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≫レナス 古代機械の記憶
■発売元 アスミック
■開発元 コピアシステム(現:シャングリ・ラ)
■ジャンル ロールプレイング
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 10080円(税込)
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 4つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■総説明書ページ数 40ページ
■推定クリア時間 16〜22時間
伝説と脅威の天地『レナス』。
北の大陸『ナスクオト』にある魔法学校に通うチェズニはある日、友人の誘いによる悪戯で古代機械『ダル・グレン』の封印を解放。世界を崩壊の危機へと陥れてしまう。
自らが招いた災厄を止める為、チェズニは旅に出る。残された時間はあと僅か…。
果たして、レナスの運命や如何に…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆王道のRPGとしてのスタイルを貫いた、イベントクリア主導の基本ゲーム展開
◆使い手の体力を消費する制約が強烈なインパクトを放つ、等価交換の痛々しさに満ち溢れたバトルシステム
◆体力管理が全てを左右する、異色のシビアさに満ち溢れた独特のバトルバランス
◆十字キーのみで全動作が行える、ユニークなコマンド操作システム
◆炎に空、光、そして玉に心など、個性豊かな属性(精霊)が盛り沢山の魔法
◆特定の属性を使い込んで新しい魔法を習得する、やり込みスタイルが印象的な魔法の成長システム(属性の種類も多いので、やり甲斐もある)
◆強力な仲間を随時雇用し、冒険をしていく感覚が新鮮な『傭兵システム』
◆物理攻撃に優れたもの、魔法攻撃に優れたものなど、多種多様な個性を持った傭兵達(一人一人、違った特徴があるので、使うだけでも面白い)
◆ゲームらしい、ぶっ飛んだ地形構成が異彩を放つフィールドマップ
◆二転三転する展開と説得力に富んだ設定が見事な、練られたシナリオ
◆幻想的な世界観を鮮明に表現した、中間色で統一された異様なグラフィック
◆幻想的で時に勇ましい、珠玉の音楽(特に戦闘曲は必聴の価値あり)
◆地味ながらも表現の限界に挑戦した、印象的な各イベントデモの演出

--- Bad Point ---
◆赤・黄・緑の強烈な点滅表現で構成された、一部の魔法エフェクト(目に悪い!)
◆レベルに問わず運が結果を左右する、腑に落ちないラスボス戦
◆ラスボス戦のみならず、雑魚敵との戦いでは10体以上の敵が一同に出るなど、全体的に統一性の無さが際立つゲームバランス(序盤は悪くないんだけど…)
◆敵の出現量の多さで、どうしても冗長化する通常戦闘(テンポが悪い)
◆どんな効果を魔法なのかが一目でわからない、個性的過ぎる各魔法の名前(鬼…)
◆整頓機能が無く、普通のアイテムと一同に管理される為、使い勝手が壊滅的に悪い武器装備画面のインターフェース
◆やや遅い感のある、プレイヤーキャラのマップでの移動速度
◆未搭載のオート戦闘機能(あると快適さが向上してた気がする…)
▼Review ≪Last Update : 9/20/2008≫
世界は少年の悪戯によって乱された。

そして、罪を償うべき冒険が始まる。


キャラクターデザインにイラストレーターの加藤洋之&後藤啓介、音楽に後に『サクラ大戦』シリーズで名を馳せる田中公平という、豪華スタッフの結集によって制作された完全新作RPG。開発はコピアシステム(現:シャングリ・ラ)が担当。

等価交換の痛々しさに富んだ、異色のRPGだ。

ゲーム自体は、王道のイベントクリア型ロールプレイング。主人公のチェズニを操作し、各地で起こる様々なイベントを攻略しながら世界を蝕む災厄を止めるべく、冒険をしていくものである。しかし反面、ゲームシステム周りにおいてはかなり奇抜な試みが成されている。
まず第一に傭兵システム。実は今作では仲間となるキャラは、ヒロインのミディアと呼ばれる人物しかおらず、残りは、街の酒場などにいる『傭兵』を雇う、奇抜な仕組みとなっている。雇える傭兵は、最大二人まで。パーティの最大人数が四人で、うち二人は主人公のチェズニ、ミディアが埋める事になっているので、そこまでとなっている。また傭兵には一つ大きな特徴があり、戦闘を通じて成長はするものの、装備している武器は完全固定で、武器の着脱は行えないようになっている。つまり、幾ら戦闘を経験させて強くしても、武器が弱いままだから結局、途中で解雇せざるを得なくなってしまうのである。そしてまた、新たに強力な傭兵を雇い、弱くなったら切り捨てて新しいのを雇う。何とも非情さ漂う、風変わりなゲーム展開が味わえるのだ。更に面白いのが傭兵の特徴は個人個人、違うという事。オーソドックスな平均なのもいれば打撃に優れた者、魔法攻撃に優れた者がいたり、更には体力回復が行えない者がいたりと、誰一人とて、性能が被るのがいない。だから雇った傭兵によっては、難易度が劇的に低下したり、または上昇したりする事もしばしば。戦闘での戦略まで一変したりもする。やり方如何によっては、全く違ったゲーム展開を作り出すことすらできてしまうのだ。難易度を低下させる強力な傭兵を雇って温いプレイを楽しむか、強くない傭兵を雇ってシビアなプレイを楽しむかは全て自由。あえて傭兵を雇わず、無理してやり通すなんてのもアリ。途中で強制的に仲間になるキャラがいたり、傭兵を雇わざるを得ない箇所とかもあるから、クリアまで貫き通すのはできないが、基本的にどう進めて行くかは完全にプレイヤー任せだから、好きなスタイルを突き詰める事は可能。多少の縛りはあるにせよ、プレイヤーに全てを任せると言ったスタンスは貫き通されており、自由なゲームプレイを楽しめる懐の広さを実現しているのである。
そう傭兵の個性が強過ぎるが故、メインとなるチェズニとミディアの個性が薄く、能力的な地味さが出てしまっているのは少々、寂しいところではあるが、非力な少年と少女が冒険をしていくストーリーのシチュエーションを考えれば、この能力差は説得力のあるものになっていると言える。また、RPGとしては稀な戦略シミュレーションチックな戦略的な面白さが滲み出ているのも、まさにその賜物によるものと言えるだろう。
とにかく、王道でありながらもシステム周りは奇抜。一筋縄では行かないRPGなのである。

傭兵のみならず、肝とも言える戦闘システムもかなり奇抜だ。
何と、今作ではMP(魔法を使うのに消費するポイント)の概念が無い。
『ドラゴンクエスト』シリーズとか『ファイナルファンタジー』シリーズなど、多くのRPGを触れてきたユーザーなら、MPと言ったら魔法を使う際に消費するものというのは基本中の基本。RPGのお約束と言っても過言ではない存在である。
それが今作には無い。
魔法を使ってもMPは消費されない。
逆にHP(体力)が消費される。
キャラの生命線とも言うべきHPが、魔法で消費される対象。
等価交換とも言うべき、痛々しさ溢れる仕様となっているのである。
だから、今作の場合は魔法を使えば使うほど、自身が不利に立たされていく。
特に強力な魔法になればその消費量も大きく、体力が少ない時に一発撃てば、死へと近づいてしまう事もしばしば。弱い魔法でも一発の消費量はそこそこあるから、無闇な乱発もできない。『魔法=一発逆転の強力技』が基本とされてきたRPGにとって、この「場合によっては死に至る危険な技」という概念は、まさに逆転の発想。使う度に自分が死に近づいていくという、RPGとしては異質の恐怖を体験できるものとなっているのである。そんなに危ないのなら、使わずに進めば済むではないかと思うかもしれないが、そこも抜かり無し。途中、特定の魔法無しでは倒す事のできないボスが出て来たりと、絶対に魔法を使わねばならない場面が頻繁に用意されている。更に後半になると、大技を使わなくして倒せない強敵も出てくる。そして極め付けは、ネタバレになるが、ラスボスは魔法攻撃でないと絶対に倒せないと来た。これでもう、どうあがいても今作、死に近づく恐怖からは逃れられないのかはお分かりになっただろう。
そこまで、独自のゲーム性として演出する為の工夫が徹底されているのである。
また体力も、回復させる方法は宿屋に泊まるか、『ボトル』と呼ばれるアイテムを使うかの二つしかないシビアさ。回復魔法も無ければ(状態回復はある)、単体のアイテムも無いのである。しかも『ボトル』は最大9個までで、消費した後の回復法は街で特定の人物に話し掛けて補充させるしか他にない。だから体力を最大にキープする為に頻繁に使い過ぎると、後で息切れを起こす。多少の消費は覚悟し、使用を自重するのが大切となってくるのだ…。
全く持って、恐ろしいシステムである。それまでプレイヤーを効果的にサポートしてくれる魔法をこうも恐ろしく、尚且つ痛々しいものにさせ、他に類を見ないゲームバランスを実現させてしまうとは、スタッフ恐るべしだ。
特にただ単にキャラを育て上げ、ボタンをポンポン押していけば良い、RPGのジャンル特有の欠点、画面から目をそらす隙を潰したのは、まさにこのシステムだからこそもたらされたもの。戦闘の展開、キャラの状況まで気を配る必要性を重視し、知略の限りを尽くす面白さを抽出させたその有様には、RPGというジャンルは真剣に向き合ってこそ面白いものなんだという熱いこだわりを実感する事ができる。何処まで、RPGが好きで仕方が無いのか。
また、今作の戦闘には他にも特徴があり、全ての戦闘コマンド(攻撃、防御、アイテム等)は十字キーだけで操作できるようになっている。これもまた非常にユニークな取組みで、片手だけで遊べるRPGという、新たなスタンダードの確立に成功している。それまで十字キーとボタンの二つを駆使して使うのが当たり前だったRPGに、こうも簡略した操作を取り入れたのは、実に挑戦的な試みである。
しかしお世辞にもこの操作、綺麗にまとまっているとは言えず、キー限定操作故に狙いたいを細かく選べなかったり、ウィンドウが多重構造となり、特徴を掴むのに少し時間がかかるなど、限界とも言うべき欠点と癖の強さを露出してしまっているのは残念と言わざるを得ない。それでも、操作の感触そのものは悪くなく、慣れてしまえばボタン操作よりも快適に動かせると言った利点が残されているのは、せめてもの救いと言ったところ。荒削りだとは言え、こう言ったRPGの新たなプレイスタイルを提示すると言う、挑戦的な事に挑んだその姿勢は、素直に評価したい。
魔法が体力消費方式、戦闘のコマンド選択が十字キーのみと、RPGに手馴れたユーザーならかなりの違和感を覚えるものばかりだが、いずれも従来のRPGには無い面白さと手触りが滲み出ており、新鮮味は満点。普通のRPGとは一線を超えようとしたアイディアがたっぷりで、先の傭兵システムと同様、こちらもまた、プレイヤーに刺激的な体験を提供してくれる。繰り返しとなるが、一筋縄では行かない癖の強さなのである。

更にそれらのみならず、今作はストーリーも非常に面白い。何と言っても、主人公が冒険を始める事になる動機付け、自分の悪戯で動き出した悪魔の兵器を止める為、各地を冒険していくというのは凄く説得力があるし、インパクトもある。更に作中の展開も、先の読めない二転三転する展開が盛り沢山で、事件解決と思ったらまだ先があったり…など、思わずくぎ付けになってしまう魅力に富んでいる。流石にスーパーファミコン初期というのもあり、地味なところもありはするが、それでも見応えは満点。正直、このストーリーを目的に今作をプレイしてみるだけの価値はあると言っても、おかしくないほどだ。それほどまでに、面白い。
また、グラフィックと音楽も独特。特に注目すべきはグラフィックで、全編パステル調という恐ろしくインパクトのあるものになっており、幻想的な世界観に絶妙にマッチしたものに仕上げられている。特に街絡みのグラフィックの気合の入れっぷりはかなりのもの。中央に大きな花が咲いていたり、マグマに囲まれていたりと、如何にもゲームらしさ溢れるそのデザインセンスにはきっと、度肝を抜かされるはずだ。
反面、演出周りはやり過ぎなところがあり、特にある赤と黄色の点滅エフェクトを含んだ魔法が多いと言う点は頂けない。時代が時代だけに、やってしまったのかもしれないが、これは正直言って、目に悪過ぎる。どうせやるなら、一色だけに絞って欲しかったところだ。
演出とはかけ離れるが、ゲームバランスとテンポも残念ながら良いとは言えず、後半になると一回の戦闘に10体以上もの敵が出て来たりと、無理矢理なところがあるのも辛い。
それとラスボス戦がどう、キャラを強化しても最終的に運頼みになるのも最悪だ。それ以外のボスは適切な強さで落ち着いているのに、強くし過ぎにも限度がある。もっと、実力でカバーできる強さに調整して欲しかったところである。

それ以外にも、テンポの悪さを助長する戦闘での敵のアニメーション、武器装備画面のインターフェースの悪さ(アイテムとごっちゃに管理されるから、どれが武器なのかが一目で分からない)、魔法効果の分かり難さ(名前が特殊で分かり難い)など、昔のゲームらしい欠点はチラホラ。折角、システム上ではかなり新しいところに、こう言った細かい配慮が欠けているのは正直、勿体無いの一言だ。
しかし、それでもゲーム自体はちゃんと遊べる出来。古いゲーム故の荒削りな所は止むを得ないが、傭兵を雇いながら進めていく斬新なゲーム展開、体力を消費する等価交換の痛々しさを露骨に現した魔法など、王道ながらもそれとは違う路線を目指そうとした、志の高さに富んだこの『レナス 古代機械の記憶』。
総評としては、古き良き時代が生んだ意欲作。RPG初心者には厳しいところがあるのでお薦めはできないが、RPGには手馴れた上級者に好きな方、そして真新しいゲームをやりたいという方にはこの上ない逸品だ。王道のノリに飽きたら是非、このレナスにチャレンジしてみましょう。素晴らしい刺激と恐怖を心からお約束致します。
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