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≫カードマスター リムサリアの封印
■発売元 HAL研究所
■ジャンル 3DダンジョンRPG
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 9345円(税込)
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 3つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■総説明書ページ数 50ページ
■推定クリア時間 12〜15時間
十数年前、エレメン島のレクスファート王国王都ビザンツにて、大規模な反乱が起きた。
王のワグナールに仕える宮廷魔術師、ガルネールが反旗を翻したのだ。反乱の末、ガルネールはワグナールを殺害。自らが王として君臨し、独裁政治を敷くようになった。

ガーリアの村に住む少年ルークスは、そんなガルネールの反乱によってカードマスターの父と母を失っていた。父はレクスファート三騎士の一人として名を馳せ、数少ない味方達と村を守る為、勇敢に反乱軍に立ち向かった。しかし、同じ三騎士の友の裏切りによって不意を突かれ、母もその時に巻き込まて帰らぬ人となった。

反乱から十数年が経過した現在、ガーリアの村は反乱など遠い昔かのように平和な日々が続いていたが、ルークスは父の記憶をもとにカードマスターの修業に明け暮れた。

そんなある日、ルークスの元に二人の来客者が現れる。
これこそが、彼の戦いの幕開けでもあった…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆「ダンジョンRPG=ダンジョンをひたすら潜っていくもの」というイメージをそのまま投影した、ストーリー主導型のシンプルで取っ付き易いゲームデザイン
◆パーティ編成無し、自動マッピング機能実装など、ダンジョンRPG特有の要素を削ぎ落とし、初心者に親しみ易く、気楽に楽しめる作りにまとめられたゲームシステム
◆ターン方式でありながら、属性との相性を考慮した戦術が求められる、手応え十分の戦闘
◆探索要素控え目、謎解き皆無で、単純に潜っていく面白さだけに特化した作りでまとめられたダンジョン構成(とは言え、ループ地帯などのギミックはある)
◆シナリオごとにダンジョン1つという構成ならではの多彩なダンジョンロケーション
◆優し過ぎず、難し過ぎずの適度且つ、ダンジョン探索の恐怖感もしっかり残した難易度設定
◆ダンジョンRPGとしては短めながら、十分な密度で構成された本編のボリューム
◆色々とプレイヤーの意表を突きまくる、波乱万丈のストーリー展開
◆印象的な楽曲盛り沢山の音楽(特にラスボス戦の曲は強烈過ぎる出来なので要チェック!)
◆オープニングシーンにおけるちょっとしたネタ(反乱兵達をよく見てみると…?)

--- Bad Point ---
◆やや高めに設定しがちな感が否めないエンカウント率(方向転換でも敵と遭遇するのは…)
◆密度は十分だが、ダンジョンRPGとしては物足りない感も否めない総計ボリューム
◆名称が独特過ぎて、効果が分かり難い魔法(もう少し、一目で分かる名前を付けて欲しかった)
◆やや強引且つ、初見殺し的な展開も目立つストーリー
◆初見殺しの嫌らしさを引き立てる、セーブポイントの少なさ(街以外にセーブできる所が無い)
◆カードである意味の無さとそれを根底から否定するラスボス戦での展開
◆少々、唐突感が否めないエンディング
▼Review ≪Last Update : 12/29/2013≫
反乱兵達の中にヤツが居る!

詳細はオープニングにて。


『エッガーランド』シリーズ、『ピンボール66匹のワニ大行進』、『メタルスレイダーグローリー』で知られるHAL研究所が開発した、完全オリジナルの3DダンジョンRPG。後にHAL研究所の看板タイトルとなり、世界的なヒットを記録した『星のカービィ』の発売1カ月前にリリースされたタイトルでもある。

シンプルなゲームデザインが光る、初心者向け3DダンジョンRPGだ。

ゲーム内容はシナリオクリア方式で展開する、3DダンジョンRPG。プレイヤーは主人公のルークスとなり、ストーリーに沿って、様々なダンジョンの攻略に挑むというものである。
シナリオクリア方式の通り、本編は章単位で区切られたシナリオ上のイベントとその舞台となるダンジョンを攻略しながら進行。より具体的に解説すると、アイテムの購入等が行える拠点である街とダンジョンの二つを行き来しながら進めていく感じだ。この手の3DダンジョンRPGでは、もはやお約束とも言える王道の構成となっている。更に各章の最終的なクリア条件も単純明快で、ダンジョン最深部に到達するだけ。清々しいほどシンプルで分かり易いものになっている。
シンプルなのは本編の構成だけに留まらず。メインに当たるダンジョンの探索、ゲームシステム全般にしても、今作は徹底してシンプルである事を突き詰めた作りとなっている。
探索に関しては、率直に言ってアッサリ。先ほど、本編はシナリオ上の舞台となるダンジョンを攻略していくと紹介したが、このダンジョンと言うのが基本的に1シナリオでたった1つしか登場しない。2つ以上のダンジョンを行き来しながらの探索というのが一切無い、ビックリするほど簡略化された作りになっているのだ。一応、あるシナリオでは途中、独立したダンジョンが登場したりもするのだが、それすらメインダンジョンの通過点という扱い。別のダンジョンに出向き、アイテムを回収すると言ったような事もなく、ひたすら淡々と最深部を目指す、一本道の構成とされているのである。しかも、少しネタバレになってしまうが、他のシナリオで一度クリアしたダンジョンに再び訪れると言った展開も一切無し。本当に1シナリオ、1ダンジョンだけなのだ。更に驚くべき特徴として、今作にはダンジョンRPGお約束の謎解きも無い。大半のダンジョンは迷路同然の作りとなっており、じっくり歩き回っていれば、自然と次の階層への入口、或いは出口を発見できるようになっている。複雑なパズルを解いたり、仕掛けを回避する為に別ルートを探すみたいな展開も何も無い作りになっているのだ。そんな作り故、探索の手応えも薄め。あり得ないほどの底の浅さが際立ったレベルデザインが図られた作りとなっている。
とは言え、ループ地帯など、最低限のギミックは仕掛けられているので、全く無個性な作りという訳でもない。また、その単純明快さから、3DダンジョンRPG未経験者には非常に優しい作りになっているという大きな強みもある。逆に言えば、コアなユーザーには物足りない作りだが、難しい部分はを戦闘に割り振っているので、手応えはそれなりにある。また、ダンジョン自体のスケールも結構あるので、舐めてかかると痛い目に遭う。幾ら何でも思い切り過ぎな感も否めないが、シンプルさにこだわったが故にプレイ感覚は軽め。何かと重いイメージの強い3DダンジョンRPGとしては異例とも言える、敷居の低さが際立った作りになっている。
同様の事はシステム全般にも言え、探索の際の大きな手助けとなるオートマッピング機能が標準搭載されていたり、戦闘も王道のターン制によるコマンド選択型であるなど、取っ付き易さを全面に推し出したものに仕上げられている。
ただ、戦闘システムに関しては主人公ルークスの性能全般だけが少し特殊で、今作の題名の通りにカードを使った四大元素(風、土、水、火)の魔法を使役するという特殊な能力を持っている。四つの元素を使役するという事で、当然ながら属性間の相性も存在し、その相性如何によって与えるダメージ量が変化するようになっている。更にルークスをサポートする仲間として、四大元素の精霊なるキャラクターがおり、その内の一体が召喚される形でパーティメンバーに参加。それぞれの属性に応じた魔法でルークスを含めたメンバー三人を支援してくれるのである。ここで特徴的なのが戦闘に参加できる精霊は一体だけという事で、他の精霊を使いたい時は、番が回ってきた際にコマンドを選択して切り替えなければならない。二体以上は参加できないので、敵側の属性に応じた精霊の選択が重要になってくるのだ。しかも、相性が悪いと窮地に追い込まれるなど、ダメージの差は結構大きく出るので、緊張感もなかなか。基本はコマンド選択式で、そこまで複雑ではないのだが、戦略性はそこそこ。迂闊な判断が一瞬で死を招くほどの極端さはないが、確かな手応えに富んだものに仕上げられている。
なお、戦闘関連の要素としてパーティメンバーの編成があるが、これも今作はシナリオによって常に入れ代わる仕組みになっている為、好きなメンバーを編成してダンジョンに挑戦という遊びはできないようになっている。これもまた、3DダンジョンRPGとしては異質な試みだが、そういう編成を考えずに本編を遊べるという点では、初心者に優しい。上級者から見ては納得行かない要素ではあるが、こう言った部分にしても今作は敷居の低さを演出している。
3DダンジョンRPGであるべき要素等がゴッソリ削ぎ落とされているが、基本的なダンジョンの探索や戦闘の手強さと言ったものは健在。まさに最低限の要素だけで構成した、シンプルさ溢れる3DダンジョンRPGに仕上げられている。『ウィザードリィ』などの本格的なものを経験した事のある人からして見れば、今作の取っ付き易さはかなりのもの。3DダンジョンRPGとはどんなゲームか、それを知るには打って付けのゲームに仕上げられている。

そんな今作の魅力は例によって、シンプルさにこだわったゲームデザインである。特にアッサリとしたダンジョンの探索要素は、「3DダンジョンRPGって、ひたすらダンジョンを潜っていくものなのでしょ?」という、未経験者が抱き易い先入観をそのまま投影したかのような作りになっているのが実に秀逸。思い描いた通りの遊びが最初から展開されるというのもあり、何の抵抗や戸惑いを覚える事もなく、スムーズに本編に入っていけるようになっている。
また、3DダンジョンRPGというと、よく難易度の高さが話題に上がり易く、それに戦々恐々としてしまう未経験者も少なからず居ると思われるが、その点も今作は危険なトラップを取り除き、戦闘に難しさを割り振って安心感を演出しているのが見事。危険なトラップあってこその3DダンジョンRPGだろうと、コアなプレイヤーには賛否の分かれる措置だが、単純に危険なトラップに引っ掛かり、一瞬でそれまでの苦労が台無しになってしまうのは未経験者にジャンル自体への嫌悪感と抵抗感を高めてしまい易い。それをなるべく取り除く為、脅威を戦闘に割り振った事は『ドラゴンクエスト』などの正統派RPGの経験者も抵抗無くすんなりと遊ぶ事ができるし、何よりもこちら側で対処法が組み立て易い。危険なトラップも醍醐味だけど、今作では初見殺しとは違う手応えを優先する。実際にそういう狙いがあってトラップが排除されたのかは謎だが、この思い切った判断おかげで今作は適度な緊張感の元、ダンジョンの探索を楽しめる作りになっている。
そんな難しさの部分を割り振った戦闘の手応えもなかなか。特にボスとの戦いは少しでも気を抜いたら一気にやられかねないほど、歯応えのあるバランスになっている。雑魚敵にしても、属性の相性如何によって意外な脅威となったりする面子も居たりするので、尚更油断ならない。また、謎解きが無く、ひたすら探索に特化したダンジョンの展開にしても、全く起伏が無く、淡々としている訳でもない。というのも、今作は探索面でのスリルをストーリーでカバーしているのだ。しかも、そのストーリーというのがどんでん返しのオンパレード。至る所でプレイヤーを翻弄させまくるのだ。その意表を付く展開の数々にはコアなプレイヤーも翻弄されること間違いなし。良い意味で嫌らしさ溢れる内容にまとめられている。他にも、先に申したがダンジョン自体のスケールも結構広いので、そうアッサリと突破できてしまうほどライトな作りにもなっていない。場所によっては拠点への撤退を繰り返さないと一向に進まない所もあったりするほどだ。
そんな何もかも未経験者に迎合している訳ではないのも今作の侮り難きところ。シンプルとは言え、ダンジョンRPG特有の緊張感等は全く損なわれていないのだ。なので、意外とコアなプレイヤーでも十分な手応えを感じ取れたりする。特に戦闘の手応えはなかなかで、探索での消化不良な所を存分に補給してくれるだろう。
しかし、幾ら初心者向けとは言え、少し不備や練り込みの甘い部分もある。特にカードは魔法などのアイテムがカードの形をしているだけと、飾りも同然なのが何とも寂しい。デッキ編成と言った要素も無く、その手のものを期待すると盛大に裏切られる。そう言った複雑な要素が無いからこそ、未経験者でも気軽に触れる作りでもあるのだが、仮にも『カードマスター』と名乗っているゲームで、その要素が活かされていないのはどうなのか?
更にダンジョン探索もエンカウント率が高めなほか、セーブポイントが一切無く、拠点の街でしか行えないのはさすがにきつい。中でもセーブはこの為にアイテムの在庫が無くなった場合は最初からのやり直しを強いられる。それが逆に緊張感を演出していたりもするのだが、初心者向けとしている作りで、この仕様はさすがに酷だ。せめて、一箇所でも良いので用意しても良かっただろう。そのチグハグな所は本当、残念としか言い様が無い。他にも魔法の名称と効果の分かり難さ、どんでん返しの多いストーリーならではの初見殺し的な展開が一部にある点も残念なところ。
そうイマイチ痒い所に手が届いてない辺りがもどかしいが、それでも初心者向けの3DダンジョンRPGとしての取っ付き易い作りは上々。少し詰めの甘い部分はあれど、入門編としては申し分無いほか、最低限の要素でしっかりとダンジョンRPG独自のゲーム性や緊張感が演出されているのは秀逸の一言に尽きる。その作りの上手さは、如何にも『星のカービィ』を手掛けたHAL研究所らしいと言ったところ。アクションゲームだけでなく、3DダンジョンRPGでも遊び易いものを作ろうとしたその挑戦的な姿勢は、大きな評価に値する事と言っても過言ではないだろう。

操作性も多少レスポンスが鈍いが、概ね及第点の出来。難易度も初見殺し的な展開が一部あるとは言え、レベルを上げれば一方的な展開に持ち込めるほど安易な所も無く、適度な手応えを堪能できるバランスにまとめられている。
一方、ボリュームに関しては結構アッサリしており、エンディングまで大体10時間程度と、3DダンジョンRPGとしては異例の短さとなっている。やり込み要素もほとんどないので、クリアしたらお終い的な面も強い。ただ、全体的な満足度は決して低くなく、十分な手応えを実感できる内容に仕上げられている。戦闘周りに関し、多少ダレる所もあるが。
グラフィックは全体的に渋めで地味。これと言って可も無く不可もない仕上がりとなっている。対照的に音楽の完成度は非常に高い。ダンジョン曲、戦闘曲共に印象深い楽曲が満載で、これだけでも十分な満足感を得られる。特に最終ボス戦の曲は数あるRPGの中でも三本の指に入ると言っても過言ではないほどの強烈極まりない出来。これを聴く為だけでも、今作をプレイする価値はあると言ってもいいほどだ。
ちなみに今作の音楽は、星のカービィシリーズで知られるHAL研究所の石川淳氏が手掛けている。それ故にか、一部にカービィっぽい曲もあったりする。なので、カービィファンも要チェック…というか、とあるデモシーンに本人が出演しているので、尚更必見だ。(ただ、今作が発売された時期から、カービィでは無いと言えるかもしれないが…)

演出周りに関しては地味。魔法に関しても派手なエフェクトは皆無で、かなり素っ気無い感じになっている。しかし、音楽の使い方が上手い為、それほど気にならない。特に先ほどに紹介した最終ボス戦は、例の曲を流し始めるまでの展開が非常に素晴らしく、プレイヤーに強烈な印象を残すシーンに仕上げられている。曲もさることながら、そのシーンを見るだけでもこのゲームをプレイして良かったと、心地良い満足感を得る事ができるだろう。その最終ボス戦に至るまでの流れで少し露骨な初見殺しがあるのは、賛否が分かれるかもしれないが。
荒削りな部分も多く、セーブポイントなど、できれば直して頂きたかった部分も散見されるが、3DダンジョンRPG入門編としての出来は悪くなく、未経験者が抱くイメージをそのまま投影したかのようなダンジョン構成に歯応えのある戦闘など、なかなか意欲的な姿勢が現れた内容に仕上げられている。コアなユーザーにも僅かながら楽しめる余地を残すなど、如何にもカービィを手掛けたHAL研究所らしさが炸裂した今作。
3DダンジョンRPGとはどんなゲームなのかを知るに当たってはこの上ないほど適した良作だ。3DダンジョンRPGに興味はあるけど、挑戦した事が無い…という方は、是非、チャレンジしてみて欲しい。コアなユーザーもストーリー展開など、独特の工夫が満載なのでプレイする価値はそれなりにある。ただ、奥深い要素は皆無なので、その点はご注意を。
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