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≫怪盗ワリオ・ザ・セブン
■発売元 任天堂
■開発元 朱雀
■ジャンル タッチペンアクション
■CERO A(全年齢対象)
■定価 4800円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 3つ(※フラッシュメモリバックアップ)
■その他 ワリオの七変化シール入り
■総説明書ページ数 28ページ
■推定クリア時間 14〜16時間(エンディング目的)、30〜40時間(完全攻略目的)
お宝や儲け話の情報が手に入らず、家で退屈な日々を過ごしていたワリオ。

暇つぶしにテレビを見ていても、やっているのは退屈な番組ばかり。
だが、ワリオはたまたま放送されていた怪盗アニメ『紳士怪盗アルデンテ』を見て、テレビの中に入り、この怪盗が狙っているお宝を自分のものにしてしまおうという、あまりにも大胆且つ無謀な計画を思いつく。

そしてワリオはすぐさま、テレビの世界へと入る事のできるヘルメット型マシン『テレメット』を作成。それを使い、意気揚々とテレビの中へと入っていくのだった…。

果たして、ワリオはテレビの世界のお宝を手に入れられるのか…?
▼Points Check
--- Good Point ---
◆十字キーとタッチペンを主として扱う、アイディアの大胆さが異彩を放つ操作性
◆メトロイド風の謎解き探索に重きを置いた、やり応え満点の基本ゲームシステム
◆普通の怪盗に宇宙飛行士、画家、ドクター、更には恐竜など、バリエーションに富んだ全7種類もの変身アクション
◆敵配置から謎解きの仕掛けまで丁寧に作り込まれた、全10以上のステージ
◆豪華客船に美術館、研究所など従来のワリオとは毛色の異なる、多彩なロケーション
◆ダメージを与える過程に攻撃パターンまで、緻密に構築されたやり甲斐溢れるボス戦
◆アクション初心者にも優しい、丁寧な解説が見事なチュートリアル
◆チュートリアルのやり直し、中断セーブなど充実したサポート機能
◆お宝集め、隠しマップなど盛り沢山のやり込み要素(ボリューム満点)
◆優し過ぎず難し過ぎずの丁度良さが見事なゲームバランス
◆CGをベースとした、質感溢れる色彩が印象的なグラフィック
◆各ステージの攻略を盛り上げる、カッコイイ音楽(特にボス戦の曲は強烈!)
◆二転三転する展開があったりと、なかなか見応えのあるストーリー
◆如何にもワリオゲームらしい、アクの強さが秀逸な登場キャラクター達

--- Bad Point ---
◆動かす楽しさも無ければ必然性も無い、十字キーとタッチペンによる操作
◆その操作の問題もあり、爽快感にも乏しいワリオのアクション
◆わざわざタッチペン(一つだけマイク)で操作する必然性が感じられない、6種類の変身アクション
◆あり得ないほど誤認率が高い、変身の切り替え操作(凄くイライラする)
◆その誤認率の高さで、長期戦に陥り易い第六話のボス『ラブレシア』との戦い
◆宝箱を開ける度にミニゲームをやらねばならない仕様(蛇足過ぎ)
◆完全ランダムで、何が選ばれるかすら分からない宝箱のミニゲーム
◆苦し紛れなラインナップで、面白味の欠片も無いミニゲーム
◆やや冗長にし過ぎな感の否めない、後半のステージ構成
▼Review ≪Last Update : 8/23/2008≫
♪おしゃれ怪盗ワリオ・ザ・セブン〜(♪セブン×4〜)

あんなのの何処がおしゃれなのよッ!(By:アルデンテ)


ワリオシリーズとしては実に『ワリオランドアドバンス』以来となる、横スクロールタイプのアクションゲーム。開発は『どーもくんの不思議てれび』や『F-ZERO ファルコン伝説』などを手掛けた実力派ソフトハウス、朱雀(すざく)が担当。

ニンテンドーDSのハード特性に縛られ過ぎた、残念なアクションゲームだ。

基本的なゲーム内容は、これまでのワリオシリーズとは大きく異なる。いわゆる『メトロイド』のようなマップの探索に特化した横スクロールのシナリオクリア型アクションゲームで、ワリオを操作し、シナリオごとに用意されたマップを攻略していく…というものになっている。
それまでのワリオランドシリーズのような、シンプルなステージクリアタイプのアクションゲームではない。敵を倒すよりは、マップ内に仕掛けられた謎を解明していくのが主となっているので、ステージを切り抜けていく爽快感も皆無。過去のシリーズのような内容を期待して挑むと、確実に肩透かしに遭うのでファンは要注意である。
だが真に注意すべきは、アクションゲームが好きなユーザーかもしれない。そう言いたくなるのも、全ては今作独自の特徴にある。実は今作、キャラクターの操作は十字キーとタッチペンの二つを使って行う。十字キーとボタンを使う、アクションゲームお馴染みの操作体系を起用していない。ニンテンドーDSならではの操作系統を起用しているのだ。DSだからと言って、ボタンでなくタッチペンを使う操作にするとは、何とも大胆。アクションゲームとしては、あまりに大胆な操作体系を取り入れてしまっているのだ。しかし、こんな特殊な操作だと聞いて、必ず出てくる声がこれ。

「何もストレスを感じずに操作できるの?」

単刀直入に言おう。できない!

……って、そこは「できるんですよ、これが!」って言うもんだろう!…とツッコミたくなるかもしれないが、事実なのだから仕方が無い。完璧にこの操作、スベっているのである。
実際に触ると、その拙さが痛感できると思う。とにかく、動かす面白さが無いに等しい。それどころか、「ボタン操作なら苦労しないのに!」と叫びたくなるほど、酷い有様なのだ。例えばドアを開ける時、普通のアクションゲームならば十字キーの上を押せばすんなり開ける事が出来るのに対し、今作では吹き出しをペンでタッチしないとドアを開けられない(十字キーの上はジャンプボタンとなっている)。しかも、これが非常にマズい事なのだが座標ズレが起き易い。プレイヤーが意図しない方向をタッチした判定になる事が頻繁にあるから、開けようにもスムーズに開けられない。十字キーの上で開けるよりも、遥かに無駄な苦労を要されてしまうのである。
更に攻撃を行う際も、基本的にペンで指定の場所をタッチする事で発動する仕組みとなっているのだが、「何で、わざわざペンでやらなけりゃならないの?」という違和感に覆われている為、動かしていて非常にストレスが溜まる。特に、シリーズ伝統の『体当たり』はその代表格で、今回は行う度に移動が強制中断される仕様になってしまっており、明らかにボタン操作の方が手応えが気持ち良いと感じられるような様となってしまっているのだから、頂けない。駆け抜ける面白さを重視していたワリオランドシリーズとは異なるゲームなんだから、これもアリといえばアリかもしれないが、だとしてもボタン操作より快適かと問われると否だろう。ぎこちないアクションが気持ちの良いだなんて、言えたものではない。
他にもアクションの中にはマイクに息を吹きかける、なんて無茶苦茶なものもあり、これも先のアクションと同じように「どう考えても、ボタン操作の方が気持ち良いでしょう!」と突っ込みたくなるような有様となってしまっている始末。
もう、見ての通りだが、とにかく散々。コンセプトからして、破綻した結果になってしまっているのだ。十字キーとタッチペンによる操作という、そのアイディア自体は決して、悪いものではないが、こうも「ボタン操作の方が良い!」と感じてしまう現状では正直、話にならない。そもそも、言っちゃ悪いが2Dアクションにそんな操作を起用する事自体が間違いだった。2Dアクションはボタン、或いはスティック操作によって、その面白さが引き出されてきたもの。ペン操作だなんて、素人が考えても面白くならないのは目に見えた事なのだ。そのタブーにあえて、本作のスタッフは挑戦して可能性を探ろうとしたのかもしれないが、はっきり言って…無駄な努力だった。
やはり、ペンはボタンに勝ることができなかったのだ。そういう点からして、何で面白くなる可能性をも無い本作が、世に出てしまったのか、不思議でならないばかりだ。もう今更言うまでもないが、本作がアクションゲーム好きはもとより、ワリオファンにも薦め難いものかは、痛い位にお分かりだろう。アクションゲームとしては本当、どうしようもない仕上がりとなってしまっているのである。まさに「これは、酷い」。

本作もう一つの魅力でもある、全7種類の『変身アクション』の方もズタボロだ。各変身アクションの個性こそ、上手く表現されてはいるが、先の通りに操作周りは、DSらしい特徴を表現した『グラフティワリオ』を除く全て「十字キーとボタンの方がやり易かった」と思えるようなザマだから、動かす面白さは無い。
加えて最悪なのが変身の手順。ワリオにペンで直接サインを書いて行うのだが、これがまたやたらと誤認率が高い!『怪盗ワリオ(通常のワリオ)』にするはずが、『ビリビリワリオ(電気技を得意とするワリオ)』になってしまったりと、プレイヤーの意図しない変身を繰り返す事が多くて、無駄にストレスが溜まる。しかもゲーム中には、瞬時に変身を切り替えなければダメージを与えられないボスが登場したりするのだが、こいつもそのダメージを与えるワリオに変身しようとしたら、失敗して別のワリオになってしまい、面倒な手数を踏む羽目になってしまったりと、DSを床に叩きつけたくなる衝動に駆られる。瞬時の変身切り替えを要されるボスがそれだけしかいないというのがせめても救い、と言えばそうだが、だとしてもこれは調整不足としか言い様が無い。加えて、これも「何でペンでやらなければならないのか?」と言った疑念に満ち溢れているだから話にならない。普通にスタートボタンでメニューを開き、そこで選択する仕組みの方が、先のストレスを感じる事も無くて済んだだろうに、どうしてこれだけしか変身手順を用意しなかったのか。
つくづく、検証が甘過ぎる限りだ。大胆な操作系統に挑戦しておきながら、これは無い。
また、ワリオシリーズと言えばお宝集めだが、これも今作、酷い改悪が成されてしまっている。何と、宝箱を開ける度に『ミニゲーム』をやらなければならないのである。しかも、その宝箱に入っているのが宝物であろうと、マップの進行に必要な地図とか鍵のアイテムであろうとも。宝箱を開けたら、絶対に…それをやらねければならないのだ。
はっきり言って、これはウザ過ぎだ。宝箱の中には、色々動き回って見つけられるものもあるだけに、それを見つけたとしも直に手に入れられない!…だなんて、もどかし過ぎる。直に手に入った方が、明らかに気持ち良いのにどうして「ミニゲームをクリアしろ!」なんて無駄なストレスを継ぎ足すのか、本当に理解に苦しむ。
挙句、ミニゲームの出来が良くない。『あみだくじ』、『塗り絵』、『線なぞり』などタッチペンを無理矢理使った、苦し紛れなラインナップばかりで、遊んでいても全然面白くない。むしろ、宝物がすぐ手に入らないもどかしさから、「とっとと終われっての!」と逆上したくなるほど。もはや、一つの要素としては破綻している。
極め付けは、宝箱を開けてやる事になるミニゲームは完全ランダムということ。つまり、仮に失敗したとしても、その最初にやったゲームが遊べるとは限らない。プレイヤーの学習を無に帰すような仕様になってしまっているのである…。「ミスったから、次は成功させてやる!」という気力を維持させる事って凄く重要なのに、何でこんな余計な真似をするか。
本当にもう、酷過ぎるとしか言い様がない。アイディア自体は決して悪くないのに、余計な継ぎ足しを行ったせいで、破綻してしまっているのだから呆れるしかない。
どの継ぎ足しも、全ては「ニンテンドーDSのゲームらしさを押し出す為」という狙いがあったのかもしれないが、はっきり言って、無理に狙わなくて良かったのじゃないのかとすら思う。事実、先に挙げた要素を取っ払えば、明らかにゲームとしては良いものになるのだから。全く持って、縛られ過ぎにも程があると言ったところだ…。

ただ、コンセプトやシステムが破綻してるとは言え、ゲームバランスは見事な仕上がり。特に謎解き周りのバランスは秀逸で、冷静に観察すれば、必ず解けるというその絶妙さは流石、任天堂と言ったところだ。チュートリアル、いつでも何処でも可能な中断セーブ機能と言った豊富な初心者救済処置も同じく、流石任天堂だけにあると言ったところである。
各シナリオの舞台となるマップもやや、広い所もあったりするが、ビックリするほど豊富なネタが仕込まれているのみならず、ロケーションも豪華客船に美術館、研究所など、ワリオシリーズとは毛色の異なるものが満載で面白い。
やり込み要素もなかなか。お馴染みのお宝集めはさることながら、スペシャルマップやタイムアタックなどと無駄に充実している。総計ボリュームもワリオシリーズとしては異端の量となっているので、これもまた並行して要チェックである。
そしてグラフィック、音楽もかなりの高水準。
特に音楽はあの『どーもくんの不思議てれび』で名曲の数々を生み出した匹田健二氏が手掛けているだけに、その素晴らしさは折り紙付き。中でもボス戦の曲は火傷必至の熱い出来で、全曲(ラスボスも含む)必聴の価値アリ。ワリオシリーズとは思えぬそのカッコよさに、思わず惚れ惚れしてしまうだろう。
また、ワリオシリーズとしては異端だが今作、ストーリーもよく出来ている。特にゲーム後半にかけての展開は波乱万丈で、思わずくぎ付けになってしまうだろう。

他にも無駄に個性の強い登場キャラクター、他社のゲームを思わせるオマージュの数々、やり甲斐満点のボス戦など、見所はそれなりにある。しかし、先の操作性とコンセプトの破綻による損害は大きく、それらの箇所が完全に浮いてしまっているのが痛い。仮にDSというハードの特性に縛られたりしなければ、そして無駄な要素の継ぎ足しさえ無ければ本作、確実に傑作アクションゲームとしての名をほしいままとしていただけに、勿体無い。
総評としては、傑作の可能性を自ら放棄してしまった惜しい作品…と言ったところ。
全く遊べない訳ではないので、プレイしてみる価値こそあるが、ワリオシリーズファンやアクションゲーム好きは止しておいた方が良い一本である。この苦し紛れな操作系統にはまず、耐えられないだろうから…。
やはり、2Dアクションは十字キーとボタンの操作に尽きる。そう感じるばかりだ…。
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