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≫ドローン トゥ ライフ 神様のマリオネット
■発売元 アガツマ・エンターテインメント
■開発元 5th CELL
■ジャンル 落書きアクション
■CERO A(全年齢対象)
■定価 5040円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 2つ(※フラッシュメモリバックアップ)
■総説明書ページ数 36ページ
■推定クリア時間 10時間〜12時間(エンディング目的)、25〜40時間(完全攻略目的)
ある所に絵描きが得意な『ラポーサ族』の住む村があった。神が全てを描き込み、世界の万物を創造したとされる『生命(いのち)の本』は、代々伝わる宝として、村に平和をもたらしていた。

だがある時、『ウィル』という村人が、自分が神より上手に絵を描き、創造できると思い上がり、『生命の本』を盗み出してページに絵を描き始めた。
しかし、彼が描いて生まれるのは『悪』ばかり。村は闇に覆い尽くされてしまった。
村人達に問い詰められ、激怒したウィルは生命の本を破り捨て、村から逃亡。
神はこの一件を悲しみ、以来、神の力は失われ、村は荒廃してしまう。
そして村人も一人、また一人と村から去ってしまった。

そんな惨状に村長の娘、マリは神に願う。

「神様、なんで黙って見てるの。どうか村人達と村を救ってよ…。」
▼Points Check
--- Good Point ---
◆プレイヤーキャラをプレイヤー自らデザインする、独特の「作る面白さ」とDSらしさに溢れた『お絵かきシステム』
◆ステージクリア型ながらRPG色強めで、意外に濃密な味に富んだゲーム展開
◆色を塗って実体化する乗り物など、お絵かきのテーマに則ったステージの仕掛け
◆海外製にしては珍しい、人を選ばぬ万人向けの調整が図られたゲームバランス
◆数は少ないが密度が濃い目で、確かなやり応えに富んだ全4ワールド12ステージ
◆あまりに日本らしい鮮やかな色使いが印象的な、暖かみに溢れたグラフィック
◆見た目の可愛らしさに反した、哀愁漂う曲の数々が印象深い音楽
◆最低限のものに限り、動かす面白さにこだわった淡白なプレイヤーアクション
◆タッチペンとボタンの両方を扱う事を考慮した工夫が光る、秀逸な操作性
◆ほぼ常時行ってくれる、隙の無さが親切なオートセーブ機能
◆パレット回収、シャドウ除去など適度に仕込まれたやり込み要素の数々
◆サウンドテスト、ミニゲームプレイなど、意外に凝ったおまけ特典の要素
◆塗装がはがれていく、生々しい表現が成されたダメージ時の演出

--- Bad Point ---
◆詰め込み過ぎな本編のお絵かきイベント(そんなものまで描く必要ある?と、無理矢理詰め込んだ感が否めない)
◆密度が逆に濃過ぎて、手軽に遊べない一面もある各ステージのボリューム
◆話として成立してすらいない、手抜き同然のシナリオ
◆幾ら書き込んでも綺麗には表示されない、プレイヤーキャラのグラフィック(多間接で表現される為に、荒くなる)
◆分かり難いオートーセーブのタイミング(情報表示が少な過ぎる)
◆致命的なフリーズバグの存在(※オートセーブ時、稀に発生する)
◆配置は適切だが、煩わしい感も否めないペンとボタンを両用する操作性
◆全体的に地味な演出(派手なエフェクトも無く、見栄えに乏しい)
◆当たった感触と判定のある部分が分かり難い、剣の攻撃アクション
▼Review ≪Last Update : 11/29/2009≫
所詮、私は操り人形…。

どんな事もやるしかないのです。


インディーズ系デベロッパー『5th CELL』が開発、THQより発売され、ヒットを記録した『Drawn To Life』の国内移植版。移植は『アンパンマンとあそぼ』などの幼児向け知育ゲームで知られる、アガツマ・エンターテインメントが手掛けた。

荒削りだが、独特の創造する面白さが光る意欲作だ。

ゲーム内容は、RPG要素を多少ながら含んだ、横スクロールのステージクリア型アクション。魂を宿したマリオネット(人形)を操り、村で起こるイベントを解決したり、アクションステージを攻略していくというものだ。
ステージは見下ろし視点で構成されたRPG風味の村ステージ、通常のアクションステージ(※ボス戦ステージ含む)の二種類を用意。基本的にこれら二つを交互に介しながら本編を進めて行く。進行はRPGスタイルで、先に村ステージにてイベントが発生。それをこなした後、通常のアクションステージが現れ、プレイできるようになる仕組みとなっている。ステージクリア型のシステムを取っていながら、流れはRPGの色が強いと、意外に独特。この種のアクションゲームにしては、偉く展開の凝った作りとされている。それのみならず、肝心のアクションステージの構成も結構、凝った作り。ゴールを目指すのが最終的な目的なのだが、その道中で村の住民の救助、『ページのかけら』と呼ばれるアイテムを回収しなければならないと、随分とやる事が多い。しかも、それらを無視して進めようとしても、途中に目的を達成させないと崩れない壁を配置するという徹底振り。単純なステージクリア型と思いきや、実は探索重視と捻りの入った作りとされている。ステージクリア型のシンプルな方式を起用しながら、この密度の濃さはまさにだまし討ち。先の仕組みも含め、今作が単純なアクションゲームと求めてプレイすると危ないゲームというのは言うまでも無い。
しかし、そんなアクションゲームとしての密度の濃さが最大の売りなのかいうとそうではない。それ以上に際立つシステムが今作には積まれている。それが『お絵かきシステム』。そもそも、今作はプレイヤーが動かすキャラからして革新的。何故なら、自分でデザインしたキャラクターだからである。というのも今作、本編を始める前に自分でキャラクターをお絵かきツールで描かなくては(作らなくては)ならない。自分でキャラクターを創造しない限り、本編が始まらないという、驚愕のゲームシステムを搭載しているのだ。
自分が描いたキャラがプレイヤーキャラとして動く。これだけでもかなり衝撃的だが、実は本編で描くのはそれだけでなく。道中で手に入る武器、足場、また乗り物と言ったものまで、今作では描かなくてはならない。 そして、その描いたものは実際に使ったり、足場なら乗る事も可能。まさに、自分で世界を創造する…とでも言うべきか。神様になったかのような、壮大な遊びが体感できるのだ。アクションだけでなく、ペイントまで要求される。今作がアクションゲームとして、あまりに革新的な内容であるのは、もはや言うまでも無い。
同時にニンテンドーDSらしく、ありそうで無かったゲームシステムでもある。そもそも、アクションゲームのシステムとして入れ込んだその行い自体が、DSでないと出来ない真似だ。マウス操作とは違ってDSなら快適に絵が描けるし、何よりも快適に描けるからこそ、ゲームスピードも早くできる。その事に着目し、このシステムを考案したこのゲームのスタッフは、まさにDSの可能性を切り開いた先駆者と言っても良いだろう。密度の濃い構成にも目が行くが、あくまでもそれはサブに過ぎず。それ以上の魅力が、このシステムには詰まっているのである。

しかし、革新的なシステム故、その出来も気になるところ。実際、出来はどうなのかというと、十分に及第点の域だ。キャラクターを自由に描ける楽しさはきちんとしているし、ツール自体もズーム機能を始め基本的なものがほぼ揃っており、使い勝手は悪くない。また、プレイヤーキャラ作成向けのサンプルが豊富に用意されているのも秀逸。絵を描くのは苦手という方でも、気軽に作成の妙を楽しめる。
更に色塗りや絵の作成に意地悪な制約…色を丁寧に塗るとかも無く、適当に塗っても成立するように出来ているのも、嬉しいところだ。描き込みたい人は描き込め、そこまで深くやりたくない人はやらなくても良い棲み分けがよく出来ている。アクション本編と並行し、ゲームを進める度(※但し、アイテムの回収が必要)、機能が増して行くのも地味にニクい。進めれば進めるほど、絵の描き方が増えるので、本編進行の意欲をけん引する要素として見事に機能している。逆に絵を描くのに魅力を感じない人には大したものではないが、そう言った本編への絡みをきちんとしている辺りに、作りの丁寧さがよく現れている。前例の無いシステムながら、いずれも基本的な面白さ抑えた仕上がりになってるのは、さすがの一言だ。お絵かきアクションという新たな可能性を投じようとする、並々ならぬ熱意を感じ取れる。
だが、やはり前例の無いシステムの宿命か、完璧な出来とは言い難い。正直、細かい面において粗が多い。ツールのアンドゥ(元に戻す)機能が一手しか効かなかったり、タッチ精度が狭く、意図しない所を描いてしまう事があるなどと。
絵を描くにしても、ゲームを彩るデフォルトのグラフィックほど綺麗にはならないという点も、描き手によっては賛否が分かれるかもしれない。主人公キャラが多間接表現(複数のパーツで手足を構築した表現)であるが故の宿命と言ったところである。でも、一番の問題は必要以上にお絵かきを強要するイベントを詰め込みすぎていることだろう。「これ、描く必要あるか?」みたいなものまで、イベントで描かなければならないなど、強制イベントが多過ぎるのである。普通にキャラクターを描く、それだけで十分なのに、そういう所にまでお絵かきを要するようにしてしまったのは、さすがに失敗としか言い様がない。結果として、ゲームテンポを悪くし、プレイをダレさせてしまっている。
また、アクションステージの無駄な長さもその事に一役買ってしまっているのが辛い。1ステージの攻略に30分強はかかり、中断セーブポイント無し、先のお絵かき強要イベントが複数セットされているなど、詰め込み過ぎだ。しかも強要イベントは、最低3個以上はあるのが基本の為、余計にダルい。普通に1ステージ1個にするとか、それ位なら苦しくなかったし、アクションゲームとしてもテンポが良くなっていたと思うのだが…。さすがにこれは、活かし過ぎにも程があるの一言である。テンポが重視されるアクションゲームで、それを殺ぐ仕掛けを沢山セットするとか、タブーを犯し過ぎだろう。それに、絵を描くのを三度もやらされるのはしんどい。只でさえステージ一つのボリュームが大きいだけに尚更だ。中断セーブ機能を入れず、リトライし難い環境としてしまっているのも、ちょっとユーザーを軽視し過ぎとしか言い様がない。長さ云々も、その中断セーブ機能さえあれば、ワリと楽なものになっていたかもしれないのに。これは本当、残念だ。そんなに沢山のネタをやりたければ、短いコースを増やす選択肢があったはず。それに、その選択肢の方がシステム的にプレイヤーの負担が小さかっただろう。何故、その最良の選択肢を捨ててしまったのか…本当、こればかりは理解に苦しむばかりだ。正直、これらの強要さえなければ、システム的にも結構映えてた可能性は高い。よりシステムを映えさせる為、仕込んだのかもしれないが、完全に逆効果となってしまっているのは泣ける。もう少し、抑えて欲しかった。
しかし、出来は荒削りとは言え、システムの面白さは鉄板である。棲み分けの丁寧さはなかなかで、荒削りでありながら、「作る面白さ」というアクションゲームとしては新しい可能性を提示している。ゲームデザインの問題で気軽に遊べないのが残念だが、システム自体は体験してみるだけの価値が十分にあると言えるだろう。少なくとも、このシステムを実装し、アクションゲームに新たな可能性を提示した事自体は、大きな評価に値すると言える。

また、操作性もペンを併用するのだが、意外に悪くない。ペンを持つ事を想定したボタン配置がされているので、ワリとスムーズにキャラを動かせる。ここは、上手くまとめられている。実質、十字キーと2つボタンしか移動面では使用しない辺りも快適である。ゲームバランスも海外製ながら程好く、万人受けする調整とされているのに好感が抱ける。上昇の推移も絶妙で、日本っぽい絶妙さが醸し出されているのも秀逸だ。
ステージも冗長で詰め込み過ぎな欠点があるとは言え、全体的な構成はなかなか凝ってる。シューティングあり、探索ありのバラエティー豊かな内容は、プレイヤーを飽きさせない。更にアイテム収集などもあって、やり甲斐も十分。単純にクリアしたら終わりにさせない、細かな気配りと工夫が光っている。
グラフィック、音楽もなかなかの出来。特に音楽は見た目の可愛さに反して、哀愁漂う曲が多いのがユニークだ。名曲も多く、ロケットステージや最終ステージ、最後のエンディング(何とボーカル曲!)は必聴の価値ありである。
逆に演出はちょっと地味。そしてRPGテイストながら、シナリオも雑で、手抜き感丸出し。世界観は悪くないだけに、もう少し作り込めなかったのか…悔やまれる。というか、こんなシナリオに許可を通した事自体が謎過ぎる。言葉が悪いが、このシナリオを作ったスタッフは、物語作りを舐めてるとしか思えない。そもそも、キャラの会話のコミュニケーションが成立してないとか、どれほど分かっていないのかと。終盤になっても解決されない問題があるなど、あからさまな描写放棄が見受けられるのも酷いの一言では済まない。こんな小学生の作文以下の話ならいっその事、なくて良かったのではと、本気で言いたくなるほど。幾らゲームと関係無いファクターとは言え、もう少し丁寧に作って欲しかったものである。さすがにこれは、擁護の余地が無い。そもそも、会話が成り立ってない時点であり得ない。

他にもタイミングの分かり難いオートセーブの瞬間、フリーズバグなど、ちょっと致命的な欠点もある。特にフリーズのバグは唐突に起きる事があるので怖い。
自分でキャラを創造する、そのシステム自体は文句無しに面白い。しかし、周りのゲームデザインが粗く、そのシステムの良さが逆に悪いイメージを出してしまっているのが惜しい。詰め込む欲さえ無ければ、良質で斬新なゲームになっていただろうに、悔やまれるばかりである。
とは言え、革新的な一作であるのは事実。自分でキャラを描いて創造するのは、他のアクションゲームでは味わえない面白さに秀でている。程好く温いバランスから音楽も良い感じで、悪いところがあるのだけど捨て難い、そんな魅力を持つこの『ドローントゥライフ』。少し変わったアクションゲームがやってみたいと思うプレイヤーにこそ、遊んでみて欲しい意欲作だ。逆にストレートなアクションが遊びたいプレイヤーにはお薦めしない。やるのであれば、色々と面倒臭い所がある…という事実を受け入れた上で挑みましょう。
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