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≫ロックス・クエスト〜新米アーキニアの百日戦争
■発売元 THQジャパン
■開発元 5th CELL
■ジャンル バトルストラテジー
■CERO A(全年齢対象)
■定価 4800円(税別)
■公式サイト ≫任天堂:紹介ページ
▼Information
■プレイ人数 1〜2人
■セーブデータ数 2つ(※フラッシュメモリバックアップ)
■その他 DSワイヤレスプレイ対応
■総説明書ページ数 25ページ
■推定クリア時間 12時間〜15時間(エンディング目的)、30〜40時間(完全攻略目的)
アントニア王国の小さな村に住む少年、ロック。彼は祖父トビアスと妹のエミ、三人で暮らしながら、特別な能力を使い、要塞の建設や修理を行う兵士『アーキニア』としての技を磨いていた。
だが、その日常はロックと若きアーキニア『アイザイア』との出会いによって崩された。

平和な村に、ロード・アゴニー率いる『クロックワーク軍』が侵攻してきたのである。
ロックは、アイザイアと共にこれを迎撃し、侵攻を食い止めることに成功する。
しかし、軍の侵攻と共に、妹のエミが突如として行方不明になったことを祖父のトビアスから伝えられる。

エミを探す為、ロックはアントニア王国の新米アーキニアとして入隊。
世界各地で侵攻を繰り返す、クロックワーク軍との戦争に巻き込まれていくことになる。

それは同時に、彼自身の悲劇の始まりでもあった…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆迎撃要塞を建設してプレイヤー自らも要塞と共に戦う、奇抜過ぎるゲームシステム
◆タッチペン操作による簡単なミニゲームを成功させることによって行われる、ユニークなプレイヤーの攻撃システム
◆番号順番押しから歯車回しまで、各種異なるミニゲームが収録された、多彩な武器群
◆通常型砲台の他に地雷など、個性豊かなものが取り揃えられた要塞建設用の兵器群
◆敵の迎撃と要塞の修理も行う故の、独特の「忙しさ」が表現された『戦闘パート』
◆敵の侵入阻止から友軍支援、先制攻撃と、防衛以外も盛り沢山の戦闘シチュエーション
◆一般兵士から魔法使い、更には潜る兵士まで、バリエーション豊かな敵ユニット達
◆オールタッチペンながらレスポンスは良好で、見た目よりも快適な操作性
◆地形配置、敵侵入ルート、要塞建設可能地まで緻密な設計が成されたマップデザイン
◆難易度選択機能にマップクリアの度に自動で行われるセーブ機能と、痒い所にまで手の届いたオプション群
◆マップ総数100強、難易度別のやり込みありと結構、充実した総計ボリューム
◆低い難易度でも攻守の駆け引きを尊重した、こだわりのゲームバランス
◆古き良きスーパーファミコン時代を髣髴とさせる、暖かみのあるドット絵グラフィック
◆数は少ないが力強く、それでいて哀愁までも漂う旋律が印象的な音楽
◆終始、シビアな雰囲気で統一された世界観とシナリオ

--- Bad Point ---
◆癖の強過ぎるキャラクターデザイン(洋ゲー臭バリバリ)
◆新兵器の作成時、毎回プレイするハメになるパズルゲーム(面倒臭い)
◆世界観や展開はよく出来ているが、台詞回しが不完全極まりないシナリオ(ローカライズが不完全)
◆威力が強力過ぎて、他の武器を食う活躍を見せる酸の攻撃を行う武器(やり過ぎ…)
◆『ヘルパー』なる支援兵器が使えるようになってから、防衛無双へと陥るゲーム後半
◆難易度の制覇とスコアアタック程度と、全体的に乏しい感も否めないやり込み要素
◆シナリオの途中で決まってプレイするハメになる大砲ミニゲーム(早く本編を進めたい人にとっては苦痛でしかない)
▼Review ≪Last Update : 12/27/2009≫
「お前を…破壊する!」

気の緩みがもたらした悲劇がここに。


ドローン トゥ ライフ 神様のマリオネット』を手掛けたデベロッパー『5th CELL』が放つ、完全新作のストラテジーゲーム。国内版ローカライズ及び販売は、先行発売された海外版と同じくTHQの日本事業部(THQジャパン)が手掛けた。

創って守り、自分も戦う。
他に類を見ないゲームシステムが光る、変り種ストラテジーゲームだ。

変り種ゆえに内容も上手く表現し難い。無理矢理簡潔にまとめると、マップ上に壁や砲台などを配置し、侵攻してくる敵軍をそれらとプレイヤーが操作する主人公ロックの直接攻撃で撃退し、一定時間内、指定の防衛ポイントを守り抜くというものである。仕組み自体は、2007年以降からインターネット上のFLASHゲームとして誕生した、塔を建設して侵攻する敵を倒すストラテジーゲーム『タワーディフェンス』をベースとしたものとなっている。
ただ、今作はそんな一般のタワーディフェンスと違い、塔の建設が敵の侵攻と同時でなく、建設は建設、侵攻は侵攻と別々に切り離されており、この二つを交互に介しながら展開していくのが特徴。更に敵の侵攻において、プレイヤーキャラを操作して侵攻してくる敵に攻撃できる、アクションRPG的要素があるのも特徴の一つである。
各建設と戦闘は『建設パート』と『戦闘パート』と名付けられている。
『建設パート』は、マップ上に壁や砲台などを資源である『ソース(いわゆるお金)』を使って配置する作業をメインに行う。
一般のタワーディフェンスでは、敵の侵攻時でも砲台などが配置できるが、今作ではこのパートでしか配置は不可能。その為、ここで一通り配置し終えたら、その状態で『戦闘パート』を乗り切らなくてはならなくなる。
また、これは『戦闘パート』も共通だが、制限時間が設けられているので、じっくり配置を考えてる暇も無い。しかも、制限時間は僅か2分程度と短め(※強制的に終了させる事も可能)。そんな風に考えていたら、壁しか配置できず、プレイヤーの直接攻撃で耐え切るしかなくなる…なんて事に(勿論、その後は絶望的な展開になる)。基本、作業でしかないパートだが、そうとは思わせない忙しさがある、珍しい且つ、緊張感溢れる作りとなっている。
その建設の後にスタートする『戦闘パート』は、その名の通りにマップに侵攻してくる敵の迎撃を行う。基本的に建設した砲台で応戦するが、先に紹介したようにプレイヤーキャラを動かしてマップを移動し、侵攻してくる敵に直接攻撃を与えるという事が可能。直接攻撃で敵を少し減らし、砲台の処理を効率化させるという、一風変わった戦略を取る事ができる。但し、一人で全ての敵を処理する事は絶対に不可能。攻撃システムの作りがアクションスタイルでなく、簡易的な戦闘モードで展開するスタイルな為、一体を倒すのに僅かな時間が要される仕様となっている為だ。なので、砲台と直接攻撃を上手く併用して戦うのが基本となる。あくまでもタワーディフェンスのゲームという事で、砲台を使うことも念頭に置いたシステム、調整となっている。また、直接攻撃以外に敵の攻撃を受けて損傷した砲台の修復(回復)も可能。基本的にこのパート終了時のマップの状態が次の建設パートへそのまま引き継がれるので、ソースを極力温存したければ修復を徹底し、守り抜いていく必要がある。だが、そちらに必要以上に時間を割くと、敵の量が増えて修復スピードが追いつかなくなる為、下手に集中し過ぎるのも危険。かと言って、侵攻する敵の攻撃に集中し過ぎるのもいけない…など、程度を考えた切り替えが求められてくる。一般的なタワーディフェンスなら、全体マップを上から見るスタイルな為、状況への対処はカーソルを素早く動かせば直に行える。だが、今作はマップを移動しながら状況を見ていく必要があるので、忙しさはカーソルの倍以上。そして更に、先を見通した判断までもが求められる。単にこれだけでも、この戦闘パートが如何に忙しいものであるのかは、簡単にイメージできると思う。
基本的にこれら、二つのパートを交互に数日間(数ターン間)繰り返し、最終的に全ターン守り抜く事ができればマップクリアとなる。しかし、守り抜くにしてもそれが如何に大変なものかは、これまでの紹介の通り。正直、巷のタワーディフェンス以上に緊張感があり、それでいて忙しい、非常に独自色溢れる内容となっている。

そして、今作の魅力も言うまでも無く。この独自のゲームシステムだ。基本は、タワーディフェンス…防衛主体の戦略シミュレーションゲームでありながら、アクションゲームのような慌しさに満ち溢れており、今まで味わった事の無い緊張感をプレイヤーに提供してくれる。何より、熱中度が半端じゃない。どのマップも一瞬の気の緩みが許されない作りとなっているので、目を離す暇も作れないほど。意外なところから敵が侵攻してきたり、予想だにしないタイプの敵が現れ、一瞬の内に防衛網が崩されたりと、その意表を付く展開の数々は、プレイヤーの関心を引き付けて離さない。
展開の起伏を付ける工夫もかなり秀逸だ。敵とか、一般的な兵士のみならずプレイヤーに大ダメージを与える魔法使いがいたり、壁や砲台をすり抜けて防衛ポイントにすぐ到達してしまう潜入兵がいたりと、種類が多彩で各マップでの戦闘を大いに盛り上げてくれる。戦闘マップにしても、単に防衛ポイントを守るだけでなく、ある時は敵の陣地に突撃して一網打尽にするミッションを任される事があったり、更に守るマップでも、防衛ポイントが移動するという驚愕の仕掛けがあったりと、色々と魅せてくれる。単に守るだけで終わらせないその展開の上手さは、さすがはレベルデザイン術に秀でた海外のメーカーだけにあると言ったところか。基本的には同じ事の繰り返しとなる内容なのだが、このように魅せ方が多彩である為、ワリと飽き難い作りとなっている。
他の細かなアイディアと工夫の数々も面白い。基本、マップを淡々とクリアしていくスタイルでありながら、時にはRPGのように街の中を歩くクエスト要素があるところは、何処と無く『ドローン トゥ ライフ』の村を髣髴とさせる。操作もタッチペンしか使わないのだが、思ったよりも自然に動かす事ができ、無理矢理なDSらしさというのが無い。更にこの操作を活かしたプレイヤーキャラ、ロックの攻撃アクションも個性的で、いずれのアクションもペンのタッチする、スライドすると言った基本動作の楽しさを尊重した仕上がりになっている。数字を順にタッチするパンチ攻撃、ギアを回転させる酸攻撃と、各種攻撃のバリエーションも多彩で、シンプルながらも動かす楽しさに秀でているのも見事だ。無理矢理なペン操作が際立った、同じメーカーの製作の『ドローン トゥ ライフ』の反省が、上手く活かされた格好となっている。
そして、全体的なゲームバランスも、アクション要素がありながら、タワーディフェンスの「守って戦う」の醍醐味を尊重した調整とされているのが素晴らしい。プレイヤー一人の直接攻撃では敵の大群を押し留められないとか、「簡単に崩せるようにしたら無双になってしまう事、ちゃんと分かってますよ」というメッセージが感じ取れるのが良い。全体としても、複数の難易度がありながら、難し過ぎず優し過ぎずの丁度良いバランスでまとめられているのが嬉しいところだ。その丁度良さは、何処と無く日本のゲームらしい味わいがある。
しかし、全てが完璧とは言えず、後半以降から砲台の威力を増す『ヘルパー』なるものが登場し、それに伴って力押しが効き易くなってしまうのは残念。また、攻撃アクションの威力調節もお世辞にも綺麗にまとまっているとは言い難い。特に酸攻撃はあまりに一発の威力が強い上に使い勝手が良く、他の攻撃の存在を喰ってしまっているのは非常に気になる。敵が機械の兵士だから、酸なら大ダメージが与えられる…というのは、シナリオの設定とマッチしてはいるけど、全体のバランスを考え、これはもう少し威力を下げるべきだった。折角、他にも多彩な攻撃があるのに、勿体無い限りだ。

設定絡みで全体のシナリオも、台詞回しとかがあまりに雑で、折角の面白いテーマが台無しにされているのが非常に勿体無い。『ドローン トゥ ライフ』もそうだったが、このメーカーにはちゃんとしたシナリオを書ける人間がいないのか。ローカライズする際にも、アレンジが加えられただろうに、それを徹底しなかったスタッフもスタッフだ。展開は良く出来ていて、中盤には衝撃的な展開もあるのに、こんな雑さではそれも光らない。ゲームとは関係ない箇所とは言え、ここは本当に残念。キャラクターのデザインも不気味過ぎるなど、もっと日本を意識したアレンジを徹底して欲しかったところだ。
また、本編のボリュームは充実している反面、やり込み周りはフリーマップと難易度別チャレンジ程度しかないのも寂しい。おまけも乏しく、クリアしたらその時点で終わりと言うのも、何かジャンル的に物足りない。せめてサウンドテストとか用意出来なかったものか、悔やまれる。
逆に音楽、グラフィックの出来は総じて高い。特に音楽はサウンドテストの言葉を出した通り、名曲揃い。数こそ少ないが、各マップでの戦いを大いに盛り上げてくれる。何処と無く哀愁漂う旋律も強烈で、プレイヤーにとっては鳥肌が立ってしまったりするかもしれない。
演出もそこそこで、時折挿入される紙芝居風味のムービーデモはなかなかの出来。ほのぼのとしているように見えて、内容はかなりシビアと、そのギャップもまた面白くて、独特の味が醸し出されているのも見逃せないところである。

他にも、本編でほぼ強制的にやらされる事になるのが欠点だが、砲台迎撃のミニゲームや携帯ゲーム機らしい短時間で遊べるコンパクトな設計とターン単位のオートセーブ機能など、色々と秀でているところは多い。
バランスの粗やゲームを構成する部分があまりにお粗末では在るが、ゲームとしては非常に革新的な内容で、ストラテジーゲームの新境地を切り開いた、意欲的な内容となっている。単にタワーディフェンスのゲームとしても、アクション要素を始め、新しい試みと手応えが詰まっているなど、なかなか見逃せない魅力がある。
正直、バランスの粗とシナリオさえ良ければ申し分無しだったが、それでも十分に遊べる内容で新しい手応えに満ち溢れたこの『ロックス・クエスト』。タワーディフェンスが好きなプレイヤーは勿論の事、DSを持ってるユーザーもチャレンジしてみる価値が大いにある、意欲作だ。中毒性もワリと高いので、はまります。
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