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  4. 流星のロックマン
≫流星のロックマン
■発売元 カプコン
■ジャンル ブラザーアクションRPG
■CERO A(全年齢対象)
■定価 5040円(税込)≪※全バージョン共通≫
■公式サイト ≫こちら ※音が鳴ります
▼Information
■プレイ人数 1〜7人
■セーブデータ数 1つ(※フラッシュメモリバックアップ)
■その他 DSワイヤレスプレイ対応、ニンテンドーWi-Fiコネクション対応
■総説明書ページ数 43ページ
■推定クリア時間 12〜14時間(エンディング目的)、60〜80時間(完全攻略目的)
220X年、宇宙に地球外生命体を発見したニホン科学宇宙局『NAXA(ナクサ)』は、未知なる生命体との友好関係『ブラザーバンド』を結ぼうと、宇宙ステーション『きずな』を打ち上げた。だがこの宇宙ステーションは謎の事故に遭遇し、その行方を絶ってしまう。NAXAはこの宇宙ステーションを必死に捜索したのだが数ヵ月後、ニホン海にその一部と見られる機体の破片が落下。これを機に捜索は打ち切られ、プロジェクトは永久に凍結された。

それから3年後、コダマタウンに住む事故で行方不明となった『きずな』の乗組員、星河大吾の息子、星河スバルは父親を失ったショックから不登校となり、街の展望台で星空を眺める日々を送っていた…。

しかし、父親の後輩・天地守から『ビジライザー』と呼ばれる不思議なメガネをもらったその日から、彼は大きな運命の渦に巻き込まれていくことになる…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆三つの異なる世界を交互に移動しながら進行する、独創性溢れるゲームシステム
◆構造の特異さ、プレイのし易さにこだわった調整が光る、巧みなフィールドマップ構成
◆アクションゲームとしてのロックマンを尊重した、テンポの良さが秀逸なマップ上のトラップ群(複雑な謎解きはそれほどないので、快適に楽しめる)
◆移動範囲の制限とアクションの増加で、より快適さと遊び易さが向上した戦闘システム
◆確実に敵へ攻撃できる的確さが気持ち良い新要素『ロックオン』(初心者に優しい)
◆『万人向けのロックマン』としてのこだわりが光る、難し過ぎず優し過ぎずの絶妙なゲームバランス
◆友達を作る事でレイヤーが強化される、精神的な支えがある事の素晴らしさを描いた『ブラザーバンド』システム
◆現代社会の闇と引きこもり少年の成長を丁寧に描いた、秀逸なシナリオ
◆アクションゲームに勝るとも劣らずのレスポンスの良さが見事な操作性
◆操作解説にヒント機能など、ゲーム初心者にも優しい充実したサポート機能群
◆アニメっぽさを丁寧に描いた、色彩鮮やかなグラフィック
◆DSの3D表現を余す事無く使い切った、迫力満点のバトル演出(ラスボス戦は必見)
◆宇宙をテーマにした世界観にマッチした、爽やかで印象的な音楽(名曲もビッシリ)

--- Bad Point ---
◆無意味で姑息な三バージョン制(わざわざ分ける意義も皆無で腹黒さが見える)
◆同じく無意味な感が否めない他ゲームとの連動要素(蛇足としか言い様が無い)
◆DSという事で無理矢理絡めた感の否めない、タッチペンイベント群
◆ゲームバランスを崩壊させかねないほど強力な『ギガカード』(特にレオバージョンで手に入るカードの性能は突出し過ぎ…。バージョン差別になってないか…。)
◆やや短い感も否めないエンディングまでの総計ボリューム
◆一部、壁詰まりバグの存在(下手にセーブし過ぎると抜けれなくなるので要注意)
▼Review ≪Last Update : 10/11/2008≫
心に隙を作るな…。

電波の世界から奴らがやって来る…!


カードゲームとアクションゲームを融合させたシステムで好評を博し、ゲームボーイアドバンスにて全6作がリリースされた『ロックマンエグゼ』の流れを組む、新生ロックマンシリーズ。

姑息な商売路線が実にもどかしい、不遇の傑作である。

先も語ったように、ロックマンエグゼシリーズの後継作という事で、ゲーム内容とシステムはそれがベースとなったものに仕上げられている。簡単に言うと、シナリオクリア型のアクション要素を取り入れたロールプレイングゲームで、主人公の星河スバル(ロックマン)を操作し、各シナリオで発生する様々な事件(イベント)を攻略していくというものだ。基本的にエグゼと同様の一本道構成で、ゲーム展開とシナリオ共に大変分かり易い作りとなっている。
ロックマンエグゼシリーズの売りでもあった、現実・電脳(インターネット)世界の二つのフィールドマップを駆け巡っていくというゲーム性もそのまま。しかし、今作ではこれに新しい世界として、電波で構成された外のフィールド『電波世界』が追加。現実・電脳・電波の三段構造となり、より一層複雑なものへと進化した。また、電子機器(電脳世界)の中に入る『プラグイン』の手段もエグゼの有線から、無線となった影響に伴い『ウェーブイン』とその名と性質を大幅変更。
今回は『ビジライザー』と呼ばれる、現実世界のマップで電波世界の構造が見れるようになる物をYボタンで装着、『ウェーブホール』と呼ばれる電波世界への入口となる穴を探し、その上でRボタンを押して『電波変換』をして電波世界のマップを歩き、各機器へと入ると言う、もう見ての通りにかなり厄介なものへと様変わりしている。
しかも、そんな特殊な性質故に、一度『ウェーブアウト(現実世界に戻る)』して現在、プレイ中の電脳世界に戻る際には、決まって電波世界の初めから歩かなければならない。いきなり電脳世界から…というショートカットは無理。どうしても、最初に電脳世界を辿っていかねばならないという、徹底したゲームデザインが成されてしまっているのである。
エグゼシリーズを遊んで来た方、そして未プレイの方もこの仕組みには思わず『面倒臭そう…』という印象を抱くだろう。事実、エグゼと比較したら面倒臭い。そちらは電子機器に近づき、そこでボタンを押せば一発で電脳世界へと入るという有線仕様、簡易的な仕組みだったから、今回の無線仕様との快適面での差は…一目瞭然だ。
しかし、何も一番初めの電波世界から遠回りしてこなければならない…という面倒な手順を踏む羽目になる事は本編ではほとんどない。主にイベントとかで盛んに電脳世界に入らねばならない時とかは、現実世界の方に近道とも言えるウェーブホールがセットされるようになっているので、煩わしさを感じる事は意外にも皆無。また、電波世界そのものの構造も道順がパッと見で理解できるよう、分かり易く作られており、電脳世界の入口との距離もやや短めに設定されているので尚更。遊び手の事を第一に考えた、思いやりの心溢れる配慮が徹底されている。それでも、有線だったエグゼとは違い、少し手順の面倒臭さがあるのも事実。特にエグゼに慣れ親しんだ方は、戸惑いを覚えてしまうだろう。
だが断言するが、遊んでみればそんな戸惑いも直に吹っ飛ぶ。ゲームとしての面白さを損なわない程度にマップの長さと言い、ショートカットと言い、上手い具合に調整されているので、そんなに面倒臭いと感じる事も滅多にない。むしろ、何だ…手順は増えたけどロックマンエグゼか、と安心感を覚えるはずだ。まさにこれぞ、複雑さと快適さの絶妙なさじ加減。システム周りまで内容はガラリと変わってしまったとは言え、流石はアクションゲームばりのテンポの良さが大きな売りでもあった、ロックマンエグゼシリーズの後継作。総じて職人的なバランスで構築された、極めてクオリティの高い作品に仕上げられている。舞台となる世界が増し、別の世界へと入る為の手順が複雑化したとても、ゲームテンポの劣化が見受けられないその技は巧。開発スタッフの手腕の高さをヒシヒシと痛感させられる。

更に今作ではフィールドマップの構造のみならず、バトルシステムも進化。基本的にはエグゼシリーズと同じ、升目の上を移動しながら通常のバスター攻撃や『バトルチップ(今作ではバトルカード)』による攻撃を駆使して敵を撃破していく、カードゲームとアクションゲームが融合した独自のものをそのまま起用。しかし2Dアクションスタイルだった画面構成が3Dアクションスタイルの3D視点に、エグゼではロックマン(プレイヤー)が移動可能範囲は9マスだったのが、3マス…左右の横のみに限定、敵は12マスである等と、その見た目と仕組みが大幅に変えた。エグゼと同じなんだけど、手応えはまるで別物と言う…実に奇抜なものへとその姿を変えたのだ。更にロックマンのアクションにも敵のあらゆる攻撃を防ぐ『カード』アクション、十字キーの下を入れる事によって特定の敵に狙いを定める『ロックオン』が追加。
またチャージショット(通常攻撃よりも更に強力な攻撃)のチャージはフルオート方式に、ソード系のバトルカードの攻撃はロックオンをする事によって、遠くの敵であっても命中させる事ができるようになったと言った変更も加味。より快適に、かつ大胆にアクションの醍醐味が堪能できるようにもなっている。
何よりも、この進化においてでかいのはロックマンの移動範囲が横の3マスだけに限定された事だろう。これにより、今作では敵への攻撃と回避が、エグゼシリーズ以上に直感的に行う事ができるようになった。十字方向に移動できたエグゼでは、凡ミスによって敵のダメージを喰らい易いデメリットがあっただけに、これはナイスなアレンジ。アクションゲームが初めてな方も、移動範囲が狭いから自分ができる事の限界も直に理解でき、誰でも簡単にアクションゲームの動かす面白さが堪能できるようになったのは、まさに『万人向けロックマン』への原点回帰と言っても過言ではない。
だが、一番の原点回帰と言えるのは何と言っても戦闘バランスだろう。今回は雑魚敵然り、ボス然り、陰湿な攻撃を放ってくるものはほとんどおらず、いずれも冷静に観察して対応すれば初見で簡単に撃破できるという、適切な強さに抑えられているのである。しかも、先に話したガードアクションの存在により、放ってくる攻撃の大半は回避できるようになっているから、理不尽な目に遭ってストレスを味わう事も無い。『万人向けのロックマン』としか言い様の無い、素晴らしいバランスを終始、維持しているのだ。元々、この万人向けのバランスと言うのはエグゼシリーズのアイデンティティとも言うべきもので、それが他のロックマンシリーズとの決定的な違いを表す魅力だった。
しかし、そのバランスの良さは3作目以降から崩壊。敵の攻撃は苛烈化、システムもそれに相まってややこしくなり、熟練者にしか処置できないまでに悪化。他のロックマンシリーズと同じ、マニアックな路線を走り出す運命を辿ってしまった。そんな路線を走り続けた作品の後に出たのがこの後継作『流星のロックマン』であり、そのバランスには多くのユーザーが一種の不安みたいなものを抱いていただろうと思う。そのバランスは今作にて、完全なる原点回帰を遂げた。ロックマンを遊んだ事のある方のみならず、遊んだ事の無い方も安心して楽しめる…。かつての魅力が美しいまでに、今作では再現されているのだ。このバランスの原点回帰はもう、グッジョブ!…の一言に尽きる。マニアック路線を終了させ、元来の万人向けスタイルを取り戻してくれた、それだけでもその路線に疑念を抱いていた人間にとっては嬉しい限りだ。
システム的にも複雑さは皆無だし、アクションも徹底して「簡単」で一貫しているという徹底ぶり。こう言った簡略化は先も話したが、ゲームとしての劣化を招く恐れもあるので、ある意味ではチャレンジなのだが…それに果敢に挑み、劣化を招くどころか真逆の進化を招いてしまったスタッフの手腕には本当、脱帽の一言。新生ロックマンシリーズの始まりにとって、ここまで見事な事を仕出かしてしまうとは、全く持って恐るべし…だ。

見所はシステムのみならない。新生ロックマンシリーズの始まりを思い知らされる、暗くて重いシナリオも絶品。虐め、信頼と裏切り、捨て子の苦しみと言った重々しい展開の数々は、見るものをくぎ付けにさせる。主人公もエグゼの光熱斗のような熱血少年とは180度異なる、引きこもりの気弱な少年というからなおのこと重い。そんな少年…星河スバルがどんな成長を遂げていくのか…それを見守っていくだけでも、きっと至福の時間を堪能できるだろう。
その他、操作性もアクション周りが簡略化されているのもあって極めて良好。タッチペン操作も、特定マップのトラップ回避など、あくまでも遊びの要素として違和感無く溶け込ませているのが良い感じだ。無理矢理使ってる感も否めないが。
グラフィック、音楽の完成度もかなりのもの。特に音楽は流石、ロックマンシリーズと言わんばかりのクオリティで、かなり気合が入っている。名曲も盛り沢山で、タイトル画面と戦闘曲全般はいずれも必聴の価値ありだ。

また『ブラザーバンド』(友達の輪を作るというもの)によるロックマンの強化システム、ニンテンドーWi-Fiコネクションを経由したブラザー交換・更新と言った要素も印象的。丁寧なチュートリアル、進行ヒント機能と言ったサポートの充実ぶりも、流石の一言に尽きる。
しかし今作、唯一にして最大の欠点は三つのバージョンがあること。『スターフォース』と呼ばれる、ロックマンに属性の能力が加わるフォームがソフトごとに違うだけであり、全くと言っていいほど、その意味を成してない。むしろ、1つで十分じゃないか!…と言いたくなるほど陳腐なものとなってしまっているのだ。これはかなり勿体無い!折角、ゲームの出来が最高に良いのに、それを貶めるような真似をするだなんて何を考えてるのか!1つのバージョンでなら話も違ってただろうに、これを発案した人間にはただ一言、ふざけるな…だ。
他にも『ボクらの太陽』やエグゼシリーズとの連動要素など、蛇足なところもチラホラあるのが本当に勿体無い。だが、それを抜きにしても完成度は一級品。新生ロックマンシリーズの初めを飾るのには相応しい、非常に面白いゲームに仕上がっている。ロックマンシリーズファンからエグゼファン、そしてロックマンを遊んだ事の無い方にまで、自信を持ってお薦めできる逸品です。万人向けロックマン、ここに転生したり!
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