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≫あぁ無情 刹那
■発売元 任天堂
■開発元 アリカ、スーパースィープ(音楽)
■ジャンル シューティング
■CERO A(全年齢対象)
■定価 500DSiポイント
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■消費ブロック数 37
■セーブデータ数 1つ(※1ブロック使用)
■その他 ニンテンドーWi-Fiコネクション対応
■推定クリア時間 15〜30分(エンディング目的)、2〜3時間(完全攻略目的)
迫り来る、無情極まりない敵弾の数々。
僅かな隙間を切り抜け、ハイスコアを目指せ!
▼Points Check
--- Good Point ---
◆継ぎ目無しのシームレス方式で展開する、スピーディでテンポの良いゲーム本編
◆多彩な弾幕で個性を演出するコンセプトが反映された、全8つのフェイス(ステージ)
◆軽快な挙動と良好なレスポンスが光る、触り心地の良い操作性
◆弾幕シューティング初心者への気配りと上級者に対する容赦の無さが光る、絶妙且つ間口の広いゲームバランス
◆暇潰しに最適で、弾幕シューティングの魅力をサクッと味わえる手頃な総計ボリューム
◆敵を倒してキューブを連続して集め続ける、シンプルながらも熱いスコアアタック
◆難易度選択機能としての役割も持たせた、極端な性能差が見事な2種類の自機
◆使い回しが多いが、デザインと質共に凝って作られたグラフィック
◆曲数は少ないが、爽やかな曲調が印象的な良質の音楽
◆爽快感を大いに煽る、質感満点の効果音(特にキューブ回収の音が良い感じ)
◆英語ボイスによるナレーション、背景の回転など、凝った仕上がりの演出

--- Bad Point ---
◆弾幕シューティング特有の見た目から来る敷居の高さ
◆何故か存在しない、EASYとMANIACの中間に位置する機体(共に難易度の差が大きいので、居るべきだった気が)
◆明らかに配置ミスと思しき一体目と二体目のボス(強さからして逆にすべきだった)
▼Review ≪Last Update : 3/6/2011≫
当たり難い・撃たれ強い・サックリ

そんな三拍子で送るお手軽弾幕シューティング、ここに参上!


プレイステーション2版『怒首領蜂大往生』などの弾幕シューティングの移植を手掛けた実力派デベロッパー、アリカ開発のオリジナルの弾幕シューティングゲーム。

弾幕シューティング入門編にこの上ない、お手軽&爽快感抜群の傑作だ。

ゲーム内容は縦スクロールで展開する、弾幕シューティングゲーム。プレイヤーは全二種類の機体の内、一体を選んで操作。乱れ飛ぶ弾の嵐を回避しながら敵を倒し、全8フェイズの攻略に挑戦するというものである。
本編こと各フェイズは間ごとの継ぎ目がない、いわゆるシームレス方式によって展開。息を付く暇なく、敵の奇襲に対抗していく構成となっている。基本的に各フェイズは、敵の奇襲を最後まで耐えぬく事でクリア。持久戦をコンセプトとした、シンプルなレベルデザインが図られている。その為、従来の縦スクロール型シューティングと比較すると、フェイズ(ステージ)の作りは素っ気無い。接触すると自機がやられてしまう壁、トラップと言ったギミックなど、一切登場しないので尚更である。悪く言ってしまえば、手抜きのように見えなくもない。しかし、その不足した部分を今作はユニークな弾幕パターンによってカバー。誘導型から拡散するタイプ、更には流れ星のような軌道を描くものなど、個性的な弾が次々とプレイヤーに襲いかかって来るので、見た目以上に単調さは無い。むしろ、スリル満点。全く持って飽きさせない構成に仕上げられている。また、フェイズによっては最後にボスも登場し、雑魚敵とは異なる異様な弾を撒き散らして襲い掛かってきたりと、意表を付く展開もバッチリ抑えている。しかも、そう言った個性的な弾の数々が息付く暇なく襲いかかって来るので、一瞬の気の緩みが命取りとなってしまう戦いになるのは言うまでも無く。シームレスでレベルデザインがシンプルと、一見、単調なゲームに見えてしまうが、実際は全くそんなことあらず。弾幕シューティングならではの弾幕で魅せ、楽しませる、理に適った内容に仕上げられている。
また、今作ではゲーム開始時に選ぶモードによって、パターン弾幕とランダム弾幕の二種類を選択可能。パターンはその名の通り、弾を放つ敵の出現位置が固定されているというもの。ランダムはその逆で、敵の出現位置が浮動であるというものだ。但し、ボスが登場するタイミングに関しては、両モード共通の設定となっている。あくまでも変化するのは、迫り来る敵の種類のみである。ただ、パターンとランダムによって様々なゲーム展開が味わえるのはなかなか魅力的。特にランダムは常にアドリブによる対処が求められる展開が楽しめるだけに、スリル満点だ。プレイする度に違った展開が楽しめるというだけに、何度プレイしても新鮮な体験が味わえるというのも結構な強みである。かと言ってパターンは魅力がないのかと言ったらそうでもなく。パターンはパターンで、敵の出現位置が固定されているが故、先制して敵を早急に叩いて高得点を獲得する、スコアアタックの極める楽しさに秀でている。今作では敵を倒したり、或いは弾幕を特殊攻撃(※後述)で消すと『キューブ』というアイテムが自動で取得され、コンボが溜まっていく。連続してキューブを取得していけば、コンボがぐんぐん伸び、得点も大幅にアップ。但し、少しでも取得の間隔を開け過ぎてしまうと、コンボがリセットされてしまうのがミソ。如何に継ぎ目無く、キューブを連続して習得できるかがカギとなるので、その戦略を組み立てる楽しさがパターンには満ち溢れている。ランダムの場合は時々、固い敵が連続して現れてコンボが繋げられないという弊害も起こり得る故、もどかしい思いをする反面、パターンであればそう言った展開が予め読めるので、極めようとするならばこの上ない環境である。また、位置が固定されている為にクリアするにも、パターンさえ覚えてしまえばそれほど難しくないというのも結構な強み。ランダムのような違った展開が楽しめる強烈な魅力はないものの、こちらも結構、内容としては侮り難い。こんな具合にどちらにも大きな魅力があると、モードごとの個性分けと設計もバッチリ。極めるのも、違った展開を満喫するのもどっちでもありな、非常に贅沢な設計となっている。
モードのほか、自機も二種類あり、それらが難易度選択機能の役割を担当している設計もユニーク。EASYタイプなら豪快なゲームプレイが、MANIACタイプなら精密な操作が求められる歯応え抜群のゲームプレイが、と言った具合にモードと同様、違った遊びが楽しめる作りになってるのも見逃せないところだ。
弾幕で魅せる事にこだわったレベルデザイン、シームレス方式故の圧倒的なテンポの良さ、モードと自機による異なる手応えなど、見た目は素っ気無い感じでありながら、詰め込まれた要素はなかなかの濃さ。僅か500円のゲームで、この内容の充実っぷりはもはや反則の域。それほどまでに遊び応え抜群、こだわり全開のゲームなのだ。

そして今作の魅力も、500円という低価格を全く思わせない充実した内容と遊び応え…と言いたい所だが、それ以上に弾幕シューティング入門編としてはこの上ない、良好なゲームバランスをプッシュしたい。
率直な所、弾幕シューティングというのは、世間では初心者お断りゲームの筆頭と言っても良い、極めて硬派なゲームだ。一部ではシューティングゲームの間口を極端に狭め、文化を衰退させた元凶として忌み嫌われている。
何故、弾幕シューティングは嫌われ、コア層にしか支持されないのか。それは至極簡単な話で、見た目で損する要素に長けてるからだ。常識では考えられないほどの弾がプレイヤーに襲いかかる。そんな光景を映した画面写真を見て、シューティング初心者はどう思うか。普通に考えれば「こんなの、できるはずがない」と、やる気も興味も失ってしまうだろう。見た目からして難しそうという負の力が溢れ出しているのだから、そう反応してしまうのは当然の話である。自ら厳しい道を選ぶのが勇気ある行為と称されるように、大変な事を何の迷いもなく選ぶ心理など、そう簡単には働かぬものなのだ。
しかし、では弾幕シューティングは特定層にしかその魅力が分からないゲームなのかと言うとそうでもない。実際、弾幕シューティングには従来型のシューティングにはない、独自の爽快感がある。それは言うまでもなく、回避する気持ちよさである。物量的に絶対に回避できない弾幕をサラリと全て回避できた時に湧き起こる達成感は、このタイプのシューティングならではのものと言って良いだろう。基本的にこの手のシューティングでは、自機の当たり判定が小さく設定されている事がほとんどなので、手軽にそれが味わえるという特徴もある。更に全ての弾を回避する、すなわち弾を征服する事も意味するので、「俺って凄い」と自ら誇れるのも、硬派なゲームだからこその強みと言えるだろう。しかし、そこに至るまでの敷居が高過ぎるのがこの手のジャンル最大の課題。ただ、敷居を下げた作品が世に輩出しているのも事実。同人界隈で大ヒットしている東方シリーズがまさにそれだが、弾が発射された後にスピードが徐々に遅くなる対処のし易さを売りとしており、比較的初心者でも入っていける間口の広さを確立している。
そしてやっと本題に戻るが…今作も、そんな初心者でも遊び易い土壌を様々なアプローチによって確立させている。それは自機の強さ、手軽さの二つ。前者はEASYタイプがまさにそれだが、基本的に弾に当たると自動でボムが発動する仕様となっており、なかなか倒れない。ワリと豪快なプレイでも、普通に遊べてしまうのである。しかも、今作には自機の攻撃(ショット)が強化されるパワーアップ要素も無し。初期状態からしてショットが広範囲に拡散するので強力、仮にミスしてもその状態のままから再開するので、失敗する度に弱くなるデメリットがない。ひたすら敵を倒し、弾幕を掻い潜る事だけに集中できるのだ。「弾幕シューティングが懸念される原因は、パワーアップや弱体化と言った、従来のシューティングの文法に捉われていることである」。そんな事を実際に考えたのかは憶測の域を出ないが、今作はそれを廃す事で万人受けするプレイ環境を見事に構築。初心者でも遊び易い弾幕シューティングというものを実現させているのだ。加えて、自機が強い故に手軽に弾を掻い潜る楽しさも味わえ、弾幕シューティング独自の魅力も訴える事も忘れない隙の無さ。その巧の調整術は、まさに職人技だ。
特にデメリットを減らしている辺りは見事。自機の弱体化という恐怖を無くし、回避する事の楽しさを最後まで堪能できるようにしたのは、弾幕シューティングの本質と弱点を突いた秀逸な調整だ。ミスし易い環境下だからこそ、その恐怖を軽減させねばならないというのは、とても的確で理に適っている。更に全くデメリットがないからこそ、初心者でも全く抵抗なく、弾幕シューティングの醍醐味に浸れるのもかなりの強み。
弾幕とは強大な恐怖でもあるのだから、初心者にはそれに対抗し得るほどのものが無ければ安心できない。対抗し得る強さが無ければ、誰だって諦めてしまうもの。そこに気付き、この調整を打ち出したのは本当に見事と言わざるを得ない。その辺はさすが、数々の弾幕シューティングの移植などを手掛けてきたアリカだけにある、と言ったところか。その魅力を広く知ってもらう為、行った試みの数々には弾幕シューティングに対する愛を痛感させられる次第だ。 目的に特化する遊び易さを追求し、自機が弱体化する恐怖を取っ払い、初心者への抵抗を無くした。今作が確立させたこの良好なバランスは、初心者向けに弾幕シューティングを作る事とは?という課題の回答例として、この上ないものだと言い切れる。他の弾幕シューティング同様、見た目の恐怖は今作でもそのままであるが、断言しよう。恐怖を覚えた方こそ、突撃せよ。今作は文字通り「案ずるより産むが易し」ですぞ。

優れたバランスばかりでなく、操作性も極めて良好。EASYタイプであれば、基本的に移動とショットだけで遊べてしまうので、非常に取っ付き易い。対照的にMANIACタイプではレーザーの照射テクニックも求められたりと、EASYとの違いが明確に現されているのも面白いところだ。肝心の自機の挙動、ショットのレスポンスも良好と、文句の付け所が無い。
ボリュームも500円なだけに総じて短め、隠し要素とかも皆無であるが、スコアアタックが非常に奥深く、なかなか中毒性がある。Wi-Fiコネクションによるオンラインランキング機能も設けられており、全国のプレイヤーと得点で争えるというのも地味ながら、やり甲斐抜群だ。また、短い故に空き時間の暇潰しとしても、十分いけるのも嬉しいところだ。
グラフィック、音楽、効果音のレベルも非常に高い。使い回しが多かったり、曲数が少なかったりなど、安い値段なりの欠点もあるが、それでも十分な質と完成度を誇っている。何気に音楽はスーパースィープの細江慎治氏が手掛けていたりと、ゲームミュージック好きにとっては見逃せないところもある。ワリと良い曲が揃ってますぞ。

演出全般もなかなかの迫力。特に芸術的と言っても不思議でない、弾幕の数々は単に見ているだけでも圧倒される。敵も結構な量が迫ってきたりと、動きで大いに魅せてくれる。終盤、ちょっとだけ処理落ちする部分もあるが、それも綺麗な弾幕と派手なエフェクトがプレイヤーの目を見張る。そのインパクトのある映像美は要チェックだ。
何かと先入観で懸念され易い弾幕シューティングである為、その言葉を聞いたり、公式サイトの動画や画面写真で尻ごみしてしまう悪い部分があるのも否めない。また、MANIACタイプはそこそこの難易度ではあるとは言え、失敗時のデメリットが少ないので、あらゆる弾幕シューティングを制覇したプレイヤーには物足りなさを覚えるかもしれない。
しかし、断言しよう。今作は紛れも無く万人にお薦めできる傑作だ。
弾幕シューティングなんて所詮は選ばれた人向けのゲームでしょ、なんて思う人ほど是非、騙されたと思ってプレイしてみて欲しい。素晴らしく爽快な体験の数々をお約束する。また、弾幕シューティングにチャレンジしてみたいと考えてる人も、入門編として今作はこの上ない。ここから無情で素敵な弾幕シューティングの世界を覗いてみよう。
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