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≫流星のロックマン2 ベルセルク×シノビ
■発売元 カプコン
■ジャンル ブラザーアクションRPG
■CERO A(全年齢対象)
■定価 5040円(税込)<全バージョン共通>
■公式サイト こちら ※音が鳴ります
▼Information
■プレイ人数 1〜7人
■セーブデータ数 2つ(※フラッシュメモリバックアップ)
■その他 DSワイヤレスプレイ対応、ニンテンドーWi-Fiコネクション対応
■総説明書ページ数 43ページ
■推定クリア時間 12〜14時間(エンディング目的)、60〜80時間(完全攻略目的)
FM星人の侵略から2ヵ月後。

最新ホラー映画のチケットを手に入れたスバルは、ルナ、ゴン太、キザマロ達と共に映画を観に『TKシティ』へとやってきた。『マテリアルウェーブ』や『スターキャリアー』等、最新の技術が集結されたTKシティに興味を示しつつ、映画館に入ったスバル達はその『マテリアルウェーブ』を駆使して作られた映画を堪能する。

だが、突如として館内に電波ウィルスが出現。
それと同時に、紳士のような格好をした男が現れ、ルナを連れ去ってしまう。

男の正体は…?そして、一体これから何が始まろうとしているのか?
▼Points Check
--- Good Point ---
◆前作譲りの異なる世界(マップ)を交互に移動しながら進行する、独自のゲームシステム
◆現実世界と絡むようになり、より「電波らしさ」が増強された電波世界のマップ構成
◆タッチペン絡みのネタが減り、煩わしさが軽減した電波世界マップのギミック
◆相変わらず、移動範囲が制限させられてるが故の遊び易さと快適さが光る戦闘システム
◆『キズナリョク』と呼ばれる数値に応じて、ロックマンを自由に強化できる、カスタマイズ的な面白さに富んだ新要素『アビリティシステム』
◆ロックマンらしい、「手強さ」が強化されたゲームバランス
◆アクションのロックマンに匹敵するほどのレスポンスの良さが見事な操作性
◆操作解説、ヒント機能など、相変わらず無駄に充実したサポート機能群
◆アイコングラフィックの拡大など、タッチペン操作を考慮したデザインに改められたインターフェース全般
◆相変わらずの綺麗なドット絵が見事な、アニメっぽさ溢れるグラフィック
◆ボイスの導入とエフェクトの強化により、臨場感が大幅に向上した演出全般
◆前作とは打って変わり、ミステリアスなテイストにシフトした音楽
◆シリーズファン念願の対人戦が実現となった、ネットワーク(Wi-Fiコネクション)機能
◆2つに増加したセーブデータ(バージョン2本収録の恩恵で遂に実現!)
◆カード集め、クリア後のシナリオなど、前作以上に増強されたやり込み要素

--- Bad Point ---
◆相変わらず姑息で無意味な三バージョン制(1本に2つも収録するとか、苦しい)
◆無駄に高いエンカウント率(ゲーム的なしんどさを強めてしまっている…)
◆シナリオの流れを妨げる、余計なイベントの存在(特に文字入力イベントがウザい)
◆主人公が成長した影響で、大幅に魅力が軽減したシナリオ(普通の王道モノに…)
◆初心者ならば挫折しかねない厳しさのゲームバランス(万人向けではなくなった)
◆極悪極まりないラスボス(強くし過ぎ…)
◆玩具と無理矢理連動させようとする姑息さが見え隠れする『タッチコマンドシステム』
◆ランダム選択方式・レート機能無しの為、実力に応じた相手と対戦できないのが嫌らしいWi-Fiマッチング
▼Review ≪Last Update : 8/2/2009≫
かつて、ムーは漫画だけの話だった。

分かる人には分かるネタ。


『ロックマンエグゼ』シリーズの後継作とリリースされながら、大幅な値崩れを起こし、あらゆる意味で話題を呼んだ『流星のロックマン』の続編。

進化しつつも、バランスがやや歪んでしまった続編だ。

基本的な内容は前作を踏襲。一本道構成のシナリオクリア型のアクション要素を取り入れたロールプレイングゲームで、主人公の星河スバル(ロックマン)を操り、様々なイベントや敵との戦闘を攻略していくというものだ。システムも現実世界と電波世界で構築された二面性のあるマップ、3D視点で展開されるカード要素を取り入れたアクションバトルなど、前作のを継承している。だが、今回は基本部分こそ前作と同じでありながら、中身の手応えは全くの別物。面影はあるけど全然違うと言う、何とも奇妙な作りとなっている。
何処が手応えの違いを出してるのかと言うと、マップ。前作は現実世界と電波の通路(ウェーブロード)で構成された『電波世界』、電子機器の世界こと『電脳世界』の三つがあったが、今回はこの内の『電脳世界』が廃止。現実世界と電波世界の二つだけに縮小された。更にそれだけでなく、『電波世界』の構成がリニューアル。『ウェーブロード』で構築されたマップでなく、現実世界のマップとリンクした、壮大なものへと様変わりしたのである。
これにより、今回は現実世界をロックマンの姿で歩き回れるように。それに伴い、スバルでは進めず、ロックマンでは進める場所と言った仕掛けも豊富になり、マップ探索がより深みのあるものへと進化した。ロックマンの姿で現実世界を歩けるその光景もユニークで、如何にも変身ヒーローという雰囲気が増強されてるのも見逃せない。
また、何よりもリニューアルされた事で素晴らしくなったのが、各種事件イベントの進行手順。前作ではマップに配置されている『ウェーブホール』から電波世界にウェーブインし、電波世界の通路を伝って電子機器の電脳世界に入る…と、やや煩わしい過程を辿らねばならなかったのが、今回はウェーブインして電波世界だけを歩けば良くなったので(時には現実世界も歩く事になったりもするが)、テンポ良くイベントを進めていけるようになった。更に現実世界とリンクしている仕組みの都合で、マップの構造が把握し易くなったのも大きな進化。そちらの構造さえ把握できてれば、電波世界も難なく進めていけるなど、リニューアルの恩恵が綺麗に反映されている。流石にボス戦イベントで辿るマップは、前作のように独立した形となっているので、そう易々とは行かないが、それでも現実世界とリンクした構成になった都合で、そこに至るまでの過程が簡略化されたのは嬉しいところ。
前作の煩わしい流れがどうにも馴染めなかった方にとって、本当、今回のは取っ付き易くなっている。前作プレイヤーも、この仕組みを経験したら、そっちの方に戻れなくなってしまうほど。また、それ以外でもマップでは、タッチペンを使ったギミックが大幅減少。ボタン操作でプレイするものと、二画面の特性を活かしたギミックが増強され、全体的に遊び易く改良が加えられたのも地味に大きな進化。無理矢理、DSらしさを出そうとする苦し紛れな所も緩和されている。その他にも、『マテリアルウェーブ』と呼ばれる物質化する電波を使ったユニークなイベント・ギミックが追加されたり、先ほどのタッチペンギミックと関連して、ゲーム中にタッチペンを使う場面が減ったなど、改良点は多い。
そんな感じに今回は色々な所が別物テイスト。真の意味での『ロックマンエグゼ』の後継作と言っても良いような、エグゼのテイストが随所に醸し出された作りとなっている。前作が成し得なかった事をやってしまった作品と言ったところか。 続編にしてシリーズ再始動とはちょっと稀に見ぬタイプの作りとなってるのだ。

シリーズの肝とも言えるバトルシステムも、作りは前作と一緒ながら、カスタマイズ的な新要素『アビリティシステム』の追加を始め、バランス、システム等、随所にマップほどではないが、色々と手が加えられてる。特に今回のバトルでの見所は、難易度の上昇だろうか。前作は全体的に温めで、ボスもバスターと最低限のバトルカードさえあれば、初見で倒せるほどのバランスだったが、今回はプレイヤー側のテクニックとカードのラインナップが整ってないと苦戦は必至と、シビアなものに様変わりしている。ボスも強化されていて、序盤はまだしも、後半以降は初見での撃破は余程の人じゃないと難しいほどに。何となく、ロックマンエグゼ後期時代を彷彿とさせるバランスへと変貌を遂げている。
だが、全体的に理不尽さは皆無で、プレイヤースキルの上達によって勝ち目が見えてくるように調整されてるのがせめてもの救い。強いカードさえ取り揃えれば良いのではなく、バスター攻撃との連携も踏まえて戦わねばならないなど、きちんとシステムを考慮した調整がされているのも流石の一言だ。前作はどちらか片方に力入れしていればそれで良いみたいな調整だっただけに、こちらの方がバランスが取れている。また、スキル上達で勝ち目が見えてくる調整も、如何にもロックマンの名を語る作品だけにあるなと言ったところ。実にニクいサービスである。
ただ、今回の難易度上昇により、総じて前作の強みであった『万人向け』のテイストが失われてしまったのは痛い。温いバランスだからこそ良かったと思う方にとって、今回はかなり不満の残るものになってしまっているのは否めない。前作の『スターフォース』(ロックマンの能力を強化する変身システム)に変わるものとして追加された『トライブオン』も、今回は全体のバランスを取る名目で、各種変身の能力で飛び抜けて強いものが減り、ごり押しが効き難いと、前作のバランスが良かったと思う方には、もどかしく感じる調整となっているのが辛いところ。きっちりとしたプレイが要求されるスタイルは正直、賛否が分かれる。バランスを取る意味で、能力的にも調整したその判断自体が何も悪い訳では無い。むしろ、こうした事でかなり面白くなったのも事実だし、確かな手応えを感じ取れるようになったのも素晴らしい。温いバランスに不満を持ってた方には、涙モノだ。
しかし、前作の温いバランスがある意味、このシリーズが他のロックマンとは違う側面を持っているのを見せていたのも事実。必要最低限の頑張りさえすれば、誰でも無難に戦える、そんな強みが他との違いを表していたのだ。できれば、そんな違いを残す為、選択的な処置で温さを出すバトルカードやトライブを用意するとか、面影を残す事ぐらい、して欲しかった。肝心のバトルシステムの敷居が低い都合で、エグゼシリーズほどマニアックに陥ってないのがせめてもの救いではあるが、ここまで徹底して詰める必要も無いはず。もう少し、大らかなところを大事にして頂きたかったところだ。
また、これは戦闘とも直結するが、マップ上でのエンカウント率(敵との遭遇確率)が高めに設定し直されたのもかなりのマイナス。前作以上にプレイ中に戦闘を経験する場面が増えて、余計にプレイ時のしんどさを高めてしまっている。ただでさえ、今回は戦闘の難易度が高められているだけに、これは許容し難い。マップ探索でも、今回は敵と頻繁に遭遇する都合上、気軽に歩き回れないなど、プレイ時のストレスを高めるものとして機能してしまっているのだから、尚更だ。エンカウントを下げるアイテムも気軽に買えず、しかも割高と言うのだから性質が悪い。調整の誤りか、それとも意図的にしたのか、謎だが仮に後者でしたのだとしたら問題あり過ぎだ。そもそもエグゼもそうだが、このシリーズは他のRPGとは違い、戦闘を経験する事によって得られるメリットが少ない。経験値の概念が無く、幾ら戦ってもロックマンはレベルアップしないし、新しい技は覚えないどころか、体力も増えたりはしない。バトルカードやお金は増えていくけど、プレイヤー側は体力が減ったりなど、デメリットが多い。戦えば戦うほど良いとか、そういうRPGじゃないのだ。そんなRPGで何故、こんな調整にしたのか理解に苦しむ。というか、性質が性質だけに、エンカウントを高めるだなんてストレス行為も同然だ。アクションが苦手な方にとって、この調整は虐めに等しい。そんな人に頻繁にメリットの無い戦闘を経験させたら、誰だって嫌気が差してやめちゃうだろう。
どうして、そんなのが起こると分かっていながら、こんな調整にしたのか。これだけは本当、調整担当をしたスタッフ、もっとシステムを考えて調整をしろ、と言いたい限りである。幾ら何でも、システムの理解が及んでないのにも限度がある。というか、戦闘を頻繁に経験させたいのであれば、エンカウントを高めるアイテムを用意する(買い易くする)とかすれば良いじゃないか。何故、そういう簡単な発想もできないのだろうか。これが難易度の上昇だけに留めていれば、まだ落ち着いたレベルに至っていただろうに。つくづく、今回は勿体無いことをしてしまった感じである。
戦闘のバランスが整ってるのはそれなりに評価に値するが、こういう陰湿な処置が施されているのは残念極まりない。そこがまたエグゼの後継作っぽいと言えばそうだが、折角の面白いアイディアをこういう所で損ねてしまってるのは許容できず。変に改悪し過ぎないで頂きたかった限りだ。別物テイストもここまで来ると、やり過ぎの域である。

また前作の魅力の一つでもあったシナリオも、今回は大幅にパワーダウン。主人公のスバルが成長してしまったのもあり、普通の王道ヒーローモノという平坦なものになってしまっている。虐めや捨て子と言ったダークなネタも大幅に減り、エグゼっぽいテイストに回帰してしまっている辺りも微妙である。一応、見所もあるにしてはあるのだが、正直、前作ほどのインパクトは無い。それに今回はシナリオ上、無駄なイベントが多いのもどうかと。
対し、操作性は前作同様に快適。今回はタッチペン操作を意識し、インターフェース周りにも改良が加えられ、選択肢アイコンが大きめに表示されるなど、使い勝手が良くなっている。ようやく、DSのゲームという意識を強めた格好だ。
またグラフィック、音楽も前作と変わらぬクオリティ。相変わらず音楽は名曲が多く、ロックマンらしさが全開となっている。更に今回はトライブオンした際にはボイスが入るなど、演出面も強化。エフェクト周りも前作以上に凝ったものとなっており、アクションのロックマンとしてのらしさみたいなのが増強されている。特にボス全般の動きの派手さは見物だ。

そしてやり込みも相変わらず、カード収集にサブシナリオと、無駄に充実。全てやり込めば50時間は超えるその深さは、コアゲーマーも唸るほど。
前作最大の欠点だったバージョンも、今回は何と一本の2つのバージョンを収録するという大胆なスタイルに転換。それに伴い、今回はセーブが2つ作れるようになったなど、シリーズファン待望の改善が成されたのも嬉しいところだ。Wi-Fiコネクションも、前作では不可能だったネットワーク対戦が可能となったなど、至れり尽くせりの仕様。
しかし、全体的な面白さは正直、前作よりかは落ちる。システムなど、面白い所もあるのだが、エンカウントの高さにシナリオのパワーダウン化など、所々にストレスの元となる要素があるのがもどかしい。そこさえしっかりしていれば、紛れも無く、前作を超える傑作でなっていたであろう今作。遊べる出来だが、どちらかと言うとシリーズファン向け。万人にはあまりお薦めできない一本だ。折角、前作で確立した、『万人向けロックマン』の形が崩されてしまったのは、残念でならない。この進化は、ロックマンシリーズの宿命なのだろうか。
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