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≫ボンカーズ ハリウッド大作戦!
■発売元 カプコン
■ジャンル アクション
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 8925円(税込)
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 無し(※パスワードコンテニュー形式)
■総説明書ページ数 16ページ
■推定クリア時間 1〜2時間
トゥーン(アニメーション)とリアルズ(人間)が仲良く暮らす『ハリウッドシティ』。

ハリウッド警察トゥーン部に勤務するいつも失敗ばかりの迷コンビ、ラッキー・ピクエルとボンカーズのところに「『トゥーン・ミュージアム』から3つの秘宝が盗まれた」という事件発生の第一報が舞い込んだ。この事件は自分達で解決するんだと張り切るボンカーズだったが、勢い誤ってその捜査中、相棒のラッキーが大怪我を負ってしまった!
負傷したラッキーに代わり、ボンカーズはたった一人で事件の捜査に乗り出す。
果たしてボンカーズは事件を解決できるのか。
そして、3つの秘宝を盗んだ犯人とは…?
▼Points Check
--- Good Point ---
◆普通に遊べば正統派、ダッシュ主体で遊べば焦り要素満載の内容へと変貌する、二面性を持つゲームデザイン
◆新しさは皆無だが、維持する楽しさと難しさが光るダッシュアクション
◆普通に進むか、ダッシュ主体で進むかで難易度が変化する、プレイスタイルに応じた調整を施したゲームバランス
◆特典は地味だが、素早くクリアする楽しさと達成感に秀でたタイムアタックのやり込み
◆素早くクリアする目的を絶妙に妨害する敵・仕掛け配置が光るステージ構成
◆同じく素早くクリアする目的を絶妙に妨害する、手強く戦い甲斐のあるボス達
◆配置、レスポンス共に良好で、動かす楽しさに秀でた操作性
◆全体的に短めだが、何度も遊び込める手軽さと程好い密度を兼ね備えたボリューム
◆丁寧に描かれたドット絵とアクションで魅せる、質の高いグラフィック
◆他のカプコン製ディズニーゲームのパロディも仕込まれたエフェクト演出
◆ドタバタしたストーリーと設定にマッチした、スピーディな音楽

--- Bad Point ---
◆悪く言えば『タイニートゥーンアドベンチャーズ』からの拝借ネタに過ぎないダッシュアクション(性能面で違いはあるが)
◆短めな為、やり込まなければあっさり終わってしまう全体のボリューム
◆『ロ●ンシング・サ●2』の『ク●ンシーの●い』にソックリにも程があるラストステージの曲(大丈夫なのか…?)
◆地味で淡々としたエンディング
◆致命的な穴が存在する評価システム(パスワードでラストステージから始めると…?)
▼Review ≪Last Update : 9/25/2011≫
解決のカギは己の足にあり!

走れ、走れ、走れッ!


海外で放送されていたディズニーのテレビアニメシリーズ『ボンカーズ』を原作としたアクションゲーム。発売・開発は『ミッキーのマジカルアドベンチャー』シリーズなど、数多くのディズニーゲームの傑作を手掛けてきたカプコンが担当。

焦るゲーム性とパロディネタで魅せる、カプコン製ディズニーゲーム屈指の迷作だ。

ゲーム内容は横スクロールのステージクリア型アクションゲーム。新米刑事のボンカーズを操り、美術品を奪った犯人(ボス)が潜伏するステージを疾走し、彼ら全員の逮捕を目指すというものだ。ストーリーをベースにして解説したが、要は各ステージの最後に待ち構えるボスを倒せばクリアという正統派アクションゲームである。
本編はステージセレクトシステムに基づいて展開。全部で4つのステージの中からプレイしたい所を自由に選んで攻略していくのが大まかな流れとなっている。各ステージは2つのエリアから成り、雑魚敵の群れや仕掛けを突破する第一エリア、美術品を盗んだ犯人との対決が待ち受ける第二エリアを順に攻略していく。全体的にコンパクトな構成となっているが、それを補う形で今作は『犯人逮捕までの時間』なるタイムカウントの要素を実装。犯人逮捕(ボス撃破)までかかった時間がステージクリア後に表示され、この成果が良いか悪いかでボンカーズの上司である警察署長の評価(メッセージ)が変化するタイムアタック的な遊びを設けている。とは言え、基本的にどんなに時間がかかってもペナルティが課せられたりする事はない。一応、全てのステージをクリアできれば、ちゃんとエンディングは見れるようになっている。だが、署長の評価が悪いままで決着してしまう為、最終的な後味は悪いものとなる。後味の良い形で終わらせたくば、必然的に全ステージを早急に攻略しなければならないのだ。そんな『犯人逮捕』というストーリーの設定に応じた、地味だけども捻りのある遊びを今作は設けている。なので、普通にプレイするとただのステージクリア型アクションだが、時間を気にしてプレイすると焦る要素だらけのステージクリア型アクションへとその姿を大きく変える。コンパクトな構成にしても、全てはその疾走プレイを引き立てる為、あえてそうしている。まさに二面性を持ったレベルデザイン。王道だけど、プレイスタイルを変える事でゲーム性が変化する、非常に個性的なアクションゲームに仕上げられている。
また、そんな個性的なゲーム性を引き立てる、主人公・ボンカーズのアクションも今作の特徴の一つ。彼は基本的に移動速度が遅い。ノロノロと動く。仮にもタイムアタックの要素を取り入れたアクションゲームでありながら、極めて大きなハンデが設けられてしまっている。しかし、その遅さをカバーするアクションがある。それが『ダッシュ』。今作は『ダッシュメーター』なるものが設けられていて、これが満タンになった時(点滅している時)にYボタンを押すと、ボンカーズが通常の約3倍の速さで走るのだ。本編ではこのアクションを駆使し、各ステージを疾走していく。メーター自体は自動で溜まっていく仕組みとなっており、アイテムを集める必要とかは無い。好きなタイミングで発動可能な自由度の高い仕組みとなっている。
だがこのアクション、何処かで聞いたような…とデジャヴを覚えた方が少なからず居ると思われる。勘の鋭い方ならばお分かりの通り、これはスーパーファミコン版『タイニートゥーンアドベンチャーズ』のダッシュアクションそのものだ。メーターが満タンになるとダッシュ可能になる辺りとか、完全にタイニートゥーンのそれ。あからさまな拝借ネタとなっているのである。故に「完全なパクリやんけ!」と言われても、一切反論できず。何とも志の低い、酷いアクションとなってしまっている。幾ら偶然の産物だとしても、タイニートゥーンから3年後に発売された事実がある時点で説得力皆無。まさに「どうしちゃったのカプコン!?」な酷さである。
しかし、タイニートゥーンと酷似してるとは言え、基本性能には明らかな違いがある。というのも、今作のダッシュは軟弱。壁や障害物に接触すれば即座に中断してしまうのである。更にタイニートゥーンでは垂直移動、スライディングアタックと言ったダイナミックなアクションができたが、今作にそんなアクションは一切なし。単に早く走るだけと、非常に素っ気無い仕様となっている。更にダッシュ中は十字キーによる強制中断も効かないなど、自由度も低めだ。そうも軟弱な仕様である為、本編ではダッシュを如何に継続させるかがカギとなってくる為、基本的な手応えとスリルは、タイニートゥーンとは違う物となっている。タイニートゥーンが爽快感を追求したのに対し、今作は緊張感を追求したと言ったところか。仕様は同じとは言え、ゲーム性には決定的な違いを強調させた仕上がりとなっている。拝借モノとは言え、ちゃんと違いを出すなど、作り自体は如何にもなカプコンらしさが炸裂している。でも、他のゲームからネタを拝借するなど、らしからぬ黒さがあるのは苦々しい。そして、ゲーム性も急がないと悪い評価を下されるという辺りに現代社会を髣髴とさせる苦々しさがある。まさに、あらゆる意味で苦いゲームとはこの事。仮にもディズニー作品を原作としたゲームでありながら、随所において「黒さ」が炸裂した個性的過ぎるゲームに仕上げられている。

そして今作の魅力は、素早く進むかのんびり進むかで劇的に変化するゲーム性に集約される。先の繰り返しになるが、ダッシュアクションを駆使しないプレイに徹すれば今作は普通のステージクリア型アクションゲームとなる。しかし、ダッシュアクションを駆使したプレイを心掛けると一変。「急いでクリアしなければ!」と気持ちが焦る、スリル満点のステージクリア型アクションゲームへとその姿を大きく変える。加えて、そう言ったプレイを心掛ければ、ボンカーズの上司である警察署長から褒められ、良い評価を得る事もできる。一方で、のんびり進めると、警察署長から叱られるどころか、評価も悪くなってしまう。まさに「早い者勝ち」を体現したゲームデザイン。テキパキとプレイするほど褒められ、のんびりプレイするほど怒られる。そんな決定的な違いが現れるアクションゲームとして今作は完成されていて、腕っ節のアクションゲーマーも思わず舌を巻いてしまう高いやり込み甲斐と奥深さに秀でている。
また、そのプレイスタイルによる変化が現代社会における「時間を守る事の大切さ」を教えてくれるのも非常に面白く、如何にもディズニー作品のゲームらしい誠実さが現れているのが実に見事だ。警察署長の評価がまさにそれで、遅くクリアした人ほど、後味の悪いエンディングを迎える事になるという展開には、プレイした誰もが「時間を守らないって拙い事なんだ」と痛いほど思い知らされるだろう。単純にテキストでそれを伝えるのでなく、ゲームという体験を通して伝えさせようとする姿勢にも好感を抱ける。この手法を取り入れているのもあってか、テキストを読む以上に事の重大さを学ぶ事ができる。ある意味、低年齢層のユーザーに対する教育ゲームとしても、今作は効果を発揮するかもしれない。敵を倒す要素がある為、少々刺激の強い一面があるのがタマにキズではあるが。
そしてその「時間を守る」事が、如何にダッシュ移動を持続させるかと言った緊張感に富んだゲームプレイを演出しているのも見逃せないところである。先にも語ったが、今作の特徴であるダッシュアクションは、かなり軟弱。壁や障害物に衝突するだけで中断してしまうほか、制御も効かないので、スピーディにステージをクリアするとなると、如何に上手くボンカーズを失速させる事なく動きを維持できるかがカギとなってくる。無論、下手にダッシュが途切れたりでもすれば、署長の評価が落ちる事へと繋がってしまうから、気持ちも大いに焦る。そうも如何にダッシュを持続させるかで結果が左右される辺りは、もはやアクションゲームというよりはレースゲームそのもの。まさに自分との戦いとも言える、独特の手応えもまた、腕っ節のアクションゲーマーを大いに唸らせる事だろう。
そのスリル溢れるゲーム展開を演出する為に用意されたステージの仕上がりも相当なもの。敵配置、仕掛け共に絶妙な具合にダッシュ移動の維持を妨害してくる。それでいて、全ての敵と仕掛けはダッシュ移動、或いは通常のアクションで軽々と突破可能。腕を磨けばノーダメージ&スピードクリアも達成可能となるなど、上達を感じ取れる調整具合になっていて、アクションゲームには確かなノウハウを持つカプコンの特技が炸裂している。また、今作は難易度選択機能を設けてないのだが、それをダッシュ使用・未使用のプレイスタイルに役割を担わせている辺りも実に秀逸。安全に進めたいか、進めたくないかは自分で選べという辺りには、任天堂のゲームにも通じる職人的なセンスを痛感させられる次第だ。
これと全く同じ選択機能を設けてたので『アラジン』があったが、今作はそのアラジン以上にシンプルで分かり易い選択の形を表現している。アクションの使い方次第で自然に難易度が選択されるこの調整には、アクションゲームにおける最も理想的な難易度選択機能とはどういうものか、というのを深く考えさせられるばかりである。
他にもステージのみならず、その最後に待ち構える犯人ことボスとの戦いも、制限時間の存在もあり、素早く倒す事が求められてくる調整になっているのがユニーク。ボス自体もカプコンのロックマンシリーズに出て来ても不思議でないボスも居たりして、ネタの面でも笑わせてくれる。
アクション自体は『タイニートゥーンアドベンチャーズ』の拝借も同然な為、独自性は皆無だ。しかし、爽快感を重視したタイニートゥーンとは異なり、今作はダッシュ特有の緊張感とメッセージ性、ゲームバランスの変化を最重要視し、まるで違うゲーム性と手応えを実現させている。あまりにソックリな所は感心しないものの、走る事の楽しさと難しさを事細かに追求したゲームデザインにはアクションゲームに対する熱い思いが凝縮。意外にも、細部まで丁寧に作り込まれたアクションゲームとなっているのである。まさにこれぞ似て非なる新しい作品と言ったところだ。

アクションゲームの肝とも言える、操作性も良好な仕上がりだ。ボタン配置、レスポンス共に非常に良好で、気持ちよくキャラクターを動かす事ができる。またアクションもダッシュのみならず、踏み付けや爆弾投げなどが用意されており、それらを状況に応じて使い分ける場面が豊富に用意されているのも見所の一つだ。
また、ボリュームは少なめ。ステージ総数は全部で6つだけ、一つ一つのステージがダッシュアクションによるゲームデザインの都合上、短めに構成されているので、あっさり終わってしまう。しかし、ステージの作り込みに関しては先にも紹介した通り、敵配置から仕掛けに至るまで非常に絶妙な仕上がりとなっている。難易度も適切な調整になっているので、短いとは言え確かな満足感を得る事ができるだろう。売りであるタイムアタックの奥深さも見逃せないところだ。
その他、グラフィックもカプコン製ディズニー作品に共通する丁寧に描かれたドット絵とキャラクターごとのリアクションが光る。特にボスキャラクターのドット絵はいずれも気合いの入った仕上がりとなっているので必見だ。一方で音楽は短めの曲が主体となっている為、少々インパクトが弱い。しかし、それが返って素早いプレイが求められるゲーム性にマッチしていて、本編での展開を大いに盛り上げてくれる。またボス戦の曲はドタバタとした曲調が良い雰囲気を醸し出しており、ディズニー作品らしさが現れているのも実に印象的。全体的には適切な働きをした仕上がりになっている。しかし、最終ステージの曲が『ロ●ンシング・サ●2』の『ク●ンシーの●い』にソックリなのはどうしたものだろうか。

演出周りも派手過ぎず地味過ぎずの丁度良い仕上がり。一部、『ミッキーのマジカルアドベンチャー』より拝借したエフェクトがあったり、あるステージで背景にミッキーとドナルドが出て来ると言ったネタが炸裂しているのもユニークだ。若干、こじ付けな感じもあるが、ファンサービスとしては申し分ない。
他にもドタバタとしたストーリー、必須アイテムではないが『警官バッジ』を集める要素など、魅力的な要素は満載だが話すと長くなるので割愛。露骨なまでに『タイニートゥーンアドベンチャーズ』とソックリなアクションは賛否が分かれるが、緊張感とプレイスタイルによる難易度の変化を最重要視したゲームデザインとコンセプトはなかなか光るものがある。アクションゲームとしても基本的な難易度は控え目で、初心者にも優しい作りとなっているのが好感触だ。
遊び方によって変化するほか、時間を守る大切さを思い知らされるゲーム性と優れたゲームバランスで魅せるこの『ボンカーズ ハリウッド大作戦!』。アクションゲーム好きは勿論のこと、ディズニーファンも要プレイの良作だ。数あるカプコン製ディズニーゲームの中ではダントツに知名度が低いが、出来は良好。機会があったらプレイしてみて欲しい。
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