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≫スターフォックスコマンド
■発売元 任天堂
■開発元 キュー・ゲームス
■ジャンル 戦略&3Dシューティング
■CERO A(全年齢対象)
■定価 4800円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1〜6人
■セーブデータ数 1つ(※フラッシュメモリバックアップ)
■その他 DS振動カートリッジ対応、DSワイヤレスプレイ&ダウンロードプレイ対応、ニンテンドーWi-Fiコネクション対応
■総説明書ページ数 36ページ
■推定クリア時間 6〜8時間(エンディング目的)、80〜90時間(完全攻略目的)
かつて『惑星コーネリア』を始めとするライラット系の支配を目論んだ天才科学者、ドクター・アンドルフが雇われ遊撃隊『スターフォックス』によって倒されてから数年後。

禁断の惑星としてコーネリア軍の厳重な監視下に置かれていた惑星ベノムの海中から突如、アングラー皇帝なる謎の人物が自身の侵略軍と共に出現。
瞬く間にライラット系の文明都市を占領してしまった。

この緊急事態に対し、コーネリア軍はすぐさまスターフォックスの面々に召集をかける。
しかし、今やスターフォックスはメンバーが分散状態となっていた…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆戦略SLGと3DSHTを違和感なく融合させた、斬新な手応えに富んだゲームシステム
◆フォックスらしいチームプレイと戦略SLG特有の考える面白さに富んだ『戦略マップ』
◆ラウンドカプセル、基地通過による飛行時間の延長など、マップ上での進行手順をより多彩なものへと仕立て上げる、多種多様な戦略的要素の数々
◆タッチペンで一筆書きし、ルートを決める分かり易さが秀逸な『ルート作成フェイズ』
◆制限時間付きオールレンジバトルによる、全く新しい緊張感に富んだ3DSHTパートこと『アクションフェイズ』
◆敵母艦の撃墜、ミサイル追跡など多種多様なアクションフェイズのミッション
◆オールラウンド型、パワー型などの差別化が綺麗に成されたプレイヤーキャラ(自機)達
◆初代フォックスの味に富んだ、個性的な姿をした敵キャラクター達
◆分岐によるマルチエンディング、スコアアタックなど充実したボリュームとやり込み要素
◆ほぼ全てタッチペンだけで行う、その思い切った試みが刺激的な癖のある操作性
◆高めだがプレイヤーの腕の上達が反映される絶妙さが気持ち良い、ゲームバランス
◆いつに無く暗いテイストのストーリー(シリーズファン衝撃の展開もチラホラ)
◆DSとは思えないほど美しい、自機や地形のモデリングが異彩を放つグラフィック
◆主張のはっきりとした旋律がとても気持ち良い、荘厳な音楽(名曲もチラホラ)
◆仰々しい爆発音、カメラワークなどフォックス節炸裂の演出群
◆初代フォックスファンなら爆笑必至の動物ボイス(更に自分の声を録音し、それをボイスとする驚きの機能まで搭載)

--- Bad Point ---
◆無理矢理DSらしさを出そうとする意図が見え見えな、癖の強いタッチペン操作
◆操作に慣れてないと辛い難易度の高さと仕組みが嫌らしいミサイル撃墜ミッション(フォックスか、ファルコで挑めば簡単にこなせるのだが…)
◆最後にローリングを決めねばならないのが逆に煩わしい敵母艦撃墜ミッション
◆シリーズファンには賛否両論なゲームシステム
◆同じく、シリーズファンにはその暗いテイストが好みを分けるストーリー
◆必ずバッドエンドで終了する初回プレイ(つまり2周しないとグッドエンドは無理…)
◆後半におけるジャミングエリアばかりの戦略マップ(ちょっと無理矢理過ぎる…)
▼Review ≪Last Update : 12/31/2008≫
全ては認められなかったが故の反乱…。

かつての戦いの信じ難い真相が暴かれる。


任天堂初の3Dポリゴンシューティングとしてリリースされ、その後はアクションアドベンチャーへと様変わりするなど、歪な進化を遂げてきた『スターフォックス』シリーズの最新作。開発は初代『スターフォックス』にプログラマーとして参加したディラン・カスバート氏が興したキュー・ゲームスが担当。

ゲームシステムから手応えまで、全てが異色。
だが、従来のフォックスらしさはバッチリのシリーズ屈指の意欲作だ。

ゲーム内容は、これまでのスターフォックスシリーズとは完全な別物。3D視点で展開するシューティングゲームというスタイルこそ同じだが、ゲームシステムに関しては過去のシリーズとは一線を欠く、斬新なものが起用されている。
それこそが売りその一、全体マップとシューティングステージの二つを経由して展開する、戦略性に富んだステージ進行システム。今作では従来のスターフォックスとは異なり、メインのシューティングの他に新しく戦略シミュレーション風味で展開する『戦略マップ』が登場。ここでフォックスを初めとする仲間達が進むルートをタッチペンで描き、マップ上を徘徊する敵と戦闘をしたり、基地に突入すると言った行動を展開していくという、新たなプレイスタイルを取り入れた要素が導入されたのだ。更にこのシステムの追加により、ステージの構成も大幅に変化。というか、従来のフォックスにあったシンプルなシューティングステージが無くなった。全てのステージがこの戦略マップが用意された、密度の濃い構成のものと改められたのである。つまり、従来のようなシンプルにシューティングステージを楽しめるステージは皆無!まさに、フォックスらしさ壊滅と言っても良いほど、別物臭漂う内容になってしまっている。
しかし、だからと言って今作がフォックスらしくない、そして面白くないという訳ではない。確かに、シンプルなシューティングを求める熱心なファンにとっては賛否が分かれるかもしれないが、肝心の内容自体は別物でありながらも大変フォックスらしく、それでいて面白くてやり応えのあるものに仕上がっている。
それも全ては、このシステム…マップでルートを作成し、敵と戦闘していく要素そのものに終始する。基本の仕組みこそ各マップはタッチペンで進行ルートを描く『ルート作成フェイズ』、作成したルートの上をキャラクター達が自動的に行動する『ムーブフェイズ』、そしてマップ上で遭遇した敵との戦闘を行うお馴染みのシューティングパートこと『アクションフェイズ』の三つのフェイズを経由していくものと、正直言ってちょっとややこしい。
だが、いざやってみると作り自体は意外にシンプル。尚且つ戦略シミュレーション独自の旨み、敵の行動ルートを予測して駒(自機)のルートを描いていく「考える面白さ」が活きたものに仕上げられている事に気付かされる。
特に各マップでの敵の配置と構成が実に絶妙。今作ではプレイヤーの敗北条件として、自機のクレジット消失以外に、マップ上にある母艦『グレートフォックス』が敵機に制圧される、或いはミサイルで撃沈されるというのがあり、若干こちら側のデメリットの多い仕様になってるのだが、このデメリットをゲームとして面白くする味付けが今作ではしっかりしていて、それがかの敵の配置、構成に実に良い感じに活かされているのである。何も考えずに適当に敵を一つずつ潰していると、行動スピードの早い敵がプレイヤーの届かぬ所へと進んでしまい、そのまま取り返しの付かぬ事態に陥ってしまったり、また戦力が分散されるような所にミサイル発射台が配置されているなどと、実際にご覧になってみれば一目瞭然だが、とにかくこの要素が単なるおまけで収束していない事がよく分かるだろう。
それにマップ自体も単に敵と戦うところだけでなく、母艦が放つミサイル中心で敵を撃墜していくところや、ジャミングによって一部のエリアが見えない場所等、色んなバリエーションも豊富。一つ一つ戦略を練る楽しみがしっかりしていて、思わず時間を忘れて熱中してしまう中毒性をも醸し出している。
他にも戦略性を醸し出す付加要素も充実していて、行動ルートを描く範囲を拡張させる自軍基地や先の敵を一発で仕留める母艦ミサイルなど様々。多彩なスタイルで自分なりの進軍が楽しめるその懐の広さには、今作が如何に戦略シミュレーションの特質を把握した上でこのシステムを作ったかを深々と実感させられるだろう。こんなのフォックスじゃないだろ!…お怒りはごもっとも。確かに、フォックスにしてはシステムは別物臭強めだ。しかし、しかしだ。これまでの流れを見れば一目瞭然だが、このシステム自体はまさにフォックスなくして成し遂げられなかったもの。それに、戦略マップもおまけと言うには失礼なほど徹底的に作り込まれている。それでもまだ、このシステムは非難対象に当たるだろうか?
とにかく、ゲームとしての面白さは万全。そしてフォックスらしさもしっかりとしたものにちゃんと仕上げられているのだ。実際に触ってみれば、その本気が痛いほどお分かりになるだろう…。

そして、フォックスと言えばお馴染みのシューティングパートこと『アクションフェイズ』も、これまた過去のとは別物臭強めだが、実に面白いものに仕上げられている。
基本的に今作のシューティングステージは全てオールレンジ…360度のフィールドで展開されるステージだけと、随分と質素なものとされてしまっているのだが、そこを今作は面白い要素と改良を加えてブラッシュアップ。敵のバリエーションを増強、行動制限を示す制限時間を搭載、自機のアクションをより自然にすると言った細かなアレンジが加えられており、非常に気持ちよく敵との緊張感溢れるバトルが楽しめるように作り込まれている。
中でも注目すべきは、制限時間システムの搭載だろう。基本的にこのフェイズでは制限時間が設定されていて、この時間内にターゲットである敵を倒さなければ1ミスとなるなど、従来のフォックスとは異なる、速やかに敵を仕留める緊張感を絶妙に演出しているのだ。その為、これまでにも増して素早い操作が求められるなど、従来にも増してスピード感溢れる戦闘が画面いっぱいに展開。スローペースになりがちなオールレンジのステージに、勢いをつけた実に上手いゲームデザインが図られたものに仕上げられている。逆に制限時間が設けられたことにより、自由に空を飛び回れないデメリットが生じてしまったのは否めないが、戦略マップの存在を考慮すればこうするのも致し方が無いと言ったところ。あえてオールレンジ元来の魅力を殺して新しいゲーム性の磨きこみに回した姿勢には、改めて元祖フォックスを手掛けたスタッフのセンスの高さを痛感させられるだろう。
また、今作でプレイヤーが相手にする敵の自機たちもまた、個性的な面子が盛り沢山で戦いの面白さがしっかりしている辺りもお見事。オールレンジ故に地形の起伏が付けられない都合で、敵の個性を磨き上げる事に徹する辺りも、流石は元祖スタッフと言った所だ。更にステージも単なる敵との戦闘のみならず、ミサイルを追跡するステージや母艦を撃墜する二部構成ステージ、そしてボスバトルステージなど色々な種類が用意されている。ただ、如何せんこの辺のバリエーション分けは甘いと言わざるを得ず、特に本編において頻繁にこなす母艦を撃墜するミサイルを追跡するステージは難易度が他に比べて極端に高く、初心者を挫折させてしまうほどの力に富んでしまっているのが辛い。戦闘に回す自機次第では難易度も大幅に下がるが(ちなみにフォックス、ファルコでぶつけると凄く簡単にこなせる)、それもまた最初の時点では気付き難いから問題。この辺は正直、もう少し敷居を低くして欲しかったところだ。
それはミサイルと同じ仕組みの母艦撃墜のステージもまた然り。ミサイルと同じようにガイドビーコン(いわゆる自機が潜り抜けねばならないマス)を潜らねばならない仕組みと、全て潜った後にローリングのアクションをしなければならないのは、実に煩わしい。特に後者のアクションは必然性が薄く、何故入れたのかの意図が見えないのが痛い。できればここも、もっと敷居を低くして欲しかった。でもそれ以上に敷居を低くすべきだったのは自機の操作だろう。何と今作では自機の操作は全てタッチペンで行う。十字キーを初めとする全てのボタンはショットボタンに割り振られてしまっていて、何が何でもそれで動かさねばならないのだ。単刀直入に言って、これは桁違いに癖が強い。慣れればどうにかなるにせよ、そこまでに消費する時間が長く、それが返ってゲームの煩わしさを生むという副作用を及ぼしてしまっている。更に、何でこの操作にする必要があったのかという必然性も薄く、十字キー操作の方が明らかに快適だというオチに収束している始末。総じて敷居が高過ぎな上、無理矢理感バリバリなのだ。
正直、ここは素直に十字キーの操作をサブとして用意して欲しかったの一言に尽きる。システム自体が独自性を出してるのだから、ここは素直にDSらしさとは無縁にすべきだった。それなのにあえて無縁にせず、この路線に走ったのにはただひたすら…残念の一言だ。何も操作にまでシステムと同じ路線に走る必要など無かったのに。この点に関しては正直、元祖スタッフのDSに対する悪い解釈が露骨に出てしまった感じだ…。
ただ、そんな作りの甘い箇所があるとは言え、このシューティングパート自体が面白い作りである事実は変わらず。ここもまた、戦略マップを含めたメインシステムと同様に、元祖スタッフの面白いゲームを作ろうとする志の高さに富んだ仕上がりとなっている。本当、言っちゃ悪いが前作の『アサルト』とは段違いだ。

その他、ゲームバランスも良好。操作性と一部ステージで多少粗もあるが、ちゃんとゲームシステムの旨みを引き出す調整が徹底されていて、気持ちの良いゲーム展開が堪能できるようになっている。操作が上手くなった分だけ本編に結果が反映される辺りも流石。任天堂らしいセンス溢れる仕事ぶりが発揮されている。
総計ボリュームも今回は分岐によるマルチエンディング制が導入されたのもあり充実。特定の選択肢を選ばないと遊べないステージも満載で、久々にフォックスらしい再プレイの面白さが発揮された作りとなっている。 グラフィック、音楽、演出周りもバッチリ。特に音楽は久々にフォックスらしい荘厳且つSFチックな曲が満載で、シリーズファンならば感涙モノの仕上がりとなっている。
演出周りもシューティングの基本が丸殺し状態だった『アサルト』とは大違い。敵を撃墜した時はちゃんとした爆発音が鳴るし、ボスだって仰々しいまでの大爆発ラッシュ!そのあまりにもしっかりとした演出群には、『アサルト』で絶望を覚えたユーザーも身震いするほどの感動を覚えるだろう。フォックス節全開です。

また、Wi-Fiコネクションを通じた対戦プレイ、撃墜数稼ぎなどのやり込み要素、いつになく暗いテイストのストーリーなど、今作が秘めた見所はまだまだある。
とにかく、タッチペン操作を主体とする敷居の高さ、一部ステージの極端な難易度の高さが残念ではあるが、ゲームとしての雰囲気は紛れも無くスターフォックス。完成度も相当なものだ。ただ、それでもゲーム的にはかなり癖が強いものとなっているので、人によって極端に好みが分かれる内容なのは否めない。
それ故に総評としては、シンプルなシューティングとしてのフォックスを求める方にはお薦めできない一本と言った所。逆に、前作の『アサルト』以上にフォックスらしいゲームがやりたい、特殊なシューティングゲームが楽しみたい方には自信を持ってお薦めできる傑作だ。爆音鳴り響く展開とDSだからこそ実現した手応え、その双方を楽しみたかったら是非ともプレイすべし。まだまだフォックスも捨てたモンじゃありませんよ。
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