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≫影之伝説 THE LEGEND OF KAGE 2
■発売元 タイトー
■開発元 ランカース
■ジャンル アクション
■CERO A(全年齢対象)
■定価 3990円(税込)
■公式サイト こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 4つ(※フラッシュメモリバックアップ)
■総説明書ページ数 20ページ
■推定クリア時間 6時間〜7時間(エンディング目的)、20〜35時間(完全攻略目的)
戦国の世も終わり、徳川幕府が始まった頃のこと。
人々はこの世の平穏が続くと思っていた。
しかし、まだ戦国の恨みは治まった訳ではなかった。

強力な霊力を持つ大巫女、霧姫(きりひめ)。
その力を利用しようと企む、ある組織があった。
その組織の首領で、徳川に恨みを持つ妖術使い・雪草妖四郎は、自らの霊力に霧姫の霊力を合わせ、この世を徳川の手から奪おうと画策し、霧姫をさらってしまったのである。

霧姫を救う為、立ち上がった伊賀の忍者、影と千尋。
数多の魔霊達に立ち向かう二人を待つ運命とは…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆正統派のステージクリア方式を起用した、親しみ易いゲームシステム
◆手裏剣、剣撃から術攻撃まで、多彩なバリエーションが用意されたプレイヤーアクション
◆攻撃力から運動能力まで、共にまるで違う個性を持った、二人の主人公キャラクター
◆DSならではの二画面ぶち抜きで作られた、独特のステージデザイン
◆上画面からの敵の攻撃など、二画面ぶち抜きならではの各ステージのギミック群(従来のステージクリア型以外のステージもあったりと、内容も個性的)
◆ゴリ押しの効かぬ、テクニック重視のバランス調整が成されたボス戦(ボスの攻撃パターンも練られている)
◆プレイスタイルによって新たなアクションが可能となる仕組みが面白い、スキルシステム
◆軽快に各種アクションが繰り出せる、レスポンスの良い操作性
◆プレイヤー自身の腕が結果を左右する、緻密且つ絶妙なゲームバランス
◆隠しアイテム回収、隠し難易度の攻略など、地味ながらも充実したやり込み要素
◆イラストギャラリーにサウンドテストまで、マニアにはたまらないおまけ要素
◆派手過ぎず地味過ぎずのバランスの良いドット絵が見事なグラフィック
◆アクションゲームらしい、疾走感溢れる良質な音楽(名曲も満載)
◆タイトーらしい陰鬱さが描かれた、見所満載のシナリオ(主人公別に内容が全く異なるのも面白い)

--- Bad Point ---
◆旧作の面影の無いゲームシステム&ゲーム性(旧作経験者は違和感を覚えるかも)
◆挙動が軽くて癖があり、若干の慣れが必要とされるジャンプ操作
◆何故かタッチペン操作以外受け付けない『術合成』のパート(専用にする必要はなかったのでは…)
◆全能力解放を目指すと多少、作業的になるスキルシステム
◆充実しているが、ギャラリー制覇など、多少作業的になるやり込み要素
◆賛否の分かれるシナリオの結末(呆気に取られるかも…)
▼Review ≪Last Update : 12/27/2009≫
やはり、姫を助けても…

続きは本編をご覧ください。


1985年にアーケードで発売され、FM音源を駆使した音楽と意外なエンディングで当時のプレイヤーに衝撃を与えた名作『影の伝説』の13年ぶりとなる続編。開発は『世界樹の迷宮』シリーズのプログラムパートなど、様々な作品で縁の下の力持ち的な役割をこなしている実力派のデベロッパー、ランカース。

堅実な作りの、安心感抜群のアクションゲームだ。

内容は横スクロールのステージクリア型アクションゲーム。影、または千尋のいずれかの主人公を操作し、全12ものステージを攻略していく、至ってオーソドックスな内容だ。
ただ、ゲーム性は、前作に当たるアーケード版、ファミコン版ほかの影の伝説とは劇的に異なる。一応、続編を名乗ってはいるが、実際は影之伝説の名を使った、新作アクションゲームと見るのが正しいだろう。
第一、プレイヤーアクションやステージ構成、システム構成と言った基本的な所からして違う。アクションにして言えば、手裏剣と刀の武器こそ共通しているものの、手裏剣が走りながら投げられない、ダッシュ斬りや連続斬りができる等、性質からしてまるで別物だ。更に十字キー(レバー)の上を倒して行うジャンプ操作も、世間一般のアクションゲームと同様、ボタンジャンプとなっている。ステージ構成もまた然り。1つ1つが独立した内容となっているだけでなく、ステージの最後に必ずボス戦があるなど、スーパーファミコンやメガドライブ時代に多く見られたアクションゲームを髣髴とさせる構成となっている。また、ステージによっては、脱出や一騎打ちなど、特殊な構成の面も。ストレートなステージクリア型アクションに留まらぬ工夫が凝らされているのも、一つの特徴である。
そして、肝心のシステムもまた別物。そもそも一発死でなく、ダメージ制である時点で、新作同然な内容なのは明らか。旧作のシビアさは、皆無に等しいバランス調整が取られている。それのみならず、敵に大ダメージを与える特殊攻撃『奥義』、プレイスタイルに応じてアクションのバリエーションが増えていく『スキル』などの特殊なシステムも導入されており、全く異なるゲーム性と手応えを演出している。特に『スキル』は、プレイスタイルに応じてアクションが増えていく仕組みからして、何処となくゲームボーイアドバンスの『ロックマンゼロ』シリーズを髣髴とさせる。プレイ経験のある方なら、ちょっとしたデジャヴを感じるかもしれない。
更に、ステージ構成の話にまた戻るが、ここにも独自の工夫が凝らされており、基本的に全ステージ、二画面ぶち抜きの画面構成とされている。しかし、ぶち抜き構成とは言え、基本は下画面中心でゲームが展開。同じDSの『魂斗羅Dual Sprits』のように上画面へ移動するプレイは要求されない。あくまでも、ぶち抜きは演出として…プレイヤーのジャンプ力の高さやステージ全体の広さを魅せる為のもの。上も下も構成は一貫しているので、どちらか片方に神経を配る必要なく、快適なゲームプレイが楽しめるようになっている。折角、ぶち抜きしているのだから、分割して活かす仕掛けとか凝らしても…と思うのも事実だが、これはこれで新鮮なものがある。また、魅せる為に二画面ぶち抜きというコンセプトも新しく、DSのゲームで、ありそうで無かったものを表現しているので、そういう意味ではこの手法は大いにアリと言えるだろう。忍者のアクションゲームとしても、この構成自体はコンセプトにマッチして悪くない。
やや駆け足で紹介したが、このように内容自体はほとんど新作同然。故に、旧作のような内容を期待してプレイすると、肩透かしに遭う確率は大。主にオールドユーザーだが、そういう期待を持って今作をプレイするのは、止めておいた方が良いだろう。そうも変わり過ぎている故、ゲーム自体は旧作をやり込んだ層には賛否が分かれるかもしれない。

しかし今作、一本のアクションゲームとしての完成度はかなりのものだ。アクションの爽快感、ステージ構成、ゲームバランス、操作性。そのどれもが高い水準でまとめられており、古き良き王道のアクションゲームとしての面白さが見事に表現された内容に仕上げられている。
特に見事なのがゲームバランス。優し過ぎず、かと言って難し過ぎずの緻密且つ絶妙なバランスを堅持しており、王道のアクションゲームとしての面白さを最大限に演出している。
厳密にはステージ構成とボス戦の二つ。前者は敵配置、トラップの配置共に変に意地悪過ぎず、温過ぎずのバランスの取れた配慮が成されており、理に適った手応えを丁寧に表現している。また、止まらせるような仕掛けを減らし、ひたすらステージを走り続けられ、且つ休ませないという、アクションゲームの独自のテンポの良さを厳守する工夫が凝らされているのも秀逸だ。ステージによっては途中、スクロールが止まって進めなくなる所があったりするのだが、そこでトリッキーな動きをする強敵を出現させ、プレイヤーをそれとの戦いに注力させる具合に。そのアクションゲームの魅力を分かりきった仕事ぶりには、アクション好きプレイヤーも納得の満足感を得られるだろう。
先にも紹介したが、全ステージが単にゴールを目指すものでなく、時には脱出あり、一騎打ちアリと言った具合に様々なシチュエーションを用意しているのも見事。各ステージの個性が丁寧に表現されている上、そのパターンが多彩なので、プレイヤーも飽き難い。ここもまた、アクションの魅力をよく分かりきっていると言える。
そして後者、ボス戦もイタズラなゴリ押しでは絶対に勝利できない、理に適った調整が成されているのが見事。攻撃パターンを見切り、隙を付く攻撃を仕掛けていかなければならないので、どのボス戦も緊張感があり、そして戦う面白さがある。ボスのバリエーションもその面白さを追及して、人型ボスを多めに仕込むなど、アクション好きなら唸る事必至のラインナップとなってるのがさすがだ。アルゴリズムも練られており、常にプレイヤー側にアドリブの判断を要してくるその動きは、見ているだけでも魅了されるものがある。テクニックこそが全てを制するとも言うべき、この調整は先のステージとも並行するが、アクションの魅力をよく分かっているからこそ出来た技と言った感じ。ここもまた、アクション好きも納得の満足感が味わえるだろう。というよりむしろ、ステージ以上に白熱する仕上がりになっているので、それ以上のものを感じ取れるかもしれない。ネタバレだが、このボス戦だけが楽しめる専用のおまけモードが用意されているのも嬉しいところだ。そう言ったサービスもしっかりしている所がまた、プレイヤーの気持ちを見抜いていて地味にニクい。
斬新なシステムを積み、そっちを目立たせようとさせるアクションが昨今は増えつつあり、新たな体験と感動を伝え続けている。しかし、そうは言ってもやはり、王道には敵わない…というのが実際のところ。地味ではあっても、やはり安定感がある。そんな安定感をあえて優先し、変わらぬ面白さを追求した今作は、ここ最近のアクションゲームの中では、結構珍しい部類に入ると言えるだろう。良い意味でも悪い意味でも古臭いアクションゲーム、今作にはそんな呼び名が良く似合う。 ただ、それ故に幾つかの要素が蛇足な空気を醸し出してしまってるのは勿体無い。
特に『奥義』の作成システムだが、ここだけタッチペンでパズルをしなければならないというのは、さすがに入り組み過ぎとしか言い様が無い。二画面以外にもDSらしさを出そうとしたのだろうが、空回りしている感は否めず。DSらしさは二画面で足りてるので、普通に術のアイテムを手に入れれば使えるようになる、シンプルな方式にして欲しかったところだ。
他のスキルや二人の主人公と言ったシステムは、そこまで悪くないだけに勿体無い。

その他、操作性も若干、ジャンプの挙動に癖があり、若干慣れを要されるのが気になる。ただ、先も言ったように全体的にはかなり良い感触で、アクション特有の動かす面白さに秀でているのはさすがの一言に尽きる。
全体ボリュームもステージが12とそこまで多くはないが、隠し難易度やイラスト集めと言ったやり込みは無駄に充実しており、それらをコンプリートする目的でプレイすれば、かなり遊び込める。おまけ要素も先のイラストが閲覧できるギャラリーの他、ボスとの連戦が楽しめるモード等、大変魅力的なものが揃っているのも地味にニクい。
グラフィック、音楽も及第点の出来。特に秀逸なのが音楽で、元々音楽の出来が良かった旧作が背景にある故にか、気合いの入った仕上がりとなっている。名曲も満載で、中でもステージ6、ボス戦全般の曲は要チェックだ。更に、旧作の代名詞とも言える曲もアレンジされて収録されているので、そちらも並行して要チェックである。オールドファン感涙のナイスなアレンジになってるぞ。
シナリオも王道ながら、タイトーらしいダークさが炸裂。最後の結末とか、往年のタイトーファンなら「やってくれました!」と笑ってしまうこと、請け合いだ。逆にその頃を知らない世代なら「え?」と、呆気に取られてしまうかもしれないが…。

その他、攻撃力等の差異がハッキリした二人の主人公、異なるシナリオ展開、多彩な術なども凝った仕上がり。良心的なリトライシステムなど、サポート周りが痒い所にまで手が届いているのもまた、特筆すべき点と言える。
旧作とは完全な別物だ。しかし、アクションゲームとしての完成度の高さは折り紙付き。地味ながらも安定した王道の面白さは、今なお色褪せぬ魅力に秀でている。定価も安価で、それ以上に遊び込める内容となっていてコストパフォーマンスが非常に高い。旧作の内容を期待するプレイヤーには賛否が分かれるかもしれないが、アクションゲーム好きを自認するプレイヤーなら是非、プレイして頂きたい傑作である。今時珍しい、王道の面白さを追求したこの『影之伝説 THE LEGEND OF KAGE 2』。変わらぬ面白さと手強さを体感するべし。
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