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≫ライトファンタジー
■発売元 トンキンハウス
■開発元 アドバンスコミュニケーション
■ジャンル ロールプレイング
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 9450円(税込)
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 3つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■総説明書ページ数 紛失している為、不明
■推定クリア時間 20〜26時間
激しい猛攻を続ける闇の国と交渉をする為、光の国の王女レフィーナは闇の国へと王の命令を無視し、たった一人出かけてしまう。だがレフィーナは一向に戻って来ず、消息が絶たれてしまった。
事態を重く見た国王は、レフィーナの幼馴染で勇者の末裔である少年『アルフ』に闇の国へと向かうよう命じた。

だが…アルフには一つ、大きな問題点があった。

弱虫だったのだ…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆シミュレーションRPGを遊ぶ感覚で楽しめる、独自性に満ちたバトルシステム
◆戦況の状況を分かり易くて維持する、台詞による体力表示システム
◆登場するモンスターの大半を仲間にでき、尚且つ育成する事までできる充実ぶりが大変印象的な仲間システム
◆仲間の重要度を痛いほど表現している、重要仲間キャラクターの死亡判定システム
◆プレイのし易さを考えた、数多くの親切な機能群(特に常時セーブシステムは有り難い)
◆戦闘のテンポの遅さを考慮した、レベルの上げ易さ(これも結構、有り難い)
◆暴力や死と言った殺伐な描写を避けた、ほのぼのとした雰囲気に満ちた世界観
◆王道ながらも前向きで明るく、場面の雰囲気作りがよく出来ているシナリオ
◆ほのぼのとした世界観に乗じた、可愛い敵キャラクター達
◆要所要所で大きなグラフィックが挿入されるなど、なかなか凝った演出
◆見た目は地味ながらも、大きな一枚絵描写などなかなか気合いの入ってるグラフィック
◆ノイズが目立つが質は高く、尚且つ出来も見事な音楽(特にゲーム後半のフィールド、ボス戦、そして洞窟の曲は秀逸)
◆「怖いものは怖い!」と露骨過ぎるほどに弱虫で、人間味に溢れた主人公

--- Bad Point ---
◆斬新ながらもハマリがあったり、テンポが悪かったりなどと微調整に欠けるバトルシステム(特に一回の戦闘で出てくる敵の量はどうにかならなかったのか)
◆同じく斬新ながらも、シビア過ぎる重要仲間キャラクターの死亡判定システム
◆いま一つ、弱めに設定されている印象を受ける重要仲間キャラクター
◆異様なまでに高く設定されたエンカウント率(敵との遭遇率)
◆それらの事柄も含めて、お世辞にも絶妙とは言い難いゲームバランス
◆一体誰が誰なのかが全く分からなくなる、状態変化時のキャラクターグラフィック
◆いちいちベッドまで移動しなければ寝る事ができない、面倒臭い『宿屋』
◆妙に重い操作性(キーレスポンスは悪くないのだが…)
◆常に真っ暗な状態の洞窟エリア(もう少し、明るい所とかも用意すべきだった気が…)
▼Review ≪Last Update : 7/14/2007≫
怖いものは怖いんだ!

けど、戦わなくてはならない!……ゲームが成立しないから!


ほんわかとした世界観とストーリー、シミュレーションRPG風の独自性に満ちたバトルシステムを取り入れた、完全新作のロールプレイングゲーム。

試みそのものは意欲的だが、所々が練り込み不足。
しかし、それを補う雰囲気の良さが何とも捨て難い、歯痒さ満点の作品だ。

ゲーム内容は、イベントクリア型のロールプレイングゲーム。プレイヤーは主人公アルフを操作してフィールドを駆け巡り、敵との戦闘やイベントを乗り越えながらゲームを進めていく。
表面上は一般のロールプレイングゲームと全く同じ。しかしながら、バトルシステムや仲間システムなどの部分において、数多くの斬新な試みが施されている。
まず第一にバトルシステムだが、これが何とシミュレーションRPG形式。いわゆるタクティカルバトル形式のシステムとなっているのだ。つまり、カーソルでフィールド上にいる主人公を始めとするパーティのメンバー(駒)の移動位置を決めて行動させ、敵の隣に来たらコマンドで「たたかう」を選択して攻撃するというものなのである。行動順に関しては基本的にキャラクターの速さで決まる仕組みとなっており、ゲームに詳しい人ならば『タクティクスオウガ』のウェイトターン制に近いもの…というとピンと来るかもしれない。
また、シミュレーションRPGよろしく、敵や仲間キャラの行動できる範囲に関しては差別化が図られており、あるキャラクターは広範囲に動けるが敵のそばまで行くのに2ターンかかる、あるキャラクターは敵の近くへ1ターンで行く事ができるが、上への行動範囲のみが突出しているだけで、残りの左右と下は小範囲しか動けないなどと、それぞれにしっかりとした個性付けが成されている。これらのキャラを如何に上手く活かして戦闘を有利に進めるか、そして戦略を立てるかなどと、全編に通じてシミュレーションRPG特有の考える楽しさが強調されており、全体的にユニークなシステムとして仕上がっている。ちなみに、勿論攻撃は近距離攻撃のみだけでなく、武器によっては遠距離攻撃ができたり、また魔法もあって、広範囲攻撃ができるなどのバトルの特性に応じたものが豊富に用意されている。更に戦闘中は敵のダメージ状態をより分かり易くするものとして、簡単な台詞による体調状況の表示(「いてっ!」とか「しにそう〜」など)なるものも用意されており、細かな面で親切な試みが施されている。
と、ここまで聴いていて、「おっ、なかなか面白そうだな」と感じる方は結構いると思う。だが、…残念ながらこれが逆。システムの試みは面白いのだが、バランスがあまりに雑で、苦痛なのである。1回の戦闘で8体近くの敵が出てきたり(しかも序盤からこれ)、極端に攻撃力の高い敵が要るなどとバランス加減があまりに滅茶苦茶なのである。更に、状態異常にかかるとキャラが丸ごとその状態を示すドット絵となってしまい、誰が誰だか分からなくなってしまう事、キャラクターの移動が遅い上にオプションで調整すらできない事、そして極め付けとしてオート戦闘システムがあまりに不便であるなど、細かな微調整が欠ける点も沢山ある。その中でも、移動速度の遅さによるテンポの悪さは致命的で、一回の戦闘で敵の数によっては30分近くもかかってしまう事があるなど、レベル上げなどの作業を行う際の弊害と化してしまっている。同じことを繰り返すが、せめて移動速度をオプションで設定できれば全てが変わってたのだが、実際はない。何ともどかしい事か。
他にも敵のダメージ表記が遅いなどと、微調整ミスはまだまだある。
このように、確かにシステム自体の試みは凄く面白いのだが、肝心のバランスがそのシステムを楽しませてくれるものに達しておらず、見事に大損してしまっているのだ。これはあまりにも痛いと言わざるを得ない。これでは元も子もない。
まさに、バランス調整によって全てが無に帰された典型的な一例とはこの事だ。歯痒い…。

第二に挙げられる仲間システムも面白い試みが成されており、登場するモンスターの大半を『ドラゴンクエスト』ばりに仲間にする事ができるというシステムが積まれている。仲間にできると言っても全てのモンスターができる訳ではなく、基本的には小型のモンスター限定という制約が設けられてはいるのだが、それでも登場するほぼ大半の敵キャラを仲間にできるという点はなかなかのインパクトがある。更に、これはあくまでも当時としての珍しい要素だが、モンスターを戦闘を介して育てる事もでき、それらのモンスターをメンバーに組み入れて自分だけのパーティを作る事もできる。
移動距離の事を考慮した編成を行えば、比較的早く戦闘を進める事ができたり、また魔法を豊富に持つ敵を仲間にすれば補助役として活躍させるなど、彼らの活かし方は様々。少し制約があったり、成長させてもあまり特徴が出てこない欠点もありはするが、ワリと自由なゲームプレイを演出できるこの試みはなかなかだ。上記の戦闘システムとは違い、少しだけ不足している点はありはするが、ワリと上手い具合にまとまっている。
また、モンスターを仲間にする方法に関してもややこしくなく、ただ単純に「仲間にするかしないか」を戦闘開始前にコマンドで選択するだけというのも見事だ。とてもシンプルで分かり易い。それから、敵を仲間にする事ができるのは一体で出てきた時のみ、数体の場合は不可という制約もまた、システムの分かり易さを大いに煽っている。
勿論、モンスターだけで無くちゃんとイベント上で仲間になる特定のキャラも健在。だが、これに関してはかなり問題な所があり、従来のRPGと異なって、仮に戦闘中に死んでしまうと、例え主人公が生きていたとしてもその時点でゲームオーバーとなってしまうという謎の仕様が盛り込まれてしまっている。これが実に腹立たしい。特に、体力が少なくて早くダンジョンから脱出しなければならない時のケースにおいて、この仕様は無駄な弊害も弊害。立派なハマリとなり、最悪…最初からやり直さざるを得ない事にもなってしまう。しかも、こういう仲間に限って弱いものが多く、プレイヤーの足を引っ張るのだから腹立たしい。
幾らストーリーの都合があるにしても、これはやり過ぎ。モンスターと同じようにやられてもゲームオーバーにならぬようにすべきだった。これでは折角のモンスター関連のシステムが台無し。結果として、またもバトルシステムと同じ事が繰り返される展開…。本当にくどいが、こういった微調整やプレイヤーの事を考えた配慮がとことん欠けている。戦闘はまだしも、仲間がやられたらゲームオーバーは流石に無いんじゃないだろうか。無意味なこだわりも大概にして欲しい。
とにもかくにも、ここでもまとめは同じだ。システムは面白いけど、微調整に欠ける。もう、本当に台無しとしか言い様が無い。歯痒い、歯痒いったらありゃしない有様なのである…。

その他、操作性も挙動が重く、お世辞にも快適というには程遠い。メニューインタフェース周りは適切な設計ではあるが、操作の鈍さなどもあって、使い勝手が良いとは言い難い感じだ。
……と、それなりに目立つ部分を集中して語ってきたが、面白い要素を沢山積んでいるのに、ことごとく無駄にしてしまってる本作。それでも、本作は単なる駄作とは言い切れない。というのも、そう言うにはあまりに勿体無い、救いともいえる所が実は結構あるのだ。
まず操作性こそ悪いが、サポートが優れている事。中でも常時セーブシステムは大変心強く、ただでさえ辛い冒険のお供として機能してくれる。更にこのセーブシステムは例えどんな拙い状況であっても可能というのが実に嬉しい。おかげで、パッと遊べてパッと止められる手軽さというものが僅か滲み出ている。
それからセーブの事と絡めてレベルアップによる体力全回復システムがつまれているのも地味に嬉しい。詰まりかけた時も、レベルアップすれば僅かに状況を持ち直せるなど、上記のセーブ機能と合わせて良い意味で救済策として機能している。また、本作ではレベルが比較的上がり易くなっているのも見逃せない所だ。ただでさえ戦闘が長引いてしまうという欠点を良い意味でカバーしている。
ある意味RPGの重要なファクターであるストーリーも素晴らしく、「殺し」や「死」と言った殺伐な描写を避けており、全編を通じてほのぼのとした雰囲気を強調しているのもなかなかだ。またストーリーの項を見ればお分かりの通り、本作の主人公は「怖いものは怖いんだ!」という見たまんまの弱虫な勇者で、この手のファンタジーモノとしては実に人間味臭いキャラクターとなっている。彼の行動並びに随所で放たれる言動には、誰もが感情移入してしまうこと間違いなし。こんな弱虫の男の子が何処まで成長していくのか、それだけでも本作のストーリーの見応えは抜群だ。そして肝心のストーリー展開の方も王道でありながらも、何処か前向きで明るいカラーが強調されているのが大変印象的。また、ゲーム中には要所要所で大きなグラフィックが挿入される場面があるなど、演出周りも総じて頑張っており、妥協の無い姿勢を感じ取れる。
このストーリーを後押しするグラフィックと音楽もなかなかだ。特に音楽は当時の作品としては音質が素晴らしく、場面場面での臨場感を大いに沸き立ててくれる。曲そのものも素晴らしいものが多く、ゲーム後半のフィールドやボス戦、そして洞窟など名曲も満載だ。若干、音量が高く、僅かにノイズが目立つのがやや気になりはするが。

そしてゲームバランスも前述の通りに戦闘関連が雑であったり、敵との遭遇率(エンカウント率)が高かったり、ハマリがあったりなど荒れているが、辛うじてクリアはできるようになっているのが救い。集中してプレイすれば、誰でもワリとあっさりと最後まで行く事が可能だ。ただ、その集中してプレイすれば…がある意味、最大のキーであったりするのだが。
操作性並びにテンポの悪さと戦闘関連のバランスの粗さ、そして一切語らなかったが宿屋に泊まる際の面倒臭さなどの目に余る欠点や惜しい所が非常に多い本作。しかし、殺伐としていないほのぼのとした世界観やストーリーの雰囲気にはかなり味わい深いものがあり、何処か捨て難い部分があるのがもどかしくもある。
総評して、万人にお薦めできる作品では無い。しかしながら、ゲームに雰囲気やストーリーなどを求める方や手応えのあるロールプレイングゲームを求める方、そしてそれなりに時間が取れる方にはプレイする価値のある一本だ。テンポの悪さに苛立つ事もあるかもしれないが…是非、辛抱強く進めてみて欲しい。
このゲームが、どうして駄作と言い切れないのか、その訳が僅かに見えてくるはずだ。
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