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≫マリオペイント
■発売元 任天堂
■開発協力 インテリジェントシステムズ
■ジャンル お絵かきツール
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 10290円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 1つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■その他 スーパーファミコンマウス専用(※通常コントローラでは遊べません
■総説明書ページ数 40ページ
■推定クリア時間 クリアの概念は無い
絵が描ける。アニメーションも作れる。音楽も作れる。
更に、ちゃんとしたゲームまでもが楽しめちゃう。

夢のようなお絵かきソフト、スーパーファミコンマウスと一緒に登場。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆創造力と使い方によってその寿命が左右される、恐ろしく自由度の高いゲーム内容
◆単色のみならず、絹目調や混合色など特殊な色も豊富に揃えたカラーパレット
◆ペタペタと貼っていく感触が気持ち良い、本作ならではの『スタンプ』機能(アイコンもマリオキャラや動物など、実に豊富。自分でアイコンを作れるオプションも搭載)
◆画力が無い方でも、簡単に立派な絵が描ける敷居の低さを兼ね備えた、スタンプによる『貼り絵』
◆貼り絵に似た、アイコンを貼る感触が秀逸な『サウンドコラージュ』による作曲機能
◆個々のキャラアイコンに音を当てた作りが面白い、『サウンドコラージュ』の効果音群
◆シンプルな作りながらも、動画の醍醐味が味わえる『アニメーション』機能
◆単品でも十分に通用する熱中度と爽快感を兼ね備えた息抜きゲーム『ハエタタキ』
◆通常のものから爆弾型や大型など、バリエーション豊かな敵のハエ達(ボスハエも必見)
◆息抜きゲームにしては偉く細やかな調整が光る、珠玉のゲームバランス
◆予め用意された絵に好きな色を自由に塗れる感触が秀逸な、『塗り絵』モード
◆タイトルロゴをクリックする度に、ハチャメチャなイベントが起こるタイトル画面
◆随所に盛り込まれた、謎の効果音群(特に、クシャミは地味に怖い)
◆お絵かきツールならではの静かな曲調が秀逸な音楽(『ハエタタキ』では別)
◆如何にもペンで線を書いてるかのような重さが光る、独特のマウスによる操作性
◆仰々しいほどにド派手な『消しゴム』の全体消しモード

--- Bad Point ---
◆自由度が高過ぎる上、飽きが来れば直に使い道を失う、寿命の短さ
◆データ量の大きさもあってか、異様に時間がかかるセーブ(逆にロードは早い)
◆地味に心臓に悪い、謎の効果音『クシャミ』(唐突に流れるから怖い)
◆結構、カチカチな動きしか作れないのが寂しい『アニメーション』(仕方が無い所だが)
◆不気味過ぎる、タイトル画面で登場する文字キャラクターと鳴き声(トラウマモノ…)
▼Review ≪Last Update : 11/24/2007≫
末はピカソか、ハエ取りハンター。

何かが違う…。


スーパーファミコンの新しい周辺機器、『スーパーファミコンマウス』の初対応(専用)ソフトとして、マウスと同梱で発売された、お絵かきソフト。開発は故・横井軍平氏率いる任天堂開発一部とインテリジェントシステムズが担当。

豊富な遊びの要素、白熱の『ハエたたきゲーム』が光る、新進気鋭の”玩具”だ。

故に、これはゲームじゃない。自分で好きな絵を描いたりして楽しむのが主な内容なので、何処まで続けるか、そして止めるかは全てプレイヤーの自由となっている。また、これをただ絵を描くだけのものにせず、どんな使い方をして楽しむのかも基本的に自由。例えば、スーパーファミコン本体をビデオデッキに接続して、自分で描いた絵を1つずつ録画し、自分だけの画集ビデオを作るとか、或いは1つ1つの絵にストーリー性を持たせてビデオ絵本を作るとか、更には絵を描くのではなく、画用紙上に線を引いて、二人で一緒に○×ゲームを楽しんだりなどと、こちら側のアイディアと工夫次第では無限の楽しみ方が出来るのだ。逆に創造力が湧かなければ、本作は単なる画用紙同然。
本作の任天堂公式ガイドブック(小学館)の頭に掲載されている、糸井重里氏の言葉をそのまま借用すると、『自由という目に見えぬものと戦う格闘ゲーム』とも言うべきか。それ位にプレイヤーの創造力如何によって、寿命が左右する、本当に文字通り、ゲームという名の衣を被った”玩具”とも言える代物となっているのだ。
だから別の視点で捉えれば、あまりに危ない要素を含んだゲームとも言える。少しでも飽きが来てしまえば、直に本作はその寿命を終えてしまうからだ。何とも別の意味で、スリルのある特徴である…。それがまた、如何にも玩具らしい。

しかし、本作の魅力はそんな如何にも玩具らしい、自由度の高さのみに留まらない。
そもそも、マウスで絵を描くという事自体は、パソコンの世界においては昔からあったものであり、これと言ってそれに慣れ親しんだユーザーにとって、新鮮味は無いに等しいものだ。
だが、本作はそんなマウスのお絵かきにタイトルの如く、マリオ流のアレンジを加味。次のような、ゲームらしい遊びと仕掛けが豊富に盛り込まれた、新しい手応えと面白さ満点の特徴あるオプション群が用意されているのだ。

◆豊富なパレットとスタンプ
パソコンでのお絵かきと言うと、選択できる色のパレットは基本、赤・青・緑などとなっているが、本作ではこの色の他に絹目調、混合色と言った特殊なパレットを用意。単色では実現するのには相当な労力を要する複雑な絵も、これらの色を使いこなせば、いとも簡単に描けてしまうのだ。また、パレットの中には『スタンプ』も用意されており、これをペタペタと貼り付けるだけで、簡単な絵(貼り絵)も作れてしまう。
つまり、「自分には画力など無いんだ」と自負する方でも、このスタンプを上手く使えば、わざわざペンを使わなくても、簡単に大掛かりな絵が描けてしまうのである。まさに、これぞマリオ流「誰でも楽しめる」の精神が反映された配慮。意外と敷居の高いマウスによるお絵かきを、誰でも安心して、しかも楽しく行える為の配慮まで凝らされているのだ。
しかも、スタンプはただペタペタと貼るだけで無く、マウスを動かしながら貼れば(通称:スタンプ流し)、複雑な色彩の線を描く事も可能。絵が得意だという方も唸る、豊富な使い方が試せるようになってるのである。
また、オプションで用意された『スペシャルスタンプ』を使えば、オリジナルのスタンプを作る事もでき、そこで極細のペンを作り出すなんても可能。まさに、使い方は無限大。プレイヤー独自のアイディアとテクニックがこれでもかと言わんばかりに絵に活かせる、あまりに個性的なパレットに仕上がっているのだ。

◆作曲&アニメーション機能
「自分が描いた絵にオリジナルの音楽をつけたい」、「絵にいるキャラクターを動かしたい」…そんな事も本作では可能。
作曲専用の『サウンドコラージュ』、『アニメーション』と言ったものが、オプションとして先の『スペシャルスタンプ』と同様に用意されているのだ。しかし、流石にゲームの容量的な都合もあってか、作曲もアニメーションもそこまで重厚長大なものは作れないようになってる。
この辺はある意味、仕方が無い所はあるが、いずれのオプションも音楽を作り出す面白さ、そしてキャラクターに動きをつける面白さという基本はしっかりしており、簡単な物を作るだけでも楽しい作りになっている。
特に『サウンドコラージュ』は、用意されている効果音がそれぞれ、マリオの頭やスーパーキノコなどと言ったアイコンとなっていて、そのアイコンごとに、それぞれ異なった音が搭載されているのは何とも面白い試みだ。
作曲作業自体も、マウスでアイコンをペタペタと貼っていく、まるで貼り絵を作ってるような手応えに満ちているのも、何とも味わい深い。絵を描かずとも、こればかりは一度でも試してみる価値がある。

◆息抜きゲーム:ハエたたき
そして満を持して語る、本作史上最大の魅力。何と、本作ではお絵かきのみならず、マウスを使った特別な息抜きゲームとして『ハエたたき』なるものがオプションとして収録されているのである。全100匹のハエをハエタタキで潰していく、ステージクリア方式を採用したシンプルなアクションゲームなのだが、これが強烈に熱い!
特に素晴らしいのが、プレイヤーの敵として登場するハエ達で、これがまた普通のハエのみならず、子供を尻から大量に吐き出すタイプに爆弾型(当然ながら、暫くすると爆発する)、更には拡散弾を放ってくる大型と、あまりに現実離れした能力を備えたハエが、次々とプレイヤーの前に現れては襲い掛かってくるのである。その為、「ハエを次々と潰していく」という単純なルールとは裏腹に単調な展開になり難く、終始、テンションの高い展開が繰り広げられていくのだ。
また、そんなハエ達の執拗な攻撃を避け、彼らを手際よく叩き潰していく爽快感は、まさにスーパーファミコンマウスだからこそ表現できた賜物といえる。
この他、演出も素晴らしく、特に全ステージのラストに待ち構える、ボスのハエの撃破描写はあまりにも仰々しく、返って笑ってしまうほど。終始、無限ループな作りとなってるのは賛否が分かれるかもしれないが、それでもこれは遊ぶ価値のあるゲームと言える。これを遊ぶ為に本作を買っても、決して損はしない。

その他にも、全部で3種類の異なる絵が用意された『塗り絵』など、パソコンでのお絵かきとは一線を欠く要素は満載。
このように普通に絵を描くだけのゲームでは、あまりに素っ気無い…のを考慮してか、実にいろいろな機能と遊びが盛り込まれた作りになってるのだ。
自由に遊べる(絵を描く)のを売りにしながら、『ハエタタキゲーム』で従来ゲームの面白さを残すと言った粋な計らいもお見事だ。「やっぱり、基本はゲームなんだからゲームっぽいのも一つぐらいなくちゃね」と、制作スタッフが考えたかのような匂いを感じられる。 だけど、それで入れたゲーム自体が、単品で出しても十分にイケたんじゃないかと思えてしまう位、出来が良いのは幾ら何でも、マジになり過ぎと言って良いのか、良くないのやら…。

同じ事は、本作のタイトル画面にも言える。と言うのも奇抜な仕掛けが仕掛けられていて、『MARIO PAINT』のアルファベットの文字を1つクリックする度に、画面内で様々な現象が起きるのだ。ヨッシーが走ってきたり、文字がどっかに行ってしまったり、急に周囲が野原になったり、挙句の果てには文字が生き物になって動き出し、何処かへと行ってしまう等と…。もう正直、ハチャメチャも良い所である(良い意味で)。特に、文字が生き物になって動き出す演出は、凄いを通り越して「気持ち悪い」。人によっては、そのあまりの気味悪さに、リセットボタンに手を出してしまうかもしれない。
所々に織り込まれた、サウンドに絡んだ遊びもやり過ぎ。オープニングでゲームを始めた途端、フルボイスで奇妙な体育会系の歌が流れたり、ゲーム中に流れる音を無音にしていたら、突然誰かがクシャミをしたりと、もうやりたい放題。中でも、体育会系の歌はあまりの唐突さに逆に恐怖感を覚えてしまうほどである。
正直言って、これらのハチャメチャな演出を一通り拝むだけでも、本作を試してみる価値は十分にある。改めて、スーパーファミコンの限界、並びに制作スタッフの暴走っぷりをとくと思い知らされる事だろう…。
しかし、そんなハチャメチャな演出がある反面、音楽の作りは上々。特にお絵かき用として用意された、3つのテーマ曲はいずれも名曲と評するに値する。『ハエタタキゲーム』の音楽も良く、特にレベル2のテクノっぽい曲は何とも味わい深い。そんな本作の音楽と効果音を手掛けたのが、あの『MOTHER』や『ドクターマリオ』でお馴染みの田中 宏和氏、とたけけこと戸高 一生氏だというのだから驚かされる。ならば、ここまで奇抜な遊びが盛り込まれてるのも当然…か?

マウス絡みの操作性も悪くなく、あまり滑らかに線をかけないのがタマにキズではあるが、それが返って本物のペンっぽい感触を表現していて、何処と無い現実味が出てる。なるべく迅速にカーソルを動かしたいというユーザーの為に、マウススピードの調節オプションが導入されてるのにも、密かなこだわりを感じさせられる。
この他にも、効果がやたらとド派手な消しゴムの全体消しモード、所々で珍妙な動きを見せるアイコンキャラクター達、そして変な緊張感に満ちたセーブ画面など見所は満載。
セーブのスピードが遅過ぎる事や自由過ぎる故に、寿命が左右され易い事、そしてそもそもゲームではない為、終始、クリアの達成感を味わう事にこだわりを持つユーザーには向いてない(ハエタタキゲームという救済もあるが)など、随分と特殊な所も数多くあるが、一つのお絵かきソフトとしての完成度の高さは折り紙付き。
ゲームならではの味付けとして導入された豊富なカラーパレットに作曲&アニメーション機能、そしてアレンジを加えれば単品でも十分いける、息抜きの『ハエタタキゲーム』等と底知れぬ魅力と面白さがタップリと詰まった、文字通り”玩具”な作りの本作。もうちょっと、個性的な絵を描いてみたいという方、クリアに縛られるゲームには飽きたという方にはこの上ないほどお薦めの一本だ。お絵かきソフトの新しい形がここにある。
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