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≫カオスシード 風水回廊記
■発売元 タイトー
■開発元 ネバーランドカンパニー
■ジャンル ダンジョン育成シミュレーション
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 10479円(税込)
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 3つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■総説明書ページ数 34ページ
■推定クリア時間 40〜45時間(エンディング目的)、90〜120時間(完全攻略目的)
遥か昔、『洞天福(どうてんふく)』という国に『洞仙(どうせん)』と呼ばれる仙人達が居た。彼らは風水術を用い、『仙窟(せんくつ)』と呼ばれる洞窟を築き、大地の命の源『龍脈』を活性化させて緑を取り戻す事を使命としていた。

だが、地上の人々は洞仙に対して誤解しており、妖怪と共に怪しい事を仕出かす悪党と見られていた。洞仙を追い出す為、人々は彼らに賞金をかけた。
やがて噂は広まり、多くの腕自慢や冒険者、賞金稼ぎがこぞって洞仙を狙い、仙窟に挑むようになった。

そんなある日、一人の新米洞仙が修行を終えようとしていた。
そして物語は、ここから始まる…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆アクション、RPG、運営シミュレーションなど様々なジャンルを混ぜ込んだ画期的なゲームシステム(しかも、どの要素も互いを殺し合ってないなど完成度も高い)
◆複雑なシステムを段階を追って丁寧に解説してくれる、良心的な作りのチュートリアル
◆純血のアクションゲーム顔負けな、多彩で動かす楽しさ満点のプレイヤーアクション
◆法則に従って部屋を造る事でエネルギーを効率よく溜められるようになるなど、考える面白さと圧倒的な奥深さ・中毒性に秀でた『風水システム』
◆頼もしい相棒を育てる楽しさと中毒性に富んだ、『仙獣(せんじゅう)』の育成
◆ストレス皆無の良好なレスポンスと動かす楽しさを見事に抑えた、珠玉の操作性
◆平行世界を舞台に同じようで違うシナリオを攻略していく、ユニークな本編の構成
◆プレイヤーに深い問い掛けを残す、苦々しい描写満載の奥深いストーリー
◆適度な緊張感、戦略を練る楽しさがしっかりとした、絶妙なゲームバランス
◆エンディングまで30時間ほど、極めるとほぼ一生モノと化す圧倒的なボリューム
◆細かい描写と滑らかなアニメーションが光る、「ドット絵の芸術」全開のグラフィック
◆中華風の世界観にマッチした、アジアな香り漂う独特の音楽
◆大地復活時のデモなど、ハード性能を最大限に活かしきった迫力満点の演出
◆一人称から呼び方まで、無駄に細かく設定できる主人公とヒロインの名前入力画面

--- Bad Point ---
◆画期的とは言え、もの凄く敷居の高いゲームシステム
◆細かく設定可能なのは面白いが、逆に面倒臭い感じも否めない名前入力画面
◆敵との戦闘時における激しい処理落ち
◆敵との戦闘時におけるもの凄いゴチャゴチャ感(自身を見失い易い)
◆何故かアドベンチャーゲーム同然の内容の場違い感バリバリのシナリオ8
▼Review ≪Last Update : 12/26/2010≫
タワーディフェンスの始祖、ここにあり?

侵入者を撃退して、ダンジョンを育てろ!


『エストポリス伝記』シリーズを手掛けたネバーランドカンパニーが送るダンジョン育成シミュレーション。

前例の無いゲームシステムが光る、中毒性満点の隠れた傑作だ。

「前例の無い〜」と先に話した通り、このゲームの内容は一言では表せない非常に独特なものだ。無理矢理簡潔にまとめると、ダンジョンを作って運営するゲーム。『仙窟(せんくつ)』と呼ばれる洞窟で部屋を作りながらダンジョンを構成した後、『仙獣(せんじゅう)』と呼ばれるモンスターを配置。ダンジョンを破壊する為に潜ってくる侵入者を撃退しながらダンジョンを運営し、『エネルギー』を集めて荒廃した大地を復興させていくというものだ。
ダンジョンの運営が主な目的という事で、シミュレーションゲームと見て取れるかもしれないが、そう単純に断言はできる内容ではない。確かに運営という事でシミュレーションのゲーム性を持ってるのは紛れも無い事実だ。しかし、ダンジョンを構成するに当たって重要となる部屋の作成はプレイヤーキャラクターである主人公を動かして行う。少し表現を変えると、2D見下ろし視点で構成されたマップ上を歩きながら部屋を作る。いわゆる、ロールプレイングゲーム(RPG)スタイル。『シムシティ』や『A列車で行こう』などのようなスタイルではないのだ。その為、RPGのゲーム性まで兼ね備えている。つまり、今作はロールプレイングシミュレーションなのか、とこの時点でイメージが付くかもしれないが、これがまたそうと断言できず。また一つ付け加えると、今作には敵との戦闘がある。先に触れた侵入者との戦いだ。この侵入者との対決はリアルタイム方式、言い方を変えるとアクションゲームスタイル。ボタンを押して直接攻撃を行い、数発のダメージを与えて撃退するのだ。しかもプレイヤーアクション自体も意外と本格的な作り。弱攻撃に強攻撃のほか、ダッシュ、スマッシュアタックなどの多彩なアクションを簡単なボタン操作で繰り出すことができる。それらの多彩なアクションを駆使しながら展開する戦闘は、爽快感抜群。シミュレーションとRPGのゲーム性をつい忘れてしまうほど、強烈なインパクトに秀でたものに仕上げられている。それ以上にアクションのゲーム性まで兼ね備えてる時点で既に強烈な訳であるが。また、戦闘で侵入者を倒すと、経験値が手に入る。例によって、これが規定値まで溜まればレベルアップ。能力全般が強化される。RPG絡みの要素はマップ上を移動するだけと思いきやそうではあらず。定番とも言える、成長要素も盛り込まれている。更に今作では主人公のお供として『仙獣(せんじゅう)』と呼ばれるモンスター達が居るが、彼らも敵を倒すと経験値を取得し、一定値まで溜まればレベルアップ。強力な特技を習得したりして、成長していく。そんな具合に動物を育成させるシミュレーション的な要素も詰め込まれていたりする。
このように基本は運営という事でシミュレーションゲーム…と思いきや、様々なジャンルの要素がそこかしこに点在。もはやシミュレーションなのか、ロールプレイングなのか、はたまたアクションなのか、どう言った良いの分からぬほど独特のゲーム内容となっているのである。一言で言い表せないというのも、これで嫌というほどお分かりになるんじゃないだろうか。以下、筆者の愚痴だが…何と言ったら分からんねーんだよ、このゲーム!独特過ぎて!正直、これでゲームのイメージが伝わったかどうかこれっぽっちも自信が無い。というか、この説明だけでどんなゲームか分かった人は、実際に今作をプレイした事のある人だけしか居ないんじゃないだろうか。ほとんどの人は「つまり…どういうゲーム?」と疑問符が浮かんでると思われる。どういうゲームと言われても、簡単に言い様が無いから書く側にとって悩ましい訳で。とりあえず、「洞窟を作って守るゲーム」とだけ覚えておけばそれで良いかもしれない。実際の中身はそれ以上に複雑、先に紹介したRPGやアクションの要素だけに留まらず、サブタイトルに記された『風水』の法則を活用した部屋強化システム、全部で8種類に分けられた部屋など、様々な要素が詰め込まれている。細かい所でも、ゲームはターン方式で展開するが、1ターンは制限時間内で定められているなど、書き出したらキリがない。そんな具合の作りなので、大半の人は「もの凄く敷居が高そう」という印象を覚えるだろう。それは否定できない。今作はかなり複雑な為、敷居は高い。しかし、それを考慮し、ゲーム冒頭は丁寧なチュートリアルに沿ったストーリーが展開するなど、配慮は万全。一応、説明書を流し読みしても入れる間口の広さは兼ね備えている。
また、沢山の要素があるとは言え、やる事はダンジョンを作って大地にエネルギーを戻すことだけ。なので、実はそこまで複雑なゲームではなかったりする。大体のルールを把握できてしまえば、手に取るように軽々と楽しめるようになる作りとなっている。ただ、把握までに要する時間は非常に長いので、その辺は覚悟しておくことを推奨する。
少々、感情任せに語ったところもあるが、今作の概略はこのような感じだ。とにかく、全てにおいて無茶苦茶なゲーム。言い方を他に類を見ないシステムを実装したゲームで、未体験の手応えが満載の魅力満点の内容に仕上げられている。敷居が高いのがタマにキズではあるが、多くのプレイヤーに未知の面白さを提供してくれる、それが今作なのだ。

だが、ここまで複雑且つ、沢山の要素で構成されている内容となると、ゲームとして破綻してないか、気になるところだろう。結論から言ってしまうと、破綻してない。ビックリするほど綺麗にまとまっている。シミュレーション、RPG、アクションと言った異なるジャンルの良い所を抽出して融合させ、互いが互いを食い合わない絶妙なバランスで構築されている。まさに職人芸。その鬼気迫る作り込みの深さこそが、今作最大の魅力だ。
特に三種類の異なるジャンルを適度なバランスでまとめ上げた手腕には脱帽。正真正銘、プロの成せる技だ。どのジャンルにせよ、突出した個性を放たぬ程度に作り、他のジャンルの良い部分を引き立てる役割に徹している。
中でもRPGとシミュレーションの二つの兼ね合いは見事。RPGのフィールドを動き回る楽しさ、シミュレーションの運営する(作る)面白さ、その二つの魅力を「ダンジョンを作って育てる」主な目的の名の下に融合させ、斬新な手応えを演出している。ダンジョンの中を自ら歩きながら、ダンジョンを作る。その独自のゲーム性は、RPGとシミュレーションのジャンルは、こう言った形でも仲良くなれるという可能性を提示している。任天堂の『ファイアーエムブレム』で提示された、シミュレーションRPGだけが二つのジャンルが仲良くなれる最良の答えではない!それをこう言った、なかなか想像が付き難い形で証明してしまったのには本当に驚きの一言だ。それ以上にこう言った方向にRPGとシミュレーションを融合させるアイディアを思い付いた事自体が凄い。まだまだ広がる方向はあると示し上げた今作の功績は、ゲームの歴史に残るクラスのものだと言っても不思議ではないだろう。
そして、そんな二つの要素が兼ね備わった内容は中毒性も抜群。動き回る楽しさに並行して部屋を強化させたり、効率よくエネルギーを溜める為に全体をバランスよく構成するなど、奥深い要素が沢山詰め込まれているので、やり込み甲斐の深さは突出している。『風水システム』による、方位や色、属性を考慮したダンジョン構成を行う事で更なる強化も図れるので、考えれば考えるほど深みにはまっていく。沢山の要素がある為、敷居の高さは結構なもの。それは否定しようが無い欠点だ。しかし、それ故に全てを把握した後はもう大変。全く眠れない夜が訪れる。そして、頭の中で部屋の構築を考える妄想が止まらなくなる。二つのジャンルの魅力的な要素を抽出して詰め込んでるからこその濃度の高さ。これもまた、バランスの取れたシステムと並行して、今作の恐るべき魅力の一つである。
また、戦闘全般を請け負うアクションの完成度も非常に高い。レベルアップによる成長要素があるとは言え、一方的な展開には陥り難く、常に小手先のテクニックが求められる、適切な難易度設定が成されている。敵の動きも練られており、間合いを計って攻撃を仕掛けていかないとそう簡単には倒せない強さ。戦い甲斐も抜群だ。更にアクションと言えば、動かす面白さが肝であるが、そこもちゃんと分かった出来。簡単操作でダッシュやスマッシュアタックなどの爽快なアクションが繰り出せる、触るだけで楽しい感覚がしっかりした仕上がりとなっている。勿論、レスポンスも良好。きちんとジャンルの魅力を追求した作り込みが成されている。
RPG要素を取り入れたゲームでアクションと言うと、手軽に楽しめる事を最優先し、アクションの種類を絞り込む傾向にありがち。だが今作は手軽さも残しながら、醍醐味を失わせない為の配慮が徹底されている。それ故に本格的なアクションが味わえる。所詮はおまけ、とは区切らず、ゲームの根幹を成す肝として徹底して作り込んだその妥協の無さには感服。それでいて、独自の魅力や奥深さまで追求する隙の無さ。アクションを求めるユーザーにも満足してもらう為、こだわり尽くした姿勢には溜息が出るばかりだ。そして他のRPGやシミュレーションを食う存在感を発揮しないように抑え込む、細やかな配慮。全く持って、どんだけ作り込んでるんだと、突っ込みたくなるほどである。複数のジャンルの要素を導入したゲームというのは、意外と破綻して何が売りなのか見えなくなってしまうもの。今作も後者のような一面があるのは否定できない。実際、書く側にとってはどう説明したら他の方に分かるのか、これほど悩まされるゲームも無いだろう。だが、ゲームとしては全く破綻して無い。これほど沢山の要素を詰め込みながら、自然なレベルで融合してしまっている。互いが互いを食い合ってない。到底信じられない話だ。しかし、事実なのである。それも全ては明確なコンセプトと目的が設定されているからこその賜物か。いずれにせよ、普通にやれば破綻して必至な複数ジャンルで構成された内容をこうも自然にまとめ、且つ新たなゲームを誕生させたスタッフの手腕は、今後語り継がれていくに等しい伝説級のものだと言っても過言じゃ無いだろう。それほどまでに今作は「芸術品」だと断言できるゲームなのである。

また、魅力はゲームシステムの完成度の高さだけに留まらない。シナリオも大変素晴らしい出来だ。洞仙の主人公が、大地を蘇らせる為にダンジョンを作っていくと、ストーリー自体はワリと単純。だが、主人公を「大地を汚す悪党」と見なしてダンジョンを破壊する目的でやって来る身勝手な人間達、彼らによって壊されていくダンジョンなど、所々に苦々しい描写が詰め込まれており、意外と重い。敵の人間も明確な目的があった上でダンジョンにやってくるなど、ただの勧善懲悪だと割り切れぬ所もあり、プレイヤーに深い問いかけを残す。幾多の平行世界を舞台としたマルチストーリーによる構成など、設定周りにもユニークなアイディアが凝らされており、他に無い独特の味わいに秀でているのも大きな魅力だ。何が正しく、何が悪いのか。そのストーリーを楽しむだけでも、かなりの満足度が得られるだろう。
その他、操作性やゲームバランスも申し分ない出来。レスポンスは良好、良い感じに緊張感のある難易度と、全体的に高水準を保っている。ボリュームもメインシナリオ完全クリアに大体40時間ほど、やり込みだすとそれ以上と、やり応え抜群。ダンジョンを作るだけに特化した『ダンジョンモード』なんてのも用意されているので、プレイヤーを飽きさせない。

グラフィック、音楽の完成度も高い。グラフィックはスーパーファミコン後期の作品だけにドット絵の質が桁違い。個性豊かな動きをするキャラクターのドット絵は今見ても色褪せぬ魅力に秀でている。特に仙獣の可愛らしいデザインは必見だ。音楽も世界観にマッチした、中華テイスト溢れる楽曲が実に印象的。名曲も豊富で、ダンジョンの曲全般はいずれも必聴の価値アリである。演出もエフェクトやデモシーン全般など、後期作品らしい豪快さが炸裂しており、見ていて飽きない。大地が復活するシーンとかは特にインパクトがある。この他にも敵も含め、個性的なキャラクター達に細かい設定が可能な名前入力画面など、魅力的な要素はそこかしこにある。
敷居の高さがネックではあるものの、中毒性は桁違い。そして、ゲームシステムの完成度の高さも、スーパーファミコンどころかゲーム史上に名を残すほど芸術的だ。如何せんハードの末期に発売された為、世の注目を浴びずに終わってしまったのが残念でならない、この『カオスシード 風水回廊記』。コアゲーマーを自認する方なら是非プレイして頂きたい、隠れた傑作だ。しかし、敷居がもの凄く高いので、ゲーム初心者には手放しにお薦めできない。しかし、それでもこのシステムは一度でも体験してみる価値がある!
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