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≫迦楼羅王(カルラオウ)


■発売元:エピック・ソニーレコード / ■開発元:浮世亭 / ■ジャンル:アクション /
■CERO(推定):B(12歳以上対象)※暴力描写あり / ■定価:8900円(税別)
▼Information
■プレイ人数:1人 / ■セーブデータ数:無し(※パスワードコンティニュー) /
■総説明書ページ数:27ページ / ■推定クリア時間:2〜4時間
遥か時の彼方、天界は神々に、地上は魔神族に、そして魔界は魔族によって統治されていた。

魔族は戦いを好み、長きに渡り神々、魔神族に戦闘を仕掛けてきた。
特にその王「ラバーナ」の力は強大で、天界と地上界は壊滅寸前にまで追い込まれた。この危機に際し、神々と魔神族は一時的に手を結び、ラバーナと魔神族を異次元空間に魔界ごと封印した。
それから数千年後、今度は神々と魔神族との間で戦争が勃発。「鬼神八部衆」と呼ばれる将軍に指揮され魔神族と神々は互角の戦いを繰り広げるが、戦争の長期化によって互いは疲れ果て、休戦協定が結ばれることになった。
だが、魔神族の長にして鬼神八部衆の一人「アシュラ」はそれに反対した。アシュラは好戦的な性格で、戦いの中にしか自分の人生を見出せなかった。彼は封印された魔族を解き放ち、世界を戦いと混乱の日々に戻そうと考えたのだ。
既に戦いとそれに伴う荒廃に疲れ果てていた魔神族は、アシュラの野望を阻止すべく、自分達の力と引き換えに彼の者を地の底深くへと幽閉。地上界には平和な日々が訪れた。力を失った魔神族の子孫達は地上界で人間としての生活を始め、時の流れと共に神々や魔神族の存在は伝説となっていった。

だが、暗い地の底に幽閉されたアシュラが封印された魔族の王「ラバーナ」の思念によってそそのかされ、魔界の封印を解いてしまう。やがて地上に現れたアシュラは恐怖と戦いの日々を地上に呼び戻すため、魔物を率いて暴れ回る。そして、魔神の血を引きし者の末裔は、次々とアシュラの手に捕えられていった。

今日もラバーナへの生贄として、一人の娘「ビシュヌ」がさらわれようとしていた。
そこへ駆けつけた青年「迦楼羅(かるら)」。鬼神八部衆の一人「迦楼羅王」の血を受け継ぐ者だが、その力には目覚めてなく、アシュラと対峙するも、圧倒的な力の前に倒れてしまう。

気が付くと「魔神の祠」なる場所に居た迦楼羅の前に謎の老人「ブラフマ」が立っていた。アシュラを倒し、ビシュヌを助け出すには自らの中で眠る魔神の力を蘇らせる必要があると説くブラフマ。雪辱を晴らすことに心を燃やす迦楼羅は、ブラフマと共に力を取り戻す修行の旅に出ることを決意。かくして、新たな伝説の幕が明けた。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆真新しさは無いが、王道を追求したなりのまとまりの丁寧さが光るゲームデザイン
◆若干の制限はありつつも、プレイヤーの赴くがままに進めていける自由度を残した本編構成
◆見た目でも遊びの面でも楽しませてくれる、見事な作り込みが炸裂した全16ものステージ
◆同じく見た目でも戦闘面でも楽しませる作り込みが炸裂したボス戦
◆ステージ、ボス戦双方で炸裂したスーパーファミコンのハード機能を活かした仕掛けの数々(ステージでは円柱の塔を登る場面、ボスでは「氷河の城」が特に面白いものになっているので必見)
◆行動範囲の広がりに重きを置いた多種多様で個性豊かな「必殺技」の数々
◆難し過ぎず、優し過ぎず、アンフェアであらずの姿勢が顕著に表れた絶妙な難易度設定
◆動かすだけでも楽しい、アクションゲームの醍醐味を突き詰めた良好な操作性
◆操作の楽しさを引き立てる、主人公「カルラ」の掛け声(発音が独特)
◆ステージクリア型アクションとしては適切且つ、密度も十分なボリューム
◆拠点「ナーガの祠」でいつでも確認可能な良心的な措置が図られたパスワードコンティニュー(加えて、この拠点ではゲーム攻略のヒント、アドバイスも貰えるという配慮も凝らされている)
◆質感が綺麗に表現されたドット絵が目を見張るグラフィック(動きも素晴らしい)
◆インドの神話をベースにしているなりのオリエンタルな作風でまとめられた音楽
◆少年漫画臭全開の暑苦しくて勢いのあるストーリー
◆元気を貰えるほど明るく、めげないカルラと妙に楽し気で熱いアシュラの二人
◆スーパーファミコンのハード機能を活かした仕掛けを施しているなりの派手さに富んだ演出周り(疑似3Dのステージもあったりと、見ているだけでも楽しい表現が満載)

--- Bad Point ---
◆移動速度がやたら遅く、展開が間延びする水中ステージ「幻魔水路」(ここで結構な時間を吸い取られる)
◆アクションゲーム初心者に優しいが、いささか過剰な感も否めない残機アップ機会の多さ
◆題材が題材ゆえ、人を選び易くもある世界観とキャラクターデザイン
◆一部、極端にシビアなジャンプを要求される場面の存在(特に「空の灯台」の終盤)
◆メロディが単調で、イマイチ盛り上がりに欠けるボス戦の曲(ラスボス戦もイマイチ…)
◆慣れるまでは戸惑い易い、移動時の(若干ながら「ヌメッ」と滑る)
◆やや狭く設定し過ぎの感もある通常攻撃のパンチ(必殺技との兼ね合いなのかもしれないが…)
▼Review ≪Last Update : 8/5/2018≫
「た・た・か・い……たたかい……戦い……戦いかーーッ!!!」

(ヤバい)


古代インドの大長編叙事詩「ラーマーヤナ」を題材とした完全新作の横スクロールアクションゲーム。開発は販売元のエピック・ソニーレコードとは『HOOK(フック)』でタッグを組んだ実績のある浮世亭が担当。

奇をてらわず、王道の面白さを突き詰めた作り込みが光る隠れた傑作だ。

内容は横スクロールで展開するステージクリア型アクションゲーム。主人公の青年「迦楼羅(カルラ)」を操作し、修行場ことステージを攻略して「必殺技」を会得していき、巫女「ビシュヌ」をさらった宿敵「アシュラ」の討伐を目指すというものだ。
本編は三つの大陸ごとに用意されたステージを攻略していく形で進行。基本的に全体マップ上でカルラを修行場(ステージ)があるポイントまで動かし、到着と同時に攻略開始となる。攻略するステージはプレイヤーが自由に選ぶことができるが、ゲーム開始間もなく始まる一番目の大陸は完全な一本道で、予め決められた順序に沿って進む。次の二番目の大陸からはマップ上に多数の分岐点が設けられ、好きな順序で攻略していけるようになる仕組みだ。そうして全てのステージを攻略すれば、最後の三番目の大陸へ。そこでアシュラとの決戦に挑む、というのが大まかな流れだ。攻略するステージを自由に選べる点から、構成周りはカプコンの『ロックマン』を髣髴とさせる。ボスを倒すと必殺技が手に入り、カルラのアクションが拡張されていくシステムが実装されているのも実にそれっぽい。なので、同作を遊んだことのあるプレイヤーならばほんの少し、既視感を覚えるゲームデザインとなっている。
しかし、言うまでもなくアクションゲームとしての作りは別物だ。まずステージだが、本作には「道中」と「ボス」の二種類が用意されていて、それらを交互に攻略しながら本編を進めていく形となる。ステージごとの特徴は至って単純。道中は敵や仕掛けが行く手を阻む道を突破するのが目的となるステージで、ゴールに辿り着けばクリアとなる。後者は文字通り、ボス戦が用意されたステージ。構成こそ道中と一緒だが、終盤にボス戦が用意されている。ボスを倒せばクリアとなり、同時に「必殺技」を会得。新たなアクションが追加され、戦術・行動範囲が拡張される感じだ。どちらのステージも、これと言って突飛な仕様は無いが、道中とボスの二つを交互に攻略していくだけあって、単純なボス撃破が目的のステージクリア型アクションゲームとはやや趣の異なる作り。それ故の起伏の激しさが顕著に表れた構成になっている。もの凄く乱暴に言うなら、ボス撃破までの流れが長い構成。修行というストーリーの設定を反映させたかの如き、シンプルながらもそれらしさに溢れる作りになっている。ちなみに三つ目のステージとして、3Dスクロールで展開する「空中」もある。これはいわゆるボーナスステージで、大陸上のステージを全てクリアし、次の大陸へと移動するに当たって強制的にプレイする事になる。ボーナスなので敵は登場しないが、独特のスクロール演出、大量に現れる黄金石という名の1UPチャンスでプレイヤーを色んな意味で魅了させる。プレイ機会こそ限られているが、見所のあるステージになっているので必見だ。
そして、本作の核とも言えるシステムで「必殺技」。先の繰り返しになるが、ボスステージを攻略する事によってカルラが会得する。これは仕組みからして、まんまロックマンであるが、本作の場合、攻撃、移動のバリエーションを広げることに徹しているのが大きな違い。技を使うことでボスを瞬時に倒せるようになる戦略的な要素は実装されてなく、あくまでもプレイヤー自身のアクション、戦術の幅を広げる事を目的としたシステムになっている。なので、例え必殺技があっても、どのボス戦もプレイヤースキルが物を言う一騎打ちになる。一応、必殺技がある事で立ち回り易くなったり、ゴリ押しが効くようになる恩恵も得られるが、影響は最小限。アクションゲームとしての真っ当さを尊重したバランス取りが徹底されている。なので、ロックマン感覚でプレイすると、思わぬ返り討ちに遭ったりも。そうも似てはいるけど、手応えはほとんど別物なシステムとしてまとめられている。肝心の技も体当たり攻撃兼空中ダッシュの「飛虎砲(ひこほう)」、カルラの周囲に雷を落とす「雷神拳(らいじんけん)」、時を止める「霧幻陣(むげんじん)」など、どれもこれも個性的。ステージによってはこれらの技を活用して潜り抜ける場面もあるなど、戦闘だけに留めない工夫が凝らされているのも見逃せない。
また、カルラ自身の通常攻撃がパンチ、キックという打撃中心であるのも本作の特徴。武器を一切用いず、己の拳だけが頼りと言わんばかりに素手で魔物と戦うのである。当然ながら攻撃範囲は狭い!至近距離まで接近しないと当たらないのだ。なので、例え一発で倒せる雑魚敵でも、ギリギリの戦いになる。一応、最初から会得している必殺技で、遠距離攻撃の衝撃波を放つ「竜斬拳(りゅうざんけん)」があるので、常に接近戦となる訳ではないが、距離を考えながらの立ち回りが求められるため、緊張感満点。コマンド技は無いので操作自体は単純明快だが、当て易いようで当て難い手応えには少しヒリッとしたものを感じること請け合い。素手で戦うなりの難しさを突き詰めた作りになっている。非常に地味且つ、真新しいとは言い難い部分ではあるが、こう言った所でも、本作は独自のアクション性を追求している。
こんな具合にシステム自体は真新しくはないものの、個性的な味付けが施されており、王道ながらも独特の遊び心地を持ったアクションゲームに仕上げられている。とは言え、根っ子は正統派のステージクリア型アクションゲームという事で、手応え自体は王道も王道。個性的な所はあれど、根幹の遊びに関しては突飛なものも何も無く、すんなりと遊べてしまう作りだ。まさに絵にかいたような「万人向け」。そして、アクションゲームとしての素直さが光る作品になっている。

その素直さこそが本作最大の特色だ。独自の味付けが施されているとは言え、本作のアクションゲームとしての新鮮味は正直、薄いと言わざるを得ない。「必殺技」のシステム自体はロックマンだし、道中とボスステージの交互を攻略していく流れもコナミのがんばれゴエモン、任天堂のスーパーマリオブラザーズを髣髴とさせるもの。いずれの作品を知る人が本作をプレイしたら、終始、どこかで見たような…という、既視感を覚えてしまうのは否定できない。だが、そう奇をてらった作りをしていないからこそ、全体的な作りは安定している。それでいて、アクションゲームとしての完成度も非常に高く、主にステージ構成、ボス戦、ゲームバランスと言った根幹部分において職人芸の作り込みが炸裂しているのだ。
特に素晴らしいのがステージ構成だ。敵配置、仕掛け、ビジュアルとあらゆる面でプレイヤーをアッと言わせ、且つ飽きさせない事を重要視した作り込みが成されている。基本的に本作で舞台となる場所のほとんどは神殿、塔と言った建造物なのだが、これがまた個性的な作りをしていて、「そう来るの!?」という驚きをプレイヤーに提供する。天井が落ちてくる仕掛けは勿論、空中を舞う風を乗り継ぎながら次の部屋への足場まで辿り着くエリア、独特のスクロールと共に塔の最上階を目指す外壁など、王道でありながら、奇抜さにも満ちた展開の数々はスリル、やり応え共に十分。更に塔の外壁では、ちゃんと円柱の塔を登っている事を表現する為、拡大・縮小機能を活かした立体的なスクロールを描くなど、見た目でもビジュアル、技術面でも見所のある作りになっている。それでいて、その表現だからこその仕掛けも仕込む抜かりの無さ。絵的なインパクトも突き詰めつつ、アクションゲームとしての面白さと手応えも忘れず盛り込む姿勢でまとめられたそれらには、本作に詰め込まれた本気を実感させられること間違いなしだ。
ボス戦もそんな本気が詰め込まれた仕上がり。どのボスも見た目からして強烈なだけに留まらず、攻撃パターンも練られていて、戦い甲斐のあるキャラクターに完成されている。思わずプレイヤーが笑ってしまうような攻撃を仕掛けてくる面子もいて、中でも「空の灯台」、「氷河の城」のボス二体は必見。前者はスーパーファミコンの拡大・縮小機能を(良い意味で)悪用していて、攻撃する度にボスが面白い姿になっていく仕掛けが盛り込まれている。一体、どんな姿になっていくのかはネタバレになるので伏せるが、プレイすれば「大丈夫なの?大丈夫なの、これ!?」と焦ってしまうこと間違いなし。後者も、これまたスーパーファミコンの機能を活かしたキャラクターなのだが、この表現方法が実に革新的。スーパーファミコンの様々なアクションゲームを遊び倒した方でも、こんな表現を用いたボスはコイツぐらいでは、と思ってしまうぐらいにインパクトのあるものになっている。このボスを拝むだけでも本作をプレイする価値があると言ってもいいほどだ。中盤以降に登場するボスという事で、先の「空の灯台」のボスより強敵だったりするのだが、その強さもプレイすれば大いに納得してしまうだろう。横スクロールアクションが好きな方ならば、何が何でもこのボスは拝んでみて欲しい。どこぞのビーバーじゃないが、見れば思わず「革新的!」と呟いてしまうはずだ。
また、ボスは強さに関しても絶妙なバランス調整が施されているのも特筆すべき部分。強過ぎず弱過ぎず、それでいて初見殺しな要素を抑えた攻撃パターンの数々には、素直に遊べることへのこだわりが現れている。同様の作り込みはステージ構成でも炸裂しており、敵配置からトラップまで、プレイヤーを出し抜く真似は抑えつつ、かと言って甘くはしない配慮が見え隠れする。それでいて、新たに習得した「必殺技」を使って突破する場面など、システムの存在意義を出す為の工夫も忘れずに施すなど、その無駄のないまとめ方にはただ、ただ感服させられる。地味ながら、力押しが効く余地を残しているのも見事。本編ではこれでもかと言わんばかりに、100個集めると残機が増える「黄金石」が手に入るだけでなく、1UPアイテムも多く設置されているのでゲームオーバーになり難い。リトライポイントも豊富で、最初からやり直しになるのはゲームオーバーになった時だけというのも良心的だ。そこに体力回復を行う必殺技、一定時間無敵になる必殺技が手に入れば、数の力に任せた戦術を決め込むこともできたりと、意外と乱暴なプレイでどうにかなったりもする。全てがそうではなく、終盤のボスはその手が通用しない輩ばかりだが、アクションゲームが得意でないプレイヤーにも楽しさを感じてもらえるための可能性を残す辺り、過剰にプレイヤーを棲み分けていなくて好感が持てる。本作、難易度選択機能は実装されてないのだが、だからこそ調整に時間をかけたと思える工夫が随所にあり、結果的に万人が楽しめるバランスに仕立て上げているのだから凄い。安易な選択方式に逃げず、一つの難易度であらゆるプレイヤーをカバーする事に徹したそのスタンスは、任天堂のアクションゲームに通ずるものがある。そう言ったある程度、余地を残した所からも、本作の素直なアクションゲームを目指した事に対する強い意志を実感するばかりだ。
新鮮味が薄いのは否定のしようがない。それなりの数をプレイしているコアなプレイヤーであれば、何の特徴も捻りの無い作品だと感じてしまうだろう。しかし、それだからこそ本作の基本部分に対する作り込みは盤石なものになっている。そして、プレイヤーを驚かして刺激を提供するというサービス精神も忘れてはいないし、ゲームバランスもアクションゲームの得意、不得意をカバーする事を目的とした調整が施されている隙の無さだ。その完成度の高さには、冗談抜きに職人芸というものを思い知らされるはず。そうも本作は、素直なアクションゲームとしての完成度が頭一つ抜けているのだ。無論、バランスとか個性を付ける事に対しても怠ってはいない。だが、実際にプレイしてみれば安定した完成度に驚きを覚えるだろう。まさに基本を守る事に徹したゲームは強い。そんな事を再認識させられるゲームになっているのだ。

操作性も申し分なし。ボタン配置、挙動と全てがアクションゲームの醍醐味「動かすだけでも楽しい」を突き詰めたものになっている。移動する際に若干ながら滑るなど、挙動周りにちょっとした癖もあるのだが、遊んでいく内に段々と気にならなくなっていく。何より、攻撃にせよ、ジャンプにせよ、行動を起こす度にカルラが「ハッ!」「トゥッ!」と掛け声を発するので、いちいち楽しい。声も独特で、人によっては笑いのツボを刺激するかもしれない。
ボリューム面もステージ総数が16となかなか充実している。ステージ一つ一つの長さもバランスが取れており、しっかりとした手応えと充実感を得られる作りになっているのも素晴らしい。ただ、水中ステージは冗長さが否めず。そのステージに限ってはカルラ自身の動きも遅くなってしまうので、ストレスを感じてしまうかもしれない。
また、本作は古代インドの叙事詩を題材とした世界観という事で、音楽もそれらしさを演出する為にオリエンタルな作風になっているのだが、題材が題材だけあって癖が強い。また、単調なメロディでまとめられたボス戦の曲など、盛り上げ所を外した楽曲が存在するのには少しモヤっとしてしまう。ただ、他では到底味わえない味があるのも事実。また、道中ステージの曲は印象的なものが揃っている。なので、人によっては耳にこびり付くほど記憶に残ってしまうかもしれない。
対し、グラフィックはこれぞドット絵の芸術と言うべき見事な出来。特にキャラクターのドット絵が素晴らしく、スーパーファミコンの中でも三本の指に入るのも不思議でない出来栄えを誇る。時期的に1994年初期、スーパーファミコンが成熟期に入りかける前だが、その時点でこのレベルのドット絵を実現しているのは驚かされる。正直、末期の1996年以降に発売されたスーパーファミコンソフトと比べても遜色のないほど。見れば思わず圧倒されるだろう。

演出周りも先のボス戦を始め、スーパーファミコンのハード性能を活かした表現の数々で魅せに魅せまくる。また、本編ではストーリーイベントも展開されるのだが、主人公のカルラ、宿敵アシュラ共にキャラクター付けが面白く、前者はやたら元気、後者は台詞があまりにも個性的なので嫌でも印象に残る。そんな彼らの戦いの末に辿り着くエンディングも、神話を題材にした作品なりのものになっていて面白い。別にRPG並に濃い内容は無い上、ヒロインのビシュヌが空気過ぎるという問題点もあったりするが、ひたすらに明るく、めげないカルラと威勢のいいアシュラには元気を貰えるはずだ。
この他、本作はセーブ機能は無く、代わりとしてパスワードコンティニューが実装されているが、このパスワードがマップ上にある拠点「ナーガの祠」でいつでも確認可能であるほか、ちょっとした攻略アドバイスも貰えたりなど、サポート機能も万全。ステージクリア時の演出も最小限に留めるなど、テンポの良さを大事にした作り込みも秀逸の一言に尽きる。
独特の味付けは成されているものの、アクションゲームとしての新鮮味は薄め。だがその分、基本部分の作り込みは凄まじく、バランスの絶妙さも相まって、紛れもなく万人受けするアクションゲームというに相応しい完成度を誇っている。驚きに満ちたステージ構成とボス戦、素晴らしい操作感、そして元気の出てくるストーリーと、非常に質の高い本作。アクションゲーム好きならば是非とも遊んで頂きたい、素直な作りが光る傑作だ。現在のソニー・インタラクティブエンタテインメントが関わった作品なのもあり、復刻の可能性が絶望的な上、中古市場でも滅多に見かけられないタイトルだったりするが、見かけた暁には是非、挑戦してみて欲しい。こいつは実に侮り難いアクションゲームだ!お薦め。
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