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≫新機動戦記ガンダムW ENDLESS DUEL(エンドレスデュエル)
■発売元 バンダイ(現:バンダイナムコゲームズ)
■開発元 ナツメ
■ジャンル 格闘アクション
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 7875円(税込)
▼Information
■プレイ人数 1〜2人
■セーブデータ数 無し(バックアップ機能・パスワードコンテニュー無し)
■総説明書ページ数 22ページ
■推定クリア時間 1〜2時間(エンディング目的)、10〜12時間(完全攻略目的)
人類がスペースコロニーへの移住を開始した数百年後、圧倒的な軍事力でコロニー制圧を推進する地球圏統一連合内において、新たな勢力が台頭していた。総帥トレーズ・クシュリナーダ指揮の下、モビルスーツ部隊を編成する秘密結社OZ(オズ)である。彼らは地球圏統一連合を制圧し、新たな独裁者となるべく数々の陰謀を張り巡らせていた。

AC(アフターコロニー)195年。OZに対抗するコロニー住民は遂に流星に偽装したガンダムを地球に投下。ウィングガンダム、ガンダムデスサイズ、ガンダムヘビーアームズ、ガンダムサンドロック、シェンロンガンダム、コロニーに真の自由と平和を取り戻す為、5機のガンダムは大地に降り立つ。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆次世代機のゲームと見間違えるほどの圧倒的なスピード感(処理落ちも少なめと、技術レベルも高い)
◆ガンダム同士が拳で殴り合う、原作無視(?)のシュールな構図
◆数は少ないが、極め甲斐は抜群のゲームモード(特にトライアルは熱い)
◆一発逆転タイプに投げが強いタイプなど、露骨な上に原作無視の個性付けが成された全9+1体のモビルスーツ
◆全機体の技コマンドが共通している為、意外と覚える敷居は低めの操作性
◆防御状態で相手の懐に突撃する、地味ながらも格闘アクションの新境地を切り開いたアクション『ガードダッシュ』
◆高度なコンボ技もお披露目するなど、意外と賢く作られた相手CPUのAI
◆地味な見た目に反し、恐ろしいほどダイナミックな動きを見せるグラフィック
◆各戦闘を火傷するほどにまで盛り上げる、名曲揃い&熱過ぎる音楽
◆スピード感と同様、次世代機と見間違う迫力に秀でたエフェクト演出

--- Bad Point ---
◆色々高性能過ぎて、存在からして突出し過ぎてるデスサイズ(ほとんどバランスブレイカーも同然な強さ…)
◆得意分野を把握するにはある程度、やり込む必要がある各モビルスーツ
◆格闘アクション初心者にとっては、肉眼で追うのも厳しいスピード感
◆派手ではあるが、フラッシュの多様がタマにキズなエフェクト演出
◆原作ファンに向けたサービスの少なさ(ストーリーがほとんど無いなど)
▼Review ≪Last Update : 3/27/2011≫
この永遠の戦いに終わりは無い。

ひたすら戦い続けろ。


1995年4月7日より、テレビ朝日系列で放送された機動戦記ガンダムシリーズ第6作『新機動戦記ガンダムW』を題材とした格闘アクションゲーム。本編の最終回当日に発売されたという、妙な経緯を持つタイトルである。開発は『奇々怪界 謎の黒マント』や『ザ・ニンジャウォーリアーズ アゲイン』などの傑作を手掛けた実力派メーカー、ナツメが担当。

スーパーファミコンとは思えぬスピーディな攻防で魅せる、格闘アクションの名作だ。

ゲーム内容は1対1形式の三本勝負で展開する、格闘アクションゲーム。プレイヤーはウィングガンダムを始めとしたモビルスーツを操縦し、相手のモビルスーツとの一騎打ちを繰り広げていく。最終的に相手のエネルギーゲージ(体力)をゼロにした方が勝利。そして三本勝負の内、二本先取すれば次のモビルスーツとの戦いへと移る仕組みとなっている。いわゆる、カプコンの『ストリートファイター』シリーズなどの格闘アクションと同様のルール。この手のジャンルでは、もはやお馴染みとも言える正統派のシステムを起用している。
そして、収録ゲームモードは全三種類。ストーリーに沿って様々なモビルスーツと戦っていく『ストーリーモード』、対戦プレイが楽しめる『VSモード』、そして何処まで勝ち抜けるかを競う『トライアルモード』が用意されている。実質、本編となるのは『ストーリーモード』。しかし、ストーリーを謳いながら、実はストーリー性皆無。『新機動戦記ガンダムW』という原作を持つゲームでありながら、その内容に一切沿わない、戦闘重視の漢(おとこ)仕様。まさに『ENDLESS DUEL』のサブタイトルに相応しい内容となっている。その為、あのガンダムWのストーリーがゲームで追体験できる!…なんて期待してプレイすると、肩透かしに遭うのは必至。サブタイトルが表す通りに戦闘重視なんで、要注意である。そんな内容なのもあってか、正直な所、原作のファンにとってはやや魅力に欠けるファンアイテムであると言えなくもない。
では、原作のファンに物足りなさを与える一方で、ゲームとして注目するユーザーに対する魅力的なものはあるのか?その答えはイエスである。先の通り、格闘アクションとしての全体的なシステムはいわゆる、正統派と言った具合。特に奇妙な捻りとかはない。しかし、モビルスーツのアクション全般において、非常に特異なものが盛り込まれており、正統派でありながら独自のゲーム性を確立させている。
その特異なものというのが、『ガードダッシュ』と『ブーストジャンプ』の二つだ。前者『ガードダッシュ』はその名の通り、防御状態のままでダッシュするという あまりに奇抜なアクション。「攻撃ボタン二つ+十字キー左右の同時押し」のコマンド入力によって発動する。格闘アクションにおいて防御とは、”立ち止まって”相手の攻撃を防ぐ行為で、それを行っている際は移動できないのがある意味、常識とされていた。ところが、今作はその状態を維持したまま、相手に突っ込める!相手が遠距離から攻撃しようが、そこから防御して突っ込めば、こちらから反撃を行って中断させる事ができるのである。立ち止まって耐える必要もなく!まさに格闘アクションの常識を根底からぶち壊す、大変衝撃的なアクションだ。見た目は本当、地味なんで、そこまで大袈裟に称すのもあれだが、相手が遠距離攻撃を行ってきた時、防御でそこを耐え凌ぐのが当たり前とされてた格闘アクションで、それを壊す技を導入し、戦略面に革新をもたらしている辺りは素直に凄い。まさにガンダムという、非人間キャラクターが争う今作だからこそ実現し得た技と言った感じだ。地味とは言え、強烈なインパクトを持ったアクションとしてその存在感を発揮している。
後者『ブーストジャンプ』もまた然り。これも名が表す通りだが、通常の倍のジャンプを行うというアクション。「攻撃ボタン二つ同時押し」のコマンドによって発動する。更にこのジャンプ時に十字キー左右を入力する事で、ホバリングによる空中移動も可能。これを活かして相手の後方へと素早く回り、一気にコンボを叩き込むという荒業もできてしまう。また、リーチの長い遠距離攻撃を行ってきた際の回避手段としても活躍。こちらに飛んできたと同時にジャンプし、カウンターを決める応用も可能だ。先の『ガードダッシュ』に比べると、発想としては平凡な印象があるが、ガンダムだからこその常軌を逸した動きは目を見張る。ガードダッシュとの併用によっては「蝶のように舞い、蜂のように刺す」の華麗なコンボ技も決められるなど、その応用の広さも奥深さを引き立てている。斬新なアクションとは言い難い感じだが、ガンダムだからこその無茶苦茶さ、戦略面の幅広さは結構なインパクト。こちらもガードダッシュと同様に今作の独自性を存分に演出している。
また、この他にも様々な要素を実装。前方、後方に両対応したダッシュ、チェーンコンボ、追い討ち攻撃、ガードキャンセル、そして強力なダメージを与える『メガ必殺技』など、当時のアーケード、次世代機で流行していたアクション、テクニックの数々が今作でも活用できるように作られている。また、ゲーム全体のスピード感も相当なもの。そこもまた、当時のアーケードや次世代機のゲームかと見間違いかねないほどのインパクトがある。
作りは正統派ながら、ガンダムである事を最大限に反映させたアクションによって独自性を加味。それによってハイスピードなゲーム展開を演出させるなど、もはやスーパーファミコンの限界に挑戦したとも言える無茶が満載。原作付きのゲームというと、その出来も含めて舐められる傾向にあるが、今作は別格。独自の要素に圧倒的なスピード感と、スーパーファミコンの数ある格闘アクションの中でも、屈指の完成度を誇る内容に仕上げられている。原作ファンには肩透かしな部分があっても、ゲームとして注目するユーザーに対する要素において、異様な凝りっぷりが炸裂しているのだ。

例によって今作最大の魅力は、次世代機の格闘アクションかと見間違うほどの迫力に秀でたスピード感だ。静止画ではオブラートに包み隠さず言ってしまうと、地味極まりない感じなのだが、実際の本編ではこれが恐ろしいほどよく動く。あまりの速さに最初は戸惑ってしまうぐらい。スーパーファミコンでこんなにも素早く、激しいスクロール処理ができるのか!と、その映像を見れば度肝を抜かれること、間違いなしだ。
特にほとんど立ち止まる事無く展開する戦闘は圧巻の一言だ。『ガードダッシュ』や『ブーストジャンプ』と言った特異な要素を導入し、徹底して「キャラクターの動きが(ちょっとでも)止まる要因」を取り除いているのもあってか、攻防がとんでもなく激しい。少しでも相手に隙を見せるような動きでもしたら、即座にボコボコにされかねないほどだ。まさに息をつく暇すらも許されぬ一騎打ちとはこの事。それを体現させるようなバランス調整が成されている。そして、そんなにもスピーディに展開するが故、プレイの爽快感と中毒性も格別。最初こそその素早さには圧倒されるが、プレイして慣れるにつれ、その素早い展開が癖になっていく。そして「蝶のように舞い、蜂のように刺す」に則った動き(コンボ技)ができるようになると、それは更にレベルアップ。素早い技で相手を翻弄させ、手玉に取る気持ちよさが忘れられなくなってしまう。そして過去、スーパーファミコンで発売された格闘アクションには戻れなくなってしまってジ・エンド。まさにそれまでの作品を過去にする、とはこの事である。
ただ、今作が発売された当時はスーパーファミコンで発売された格闘ゲームは既に過去のものとなりかけていた。既にプレイステーションやセガサターンと言った次世代機が流行り、格闘アクションもそのハードの処理能力向上に伴い、演出やスピード感に凝ったものが主流となっていたからだ。中でもカプコンのヴァンパイアシリーズやX-MENシリーズは、その独自のスピード感と大迫力の2Dグラフィックで、当時の格闘好きを大いに魅了していた。そして、今後の格闘アクションは派手さあってこそな風潮も確立され、処理能力に乏しいスーパーファミコンではそれは無理なものとまで…思われていたのかもしれない。今作のスタッフは、そんな風に見られてたスーパーファミコンで本気を見せようとしたのだろう。スーファミ舐めんじゃねえ!、と。本当にそういう思いで作ったのかどうかは神のみぞ知る感じだが、現に今作は次世代機と見間違いかねないほどの迫力を表現している。「スーパーファミコンでも次世代機並の格闘アクションは作れるんだ!」、それを示したというだけでも、今作は革命的な一本であると言えるだろう。旧世代扱いされたハードも、(性能的な意味で)怒らせると信じられない事をやりかねない。それは、今日のゲームにも通ずるものを実感させられる次第である。
スピード感ばかりでなく、9体のモビルスーツの露骨過ぎる個性付けも結構な見所。火力に秀でた機体が実は殴り技で真価を発揮するなど、使い込むにつれて、意外な強みが分かると言った発見の楽しさがあるのも面白い。
しかし、スピード感を重視した為、最初の敷居が高いのは否定できない。実際、格闘アクションは初めてで、尚且つ苦手という方なら、今作は初っ端から挫けてしまうだろう。筆者は格闘アクション自体、もの凄く苦手でありながら、今作にはガードダッシュを始め、様々な要素に強烈な魅力を感じた為、結果的にやり込んでしまったのだが、これは全く持って当てにならない例だ。私が遊べたからと言って迂闊に手を伸ばすのだけは止めるのを強くお薦めする。 話がずれたが、そんな敷居の高い部分はあれど、このスーパーファミコンで次世代機の格闘アクションを作ろうとする意気込みの熱さは本物だ。そして、その完成度は引けを取らないレベル。どうせ、スーパーファミコンで次世代機並の格闘アクションなんて無理、そう思っている格闘アクション好きの方ほど、今作はプレイする価値のある一本と言えるだろう。ガンダムを名乗ってるからと言って、よくある原作付きゲームと思ったら大間違い。確実に火傷するぞと、ここで声を大にして言っておく。

操作性も極めて良好。例によって、コマンド技では複雑なボタン入力が求められるが、その過程が控え目とされているので、ワリと取っ付き易い。難易度調整もなかなか。特に相手CPUは意外と高性能で、トリッキーな動きをお披露目してくる。格闘好きも納得の手応えが味わえるだろう。しかし、各モビルスーツの能力バランスには粗が散見される。特にデスサイズの万能っぷり(何とやり方次第では永久コンボが出せる)はいささか問題ありだ。別の見方をすれば、救済処置と言えなくもないが、これはさすが褒められない部分。時間的な制約があったとは言え、もう少し弱体化させるなどの調整を施して頂きたかった。
ボリュームも全体的に控え目であっさりしている。ただ、トライアルモードを始めとするやり込み、各モビルスーツに秘められた意外な特技など、極める度に深みが増していく要素は充実。サックリしてるとは言え、満足度は結構なものだ。
そしてグラフィックも静止画では地味だが、派手なエフェクトと躍動感抜群のアニメーションで魅せてくれる。特にアニメーションは意外と動きのパターンが少ないのだが、それを全く気にさせないほど自然なアクションを見せる。致命的に劣る部分を緻密な技によって、違和感のないものに仕上げる辺りはまさに職人技。その工夫の上手さは圧巻の一言だ。
音楽も無駄に熱い名曲が充実。『ザ・ニンジャウォーリアーズ アゲイン』、『奇々怪界 謎の黒マント』など、ナツメ制作の名作で素晴らしい楽曲の数々を世に送り出してきた岩月博之氏作曲なだけに、そのクオリティは折り紙付きだ。

演出全般もなかなか。ライフル系の攻撃を行った際は相手に照準がロックされたり、メガ必殺技発動時には派手な音が鳴り響いたりと、各戦闘を大いに盛り上げる。その他、オープニングではアニメ版後期の主題歌『RHYTHM EMOTION』のアレンジ版が流れたりなど、原作付きゲームならではのサービスもきちんと盛り込まれている。
しかし、率直に言って今作は原作ファンよりは、格闘アクション好きにお薦めのゲームと言ったところである。ストーリー性皆無の戦闘重視の内容なので、正直、ファンアイテムとしては不合格と言った具合である。
だが、格闘アクションとしての完成度はいわずもがな。ガードダッシュとブーストジャンプなどの独自の要素によって生み出された、スピーディな展開は次世代機の格闘アクションとも肩を並べられる迫力と中毒性に秀でている。色んな意味でスーパーファミコンの本気炸裂の今作。格闘アクションが好きな方ならば要チェックの傑作だ。よくあるキャラクターゲームだと侮る事なかれ。こいつ、全てにおいて本気です!
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