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≫ゼルダの伝説 夢幻の砂時計
■発売元 任天堂
■ジャンル ペンアクションアドベンチャー
■CERO A(全年齢対象)
■定価 4800円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1〜2人
■セーブデータ数 2つ(※フラッシュメモリバックアップ)
■その他 DSワイヤレスプレイ&ダウンロードプレイ対応、ニンテンドーWi-Fiコネクション対応
■総説明書ページ数 40ページ
■推定クリア時間 20時間〜22時間(エンディング目的)、30〜50時間(完全攻略目的)
青い大海原の上を自由に翔る白い海鳥。
そして波を掻き分け、颯爽と突き進む海賊船。この海賊船に乗っているのがお頭である女の子、テトラとその手下達、そして緑衣の少年、リンク。彼らは長い間、一緒に冒険を続けていた。

そんな中、彼らは大精霊『海王(うみおう)』が治めてるという海域に偶然さしかかり、幽霊船の噂を思い出す。するとそこへ、深い霧が周囲を覆い、その中から怪しげな船が現れる。
テトラは勢い良くその船へと乗り込むが、彼女が乗ったと同時に船は離れ始める。
それを見て飛び移ろうとしたリンクだが、あえなく海へと落下。
そのまま、見知らぬ島へと流れ着いたリンクは、その島に住む妖精シエラと謎の老人シーワンによって助けられる。

やがて気を取り戻したリンクは、行方不明になったテトラを探す為、シエラと共に幽霊船を探す冒険へと出る。
果たして、テトラは幽霊船に乗り込んだ後、どうなったのか。
そして幽霊船の正体とは…?
▼Points Check
--- Good Point ---
◆シリーズ伝統のダンジョン攻略メインで進行するゲーム展開
◆タッチペンオンリーの思い切った操作性(しかも煩わしさ皆無の驚くべき快適さ)
◆ペンをタッチするだけで繰り出せる手軽さが見事な、リンクのアクション
◆ニンテンドーDSの特製をフル活用したイベント&謎解きのネタ(どれも衝撃的)
◆古き良き時代のゼルダシリーズを髣髴させる、落ち着いて周囲を観察すれば確実に解ける嫌味無いバランスで統一された謎解き
◆謎解きバランスの恩恵で適度に遊び易い、全ものメインダンジョン
◆直接書き込んで状況を記せるのが地味に便利な、マップ画面の書き込みシステム
◆フル3D視点で展開する、迫力満点のボス戦(個性的なボス戦も一部あり)
◆タッチペンならではの操作の面白さと快適さが際立つ、ブーメランや弓矢を始めとする個性豊かなアイテム群
◆某メ●ルギアな展開と制限時間付きの作りが新鮮な、特殊ダンジョン『海王の神殿』
◆少し荒めだが、GCの『風のタクト』らしさを限りなく表現したトゥーン調のグラフィック
◆お馴染みの『ハートのかけら』集めなど、相変わらず盛り沢山の寄り道&やり込み要素
◆デモスキップ、タッチによるルビ表示など、細かい所まで手の込んだサポート機能群
◆王道ながら、個性豊かなキャラクター達の活躍が光るシナリオ
◆ボス戦のカメラワークなど、臨場感を強める工夫がきちんとした演出

--- Bad Point ---
◆ダルい航海パート(目的地の移動まで時間がかかる上、マップも広くて中だるみする)
◆地味過ぎる音楽(曲数が少な過ぎる上に曲自体もつまらな過ぎる)
◆レスポンスは良好だが、多少の慣れを必要とするタッチペンオンリーの操作
◆コアなゼルダファンには物足りなさも覚える謎解き全般の難易度
◆ペンのみならず、マイクまで多用する為、大人なら実質不可能に近い外出先でのプレイ
◆『風のタクト』のネタバレ全開で展開する最初のオープニングデモ(地味に鬼)
◆DSのタッチスクリーンに傷を与えかねないラスボス最終形態戦(保護シートを貼ろう!)
▼Review ≪Last Update : 12/27/2009≫
それでも、声を出してしまうのが人の性。

しかし、その発想は無かった…。


2004年の『ゼルダの伝説 ふしぎのぼうし』以来、実に3年ぶりにリリースされた携帯ゲーム機向けゼルダシリーズの最新作にして、ゲームキューブの『ゼルダの伝説 風のタクト』の続編。開発はGBAまでのカプコンに変わり、本家こと任天堂情報開発本部が手掛けた。

DSの特性を余す事無く使い切った、ゼルダシリーズ屈指の力作にして大傑作だ。

内容は、過去のシリーズと同様のアクションアドベンチャーゲーム。主人公リンクを操作し、各地で起こるイベントや謎解き満載のダンジョンを攻略していく、お馴染みのものだ。トゥーンレンダリングで描かれたグラフィックとネコ目のリンクが現す通り、ゲームキューブで2002年にリリースされた『風のタクト』の続編で、ストーリーや世界観はそれを基としている。ただ、今回は3Dでなく、『神々のトライフォース』や『夢を見る島』と同じ2Dスタイルであり、注目(ロックオン)と言った3D時代のシステムの大半は省かれてる。唯一、タクトを彷彿するものと言ったら、仕組みが少し変更された広大な海原を船で移動する航海システムぐらい。あとの大半は2D版をベースとしたものなので、厳密には世界観はタクトの続編だが、内容的には2Dの新作…と言った感じの作りとなっている。
しかし、やはり任天堂製作故にただの2D新作では終わってない。例によって、独創的な試みが凝らされている。
それが、今作の操作体系。何と、アクションアドベンチャーというジャンルでありながら、オールタッチペン操作というスタイルを起用している。移動も、剣による攻撃も、アイテム使用も、大砲発射も全部、タッチペン。十字キーとボタンによる、従来スタイルでは一切操作不可能。オプションで別操作として用意されてすらいない、思い切った事をしているのだ。
RPG系ジャンル、しかもアクション要素のあるアクションアドベンチャーのジャンルにおいて、このペンしか使わない操作はあまりに革新的。オプションにボタン操作を用意してない時点で、その本気ぶりが伝わって来ると思う。そんな無茶苦茶な事をしているだけに、まともに操作できるのかと言った不安が付きまとうのも事実だ。DSのゲームにたまにある、無理矢理DSらしさを出そうとしたゲームになっていないかと、つい勘ぐってしまうと思う。だが、意外にもそんな無理矢理なDSらしさは今作には無い。これがまた、ビックリするほど自然且つ、快適にキャラクターを動かせるものに仕上げられている。走る事にしろ、剣で攻撃するにしろ、ボタン操作と何ら変わらず、テンポ良く行えてしまうのである。
何故、そうも快適に動かせるのかと言うと、各アクションの過程が上手い具合に簡略化されている事にある。特に剣の攻撃がそれをよく現しており、普通なら敵に近づかないといけないのを今作ではその敵をタッチするだけで、自動的にリンクがその敵目掛けて攻撃してくれる。「敵に近づく」という、その過程そのものを廃し、素早く反応が返ってくるよう、極めて精密且つ高レベルの調整が図られているのである。そもそも、今作ではキャラの移動もタッチペンで行うのだが、それで敵に近づき、攻撃を加えるのとなると、微妙にテンポがずれ、逆に敵の攻撃を喰らう可能性が高い。ボタン操作とは違い、近づいて素早い判断を下すにも手間がかかってしまうので、思い通りにアクションを行うのにしても難しい。そんな欠点を見越した上で簡略化して快適にさせる調整、それが今作のタッチペン操作では徹底されているのだ。それ故に、実際に操作していて、妙な煩わしさを感じることがほとんど無い。むしろ、気持ちよさがある。敵との戦闘にしても、もたつくことなく行え、ボタン操作の2Dゼルダと変わらぬテンポで楽しめるので、ストレスを感じる事も皆無だ。戦闘のみならず、人との会話、移動も申し分が無く、自然な感触となっているので逆に心地良い。
ペン操作を従来ジャンルのゲームに当てはまると大概、それがアダとなって操作が煩わしくなるのがよくあるパターンである。現に一部のDSゲームでそれは証明されていて、自然なDSらしさを出すなら特殊なジャンルでないといけない暗黙のルールすら確立されているほどだ。だが、今作の場合は従来ジャンルに当てはめたのに自然。且つ、新たな手応えまでをも表現してしまっているというぶっ飛んだ様を見せている。それまでの定説を破壊したに相応しいこの操作性は、まさに従来ジャンルをDSの操作にする場合、どんな調整と工夫を施すべきかという事に対する教科書的存在であると言っても、過言では無いだろう。それほどまでにこの操作、感触の自然っぷりが半端無いのである。正直、この操作に触れた大半のプレイヤーは思わずこう口にしてしまうだろう。任天堂、恐るべし!…と。

操作だけでない。ゼルダの代名詞とも言える謎解きもまた、DSらしさが発揮させられており、プレイヤーに未知の衝撃を提供する。どんなネタがあるのか、それに関してはネタバレとなってしまうので、伏せさせて頂くが、全てにおいてDSでしか考えられないものばかりだと、言っておこう。そして同時に、ゼルダシリーズ初の試みでもある、と。2Dゼルダはまだまだ可能性があるぞと、2D版が好きなプレイヤーなら、それらを体験すれば嬉しい気持ちになること請け合いだ。
また、今作ではダンジョンの地図に手描きでメモをする事もできるようになり、それを使った謎解きが増強されているのも面白い。少々、ネタ自体が解答を載せてるも同然、答えを見ながら問題を解くような感じも強く、妙な違和感があるが、これはこれで「自分で調べてそれを情報として持つ」という新たな面白さと手応えがある。紙にメモする必要が無い辺りも、DSの有り難味や時代の進化と言うものを感じられ、主に古いゼルダファンで、ダンジョンマップをマッピングした経験を持つ方なら、感慨に耽ってしまうかもしれない。
そして、ゼルダの伝説の肝とも言える謎解き全般のバランス。これがまた、スーパーファミコンの『神々のトライフォース』等の頃を髣髴とさせる、入り組み過ぎず簡略化させずの素晴らしいバランスでまとめられており、3D以降の複雑な過程に嫌気を覚えていたプレイヤーには感涙の仕上がりとなっている。素晴らしいのが、ゲームの最初から最後までそのバランスが保たれており、まさに昔のゼルダが返ってきた…とも言えるような味が満ち溢れていること。最後の方になると、何かと複雑化して冗長になってしまうのがありがちではあるが、それが今作では完璧に封じられている。その辺の冗長化を防ぐ工夫が成されている辺りに、如何に調整に時間をかけたかが伝わって来る。この終始、楽しい謎解きが展開されるという構成には、これまた往年のゼルダファンなら感慨に耽ってしまうだろう。
また戦闘周りのバランスも申し分無く、ボス戦はいつもの「お約束」、ダンジョンで手に入れたアイテムを駆使して戦えば楽勝であるなど、変に凝った作りにされてない辺りにも好感が持てる。かと言って、時にはそのお約束に反した展開になるなど、良いプレイヤーに対する裏切りがあったりするのも、さすがはゼルダと言ったところだ。プレイヤーをダレさせず、飽きもさせないその絶妙なつくりは、まさに任天堂のお家芸と言っても良いだろう。
何かと、タッチペン操作にDSらしい謎解きネタに、関心が行き易くもあるが、純粋にゼルダの伝説として見ても、今作はとても美しい仕上がり。変に大作過ぎてないところも絶妙で、3D以降の大作路線に付いていけなかったプレイヤーも、すんなりと入っていける敷居の低さとなってる辺りは、さすがの一言に尽きる。
DSらしさを全面に押しつつも、ゼルダとしての基本も忘れないその姿勢は、まさにシリーズを長く作り続けているだけにある技の表れか。こんな具合に新しさだけでなく、ゼルダとしての安定感も今作はバッチリなのである。この隙の無さには溜息が出るばかりだ。新しいゼルダだけでなく、黄金期のゼルダまでもが今作では体験できる。

しかし、総じて高い完成度を誇る今作だが、幾つか惜しい欠点もある。特に代表的なのが航海システム、音楽の二つ。前者はタッチペンで地図に航路を書いた後、船で進んで行くという、前作であるタクトにもあったシステムなのだが、これがまた…地味にダルい。目的地の移動まで地味に時間がかかるし、加えて海原が広過ぎ。移動中に起きるイベントも淡々としていて、ダレ易くなってるのは問題だ。時々、ボス戦があったり面白いネタもあるのだが、こうもダレる作りでは、無理に入れる必要は無かったのではと、勘ぐってしまう。
もう少し、中だるみを防ぐ工夫、移動スピードを早くしたり、マップサイズを小さくするなどを凝らして欲しかったところだ。
後者、音楽もあまりに地味。ダンジョンやフィールドなど、曲が一曲しかない上、酷く単調でつまらない。更に聞き飽きる。過去のシリーズではダンジョンごとに専用の曲をセットしていたのに、その時のこだわりはどうしたのか。先を進める楽しみをも損ねてるし、ここはもっと頑張って頂きたかった。ボス戦の曲はワリと良い具合な出来であるのに非常に残念だ。ゼルダは音楽も一つの楽しみなのに、それを怠るとはちょっと許し難い。とは言え、いずれの欠点も先のゲームとしての強烈な面白さにかき消されている都合で、それほど気にならないのはさすがと言ったところか。だとしても、個人的に言わせて頂ければ、音楽だけはもっと凝って欲しかったが…。

そんな目立つ欠点はあれど、その他…グラフィックの質は高いし、総計ボリュームも申し分無しの量。任天堂らしい丁寧なチュートリアルにルビ機能などの細やかな配慮、そして何処無く『夢を見る島』を髣髴させるシナリオなど、見所は沢山ある。Wi-Fiコネクションで楽しめる陣取りの対戦プレイもまた、かなり白熱する内容となっており、ネット対戦ゲームとしても良く出来てる辺りのも秀逸である。また、何故だかメ●ルギアを髣髴とさせるようなダンジョンがあるなど、随所にて妙な小ネタやお遊びが炸裂しているのも、見逃せないところだ。
総じて、ゼルダの伝説としての完成度も高い上、DSのゲームとしてのらしさ、手応えも半端なものではない今作。
繰り返しになるが、タッチペンによるビックリするほど快適な操作性と、謎解きやイベントにおけるDSらしさ全開のネタの数々は、冗談抜きにプレイヤーに前代未聞の衝撃を与えるほどの凄味に溢れている。ゼルダシリーズファンは勿論の事、ニンテンドーDSを持っているユーザーならばプレイする価値は大アリに等しい、究極の大傑作だ。ニンテンドーDSで表現される、新たなアクションアドベンチャーというものを是非、その手で確かめてみて欲しい。これはマジでお薦め。タッチペンでアクションアドベンチャーはここまで凄くなる!
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