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≫ゼルダの伝説 大地の汽笛
■発売元 任天堂
■ジャンル ペンアクションアドベンチャー
■CERO A(全年齢対象)
■定価 4800円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1〜4人
■セーブデータ数 2つ(※フラッシュメモリバックアップ)
■その他 DSワイヤレスプレイ&ダウンロードプレイ対応
■総説明書ページ数 40ページ
■推定クリア時間 23時間〜27時間(エンディング目的)、45〜60時間(完全攻略目的)
モヨリ村で暮らす、見習い機関士の少年リンク。
ある日彼は、正式な機関士になる為、任命式が行われるお城へと向かった。
任命式の最中、この国の姫であるゼルダから手紙をもらったリンクは、手紙にあった通りに彼女の部屋を訪れる。
そこでゼルダ姫は、この国で起きている異変や突然消えた線路についての原因を調べる為、自分を『神の塔』に連れて行って欲しいとリンクにお願いする。

リンクは姫の頼みを受け入れ、城の兵士の隙を掻い潜り、二人で神の塔を目指す。
それが大冒険の始まりである事を知らずに。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆シリーズ伝統の謎が張り巡らされたダンジョンを攻略していく形で展開する本編構成
◆タッチペンだけであらゆるアクションを行う思い切った操作性
◆ペン操作でサクッと繰り出せる手軽さが気持ちいい、リンクのアクション
◆ほんの少し難易度が上がり、更にやり応えが増したダンジョンの謎解きネタの数々
◆ワイヤーアクションを可能とするものからマイクを使った独特の操作を求められるものまで、性能周りの仰々しさが前作にも増して濃いものになったアイテム
◆ゼルダ姫と連携して困難を乗り越える、まさに『ゼルダの伝説』な説得力に満ち溢れた、ファントム憑依による謎解き
◆前作並みだが、難易度の微かな上昇により、充実感が大幅に向上した総計ボリューム
◆踏破済みの階層をプレイする必要が無くなり、より探索し易くなった訪問ダンジョン
◆過去のシリーズで見た事がないゼルダ姫のキャラクター性が光る、見所満載のシナリオ
◆数こそ減ったが、謎解きの難易度上昇により、密度が一層濃くなったダンジョン
◆作風は前作と一緒だが、背景周りの描き込みが深くなり、より美しさが増したグラフィック
◆デモスキップにタッチによるルビ表示など、前作同様に痒い所にまで手の届いたサポート機能
◆ダンジョンごとに異なる曲が設けられたほか、曲調もメロディアスになり、より印象深さが増した音楽(特に汽車パートの軽快な曲は必聴の価値アリ)
◆ニンテンドーDSの3D表現の限界を突き詰めた、迫力満点の演出(特にボス戦)

--- Bad Point ---
◆マップを動き回る楽しさも自由度も皆無で、面倒臭さとかったるさの方が上回る汽車パート
◆かったるさを際立たせる、汽車の遅めの移動速度
◆移動速度の遅さに対して溜め込んでいた不満が爆発する、最終決戦前の戦闘
◆倒せない上に接触すると問答無用でゲームオーバー、場合によっては遠回りの原因にもなるなど、全然面白さを引き立てる要素として機能していない『ボンバー列車』
◆移動のダルさと交換方法の面倒臭さがタマにキズな汽車パーツ入手法
◆汽車パートのダルさにより、気力が湧き難いやり込み要素(特に汽車関連のサブイベント)
◆煩わしいにも限度がある『大地の笛』の操作とそれを使ったイベントの嫌らしい難易度設定
◆何故か倒せなくなってしまった蜂(前作の知識を元に歯向かうと酷い目に遭う)
◆マイク操作の大幅追加により、ますますやり難くなった外出先でのプレイ
◆レスポンスこそ良好だが、それなりの慣れも要求されるタッチペン操作
◆前作同様にDSのタッチスクリーンに傷を与えかねない最終ボス戦(保護シート必須)
▼Review ≪Last Update : 12/2/2012≫
手も口も大活躍。

フル活用も考えモノだ…。


移動から攻撃に至るまで全てをタッチペンだけで行う思い切った操作性、DSの機能をフルに活かした新要素の数々で大きな話題を呼んだ『ゼルダの伝説 夢幻の砂時計』の続編。開発は前作に引き続き、任天堂情報開発本部が担当。

進化し過ぎて逆に遊び難い作りへと変貌してしまった、残念な続編だ。

ゲーム内容は2D見下ろし視点で展開する、アクションアドベンチャーゲーム。主人公のリンクを操作し、ストーリーに沿って各地で起こるイベントや謎が張り巡らされたダンジョンを攻略していくというものである。
基本システムは、前作『夢幻の砂時計』を踏襲。タッチペン一本だけでリンクを操作できる大胆な操作系とアクションは今作にも継承されている。また、今回も2Dスタイルという事で、3Dゼルダではお馴染みの注目システム(ロックオンシステム)は無し。グラフィックも前作と『風のタクト』と同様、トールンレンダリングで描かれたアニメ風のものになっている。無論、リンクもネコ目デザインだ。ただ、ストーリー本編は前作から数百年後が舞台という設定で、今回のリンクは前作のリンクの子孫、別人となっている。
そして更に、今回のリンクには『見習い機関士』という設定が付けられている。この設定とサブタイトルが現す通りだが、今作では『汽車』が乗り物として登場。実際にこれを運転し、フィールドマップを移動するパートが新たに導入された。ただ、正確に言うとこれは、前作にあった『船』のマイナーチェンジ版。前作で海だったフィールドマップが線路が敷かれた広大な大地に改められ、そこを今作では汽車で移動するようになった。もっと分かり易く言うならば模様替えである。しかし、船から汽車、海から陸地へと大きく改められた事により、移動の自由度、フィールド上の仕掛けは大分違うものになった。自由度に関しては、単刀直入に言ってしまうと前作より低くなっている。そもそも、自由に航行ルートを決められた船とは異なり、今回は線路上でしか動けない汽車という事で、移動ルートは完全に固定されてしまっている。その為、フィールド上を自由に動き回っているという開放感は劇的に低下し、予め敷かれたレールの上を走らされているという束縛感が強くなっている。無論、そのような縛りを設けた構成なだけに、走行中に敵が乱入してくる展開があったり、ポイントを切り替え、ルートを変更すると言った新規のギミックも用意されている。だが、それでも元から決められたルートを進んでる手応えが強い為、作業感があるのは否めない。加えて、目的地となる駅に停止する際には、きちんと汽車のブレーキをかけなければならない、任意の高速移動もできないなど、煩わしさを感じる部分も多い。青空の広がる広大な大地を汽車で走行するのはとても魅力的ではあるが、それでも前作の船よりも面白さは劣る作り。正直な所、前作の船でさえ煩わしさを覚えたプレイヤーほど、嫌悪感を抱くものになっている。そう言った煩わしさを覚えなかったプレイヤーでも、自由どの低さと言った賛否の分かれる部分が多い為、面倒臭さを感じてしまうかもしれない。船も船で癖はあったが、今回は更にその癖が強化。かなり好みの分かれる新要素となっている。
また、汽車とは別の新要素で、ダンジョンの謎解きをサポートする相棒キャラクターが登場。今回はこの相棒を敵に憑依させ、連携プレイで謎を解くという新展開が追加されている。基本的に憑依できる敵は前作にも登場した強力な鎧兵士、ファントムだけで、他の敵には憑依できないのだが、ファントム自体が優れた能力を持った敵だけにリンクを持ち運んだり、盾になったりと、実に多彩で応用性の高いプレイが楽しめる。
しかし、それ以上に面白いのは相棒キャラクターだ。何と、この相棒とはゼルダ姫。シリーズお馴染みのヒロインが今回、リンクの相棒を務めるのである。何故、ゼルダ姫が相棒なのか、その理由は実際に本編を御覧になって頂くとして、そのようなポジションで登場するのもあり、今回は彼女自身のストーリーでの出番も多め。加えて騒いだり、慌てたりなど、性格も随分おてんばになっており、これまでのお淑やかなイメージをいい意味で壊したキャラクターに変貌を遂げている。基本的に本編で活躍を見せるのは、先のファントム憑依で、他ではアドバイスに徹する感じなのだが、今まで影の薄かったゼルダ姫が活き活きと活躍する展開は非常に新鮮。憑依も含め、遂に正真正銘のゼルダの伝説がここに誕生とも言うべき、魅力溢れる仕上がりになっている。ある意味、これが今作最大の見所と言っても良いほど。彼女を見る為だけに今作をプレイする価値アリと言い切れるほどのインパクトがある。
この他にも、マイクを使った新アイテムと新アクションなど、細かな部分において改良や新たな試みが施されている。
汽車の部分など、前作以上に癖の強くなった箇所もあるが、基本は前作をベースに新要素を足して改良を施した、王道の続編として完成されている。タッチペン一本による操作も快適な作りで、触り心地は申し分無し。ゼルダ姫の存在感など、あらゆる面において新境地開拓を目指した、チャレンジ精神旺盛な内容に仕上げられている。

だが、さすがにそのチャレンジをし過ぎた感は否めない。それが今作最大の欠点。進化させるにも、その限度を通り越して、やり過ぎてしまっているのである。
特にDSのハード特性を活かす目的で導入された新要素の大半がマイナスに働いてしまっている。具体的には、先ほど挙げたマイク機能を使った新アイテム『大地の笛』なのだが、これが凄まじく使い難い。マイクで息を吹きかけ、タッチペンで音程を切り替えるという面倒臭いにも程がある操作を要求されるのである。中でも厄介なのが音程の切り替えで、これがタッチペンをスライドさせながら行うものとなっている。これの何が厄介なのかと言うと、スライドさせたペンの設置箇所、またタッチパネルの判定状態によっては、意図しない音を出す事故が起きてしまうのである。一応、きちんと音程変更が行えるよう、タッチパネルの判定周りの調整は入念に行われているが、マイクに息を吹きかけるのと同時に行うその独特の操作故、感覚を掴むのが非常に難しいものとなってしまっている。
そして極めつけ、本編にはこの笛を使い、曲を演奏しなければならないイベントが頻繁に登場する。無論、その時の演奏を少しでも間違えれば失敗となり、最初から演奏し直しとなってしまう。例え、それが意図しない事故によるものだったとしても。それでいて、この演奏を成功させなければ、ストーリーが進行しないという始末だ。只でさえ、操作が厄介だというのに、この設定はあまりに酷である。言うまでも無く、このイベントを行う為の理由付けはしっかりしているのだが、肝心の操作性が劣悪な為、かなりプレイヤー側への負担がかかるものになってしまっている。息を吹きかけながら音程を変えていくその仕組み自体は、実際の笛を吹いているようなリアルな手応えがあり、面白いのだが、それがゲームへの面白さに繋がっているのかというと残念ながら、否定せざるを得ない。せめて、少しのミスでも許される程度に難易度を設定したり、タッチペンだけで操作する設計であれば、まだマシなものになっていたのに、あえてDSの特性にこだわったあまり、このような劣悪な物が誕生してしまったのは非常に残念でならない。特性を活かそうとする心意気は悪く無いのだが、もう少しプレイヤー側の負担を考えられなかったのか?特性を活かすにも限度を考えて頂きたかったものだ。見事に要らぬストレスを与える要素として機能してしまっている。
汽車パートも問題だらけだ。予め決められたレールの上を進行するので、自由度は皆無、移動速度は遅い、停車するに特定の操作をしなければならないなど、一体、製作者はこれの何が面白いと感じたのか、疑問しか出てこないものになってしまっている。広大な大地を汽車で駆け抜ける気持ちよさも最初限りで、以降はひたすら面倒臭いだけ。マップデザイン自体はよく考えられており、ゲームが進む度にショートカットが開き、進行が便利になっていくなど、配慮は凝らされているのだが、肝心の操作自体が面白くないので全く、その良さが活かされてないのだからどうしようもない。また、ゲームが進むと『ボンバー列車』なる脅威が線路上に現れるのだが、この存在も殺意が湧くほどにうっとおしい。倒せない、接触すると即死(ゲームオーバー)、場合によっては遠回りの原因にもなったりと、全然、面白さを引き立てる要素として機能していない。まだ倒せない設定は良いのだが、即死というのはどうなのか?せめて、接触したら戻されるぐらい緩い設定なら良かったのに、即死にした事で余計に汽車パートの問題を悪化させてしまっている。それでいて、ゲームが更に進むと、こちらを追跡してくる新種まで出てくるのだから尚更だ。他にも乗客を目的地に送り届けるイベントにせよ、パーツ編成にせよ、嫌らしさと面倒臭さが圧倒的でどうしようもない。移動速度の高速化もできないどころか、終盤も終盤でそれが可能となる流れもプレイヤーを舐めきっている。
繰り返しになるが、これの何処が面白いと思ったのか?せめて高速化が標準装備されていればまだ違った印象を抱いたのかもしれないが、そう言った配慮もなく、まるでこの広大なマップを堪能してくださいと押し付けがましいものに出来上がってしまっているのは腹立たしい限りである。目指す目的地が分かり易いという強みはあるものの、まだ、前作の船の方がマシだったと言えるほど。本当に何でこうしたと言いたくなる酷い出来となってしまっている。
勿論、きちんと進化を遂げた点もある。ダンジョンの謎解きは前作よりも少し難易度が上がり、適切な歯応えが得られるバランスとなったほか、新要素のファントムを使った謎解きも素晴らしいものに仕上げられている。また、今回も前作同様に何度も訪れる事になるダンジョンがあるのだが、クリア済の階がスキップ可能になるなど、面倒臭さが緩和されて探索し易くなったなど、大きな改善が図られている。
しかし、他の新要素がそれらの優れた進化を台無しにしてしまっているのが本当に勿体ない。ニンテンドーDSを作ったメーカーの意地として、独自色を出す為に入れたのかもしれないが、見事にそれがアダとなってしまっている。プレイヤーが不快に感じない程度に各要素を抑えていれば良かったものを、意地が先走りし、遊び難さと面倒臭さが目立つ作品になってしまったのは残念の一言に尽きる。まさに進化の加減を誤るとはこの事。悪い意味でやり過ぎてしまった続編として、これほど象徴的な作品は他にないと言っても良いだろう。どうしようもない。

操作性に関しても、前作で完成されたリンクの基本アクションは良好なのだが、先の笛やマイク機能を使う『疾風のプロペラ』などの存在により、非常に煩わしいものになってしまっているのが辛い。前作のタッチペン操作も少し賛否を分けるところがあったが、今回はそれ以上に賛否を分ける作りになってしまっている。
ボリュームも前作並みであり、難易度の微かな上昇でやり応えは飛躍的に上がったのだが、汽車パートの面倒臭さもあり、モチベーションの持続が困難な構成になってしまっている。また、やり込み要素も汽車パートの問題により、とてもコンプリートする気力が湧いてこない仕上がりになってしまっているのは致命的としか他に言い様がない。こういう所でも、汽車パートの作り込みが如何に拙いかを痛感させられる。
グラフィックに関しては前作よりも僅かながらレベルが上がった。特に汽車パートにおけるフィールドマップの美しさは格別で、ここを自力で走り回ってみたいと思わせてくれるほど。だが、基本的に汽車でしか動けない為、凄くフラストレーションの溜まるものになってしまっている。そして音楽は、前作の単調なノリから一転。印象深い楽曲が盛り沢山の魅力溢れるものへと爆発的な進化を遂げている。特にダンジョンの曲が個性豊かになった点は見逃せない。また、汽車パートの曲も非常に軽快。パート自体の出来は宜しくないが、この曲は要チェックだ。

演出全般もグラフィック、シナリオの強化によって少し派手になった。シナリオ自体も悪くない出来で、何と言っても相棒であるゼルダ姫の仰々しいリアクションとおてんばな言動は非常に面白い。それまで見たこともない個性的なゼルダ姫は、まさに今作でしか堪能できないものがあるので、要チェックだ。また、シリーズとしては珍しく、エンディングがマルチ方式になっているのも必見である。(微かな違いが出る程度だが)その他、DSらしさを活かした独自の謎解きの数々など、前作の良い所もきちんと継承されており、今回も唯一無二の遊びと体験を堪能できる。
しかし、総じて前作よりも面白さが落ちた続編であるのは否定できない。ゼルダ姫との謎解き、適切なレベルにまとまった難易度、汽車パートにおける広大なフィールド、DSらしいネタの数々など、見所も多いが、遊び心地は前作以下である。特徴的な機能を実装したハードで、それを活かしきる為の新要素を入れ過ぎると如何なる問題が生じるか。それを嫌というほど教えてくれる、反面教師的存在の今作。
正直な所、熱心なゼルダファン向けの作品である。良作レベルの出来だが、遊ぶにもパワーが要る。どうしてもDSでゼルダをやりたいというのなら、今作より前作『夢幻の砂時計』を推奨します。
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