で昨今のRPGにおける「当たり前」への違和感を抱かさせるだろう。ゲーム的な要素を極力取り除き、現実を突き詰める。しかも、そんな題材をスーパーファミコンチックなビジュアルで描くというシュールさ。プレイすれば、嫌でもこの個性的過ぎるゲームデザインに良くも悪くも衝撃を覚えてしまうはずだ。
極端なバランス崩壊が発生しないのも特色。入手できる素材(装備)で難易度が調整されている為、常に適切な難易度で攻略を楽しめる。アクションが苦手な人は不安を覚えるかもしれないが、モンスターの出現位置は変化しない為、何度も探索して慣れていけば、いつかはクリアできるようになる調整。キャラクターではなく、プレーヤーがレベルアップしてダンジョンをクリアしていくことで達成感を感じられる作りにもまた、今作独自の遊び応えが溢れていてとても印象的だ。
これほど癖のある作りながら、「手軽」であるのも大きな魅力。拠点の人達との会話で発生するクエストを軸に展開する、少し面倒臭さ漂う構成ではあるが、ボリュームはコンパクトで、長時間縛られることは皆無。ものの数分で決着するので、空き時間にちょこっと遊ぶと言ったプレイスタイルにも対応しているのである。また、クエストは同時に複数受け持つ事もできるので、一つずつ攻略していかないとダメみたいな縛りも無く(島のボスの討伐クエストなど、フラグを立てなければならないものも存在するが)、やり方次第ではまとめて攻略と言った事もできるし、ガッツリ長時間プレイする事だってできる。その時間がどれほどかかるかは個人の裁量によって変化するが、そうもプレイヤー側でボリュームの調整が効くに加え、攻略に必要な時間も控えめなので、全体的なテンポは良好。クエストの内容もダンジョン内の敵の討伐、素材の回収と言った分かり易いものが中心なほか、中にはキャンプエリアだけで終わってしまうものもあったりと、それほど複雑では無い。もっと言うならマップデザインも、謎解き、ギミックなどが控え目ので、右往左往する事も生じ難い。そして、例え詰まりに近い状態が発生したり、長期化の傾向が強まって来たとしても、ダンジョンからはいつでも脱出可能。専用アイテムを用意する必要も無いし、脱出したところでペナルティも課せられないので、本当に気軽に思うがまま遊べてしまうのだ。ついでに言ってしまうと、セーブも自由。更に仮に敵にやられてゲームオーバーになっても、お金が少し減ってキャンプエリアに戻されるだけで直にそこから続きを再開可能。ストレス要因となる要素も極限にまで減らしているのである。ゲームデザインの独特さもインパクトがあるが、この携帯機のゲームを強く意識した配慮の数々も今作の特筆すべきところ。独特過ぎる作りをプレイヤーに押しつけ過ぎず、好きな裁量で遊べるようにした作りには好感が持てるし、プレイヤーに不快な気持ちになってもらいたくないという製作側の配慮も滲み出ている。それでいて、携帯機のゲームなのだから、必要以上にプレイヤーを長時間縛ってはいけない、電車の中でプレイしている時も想定して、いつでも切り上げられるよう対処手段を設ける辺りも今作をDSのゲーム、携帯機のゲームとして作った事に対する強い意識とそれを大事とする気持ちが込められている。これも真新しい要素という訳では無いが、意外と疎かにしがちな所をしっかり抑えている所は立派。隙の無い配慮を凝らした作りには職人技とサービス精神を感じさせられるだろう。
しかし、自給自足にこだわり過ぎて面倒臭さが滲み出てしまっているのも否めず。また、クエストの内容が単純という事は裏を返せばバリエーションに欠ける。中盤以降に単調化し、長時間プレイが苦痛になると言ったレベルデザイン的な欠陥がある。まどろっこしいクエストも幾つかあり、その溢れ出るばかりのお使い、パシリ臭には人によっては猛烈な嫌悪感を抱くだろう。特にキャンプエリアで展開されるクエストにはその類のものがある上、そういうものが島のボスを討伐クエストを解禁する為に攻略必須になっていたりもするので、発生する度にゲンナリとしてしまうかもしれない。
ゲームデザイン的にも相当好みが分かれる。だが、一つのテーマを突き詰めた作りは素晴らしく、このゲームでしか味わえない体験をプレイヤーにもたらしてくれる。携帯機のアクションRPGを強く意識した配慮もまた然りで、短時間でも軽く遊べる設計は時間に追われる社会人のプレイヤーにとっても非常に有り難いところである。粗削りな所もあるが、それ相応に魅力的な所も多く、その仕上がりは携帯機のアクションRPGの一つの完成形と言ってもいい仕上がりになっている。好みは分かれるが、光るものが満載。特に見事なまでに作り込まれた手軽さへのこだわりの数々は必見である。

手軽な作りに反したボリューム周りも本編だけでも25時間を余裕で超える物量で、非常に密度の濃い冒険が繰り広げられる。レベルデザイン周りに難点はあるが、島ごとの個性付けと言った最低限の所は抑えているだけでなく、ストーリーも中盤以降になると様々な謎が明かされていくという興味深い展開を見せるので、エンディングを迎えた後には心地良い充実感を得られるはずだ。無論、本編以外のやり込み要素も豊富で、未クリアのクエスト消化のほか、クリア後のおまけとして難易度を高めたハードモードまで用意。やろうと思えば100時間を超過するその密度には度肝を抜かれるかも。
操作性も申し分無し。レスポンスが非常によく、思うがままにアクションを繰り出せる。アクションだけでなく、メニュー周りに関してもレスポンスが素晴らしく、手軽に遊べるアクションRPGとしての触り心地の良さが演出されている。
グラフィックの完成度も高く、スーパーファミコン時代の香り漂うの表現がこの上なく似合う、上質なドット絵が光る。特にキャラクタードットの完成度は極めて高く、デザイナーの本気が炸裂した仕上がりになっている。マニアなプレイヤーに向けて言うなら、今作のグラフィック協力にスーパーファミコン時代、数多くの名作を生み出したナツメ(現:ナツメアタリ)が関わっているというだけでも、本気ぶりというものが察せるかもしれない。
音楽もグラフィック同様、スーパーファミコン時代の香り漂う仕上がりで、当時を知るプレイヤーのノスタルジーを喚起させる。作風は冒険物語という事で、明るさを推し出した曲が多いのだが、中盤になると切ない曲も流れるようになるなど、程好くインパクトのある展開を見せる。そう言った曲に限って、良い曲揃いだったりするので要チェックである。

演出周りも地味になり過ぎない程度に作り込まれているほか、ゲーム起動時にはオープニングムービーと主題歌も流れるなど、古さと新しさを織り交ぜた作りになっているのがユニーク。特にオープニングムービーはスピード感のあるカットが素晴らしく、冒険をテーマにした今作の魅力を余す事無く描いたものになっているので必見だ。
他にも概略にて紹介したが、インターネット接続にも対応した「リンク」もDSの通信機能を適度に活用した作りになっている。ただ、情報を交換できるのは、ワイヤレス通信したり、フレンドコードを交換した友達、合わせて3人までと、不特定多数のプレイヤーと遊べる訳ではないのが残念。また、2017年現在ではニンテンドーWi-Fiコネクションのサービスが終了してしまっている為、通信周りはワイヤレス関連しか楽しめなくなってしまっている。
それ以外にも、クエスト一覧でストーリー進行に関連する・しないの色分けがされてなく、本編が手探りの進行になってしまうところやセーブファイルが1つしか作成できないこと、敵がドロップした素材が一定時間経つと消えてしまう為、速やかな回収が要求されるところも疑問を覚えるところだ。素材絡みに関しては、処理の関係なのだろうが。
そう言った欠点のほか、ゲームデザイン的にも癖が強く、万人受けするゲームとは言い難いが、自給自足の題材を突き詰めたその内容に圧倒的な手軽さなど、光る部分も多く、遊んでみる価値は大いにある本作。傑作と評するのは厳しいが、携帯機のゲームらしい直に止められる手軽さを強みとした良作だ。特にスーパーファミコン時代を始め、90年代のアクションRPGが好きでやり込んだプレイヤーならストライク必至。『ディアブロ』が好きな方にもお薦めです。
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