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≫F-ZERO(エフゼロ)
■発売元 任天堂
■ジャンル レース
■CERO A(全年齢対象)
■定価 7000円(税別) / バーチャルコンソール版(Wii) : 800Wiiポイント
■公式サイト ≫スーパーファミコン版 / ≫VC版(Wii)
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 1つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■総説明書ページ数 ニンテンドウパワー版所持の為、不明
■推定クリア時間 12〜20時間
西暦25XX年。
人類が宇宙へと進出し、異星人とのコンタクトを繰り返していた時代。
最先端の超磁力技術を駆使したマシンが開発され、それを用いた宇宙規模のレースが開催される事になった。圧倒的なスピードと激しい攻防戦。人々は、そのレースを地球上で行われていた『F-1レース』になぞらえ、こう呼んだ。

F-ZERO(エフゼロ)、と。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆シンプルな順位争いの中にダメージ制という恐怖を織り込んだ、個性的な作りのゲームシステム
◆コンマ1秒を極める面白さと中毒性、ハッタリの効かない練られたゲームバランスとコースデザインの恩恵によるやり込み甲斐の深さが見事な『プラクティスモード』のタイムアタック
◆レースゲームの常識を覆す、時速400キロ以上もの圧倒的なスピード感
◆スーパーファミコンの拡大、縮小機能をフル活用した、ド派手な演出
◆ほぼ二つのボタンで手軽に操縦可能な、シンプルで取っ付き易さに秀でた操作性
◆ハッタリ無しの真剣勝負というストイックさが強調された、硬派で絶妙なゲームバランス
◆それぞれの個性が色濃く強調された、全4種類のF-ZEROマシン
◆コース数は少ないが、3種類以上の難易度に密度の濃い設計など、やり応えは申し分無しの総計ボリューム(特にコース密度の濃さはかなりのもの)
◆近未来のレースゲームらしい、ぶっ飛んだ地形設計が目を見張る全15ものコース
◆スリップ地帯、磁石、地雷など近未来らしさ全開のぶっ飛んだコース上のギミック群
◆ドット絵は平均レベルだが、演出による魅せ方の上手さが光るグラフィック
◆圧倒的なスピードで展開するレースを大いに盛り上げる、熱い音楽
◆反重力で浮かぶマシンを操縦している手応えを引き立てる、重みのある効果音

--- Bad Point ---
◆心臓に悪過ぎるクラッシュ時の爆発演出(微妙な”間”が嫌らしい。音もでかい)
◆差別化は上手くできてるが、量的に少ない感も否めないF-ZEROマシン
◆非搭載の二人対戦プレイ(技術的な限界があったのだと思うが…)
◆タイムアタックが楽しめるコースの少なさ(欲を言えば全コース可能だと良かった)
◆インパクトは絶大だが、人によっては目を回しかねない恐ろしさも兼ね備えた走行スピード
▼Review ≪Last Update : 11/21/2010≫
気が付けば、Bボタンが陥没してた。

熱くなり過ぎないように。


『スーパーマリオワールド』と並んで、スーパーファミコン本体と同時発売タイトルの一本としてリリースされた、完全新作の近未来型レースゲーム。

スーパーファミコンのハード性能を駆使した圧倒的なスピード感。
そして、コンマ1秒を極める面白さと中毒性に秀でた、反重力レースゲームのパイオニアにして傑作だ。

ゲーム内容は反重力で浮く、最新鋭のマシンを操縦しながら展開するレースゲーム。プレイヤーは全部で4機のマシンの内の一機を選択。3つのリーグごとに用意された5つのコースに挑戦し、ライバル達と競い合いながら総合1位を目指す。
ゲームモードは二種類。総合一位を目指すメインモードの『グランプリ』、操作及びコースの練習が行える『プラクティス』が用意されている。なお、対戦プレイが楽しめるモードは未収録。基本的に一人プレイ専用のゲームとなっている。
システム、ルール周りもそれを反映してか、かなりストイックな作り。各コースのゴール条件は5周走行する事と、レースゲームとしては至って普通だが、コースアウトしてしまうと即リタイア。更にマシンには『パワーメーター』なる耐久力が設けられており、これがゼロになるとマシンが大破。リタイアとなってしまう。また、リタイアからのコンティニューはクレジット制。何度もリタイアを繰り返すとゲームオーバーになり、『グランプリ』であれば最初のコースからやり直しとなってしまう。常に完璧な走りが求められる、如何にも一人専用のレースゲームらしい、シビアさ全開の設計が図られている。
特に『パワーメーター』によるダメージ制はその象徴。今作では全てのコースがフェンスで囲まれた設計となっていて、これに接触すると問答無用でマシンがダメージを受ける。また、『グランプリ』ではライバルのマシンも多数走行しているのだが、無論、これに接触してもダメージ扱い。中には爆発寸前のマシンが走っている事もあり、これに接触してしまうと壁や普通のライバルマシンと接触した時を上回るダメージを受けてしまう。こう言った障害の数々を回避し、コースを走行していかなければならぬ為、プレイ時の緊張感は相当なもの。一瞬の気の緩みも許されない、死と隣り合わせの展開が堪能できる。それはもはや、レースゲームというよりはアクションゲームそのもの。完璧さを求める為、気を配りながら走るその独特のプレイ感覚は他のレースゲームでは味わえぬ魅力が満載だ。
しかし、それ以上にプレイの緊張感を引き立てているのはマシンの走行速度だ。そもそも平均時速からして凄い。何と400キロ。現実離れも甚だしい速度で、各種マシンが走るのだ。そんな速度で走るから、画面のスクロールもあり得ないほど速い。あまりの速さにカーブを曲がる際には身体ごと動いてしまうほどだ。しかも、それ以下の速度で走るのはほぼ不可能。それ以前に、速度を落としでもしたら負けは確実となる。なので、常に時速400キロの速度を維持し、コースを走らなければならない。緊張感抜群どころの話ではない。ある意味、恐怖を覚えるほどの非現実的なスピードで今作は展開。開いた口が塞がらぬこと必至のレースが、画面いっぱいに繰り広げられるのである。そんな速度で、先のマシンダメージを最小限に抑えたり、コースアウトしない為の完璧な走行を心掛けねばならないのだから焦る、焦る。何よりも、画面のスクロール速度が他のレースゲームの比でないから、慣れようにも恐怖と不安で怖気付いてしまうくらいだ。レースゲームならお任せの、腕に自信のあるプレイヤーでさえ、戸惑うのは避けられない。それほどまでに普通のレースゲームの感覚でプレイすると面食らうこと必至な内容だ。
ただ、恐怖を覚えるほど速いとは言え、練習モード『プラクティス』が実装されているので、配慮は万全。更にコースも、序盤は独自のスピード感に慣れて頂く為、フェンスとの感覚を大きく開いた大らかな設計とするなど、細かい対策が図られている。なので、何度も走行を重ねていけば問題なくマシンを操縦可能になる。それに速度が速く、ダメージ制などのシビアなシステムがあるとは言え、マシンの操作は単純明快なので、敷居は決して高くない。純粋に見た目の凄さを追求するだけでなく、遊び易さへの配慮を徹底する辺りは、如何にも任天堂と言ったところ。常軌を逸した速度から難しそうという印象を抱き易いが、実際は敷居が低く、手軽に遊べる作りとなっている。また、恐怖に満ちた速度も、慣れてしまえばそれを何度も体験したくなるほどに毒される魅力がある。特に最高速度でミスを起こさず走り切った時の達成感は癖になること請け合い。見た目の凄さだけでなく、そんな中毒性の高さもこの速度の恐るべき魅力の一つだ。
レースゲームとしては単純。操作も簡単で、手軽に遊べる。しかし、現実離れしたマシンの走行速度にその速さの恐怖を煽り立てる各種システムとルールなど、全体から醸し出されている緊張感はまさに唯一無二のレベル。内容だけでなく、演出も桁違いの域に達しているレースゲーム、それが今作なのである。ある意味、スーパーファミコンの本気満載の野心的一作と言っても過言ではないだろう。桁違いにも限度あり過ぎの内容なのだ。

今作最大の見所も、その脅威のスピード感に集約される。スーパーファミコンの拡大・縮小・回転機能を活かし、実現させたそれは、まさに他のレースゲームでは決して味わえぬ爽快感に秀でている。
何と言っても、表現の真新しさを目指しただけで終わらせず、ゲームとしても丁寧に作り込んでいるのが凄い。ダメージ制などの各種システムとルールなど、いずれもスピードを自分の物にする楽しさがある。このスピードだからこそのミスに対する恐怖感も凄く、それも自分の物にする楽しさをより魅力的なものに仕立て上げている。
コース設計も凝っている。特に仕掛けが実に個性的。ジャンプ台、加速台などの基本的なものから、磁石、地雷、スリップ地帯などのぶっ飛んだものまで、バリエーション豊か。圧倒的なスピードによる展開に華を添える。コース全体の構成も現実離れした内容だけにか、大きな穴があったり、終始時速900キロで走行し続けたりなど、こだわった仕上がり。レースゲームらしいテクニカルなコースも取り揃っており、完璧にコースを走り切る緊張感と楽しさもしっかりしている。コースの総数は全部で15と、やや少ないものの、一つの密度が濃いので、満足度は極めて高い。量よりも質で勝負という、明確なコンセプトが打ち明けられた設計には、レースゲーム好きなら納得の歯応えが得られること、間違いなしだろう。
圧倒的なスピード感をよりゲームらしく、面白くする為には、どんな要素が適しているか?そう言った細かい部分まで考え尽くした結果が、各種システムやコースには反映されており、職人のこだわりが炸裂している。普通に時速400キロのスピード感だけでレースゲームとして十分なのにも関わらず、それ以上先まで作り込んでしまう妥協の無さ。ゲームは常にユーザーに遊んでもらってナンボと言っているかのような熱いこだわりには本当、感服するばかりである。もし、これがただ、スピードが速いだけの変哲のない内容で終わらせていたら、魅力に欠けるゲームになっていただろう。そういう意味では、この判断はさすがゲーム屋の任天堂だ、の一言に尽きる。
徹底的に作り込んだ故の賜物と言える、『プラクティス』で楽しめるタイムアタックの熱さも格別だ。自らスピードを物にする楽しさと達成感、ハッタリ(反則紛いのショートカットなど)が許されないストイックな展開と相まって、大変中毒性の高い仕上がりとなっている。特にハッタリの効かない部分が熱さを引き立てており、どんなに腕を磨こうとも、1秒単位の変化しか結果に現れないのだから燃えに燃える。まさに自分との戦いとも言える、限界に挑戦する面白さは一度癖になると止められなくなってしまうほど。ある意味、メインモードである『グランプリ』を上回る面白さと言っても良いかもしれない。中でも、今作最初のコース『MUTE CITY』のタイムアタックは、設計のシンプルさも相まってかなりの熱さ。ゴールタイム2分を切る、それを目的にやるだけでも、至福のひと時が味わえるはずだ。タイムアタックが楽しめるコースがたったの5つと、少ないのはタマにキズだが、先も話したように密度は相当なもの。不思議と物足りなさは感じない。それ以前に全コースの限界タイムがシビアなので、それを目指すだけでも相当な満足感が得られる。ストイックだからこその、真剣勝負全開の手応えは味わう価値大いにあり。一応、練習モードを名乗っているものの、深さは桁違いなので、要チェックだ。
ただ、これほどの内容でありながら、やはり対人戦ができないのは寂しいところ。時期的に技術でカバーできないものがあったのだと思うので、仕方のないかもしれないが、ユーザーの立場としてはあると面白かったと思うだけに残念だ。
しかし、一人専用に絞り込んだからこその極める面白さと中毒性は確かなもの。そして、圧倒的なスピード感の迫力とそれを活かすシステムも非常によく出来ている。純粋に見るだけでも楽しく、遊んでも楽しいという二つの要素をこうも上手く両立したゲームも珍しいと言って良いだろう。そして、このようなゲームがスーパーファミコン本体と一緒に出たのだから、なお驚かされる。改めて、任天堂の凄味を思い知らされる次第だ。

操作性やゲームバランスの完成度も高い。操作性は基本的に二つのボタンで手軽に遊べる仕上がりで、時速400キロの世界に抵抗無く入っていける敷居の低さを表現しているのが素晴らしい。高度なテクニックを使う場合はLRボタンも用いるが、それも手に違和感無くフィットするので、触り心地は良好。シンプルで直感的にマシンを操れる、優れた操作体系として完成されている。ゲームバランスもスピード勝負、という事で硬派寄りの調整だが、テクニック次第で大きく変動する適切なものに仕上げられている。最高難易度(後述)のCPUマシンの異様な追いつき具合など、不整備な所もあるが、普通にプレイするなら難なく遊べるバランスになっているのが救いだ。
ボリュームもリーグ別に用意された3種類+アルファの難易度と、やり応えは申し分無し。コースも15と少ないが、先も紹介したように密度が濃いので、満足感はバッチリだ。全部で4機のマシンも、数は少なめでありながら性能周りに個性が現れているのが実に印象的。また、数が少ないので特徴を把握し易いという点も特筆に値するポイントと言える。
グラフィックも見せ方の上手さが光る。スーパーファミコンのハード性能をフルに活かした高速スクロール、拡大・縮小の演出はいずれも必見だ。音楽もスピード感満点の内容に似合った、勢いのある熱い楽曲が盛り沢山。名曲も多く、タイムアタックの名所たる『MUTE CITY』や青い海が印象的な『BIG BULE』で流れる曲はいずれも聴く価値、大いにありだ。

音楽だけでなく、効果音もなかなか印象深い仕上がり。反重力で浮かぶマシンらしい、「キュイーン」という走行音、フェンスなどに接触した際の重みのあるダメージ音は、高速マシンを操縦しているという確かな手応えを演出する。
ただ、クラッシュ時の爆発音は難あり。鳴るまでの間隔が不自然且つ、妙なタイミングで起こる為に非常に心臓に悪い。爆発音も少し大き過ぎる感が否めず、もう少し静かな音にして欲しかったところだ。間隔に関しても、また然りだ。
そんな具合に演出に残念なところがあるが、レースゲームとしての完成度の高さは言うまでも無く。ハード性能をフルに活かした圧倒的なスピード感、ストイックなゲーム性に熱いタイムアタックなど、かなり気合いの入った内容に仕上げられている。見るだけでも面白い、実際にプレイしても面白い。その二つが見事に兼ね備わったこの『F-ZERO(エフゼロ)』。スーパーファミコンの歴史を語る上では絶対に外せない傑作にして、反重力レースゲームのパイオニアだ。数あるスーパーファミコンのゲームでも、これだけは最低でも一度はやっておくべし。お薦めです。
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