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≫反省ザル ジローくんの大冒険
■発売元 ナツメ
■ジャンル アクション
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 7350円(税込)
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 無し(※パスワードコンテニュー形式)
■総説明書ページ数 紛失している為、不明
■推定クリア時間 3〜6時間
森へとピクニックへと来ていたジローくん。だが、そこに突如現れた魔界の魔女により、おやつとして持って来ていた果物達がモンスターにされ、森の中で暴れ始めた。

おやつを取り戻す為、そして魔女の企みを阻止する為、ジローくんは魔女のアジトへと突入する。果たして、ジローくんは魔女を倒し、おやつを取り戻す事ができるのか。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆ややこしいアクションも無く、僅か2つのボタンしか扱わないシンプルな操作性
◆ボールをヘディングして強化させ、それを解き放つ快感が素晴らしいボールアクション
◆アクションとパズルを絶妙なバランスで味付けしたステージ構成
◆局地構成でありながらも巨大な畑や機械仕掛けの都市など、ロケーションに富んでいる全6ワールド61ステージ
◆集め易くもちょっぴり集め難い、微妙なさじ加減が魅力的なカギ集め
◆アクションと謎解きが苦手なプレイヤーへの救済システムと機能している、カギ持込みシステム(これを使って、次のステージを省略する事もできる)
◆ボールアクションの特徴を活かした、ユニークな帽子アイテム
◆初心者から上級者まで幅広く楽しめるよう盛り込まれた、難易度選択システム
◆キャラクターゲームの見た目に反した、恐ろしく絶妙なゲームバランス
◆たった3桁の数字で表示される事もあってメモし易く、尚且つ覚え易いパスワード
◆個性豊な登場キャラクターのリアクション(特に敵関係のリアクションが豊富)
◆見た目の可愛さに反して、なかなかトリッキーな動きを見せてくる果物モンスター達
◆アクションゲームの爽快感を大事にした、あまりに痛快なボスのやられ様
◆スコアアタック、最弱ボール限定クリアなど意外に充実したやり込み要素
◆自己主張が強くなく、程良い色合いが印象的なグラフィック
◆見た目の可愛さに反した、意外にカッコイイ音楽(中でもワールド5の音楽が秀逸)
◆チュートリアルも兼ねたワールド1のステージ構成

--- Bad Point ---
◆ジローくんが画面下に落下してしまったり、ボスが消滅してしまったりとあまりに致命的なバグの数々
◆ボスにダメージを与えた際の感触がいま一つ掴み難い(演出が地味)
◆あまりにゆったりとしたモーションが気になるジャンプ
◆何の前触れも無く、ステージを長時間徘徊しているとやってくるカラス(はっきり言って、心臓に悪過ぎる上に理不尽。せめて、制限時間表記でもあれば…)
▼Review ≪Last Update : 7/21/2007≫
当初、「栗は果物じゃないだろ」と思ってました。

恥ずかしい思い出の暴露、その2。


猿まわしのパイオニアとも言える『太郎・次郎』の次郎君(ジローくん)を主人公とした、パズル要素を含んだアクションゲーム。ゲームボーイで発売された『ラッキーモンキー』の続編的作品でもある。

キャラクターゲームとは思えないほどの隙の無い作り込み。
アクションとパズルが高レベルで融合した、スーファミ屈指の隠れた名作だ。

ゲーム内容はパズル要素を含んだステージクリアタイプのアクションゲーム。プレイヤーはお猿のジローくんを操作して多種多様なステージに挑み、トラップを回避したり、敵と戦ったりしながらステージ内に落ちている鍵をゴールである扉に付けられた鍵穴と同じ数かそれ以上を回収し、扉を解放しながらゲームを進めていく。簡潔に言うと、収集要素のあるパズルアクションゲームと言えば、ある程度想像が付くと思う。
パズル要素を含んだアクションゲームという事もあり、各ステージの構成は一般のアクションゲームのように横に長い一本道ではなく、一つの部屋を模した局地形式。如何にもパズルアクションらしく「頭を使いそう」な雰囲気が漂うが、意外な事に実際のゲーム本編は実はそこまで頭を使う場面はない。どちらかというと、パズルではなくてアクション寄りな作りとなっているのだ。例えば本作の文字通りのキーとなる鍵集めに関しても、意外にもブロックを動かして道を確保しなければならないとか、そう言った頭脳運動を行う事で手に入る鍵とかは全く本編では出てこず、どの鍵もアクションゲームをプレイするような感覚でサクサクと集める事ができてしまう。更に沢山集めながらも、ゴールである扉を開ける際に使われなかった鍵は次のステージへと持ち越しとなり、そのままそのステージの扉の鍵として使う事ができるという親切な要素まである。だから苦手なステージは、持ち鍵の残りを使ってすっ飛ばしてしまう…なんて事もできてしまう。更に、そのゴールでもある扉への道順に関しても特段頭を使う必要は無く、アクションゲームをプレイする感覚で楽々と辿り着く事が可能。
これこそ「看板に偽りあり」。見た目のパズルっぽさに反して、実際はかなりアクション味の強い内容となっているのである。見た目でパズルっぽく見せておいて、アクション重視とは何というダマシ打ち。まさに「してやられた」とはこの事だ…。
だが、全くパズル要素が無い訳ではなく、ジローくんのボールアクション(後述)を上手く利用しなければ取れない鍵や壁の中に隠された鍵など、ゲームが後半になると徐々にパズル的な仕掛けも登場してくる。いずれも難易度的には優しいものばかりだが、パズル好きにも納得の行く遊び応えを感じる事ができるだろう。それでも人によっては、「もう少し厳しいものを!」と不満が出るかもしれないが。
とにかくこのように本作は、見た目のパズルっぽい雰囲気に反して、意外にもサクサク楽しめる、敷居の低い作りとなってるのだ。アクションにもパズルにも偏りし過ぎないこの絶妙な設計は、まさに職人技と言ってもおかしくは無い。

本編のみならず、プレイヤーキャラであるジローくんのアクションにも職人技が冴え渡る。
その中でも先述で軽く触れたボールアクションは実にユニーク。Aボタン(オプションで変更可能)を押すとゴムボールを投げ、再びAボタンを押すとゴムボールが割れて敵を攻撃できる中身のボールが出現するという聞いた感じではワリと平凡なものなのだが、このゴムボールは頭でヘディングすると徐々に大きくなるという特異な性質が含まれており、この大きくなった状態で破裂させると初期状態よりも更に強力なボール攻撃を繰り出す事ができてしまう、インド人もビックリな技になっているのである。ボールは最大で4段階まで変化し、ベースボール⇒サッカーボール⇒バレーボール⇒バスケットボールとパワーアップ。いずれのボール攻撃もゲーム中のボス戦を含むあらゆる場面でその威力を発揮し、ジローくんを大いにサポートする。また本編中において、「この攻撃技を使わなければダメ」みたいな使用を強制する場面も一切無く、自由気ままに攻撃アクションが楽しめる、良い意味での「大らかさ」があるのも見逃せないところだ。
ボタンを押しても直に攻撃できず、もう一度ボタンを押さなければ攻撃とならない。この仕組みは、アクションゲームが好きなプレイヤーにはもどかしく、それでいてイライラするものである。しかしながら、そのもどかしさを逆手に取り、「溜める事の面白さと緊張感」、そして「我慢して溜めに溜めきったものを一気に解き放つ爽快感」を限りなく追求したこのパワーアップシステムは、まさにアクションゲーム界にとっては一石を投じる画期的なシステムと言える。ヘディングという誰もがイメージが付く動作で、ここまで奥深いアクションを実現させた開発スタッフの手腕には脱帽の限りだ。
また、このボールのゴム状態には遠く離れたアイテムを回収する機能もあり、届かない所にある鍵やアイテムを取る際などに大いに重宝する。このテクニックを使えば正規ルートを通らずに楽々と鍵が回収できたりなどと、ビックリなショートカットも可能。こちらもボール攻撃の方と絡めて大いに本編で活躍する。この他にも敵を麻痺させる機能があるのだが、敵を倒した方が遥かに有利なので、使い勝手が良いとはとても言えない。
ともあれ、ボールアクションの作りの深さとその万能性に揺らぎは無い。また、おサルのジローくんがヘディングするという事で、猿回しの雰囲気が出ている点も実にユニーク。このアクションのテンポの遅さを逆手に取ったボールアクションを体験するだけでも、本作のプレイ価値はかなりあると言っても過言ではない。
本当にただ、ただ…凄いの一言しか出てこない。

登場するアイテムもユニーク。特にボールのパワーアップを促進したり、ジローくんのアクションを強化させる帽子は本作だからこそ実現したものがあり、実に感慨深い。
プレイヤーの前に立ちはばかるステージも構成が局地で閉鎖的でありながら、巨大なスイカ畑(?)やリゾート地、更には新聞紙の工作で作られた巨大橋に機械仕掛けの都市などユニークなものが盛り沢山。総数も全6ワールド61ステージ(基本的に1つのワールドに10ステージが配置されてる)とボリューム&やり応え満点。
また難易度選択システムも搭載されており、様々なプレイスタイルでゲームを楽しむ事も可能。スコアアタックやベースボール限定クリアなど、やり込み要素も豊富でコアなゲーマーも大満足の奥深くも幅の広いゲームプレイができる。
グラフィックや音楽の出来も素晴らしい。特に音楽は見た目の可愛さに反した、ゲームの雰囲気を盛り立てる爽やかな曲が満載で、聴いていてとても心地が良い。中でも、先ほど述べた機械仕掛けの都市で流れる曲はあまりに強烈だ。
そして本作は演出も大変優れている。特に、本作でプレイヤーの前に立ちはばかる敵でもある、果物のモンスター達のリアクション並びにやられ様は細かい所まで丁寧に作り込まれており、一切の妥協を感じない姿勢が伺えてくる。中でも、敵キャラの中でも最も強大なボスのやられ様は完璧の域と言っても良い素晴らしさで、アクションゲームの爽快感を大事にした気配りがヒシヒシと伝わってくる。
この辺の丁寧なこだわりは、流石ナツメと言ったところだろうか。
勿論、ジローくん自身のリアクションもなかなか。お約束の『反省』のポーズも健在だ。

この他、ゲームバランスも適度に難しく、適度に優しい絶妙なバランスを維持。難易度ごとの上げ下げも隙が無く、キャラクターゲームを思わせない作り込みの深さが光っている。
また、本作ではパスワードによるコンテニューシステムが採用されているのだが、このパスワードというのが3桁の数字で表示される形式で大変覚え易く、紙などにわざわざメモを取らなくても(でも、実際は取った方が良いが)案外、楽に記憶できてしまう所も見事だ。
操作性に関しても、若干…ジャンプの発動が遅いのが気になりはするが、概ね良好。メインで使うボタンも2つと少なく、直に覚える事ができる敷居の低さもナイス。
ボスが消えてしまったり、突然画面下にジローくんが落ちてしまったりなどの致命的なバグがある事、ボスにダメージを与えた際の感触が掴み難い、フィールドを長い間うろついているといきなり画面上部から敵のカラスがやってきて、ジローくんを攻撃するなどの欠点もあるが、全体的な完成度は文句なしの名作レベル。
キャラクターゲームという事で敬遠してしまう所があるが、出来に関しては保障する。アクションゲーム好きのみならず、ゲーム初心者から上級者の方まで幅広くお薦めできる、スーパーファミコン屈指のダークフォース級の名作だ。猿回しのパイオニアが提供する、かつて無い爽快感と緊張感を秘めたボールアクションをとくと体感せよ!
これほどのものを埋もれたままにするのは、あまりに勿体無い。
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