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  4. 聖剣伝説DS Children Of Mana
≫聖剣伝説DS Children Of Mana
■発売元 スクウェア・エニックス
■開発元 ネクスエンタテイメント
■ジャンル アクションRPG
■CERO A(全年齢対象)
■定価 5040円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1〜4人
■セーブデータ数 3つ(※フラッシュメモリバックアップ)
■その他 DSワイヤレスプレイ対応
■総説明書ページ数 48ページ
■推定クリア時間 8〜12時間(エンディング目的)、30〜40時間(完全攻略目的)
世界の中心にある島、イルージャ。
そこには、太古の昔から天をも貫くほどの大きな『マナの樹』がそびえ立っていた。

これはそんな『マナの樹』の元に集まった子供達と、誕生して間もないマナの女神、そして聖なる剣を巡る物語である。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆ニンテンドーDS特有の機能を用いず、純粋なアクションRPGとして徹したゲーム設計(潔くて良い)
◆鬼気迫る、圧倒的なグラフィック(十八番だけにある凄さ)
◆見た目の雰囲気からは想像もつかないほど熱い音楽
◆若干の解像度の荒れもあるが、全体的に高クオリティのアニメーションムービー
◆ダンジョン攻略に進行が限定されている事もあって、比較的分かり易いゲーム展開
◆大勢の敵を吹っ飛ばす爽快感に満ちた、ソードアクション

--- Bad Point ---
◆単調なゲーム展開に拍車をかけているダンジョンのマップ流用システム
◆手強い謎解きがまるでなく、ほとんど敵との戦闘に特化してしまっているダンジョン構成
◆ダンジョン攻略に特化している事もあり、致命的に低い自由度
◆ソード以外の武器の使い勝手が悪い(矢など、まるで使い物にならない…)
◆返って、プレイヤーのストレスを溜める原因になっている、ダメージによるぶっ飛び
◆何故か装備レベルが定められている装備アイテム群(そんなの要らないって…)
◆攻撃や防御能力の強化だけという地味な機能しかない『ジェムシステム』
◆微妙にもたつく操作性(特にカーソルの反応が悪い)
◆メニューの表示、選択肢の表示などに微妙なローディングがある
◆プレイヤー置いてきぼりのストーリー展開(淡々としていて、面白くない)
◆不親切なセーブシステム(各ダンジョンの階層で行えないなど、配慮に欠ける)
◆大味過ぎるゲームバランス(ボスよりも雑魚の方が強い…)
▼Review ≪Last Update : 12/31/2006≫
末期症状、発症。

こちらが想像している以上に、容態は深刻だった。


スクウェア・エニックスを代表するアクションRPGシリーズ、『聖剣伝説』のDS初進出作。制作はGBAで『シャイニング・ソウル』シリーズなどを制作したネクステックこと、ネクスエンタテインメント、そしてシナリオ原案を『クロノ・クロス』等で知られる加藤 正人氏、音楽を伊藤 賢治氏等を初めとする豪華スタッフが手掛けている。

……しかし、こっ、これの何処があの聖剣伝説だ!?

……初めに断っておくが、私は聖剣シリーズはスーファミの『聖剣伝説2』を友人宅でほんの少しだけかじり、その続編である『3』を同じく友人宅で傍観した程度の人間であり、シリーズを本格的にプレイしたのは本作が初である。
そんな僅かな知識しかない人間ですら、そう感じるこの出来栄えは…。

基本的なゲーム内容は、様々なイベントやダンジョンを攻略しながらストーリーを進めていく、アクションRPG。過去の聖剣シリーズとあまり変わらないシステムを基礎としている。
しかし、本作には過去の聖剣シリーズと決定的に異なる点が存在する。
それは、フィールドマップが無い事。
過去の聖剣シリーズには所謂、『ゼルダの伝説』のようなフィールドマップが存在し、そこを通りながら次の町やダンジョンへと向かう進行形式を採用していたのだが、なんと今回は、そのフィールドマップがバッサリと切り捨てられ、村や町は最初のスタート地点である『マナの村』に一本化(他に町とかは存在しない!)。ダンジョンへはワールドマップで選択して直接向かう形式に変更されてしまっているのである。
「そりゃ、不思議のダンジョンじゃないか!」
まさに、そうである。村が一つだけ、フィールドマップなし、ダンジョン攻略に重きを置いているかのような設計、何処からどう見ても不思議のダンジョンに似たゲームシステム。つまり、今回はスーファミの2や3のような、アクションRPGではなく、アクション要素のあるダンジョンRPGと言わんばかりの内容となっているのである。これは、どう考えてもシリーズファンにとっては憤慨モノの内容。同時に、聖剣である事の必然性すら感じられないゲームシステムである。まあ、外伝として割り切れば、こういうのもアリだが、私はスーファミの『聖剣伝説2』やGBAの『新約〜』のような内容を期待して買ったのだ。それが、実際はシリーズとは全然違う外伝モノ…しかも、ダンジョン攻略型って、聞いてないよ、ダチョウ倶楽部だよ…。

しかし、これでまだ内容的に面白ければ結果オーライだった。
だが、実際は結果オーライでは済まされない内容…。
ダンジョンRPGという形式にモデルチェンジされ、ダンジョン攻略に集中できる設計になったのは良いのだが、とにかく何処のダンジョンのマップも構成が雑。難解な謎解き等を導入したりせず、ひたすら敵の数で勝負するという(階層内にいる敵を規定数倒していくだけの)、かなり稚拙な作りになってしまっている。
しかも、こういう大量の敵を相手するマップを本作では最後の最後まで、延々と繰り返していかねばならんのである。もう、辛過ぎ。ここでダンジョンのマップの形が変わる、所謂、自動生成システムが盛り込まれていれば、話は別だった。ところが、実際はそんなの全くあらず。それどころか、自動生成ならぬ流用システムが積まれており、プレイによっては同じマップが数回に渡ってプレイヤーの前に現れると言うトンデモな仕様が…。その為、とにかくゲーム展開が前半はまだしも、後半になるとダンジョンの階層の増加に伴って強烈にダレて来る。そのダレっぷりは、まさに一時間放置し、伸びに伸びてしまったラーメンの如く。
しかも、各階層ごとにセーブを行う事もできない不親切な要素付き。
全く持って、配慮が足りなさ過ぎである。せめて、流用じゃなくてしっかりと、各階層ごとに異なる部屋を置く程度の事をしていれば、この単調さは撤廃できたのに、何故、それを取り入れずにこんなものにしてしまったのか。
また、ダンジョンでプレイヤーの邪魔をしてくる敵の配置もお世辞にも良いバランスでまとまっているとは言えず、無駄に耐久度が高かったり、一匹ではまだしも、集団になると一瞬で瀕死の危機に晒されるなど、滅茶苦茶も良い所。しかも、必ずプレイヤーキャラは敵の攻撃を受けると、吹っ飛ばされるという変な仕様まで取り入れられている(敵も同じ)。そして、ダンジョンの最後で戦う事になるボスは激弱というオチ。いくらマルチプレイ(本作では、最大4人までのマルチプレイが可能)を想定したからとは言え、これを芸術的なバランスだと言える事ができるか?

ダンジョン以外に、装備システム、操作性にも不備が多い。そもそも、規定レベルに達しないと使う事ができない装備品が存在すると言う時点で既に不備だ。普通に使えれば良いのに、何故にまた、こんな面倒な要素を取り入れたりするか。
本作において新たに加えられた、プレイヤーの能力を強化するジェムというアイテムを装備する『ジェムシステム』もイマイチ、新鮮味に欠ける。というか、思いっきり『ロックマンエグゼ3』のナビカスの亜流的なものになっているのが痛い…。
そして、操作性もいちいちもたつく部分が多く、非常にストレスが溜まる。特に選択肢メニューやリングコマンド(シリーズ特有のアイコンを回転させて装備を変更するシステム)の微妙な嫌らしさは耐え難い。前者に限っては、選択肢メニューが開かれるまでに凄く精神的に悪いロード時間が存在するのも、嫌らしさに拍車をかけている。
どうして、こんな要らない不備を沢山残してしまったのか…。
全く持って、調整不足以外の何物ではない。
更にまた、主人公の選択機能と言った『聖剣伝説3』を髣髴とさせられるシステムもあるのだが、実は主人公を誰にしてもストーリーは同じであるなどと、全く必然性を感じさせないものとなってしまっているのも痛過ぎる。まぁ、肝心のゲーム本編の出来がアレなので、これはこれで良かったのかもしれないが。
だが、それとは別にストーリーはもう少しどうにかならなかったのかと言わざるを得ない。主人公ごとの違いが無いとは言え、ほとんどプレイヤー置いてきぼりの会話シーンばかりで、何を語りたいのかが全く分からず、唯我独尊にも程がある。ゲームと直接関係無い部分なので、ここの点について語る事自体が邪道ではあるが、パッケージ裏の謳い文句の事もあって、どうしても気にせざるを得ない。何をやっているんだか…。
というか、これが本当にあの加藤 正人氏によるシナリオなのかどうかが疑わしい。

しかし、ニンテンドーDSのタッチペン操作、2画面を下手に使おうとしていない姿勢は好印象。DSソフトとしてのらしさにこだわらず、ひたすらゲーム本編の作りに集中したのは良い判断であったと思う。おかげで、DSの特異なハード性能に違和感を感じる方でも、すんなりと溶け込める取っ付き易さを演出する事に成功している。
また、スクウェア・エニックスの十八番、グラフィックと音楽に対するこだわりは今作でも炸裂している。グラフィックは、基本は2Dドットだが、魔法のグラフィックなどに3DCGを取り込んでおり、かなりインパクトのある美しさを表現している。
アニメーションムービーの完成度も素晴らしい。若干、解像度の都合で荒れている面もあるが、全く気にならないレベル。改めて、ニンテンドーDSのハード性能の高さというものを実感させられる。
そして、音楽。これは本作の中で最も素晴らしい点の一つ。特に、序盤のボス戦で流れる曲は熱過ぎで、火傷必須。この音楽を聴く為だけでも、本作をプレイする価値は辛うじてあると言える。

だが、先述で挙げた部分はゲーム部分とは直接関係無いもの。こういう面に力を入れても、肝心のゲーム内容がゲーム内容では、ほとんど意味を成さない…。
総評して、このシリーズ経験の浅い自分を持ってしても、聖剣伝説らしさが無く、また数あるアクションRPGの中でも悪いと言わざるを得ない出来。グラフィックや音楽は折角、良い仕事をしているのに勿体無さ過ぎる。聖剣伝説シリーズファン並びに、シリーズ未経験者、そしてゲーム初心者共々、全くお薦めできない一品である。正直、定価で買うのだけは絶対避けた方が良い…。 もし、買うというのならばワゴンセール等で狙う事を推奨する。
それにしても、ここまで聖剣伝説が深刻な低迷に陥っているとは驚きだ…。
つうか、これ以上大ゴケを続けたら、冗談抜きに次が無いぞ…。大丈夫か…?
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