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≫Scurge: Hive(スカージハイブ)
■発売元 SouthPeak Games
■開発元 Orbital Media
■ジャンル アクションRPG
■ESRB Everyone 10+(10歳以上対象) ※軽度の暴力描写あり
■定価 29.99ドル
■公式サイト ≫SouthPeak紹介ページ
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 2つ(※フラッシュメモリバックアップ)
■その他 国内版ニンテンドーDS本体でも動作可能(※ニンテンドー3DSでも動作可)
■総説明書ページ数 52ページ
■推定クリア時間 9〜10時間(エンディング目的)、30〜45時間(完全攻略目的)
48時間前、惑星イノスの連合第58研究所より救難信号が発信。
この研究所では未知の毒性宇宙生物『スカージ』の研究が行われており、多くの科学者達がスカージの持つ未知のエネルギー能力を探る為、実験を繰り返していた。
信号を受信した連合軍は、彼らと契約を交わしている女性バウンティ・ハンター、ジェノサ・アルマを召集。研究所の生存者の救出及びスカージにまつわるデータの回収を命ずる。
そして軍は、スカージの強い毒性から身を守る為、彼女に特殊な防護スーツを提供した。

軍の依頼を受け、提供されたスーツを装備したジェノサは、惑星イノスへと接近。
だが、それと同時に彼女の宇宙船をスカージが強襲。更にスカージの毒は防護スーツでも防ぎ切れないほど強力で、その進行を遅らせる程度の効果しか発揮できない事が判明する。
かくしてスカージの毒に感染し、死の恐怖にさらされるジェノサ。
果たして彼女は、無事に任務を遂行できるのか?
▼Points Check
--- Good Point ---
◆探索型アクション特有のスロープレイを封じ、迫り来る死の恐怖による素潜り的なゲーム性を演出した感染システム
◆敵との戦闘におけるパズル的な戦略性を演出する、ユニークな属性システム
◆Rボタン+十字ボタンで即座に行える属性切り替えなど、快適でレスポンスも良好な優れたインターフェース
◆感染システムの恩恵による、文字通り『背水の陣』な展開となる手応え抜群のボス戦
◆ギミックこそ地味だがセーブポイントまでの距離設定、ショートカットルートの配置など、気持ちよく探索を行えるよう丁寧に作られたフィールドマップ
◆感染システムと属性システムによる、ゴリ押し封じの調整が見事な珠玉のゲームバランス
◆目的地表示、新アクション獲得時のデモなど、分かり易くて優秀な作りのガイド機能
◆ただひたすらに仰々しいエフェクト演出全般(特にボス撃破時の演出)
◆もはや芸術同然のドット絵グラフィック(アニメーションの滑らかさは必見)
◆海外製ゲームらしからぬ癖の無さと日本のアニメっぽさが異彩を放つ、キャラクターデザイン
◆ミステリアスでありながら時に無駄に盛り上げる、印象深い音楽
◆生々しさとゲームっぽい仰々しさを絡め合わせた質感抜群、手応え十分の効果音

--- Bad Point ---
◆斜め移動主体な為、何処となく「固い」印象が否めない操作性(レスポンスは悪くない)
◆終始、キーカード集めとノード起動を繰り返すワンパターンな本編の展開(マップデザインとボスで変化をつけてはいるが、似たり寄ったり故に単調になりがち)
◆フィールドマップにおけるギミックの乏しさ(パズル系要素が少なく、メリハリに欠ける)
◆ショットごとの違いこそあれど、近接攻撃が無い為に乏しい印象も否めないアクション
◆時折、音量が上がる音楽における謎のバグ(デフォの音量設定には要注意)
◆強過ぎる最終ボス(特に最終形態は鬼畜)
▼Review ≪Last Update : 12/18/2011≫
その毒、完治させる手段、何一つ無し!

それでも任務を遂行せよ!のたうち回ってでも!


『Juka And The Monophonic Menace(※海外GBA)』など、芸術的なドット絵技術に定評のあるデベロッパー、Orbital Media開発の完全新作のアクションRPG。

常に死の恐怖に晒される、緊張感抜群のゲーム性が異彩を放つ良作だ。

ゲーム内容は2D見下ろしの斜め視点で展開するアクションRPG。主人公のジェノサを操り、舞台となる惑星『イノス』の研究施設を探索していくというものである。
本編は章(Excerpt)単位で分けられたシナリオを攻略していく、シナリオクリア方式によって展開。研究施設内に点在する『セクター』を探索し、その最深部に潜むボスを撃破する事で次の章へと進む仕組みとなっている。基本的に各『セクター』では、このボスの居る部屋へ繋がる『転送装置』の起動が主な目的となる。『転送装置』を起動させる条件は単純。セクター内に配置された『ノード』を電極に移動させて設置するだけだ。しかし、大半の『ノード』は閉ざされた扉の先にある為、その前に『キーカード』を集めなくてはならない。また、キーカードやノードの中にはジェノサの身体能力を強化しなければ届かぬ場所に配置されていたりもするので、その為のアイテムを回収する必要も生じてくる。この『キーカード&アイテム回収⇒ノードの操作⇒ボス戦』の流れが各セクターにおける進行の基本。どこもこの流れで進行する為、全体的に単調な構成になっている感は否めない。しかし、目的が共通しているのもあり、「何をやれば良いのか途方に暮れる」と言った事態になり難い。また、『キーカード』と『ノード』が何処に配置されているのかは任務開始前、相棒のマゼランが全体マップ上に印を付けてくれるので、それほど迷わずに探索を行える親切な配慮が施されている。探索主体のアクションRPGという事で、迷う(&詰む)恐怖を感じる方も居るかもしれないが、実際はそんな事も無く、サクサクテンポ良く進む設計。お手軽仕様で取っ付き易いレベルデザインとなっている。
しかし、そんな単純な探索アクションRPGと言い切れる内容じゃないのがミソ。基本こそ王道の作りだが、例によってシステム周りには斬新且つ独特な味付けが施されている。一つは『属性』。今作の主人公、ジェノサは射撃武器の使い手であり、敵やボスとの戦いは『メトロイド』や『ロックマン』などに近いものになっている。しかし、どの敵も普通のショットでは簡単に倒せないほど硬め。加えて、全ての敵には『属性』が設定されている。赤い敵ならば炎属性で炎系の攻撃に強く、氷系の攻撃には弱いという具合にそれぞれが長所と短所を持っているのである。今作ではこの属性の相性を考慮した攻撃を展開していくのが戦闘の基本となる。実はジェノサが使う射撃武器には属性を切り替える機能が搭載されていて、ゲームが進むにつれ『炎』、『氷』、『雷』と言った三種の属性攻撃が可能となっていく。この属性を例えば炎属性の敵ならば氷のショットで対抗するなど、種類に応じて切り替えたりしながらプレイヤーは戦闘を展開していくのだ。正直、何処かで見た感バリバリだが、登場する全ての敵に属性がある、同じ属性のショットで攻撃するとその敵が強化されてしまうというデメリットの存在もあり、結構インパクトのあるシステムに完成されている。特に同属性攻撃による強化は適度な緊張感を演出しており、他のアクションRPGにはない独特の緊張感を醸し出している。また、常に切り替える事が大事になってくるのもあり、戦闘そのものの戦略性も申し分無し。新鮮味こそ薄めだが、独自性はなかなか。仕組みとその発想に反して、意外性の強いシステムとなっている。
更にもう一つとして『感染』。今作の主人公ジェノサはゲーム冒頭で『スカージ』なる宇宙生物の毒に感染。死の危機に晒される。そして、その感染度合いがパーセンテージで表示されるのだが、これが100%に達成すると、問答無用でジェノサは死亡。ゲームオーバーになってしまうのだ。一応、感染度を1%にリセットする手段はあるのだが、それができるのはセーブポイントとボスに勝つことの二つだけ。探索時に任意で行う手段も無ければ、緊急回復用アイテムも何一つ用意されてないのである。その為、探索は常に命がけ。従来の探索主体のアクションRPGには無い、素潜り感全開の独特のゲーム性を演出しているのである。ゆっくり謎を解く余裕もボスと戦う余裕もまるで無し。特にボス戦では逃げ場が封じられるのもあって、文字通りの背水の陣。そんな状況下で戦わねばならないのもあり、緊張感は抜群。精神をガリガリ削られる、実に恐ろしいシステムになっている。属性も独特だが、こっちはもっと独特。素潜りアクションRPGとも言えるそのゲーム性は、まさに今作でしか味わえない唯一無二のものと言えるだろう。
このように基本部分こそアクションRPGの王道を踏襲しているが、全体を構成するシステムは他に類を見ない斬新且つ恐ろしいものばかり。それでいて、敷居が低いので取っ付き易いという強力な強みまで持つ。まさに、アイディア勝負で攻め込んだ直球の内容。ありそうで無かったゲーム性を持った、新しいアクションRPGとして完成されている。

そして、今作最大の魅力は先の『感染』がもたらす、斬新な緊張感に富んだ探索だ。回復はセーブポイントでしか行えない為、敵との戦いもマップの探索も常に死と隣り合わせ。冷静にキャラクター動かす余裕など、プレイヤーに一切持って与えない。じっくり周囲を調べ、突破口を発見していく過程を売りとした探索型アクションRPGとしては、まさに売りそのものを殺すも同然な試み。そして、『迫り来る恐怖』というこの手のアクションRPGで欠けていた要素を取り入れ、新機軸の探索のゲーム性を打ち出している。
何と言っても、常に死の恐怖に晒されるのが実に刺激的だ。ロールプレイングゲームで言う『毒』の状態異常が延々と続くようなものなので、幾ら強敵との接戦や困難なルートを突破したとしても、「これで余裕だ!」という安心感に全く浸る事ができない。むしろ、こんなに時間がかかって、感染が必要以上に進んでないかという大きな不安に晒されるのである。無論、強敵との接戦やら、困難なルートの突破やらで無駄な時間を使ってしまえば、当然のように感染は急激に進行してしまう。回復自体も行えないのだから、一気に死へと近付く。そして、例えそのようなシチュエーションを難なく突破できても、安心のひと時は訪れない。そんな順調に突破できたとしても、感染は止まらないのだから当たり前だ。結局、安心のひと時が訪れるのはセーブポイントに辿り着いた時やボスに勝った時だけ。まさに困難を突破する快感が皆無というとんでもないゲームバランス。死の恐怖が快感を食い潰す、とんでもない作りになっているのだ。
先にも少し出したが、その感覚は息継ぎ無しで何処まで水中に潜れるかを試す素潜りそのものである。一度可能な限りまで潜り、息継ぎする為に地上へと戻る。当然、息継ぎをせずに潜り続ければ、ご臨終確定。今作のプレイ感覚はまさにそれと同じで、水中と地上を行き来するかのような不思議なゲーム性を演出しているのである。それ故に達成感も奇妙で、困難なルートなどを突破する以上にセーブポイントに辿り着けた時の方が感動が大きかったりする。本来なら、突破の方が強いものだが、今作は逆なのだ。これだけでも、今作が奇怪なゲーム性を持った作品なのは明らかと言えるだろう。ひたすら潜り、沢山の事をやり遂げて地上に戻れた時、ホッとできる。何処まで調べられるか、そんな限界の限界を突き詰めていく『素潜り探索』を今作では堪能できる。のんびりとプレイするタイプとは異なるそのスリルと緊張感は、まさに唯一無二。発想自体は単純なものの、ありそうで無かった新しさが満載の魅力溢れるものに完成されている。
また、この独特の素潜り探索がもたらした、ボス戦の圧倒的な緊張感も秀逸。セーブポイントへ戻れない為、必ず感染度が100%に到達する前に倒さなくてはならないので、文字通りの背水の陣。手に汗握る戦いが繰り広げられる。それに加え、ボス自身も常に全力でプレイヤーに殺しにかかってくる面子ばかりなので、一切気が抜けない。感染しているからすぐ回復しなければならないのに、ボスは強敵揃い。この「都合の悪過ぎる状況」も緊張感を大いに引き立てており、個々の戦いを手応え溢れるものに仕立て上げている。それでいて弱点の属性で攻めたり、攻撃パターンさえ読めれば無難に勝ててしまうという絶妙なバランス。感染システムがもたらす魅力、アクションゲームとしての楽しさをきちんと残したその設計にはアクション好きなら思わず舌を巻いてしまうだろう。
更にこれほどプレイヤーに対し、不利な設定が成されていながら、何処を目指せば良いかを教えてくれるガイド機能を実装。次のセーブポイントまでに通過するルートも長過ぎず短過ぎずの丁度良いボリュームに抑えられていたりと、痒い所に手の届く設計になっているのがまたニクい。親切にあれこれ支援してくれるので、ストレス無く気持ちよく遊べる。感染そのものの設定がある意味、プレイヤーに対する嫌がらせなのに、必要以上に痛めつけはしないという何処か矛盾した優しさ。そんなシビアなゲームシステムとバランスに割り合わぬ、プレイヤーに対する配慮が豊富に仕込まれているのも、今作の面白いところだ。
プレイヤーを安心させない展開、都合の悪い条件揃い過ぎなボス戦と、本当に感染さえしていなければどんなに楽か。思わず愚痴を言いたくなるゲームデザインではあるが、他に類を見ない緊張感と死への恐怖がもたらす新感覚の探索は中毒になる面白さ。辛口だけども、思わず癖になる味わいに満ち溢れている。まったり遊べるのが売りの探索アクションRPGに喝を入れたが如くのこの設計。アクションを名乗るのなら、厳しい条件下でやらせてくれというアクションゲーマーにとって、今作がこの上ない一本であるのはもはや語るまでもないだろう。常に死と隣り合わせの地獄がここにある。

感染と同じく今作の売りとする、属性の相性を考えながら戦う戦闘も安易なゴリ押しを封じるバランス調整が秀逸。属性の切り替えもRボタン+十字ボタンの選択で即座に行えるなど、快適な作りになっているのが見事。ただ、属性によって攻撃武器が変わるなどのバリエーションの工夫があまり成されてないのは惜しい。基本、遠距離武器のショットのみで、近接用の武器が無いので、正直な所、アクションゲームとしてやや魅力に欠けると言わざるを得ない。属性ごとのショットの使い道もワンパターンであるなど、この辺はもう少し応用性を広げる工夫を施して欲しかったところだ。マップも完成度は高いが、この属性を活かす謎解きネタなどが皆無なのが惜しい。願わくば、もう少し練り込んで頂きたかった。
その他、操作性も斜め移動主体な為、少し移動操作全般に癖があるのが辛い。レスポンスは悪くないだけに勿体無い限りだ。また、ゲームバランスは条件の厳しさもあり、総じて高め。しかし、回を重ねるにつれて突破口が見えてくる適切な調整となっているので、理不尽さは無い。特に先の繰り返しになるが、ゴリ押しがほとんど通用しない調整になっているのは特筆に値すると言っても良いだろう。
そして、グラフィックはとんでもない出来。これぞ究極のドット絵と豪語できる、芸術的な仕上がりになっている。キャラクターデザインも海外製ゲーム独特の癖の強さが無いほか、動きもヌルヌルしていて見るだけでも圧倒される。この驚異的な出来栄えは、是非一度でもご覧になって頂きたいところだ。本当、これは神の所業としか言い様が無い。

また、音楽も世界観にマッチした不気味で印象深い楽曲が満載。更に作曲は『魂斗羅Dual Spirts』でコナミサウンドを現代に甦らせた実力派、Virtことジェイク・カウフマン氏が担当。それだけに完成度は折り紙付きだ。
演出全般も派手。特にボスの撃破演出は仰々しいにも程がある派手さで、否が応にも達成感を煽る。効果音もひたすらに派手な出来で、操作の手応えを大いに引き立ててくれる。その他、ボリュームも普通にクリアするなら9〜10時間程度と手頃ながら、クリア後には上級者向けの難易度が複数開放されるなど、やり込み要素もきちんと取り揃えられており、遊び応えは申し分無し。ストーリーも全編英語ながら、適度に先が気になる仕上がりになっている。
惜しいところもあるが、マップ探索に死の恐怖を植え付けた感染システム、緊張感抜群&戦い甲斐も抜群のボス戦など、完成度は非常に高い。ゲームバランスもアクションゲーマーを唸らせる素晴らしさで、他とは一味違う探索アクションが満喫できる今作。任天堂のメトロイドシリーズなどの探索アクションゲームが好きな方、そしてアクションゲームを愛して止まない方ならば是非、プレイして欲しい良作だ。戦慄のスキューバDieビング探索アクションRPG、是非ご体験あれ。
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