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≫ガイア幻想紀
■発売元 エニックス(現:スクウェア・エニックス)
■開発元 クインテット
■ジャンル アクションRPG
■CERO(推定) B(12歳以上対象) ※暴力、殺傷描写等あり
■定価 9800円(税別)
■公式サイト ≫スクウェア・エニックス:紹介ページ
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 3つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■総説明書ページ数 26ページ
■推定クリア時間 8時間〜20時間(エンディング・完全攻略目的共に)
白鳥座の方向より、一定の周期で飛来する巨大な彗星。
その強烈な光は、遥か昔から生物の進化を促し、古代文明ではこの力を利用して家畜、乗り物となる動物等の様々な生命を生み出したという。
だが、時として兵器となる魔物が創られた時、人類は絶滅の危機に瀕した。
人類は最後の望みを託し、『光と闇の戦士』を創造し、彼らの勇猛果敢な働きによって、魔物達はその姿を消した。

そして遥かなる時は流れ…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆アクションゲームさながらのスピーディーなゲーム展開と、分かり易い進行システム
◆同じく、アクションゲームさながらの躍動感が詰まった、主人公テムの多彩なアクション
◆地震から床のすり抜けまで、キャラごとに奇抜なアクションが堪能できる、変身システム
◆アクションの爽快感を限りなく追求した、動かすだけでも楽しい抜群の操作性
◆キャラの武器が固定されている影響もあり、シンプルな作りのメニュー画面
◆フィールド上の敵を全滅する事で手に入る宝石を取得してプレイヤーキャラを強くしていく、アクションゲームっぽい作りにまとめられた強化システム
◆『インカ帝国』に『ナスカの地上絵』、更には『アンコール・ワット』など、実在する遺跡を舞台としたダンジョン
◆それぞれの遺跡の歴史と謎を丁寧に描いた、ダンジョンでのイベント群
◆無駄な手数を踏ませない為の工夫と絶妙の謎解きが光る、ダンジョンのマップ構成
◆髪の毛に感じる風などを手掛かりに仕掛けを突破していく、五感を駆使した謎解き
◆奴隷の少年達、人間を食い続ける住民の村など、どす黒い展開が満載のストーリー
◆見易く、遺跡ごとの雰囲気を上手く描いた、美麗なグラフィック
◆遺跡のミステリアスな雰囲気を盛り上げる、荘厳なオーケストラ調による音楽
◆地味ながらも、できる限りの派手さを追求した、秀逸な演出群
◆まさにこれぞ「誰もが楽しめる」というに相応しい、絶妙極まりないゲームバランス
◆『赤い宝石』集めや縛りプレイなど、上級者プレイヤーも唸る、やり込み要素

--- Bad Point ---
◆一部ダンジョンにおいて、致命的な進行バグがある(身動きが取れなくなったりなど…)
◆あまりにテンポ良く進む為、人によっては物足りなさも感じる総計ボリューム
◆ゲーム部分に上手く落とし込めてない登場キャラクター達(主に仲間キャラだが、ほとんどストーリー関連のイベントでしか絡んでこない為、存在意義が薄い)
◆悪く言えば、プレイヤーに深刻なトラウマを植え付けるストーリー(特に人食いの村でのイベントは強烈)
◆イチイチ、無駄な移動デモが流れる全体マップ(直に移動すりゃ良いのに)
◆攻略本が無ければコンプリートはほぼ無理な赤い宝石集め
◆見掛け倒しとしか表現のしようが無いラスボス(弱過ぎ…)
◆あまりにドキツいキャラクターデザイン(説明書参照)
▼Review ≪Last Update : 12/8/2007≫
お願いだから…、逝かないで…。

しかし、次々と人々、そして動物達は消えていく…。


名作『ソウルブレイダー』を制作したクインテットが送る、アクションRPGシリーズ第二弾。キャラクターデザインに萩尾 望都、シナリオにSF作家の大原 まりこ、音楽に川崎 康宏という、豪華スタッフを結集して制作された作品である。

どす黒さ満点のストーリーと爽快なアクション、抜群の操作性が異彩を放つ、アクションRPGの傑作だ。

ゲーム内容は主人公のテムを操作し、敵と戦ったり、謎を解いたりしながら様々なイベントやダンジョン攻略していくアクションRPG。かつてクインテットが制作した、『ソウルブレイダー』の血筋を受け継いだ作りとなっている。
しかし、今作ではアクションとRPGの内、どちらかと言うとアクションの方に重きを置いており、RPG色は結構薄め。ゲーム進行が終始一本道で、経験値やレベルと言った概念がないなど、かなりアクション然とした構成になっている。
それを体現するかのように、主人公テムのアクションもやたらと多彩。移動から攻撃に防御は勿論の事、高速ダッシュ、ジャンプ攻撃などと実に躍動感溢れる動きを全編で披露してくれるのである。更に、ゲームが進むとスライディングやタックル、スピンダッシュと言った特殊なアクションもできるようになり、より動作の幅が拡張。アクションゲーム顔負けの爽快感を満喫できるのだ。これらの多彩なアクションを効果的に活かした、各ダンジョンの巧みなトラップ群や敵配置にもまた、絶妙の一言に尽きる。
そして極め付けが『変身』。主人公テムはゲームがある程度進むと、セーブポイントでもある『闇の空間』において、二人の異なるキャラクターに変身できるようになるのである。変身できるキャラは剣を武器として扱う『フリーダン』、床をすり抜ける特殊能力を持った『シャドウ』の二人。どちらもテムには真似できないような独自のアクションを持っており、フリーダンの場合は炎の弾を発射する遠距離攻撃や地震を起こす全体攻撃、シャドウは攻撃面では劣るが床をすり抜け、生身の状態では到達する事すら困難な通路に入れる、移動を補助するアクションと言った、共に派手さの異なるものを楽しめる。これらのド派手なアクションを使いこなしながら、群がる敵達(ボスを含む)を倒していく快感と謎を解いていく気持ち良さはまた格別で、先の通常状態のテムに負けず劣らずの動かす事の面白さが詰まっている。また、先のテムと同様、これらの変身を自然に使わせようとする、各ダンジョンの絶妙なマップデザインも素晴らしく、いずれの変身アクションも変身時に「変身するのもしょうがない」という不快感が無いのも凄いの一言。終盤まで、全く面倒臭さと言う、この手のシステムには生まれがちなものを表現していないのだ。これには驚かせられる。この他、プレイヤーが使用することになる武器が終始、「笛」(!)で統一されているのにも、純粋にアクションの面白さを追求している事へのこだわりが伺える。
しかし、だからと言って全編、全くRPGっぽさが無い訳でなく、例えばレベルの概念が無い代わりとして、現在のフィールド上で生息している魔物達を全滅させる事で、主人公テムの能力が自動的に強化される(厳密には「宝石」というアイテムが出現し、それが自動的に取得される)システムが導入されていたり、また道中はダンジョン攻略のみならず、RPGではお馴染みのいわゆる「お使いイベント」と言うのがあったり、街のマップが用意されていたりなど、それらしさを煽るようなシステム、並びに配慮は幾つか盛り込まれている。また、この手のゲームにはありがちな、アイテム収集要素と言う名のやり込み要素(サブイベント)が用意されているのも、そんな現れの一つと言えよう。
このように、今作ではRPGにありがちな面倒臭さをできるだけ取り除き、アクションゲームさながらの気持ち良さを動かす事への面白さを徹底追求。これぞ正真正銘、アクションのRPGとも言わんばかりの痛快にして快適な内容に仕上がっているのだ。関連作の『ソウルブレイダー』も、結構アクションゲームっぽさはあったが、今作はそれを軽く凌駕。もはや、アクションゲームとして括っても全然おかしくない位なのである。

先ほどにも触れた『ダンジョン』のマップデザインも素晴らしい。アクションを効果的に使わせるトラップ配置を行っているのは勿論の事、再開時に面倒な手数を踏まない為のショートカットを沢山織り込むなど、『ソウルブレイダー』でも見られた、ユーザー思いの工夫が今作でも随所に凝らされている。道中で立ちはばかる謎解きも、「落ち着いて周囲を観察すれば、絶対に解ける」をモットーにした絶妙なバランスで構築されており、遊んだ誰もが「これはやられたっ!」と大声を挙げてしまうものが多数登場。何とも清々しい達成感を味わえる。
更に今作では、「五感を駆使した謎解き」なるものもあり、その名の通りに、吹き荒れる風とそれでなびくテムの髪の毛をヒントにして解く謎解き、音の違いを聞き分けながら進む通路と言った、個性的な遊びが随所に盛り込まれている。その内、触覚と味覚はストーリー上での登場な為、あまり関与はしてこないが、こう言った周囲の動きを観察しながら謎を解く感覚自体はなかなか新しいものがあり、パズルなどが主体となりがちなアクションRPGに新たな一石を投じている。見た目こそ凄く地味ではあるが、この新しい手応えは一度でも体験する価値ありだ。
また、今作で舞台となるダンジョンは全て、世界各国の有名な遺跡となっており、『インカ帝国』、『ナスカの地上絵』、『万里の長城』、『アンコール・ワット』、『バベルの塔』と言った馴染み深いものが多数登場する。各遺跡に準じたイベントも多数用意されており、遺跡マニアの方ならば思わずニヤリとしてしまうこと、間違いなしだ。だが、本作で舞台となる世界が完全なオリジナルな為、どうしてそんな所にそう言った遺跡があるのか、遊んだ人の大半は疑問を感じるだろうと思うが、これがまた、もの凄い秘密がストーリーに隠されている。その秘密が一体何なのかは、重大なネタバレに抵触するのでここでは伏せるが、最後までプレイした方ならば誰もが「そうだったのか!」と納得するはず。是非とも、その衝撃的な真相は実際の本編の方で、確かめてみて欲しい。ある種の感動を覚えること、間違いなしだ。
メインとなるストーリーも登場人物がイマイチ、ゲーム本編に落とし込みきれてない(主人公以外の存在意義が薄い)のが気にはなるが、出来は素晴らしく、先ほどのエンディングでの展開は秀逸だ。それ以外にも、奴隷として売りさばかれる少年達や人間を食い続ける住民の村など、見ていて鬱になるようなどす黒い展開も盛り沢山。本編中に死ぬキャラも多く、特に中盤である行為をして死に至る男性の物語はあまりに衝撃的。小さな子供ならば一生涯のトラウマになるほど、命の尊さを思い知らされる事だろう。
このように、アクション以外の箇所も今作はこだわって作られており、単なる動かして気持ちの良いだけのゲームには収まっていないのだ。特にストーリーのどす黒さは、一種の怖さすらあり、遊んだ者の心にグサっと刺さるものがある。故に、精神的に弱い方には、少々辛い作りなのもまた事実だ…。

そう言った気持ちの良いアクションと、どす黒いストーリーを盛り立てる、グラフィック並びに音楽もなかなかの完成度だ。
グラフィックは遺跡がらみなども含めて丁寧に描き込まれており、ただ見ているだけでも楽しい。キャラクターのドット絵も大きめで非常に見易く、また髪をなびくなどアクションも細かい所まで作られており、デザイナースタッフの鬼気迫るこだわりを感じさせられる。川崎康宏氏が手掛ける音楽も秀逸。若干、音量が小さいのが気になる所ではあるが、オーケストラ調による荘厳な楽曲の数々は、否が応にもプレイヤーのボルテージを湧き立てる。勿論、名曲も満載で、その中でも『万里の長城』は如何にも中国っぽさ溢れる曲調が味わい深い。廃墟などの地で流れる寂しげな音楽も雰囲気満点だ。
操作性、難易度調整も秀逸。特に操作性は、流石アクションにこだわったという事もあってか、ただ動かしているだけでも楽しい爽快感がある。敵に攻撃を加えた際の効果音の生々しさも、そんな感触のよさを大いに盛り立てる。難易度周りも、誰もが楽しめる絶妙なバランスを維持しており、遊んでいて苦に感じないのは流石の一言に尽きる。

他にも、スーパーファミコンの拡大縮小機能を効果的に取り入れた演出、やり込みプレイヤーにはたまらない『赤い宝石集め』など、見所は満載。
一本道でかなりサクサクと進んでいく為、コアユーザーには物足りなさを感じ易いボリュームや分かり難い赤い宝石の隠し場所、そしてゲームに落とし込みきれてないストーリーに進行上の詰まりを引き起こす致命的なバグなど、賛否に分かれる箇所や欠点も多々あるが、アクションRPG、並びにアクションゲームとしての完成度はかなり高いものを誇る本作。
死者が続発する、どす黒すぎるストーリーには一種の拒否反応を覚えるかもしれないが、それを押し切ってでもプレイすべき価値のある、傑作と評すに値する一本である。年齢は一切問わない。ゲーム初心者から上級者まで、是非とも一度で良いから遊んでみて欲しい。この面白さとどす黒さは、少しでもいいから味わっておく価値がある。
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