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≫BUSHI青龍伝 二人の勇者
■発売元 T&Eソフト
■開発元 ゲームフリーク
■ジャンル 古代神話RPG
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 7980円(税込)
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 3つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■総説明書ページ数 22ページ
■推定クリア時間 18〜22時間(エンディング目的)、25〜40時間(真エンド・完全攻略目的)
光の天帝が生み出した兄神と妹神は、兄が海を、妹が大地を創り世界を誕生させた。
海の兄神と山の妹神によって作られた世界は、深く静かな海に囲まれた、緑豊かな大地。
そこで生まれた生命たちは神の恩恵を受け、平和に暮らしていた。

だが、人間が地上に誕生してから、海の兄神の心に「嫉妬」という感情が芽生える。
やがて海の兄神は「全てを支配したい」という歪んだ欲望にとらわれ、邪神と化す。そして、世界の中心にある天界と地上を繋ぐ唯一のもの、「魔結之柱(マムスビノハシラ)」を邪悪なものに変え、そこで邪悪な魔物を生み出していった。
後に海の兄神の愚行を止める為、山の妹神と「八神一族」が立ち上がる。
「八神一族」とは、大地の神である山の妹神を奉り、仕え、共に生きることを使命とした一族である。彼らを代表する4人の勇者は「武四(ぶし)」と呼ばれ、代々「青龍」「白虎」「朱雀」「玄武」という名を受け継いでいた。

しかし、熾烈な戦いの末、山の妹神達は敗北。
そして妹神は天界へと戻され、「武四」たちは死者の住む国「黄泉の国」へと落とされたのだった。

物語は、その戦いの十数年後から始まる。
世界には、海の兄神が生み出した魔物が徘徊していた。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆行動制限による熱い駆け引きとアクションゲームのような画面構成が異彩を放つ、斬新な戦闘システム『リレイティブタイムアクションバトル』
◆全雑魚敵の固定配置制が醸し出す、圧倒的な戦略性と中毒性(配置が固定されているが故に如何に最小手数で倒すかの試行錯誤が面白い)
◆少ない手数で敵を倒すほど大量にもらえる特典とエンディングの変化がプレイヤーの挑戦意欲を刺激する、熱過ぎる『勾玉集め』のやり込み
◆アクション要素とローグライク要素による強烈な奥深さと戦略性を秘めたフィールドマップ
◆ジャンプ斬り、ヲクウへの突撃指示など、戦略性を引き立てる多彩なアクションの数々
◆要素を小出しする形で構成された、分かり易くて丁寧なチュートリアル
◆手にスッと馴染む違和感の無さと適切なボタン配置が光る、良好な操作性
◆メインストーリー攻略でも20〜25時間はかかる、やり応え抜群の充実したボリューム
◆試行錯誤の楽しさと力押しを封じる絶妙な調整具合が見事なゲームバランス
◆王道ながらも善と悪のテーマを描き切った、見応えのあるストーリー
◆水彩画調の淡い色彩と美しい自然の描写が強烈な印象を残す、質の高いグラフィック
◆日本神話の世界観に適した作風と重々しい曲調が臨場感を煽る、良質の音楽
◆ただひたすらに派手としか言い様が無い、仰々しさ抜群のエフェクト演出

--- Bad Point ---
◆派手ではあるが、全体的に冗長さも否めないエフェクト演出(とにかく無駄に長い)
◆民家に入った際の会話シーン移行までの遅さ(大体3〜5秒ぐらいかかる)
◆力押しが効き難い為、ゲーム初心者には厳しい一面も併せ持つゲームバランス
◆全体的に戦闘中心になりがちな本編の構成(それでも違いを出す工夫はしっかりしている)
▼Review ≪Last Update : 10/23/2011≫
外道だけ助けて終わりか!?

貴方はどうする?


『ジェリーボーイ』、『マリオとワリオ』、そして『ポケットモンスター』で知られるゲームフリークが開発した、日本神話を題材にした完全新作のアクションロールプレイングゲーム。

正真正銘、前例の無いゲームシステムで送る、スーパーファミコン末期の大傑作だ。

ゲーム内容は大雑把に言うと、アクション要素を取り入れたロールプレイングゲーム(RPG)。武四(ぶし)の血を引く主人公を操り、妖怪との戦闘やイベントなどを乗り越え、ストーリーを進めていくというものである。
しかし、基本的な内容はそう簡単に説明できる一方で、ゲームシステムに関しては前述の通り、前例のないものという事で、少ない言葉で説明するのが非常に難しい。以下、順を追って解説していくと、基本はシンボルエンカウント方式を採用したRPG。マップ上には敵が見える形で徘徊していて、それに接触する事で戦闘へと移行する仕組みとなっている。しかし、このマップ上を徘徊する敵の動きには大きな特徴がある。それはプレイヤーが一回移動すると、敵も同じように一回移動するという事。同一ターン制の法則に基づいて動くのである。チュンソフトのダンジョンRPG『不思議のダンジョン』シリーズと一緒、というとゲームに詳しい方ならばすぐにイメージできるかもしれない。
更にマップ上を徘徊する敵には、こちら側から攻撃を仕掛ける事も可能。Yボタンを押す事で剣を振る事ができ、これで敵に攻撃を仕掛けると、戦闘がプレイヤー側に有利な状況下でスタートする特典を得られる。一方で仕掛ける事に失敗、敵に攻撃を仕掛けられてしまうと、戦闘が敵側に有利な状況でスタート。相応のペナルティを受ける仕様となっている。また、厄介な事に通常接触(敵味方共にハンデ無しの状態でスタート)の概念は無い。基本、攻撃を仕掛けた状態からスタートか、敵から攻撃を受けた状態からスタートするかの二つに絞られている。なので、なるべくこちらから攻撃を仕掛ける形で戦闘を展開していかなければ大変な事になるのだ。動きの法則のみならず、戦闘開始時にも独自のルールが設けられている為、軽い気持ちでプレイすると痛い目に遭うのは必至。マップ上でも、敵との駆け引きが求められる、極めて緊張感の高い作りになっている。こんな具合に見た目こそシンボルエンカウント形式のRPGではあるものの、その仕組みは複雑。単純なシンボルエンカウント型RPGとは形容するのも難しい、独創的なゲームデザインが成されている。
そしてそれらの駆け引きの末に始まる戦闘、『リレイティブタイムアクションバトル』もその名が現す通り前例のない作りだ。見た目こそ横スクロール型アクションゲームを思わせる画面構成だが、これもマップと同様に同一ターン制の法則に基づいて展開。プレイヤーが一回行動すると敵も一回行動するという、全てのキャラクターがグリット単位で行動する仕組みとなっている。但し、一回の戦闘で登場する敵の量は基本的に2〜3体以上と、1対1の一騎打ちではない。一騎打ちはボス戦ぐらいで、雑魚戦では基本、群れとの戦いが基本となる。また、ボス戦を除く戦闘では『目標行動回数』なるものも設定されており、これを超過する行動をしてしまうと『悪意の波動』がプレイヤーを襲撃。以後、行動する度に体力(ヒットポイント)が削られていく、嫌らしいペナルティが課せられる。なので、如何に少ない行動(手数)で敵を倒すかが大事。大雑把な戦いだと、『悪意の波動』で致命傷を負ってしまいかねないので、グリットから敵の動き、こちらの到達位置をよく考えた戦い方が求められてくる。もはや、その感覚は詰め将棋そのもの。アクションゲームっぽい見た目ながら直感による行動が命取りとなる、非常に戦略性の高いシステムに仕上げられている。なので、アクションゲームの如く好き勝手に暴れ回れるなんてイメージを描いて挑むと、痛い目どころか死を見かねない。かなりギャップの激しい作りとなっている。
また、目標行動回数以内で戦闘を決着できた際にはエンディングに関係するアイテム『勾玉』が手に入るという特典も完備。短くすればするほど、報酬となる勾玉の量も倍増するので、極め甲斐も抜群だ。そんな制約の多さを逆手に取った遊びが盛り込まれているのもこのシステムの大きな特徴。独創的なアイディアと設計もさる事ながら、その中身も見所満載と、まさに隙の無い仕上がりとはこの事だろう。
この他にも、登場人物との会話シーンはアドベンチャーゲームのようなバストアップ方式で展開、戦闘で登場する敵の種類と編成は基本、固定メンバーとなっているなど、特徴的な要素はまだまだある。
少ない言葉で説明するのが難しい、というのもこれである程度は察して頂けたであろうか。RPGなんだけど、アクションRPGな要素あり。戦闘は横スクロールのアクションゲームっぽいのに、アクションゲームのような感覚でプレイすると死を見る。そして、プレイヤーの行動に沿って敵も動く同一ターン制に基づいた基本設計。このような要素を詰め込んだゲームを、単純にアクション要素のあるロールプレイングゲームと一言で言うのも無理があるだろう。それほどまでに独創的な要素が盛り沢山。他に類を見ない独自性を持ったRPGなのである。

そして、この独創性の高いゲームシステムが今作最大の見所なのは、もはや言うまでもなく。アクションRPGなのか、それとも『不思議のダンジョン』のようなローグ系RPGなのか、どちらと断言できないほど前例のないゲームシステムは、プレイしたユーザーにそのまんまの衝撃と新しい体験を提供してくれる。
特に今作を構成するシステムの中で、最も異彩を放っているのは戦闘システムだ。目標行動回数内で敵を倒すという高い戦略性、少ない行動回数で倒す事で倍増する報酬アイテム『勾玉』の存在など、全体を構成する数多くの要素が提供する中毒性の高さは筆舌に尽くし難い面白さを誇る。中でも行動回数の限界に挑むやり込み甲斐の高さは、シミュレーション好きやパズル好きも舌を巻いてしまうほどの熱中度。少ない行動で決着させる事を目指し、あれこれ試行錯誤して最終的に予想通り、或いは予想以上の結果を導けた際に得られる達成感は格別極まりないものがある。また、その少ない行動で戦闘を終結できた成果も『勾玉』という目に見える形で現されるので、プレイヤー自身の成長をも実感でき、高い優越感に浸れるのも非常に魅力的である。そして、極めれば極めるほど、勾玉も沢山獲得できるようになるので、次第にゲームを止める事もできなくなっていく。自分なりの戦略を考え、それを実行するシミュレーション的な面白さ。プレイヤー自身の成長がダイレクトに反映される、アクションゲーム特有の上達感。そして、思い通りの成果を得られた際に得られるパズルゲーム的な開放感と達成感。異なるジャンルの魅力が違和感なく融合され、プレイヤーを引き込ませる要素として効果的に働いている設計には本当、驚きである。敵を全滅させるというシンプルな遊びの中にその緊張感と奥深さを高める要素を導入し、破綻なく、それでいて遊び応えのあるものへと仕立て上げたゲームデザイナー、田尻智氏のセンスには感銘すら覚える。しかも、システム全体も他に類を見ない新しさがあるので、全体的なインパクトも申し分無しというのだから尚更だ。少々、大袈裟な物言いではあるが、今作の戦闘システムはスーパーファミコンはおろか、数あるRPGの中でも傑出した面白さとインパクトを持つものだと言っても過言ではないだろう。
また、敵の編成が個体ごとに固定、パターン化されているのも面白い試みである。この仕組みのおかげで個体ごとの戦略を組み立てる事ができるほか、再プレイ時にはそれを活かした上で更にスピーディ且つスムーズな展開を作り出す事ができる。更に編成が個体ごとに決まっている、すなわち序盤の敵は新たなアクション(※今作ではゲームが進む度に主人公、そしてサポートキャラの『ヲクウ』が新しいアクションを覚えていく)を覚えた後に再度挑戦すれば、最初に戦った時以上の勾玉が得られるというのも、RPGとしては革新的だ。一般のRPGでは基本、終盤まで進めた後に序盤のマップ(エリア)へと戻ると、キャラクター自身が強化されてしまっているので、以前はそこそこ張り合えた敵も虫ケラも同然の雑魚。戦闘もプレイヤー側が有利な一方的な展開となってしまい、駆け引きも何もない、イケイケプレイとなってしまうのがお約束である。ところが、今作では序盤のマップ(エリア)に戻ったとしてもそんな事が一切起きない。敵が雑魚になってしまうのは他のRPGと変わらないが、それとは別に勾玉を沢山集められるという新しいメリットが生まれるので、終盤で登場する敵と変わらぬ戦略性、面白さが堅持されるのである。これも、今作が固定編成であり、尚且つ制約の設けられたシステムだからこその賜物。終盤まで進んでも、戦闘の面白さと戦略性が一定したままとか、まさに前代未聞である。如何にこの戦闘システムが細部に渡って考えられて作られているか、それを実感させられる次第だ。
この他、戦闘システムが横スクロール型アクション風味という事で、ダンジョン内のマップは同時ターン制の横スクロールアクションとしていたり、プレイヤーが強化されると、マップ上で先制攻撃を仕掛けるだけで敵を倒せてしまったりなど、元ネタの存在感を際立たせる配慮が成されているのも面白い。中でもダンジョンマップは、まんまアクションゲームな構成となっているほか、行動制限も無いので、自由に動き回れる魅力を兼ね備えているのが実にユニーク。行動制限が無い状態でキャラクターを動かしたい、というプレイヤーの欲求不満を解消する場として見事に機能している。
全体を見れば、戦闘システムの高い完成度に目が行ってしまいがちだが、こういう風にプレイヤーごとに感じる欲求を応える場をきちんと用意する配慮も実に秀逸。新しさだけで勝負せず、時には懐かしさも取り入れる。そのバランス感覚とプレイヤーに対する配慮の事細かさには本当、驚かされるばかりだ。一歩間違えればストレス要因になりかねない制約を見事にゲーム性へと消化し、高い戦略性と極め甲斐のある奥深さを実現。それでいて、本来の形に沿った遊びの場も設けたりするなど、とにかく隙の無さ過ぎる作りは衝撃的としか言い様がない。
新しい上に面白い。それでいて懐かしい。そう声に出したくなってしまう要素がバランスよく融合され、一つのゲームとして完成されている。これほど前例のない新しいゲームであると、自信を持って言い切れる作品も他にないだろう。

戦闘システムばかりでなく、フィールドマップの設計やゲームバランス(難易度設定)など、レベルデザインの面でも今作は非常に高い完成度を誇る。特に難易度は総じて高めだが、試行錯誤する事で無傷で突破できたりなど、制約のある仕組みを活かした考える面白さを演出する調整になっているのが見事。システム的に見ても非常に理に適ったバランスで、遊んでいてとても面白い。
戦闘システムの丁寧な指南(チュートリアル)などフォローも万全で、説明書を読まずとも遊べる敷居の低さも特筆に値する。パートナーキャラの『ヲクウ』に新しいアクションが備わる過程も、システムの複雑さを考慮したゆっくりとした流れになっているなど、細かい部分に至るまで敷居を低くしようとする気配りが凝らされているのにも凄いの一言に尽きる。
グラフィック、音楽、エフェクト周りの演出の完成度も高い。特に演出周りは非常に派手で、全体攻撃を仕掛けた際に激しい効果音が鳴り響いたり、ボスを撃破すると仰々しいエフェクトが画面いっぱいに広がったりなど、確かな手応えを感じさせる為のこだわりが炸裂している。また、グラフィックも淡い水彩画風のデザインが印象的。キャラクターデザインを担当している杉森健氏の特徴が色濃く反映されている。特に会話シーンを始めとするバストアップ画面は必見だ。

他にストーリーもゲームフリークでは王道の「兄弟喧嘩」を描いた内容でありながら、善と悪の意味を問いかける場面があったりなど、なかなか奥が深い。中でも、主人公のパートナーとして活躍する『ヲクウ』関連のイベントは必見。そのあまりの健気さと報われなさにプレイヤーによっては涙を浮かべてしまうかもしれない。
ボリュームもエンディングまで20〜25時間ほどと充分。勾玉を集めるやり込み要素も完備しているほか、その勾玉集めの成果によって『ヲクウ』絡みのイベントに素敵な結末が用意されているのも、紳士なプレイヤーには見逃せない。
エフェクト演出の冗長さ、民家などに入ってから会話シーンへ移行するまで微妙なロードがあるなど、主にゲームテンポの部分において残念なところが散見されるが、システム全般の完成度の高さもあって、いずれも些細なものだ。
独創的なゲームシステムに秀逸なゲームバランス、そして深いテーマ性を秘めたストーリーなど、突出した中毒性と見所が盛り沢山の今作。発売時期が時期だっただけに、知名度は相当低いが、だからと言って埋もれたままにしておくのは重罪と言っても過言ではない。これはスーパーファミコンを持っていてRPGが好きな方なら何が何でもプレイすべき傑作である。機会があったら是非、プレイしてみて欲しい。かなりお薦めです。
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