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≫MOTHER2 ギーグの逆襲
■発売元 任天堂
■開発元 エイプ、HAL研究所、ムーンライダーズ(音楽)
■ジャンル ロールプレイング
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 10290円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 3つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■総説明書ページ数 44ページ
■推定クリア時間 30〜45時間
時は199X年。ある日の夜。

主人公の少年、ネスが住んでいるイーグルランドの緑豊かな町『オネット』に巨大な隕石が落下した。しかも、その隕石が落下したのは偶然にもネスの家の近くにある裏山だった。
好奇心の強いネスは、いてもたってもいられなくなり、隕石の落下現場を見に行く。

しかし…ネスはバリケードを張り巡らせた警察官によって追い返されてしまった。
しぶしぶと家に戻ってきたネスは、まだ自分のぬくもりが残るベットにもぐりこんだ。明日は必ずあの場所を見に行く…と思いながら。…そして夜がふけてからネスは、大きなノックの音で再び起こされた。
行方不明になった弟のピッキーを探してくれと、隣に住むポーキーが頼みに来たのだ。

警察の姿も見えなくなった深夜、ネスとポーキーはピッキーを見つける事ができた。
しかし、彼らが見つけたのは…ピッキーだけではなかった。

……地球外生物までも…見つけてしまったのである。
その地球外生物は…ネスに対して、大変な事を告げる。

何とネスは…人類の運命を担う、子供である…というのだ。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆町から郊外、郊外から次の町というリアルな繋がり具合が印象的なフィールドマップ
◆どこか暖かさを感じる、殺伐としていないほのぼのとした世界観
◆まったりとしているが、とても感動的で深みのある、良質のストーリー
◆ストーリーをじっくりと楽しんでもらおう…という事を重視した、快適なゲームバランス(レベルも上げ易く、ダンジョンもこれと言って複雑なトラップは無し。非常に快適です)
◆プレイしていく内に次第に覚える事ができる、直感的で分かり易いシンプルな操作性
◆ただ聴いているだけでも心地良い、完成度の高い音楽(名曲満載)
◆ドラム式の体力メーターが面白い、RPGとしては異質な緊張感に満ちた戦闘システム
◆RPG初心者への対策とゲームテンポの向上として機能している、戦闘省略機能
◆接触した方向に意味合いを持たせた、古くて新しいシンボルエンカウントシステム
◆『MOTHER』の名を象徴した、面白い特徴(ホームシック)を持つ主人公
◆糸井 重里氏のセンスが光る、秀逸な台詞群(笑える&印象的な台詞が満載)
◆RPG初心者の方でも安心して楽しめるように盛り込まれた、数多くの救済処置(操作解説、進行ヒントなど)
◆名前からデザインまで、全てが強烈なアイテムと敵キャラクター達
◆ゲーム史上最低にして最悪の効果音『ゲップーのゲップ』(笑)(ヘッドホン必須)

--- Bad Point ---
◆マップに登場する敵の行動パターンと出現パターンがやや単調(必ず追っかけてくるなど…)
◆下水道、川など水中地帯のキャラクターの移動スピードがやや遅い
◆ドラム式体力メーターの緊張感を嫌でも味わせる為に用意された中盤辺りの展開(これはちょっと不快)
◆マップ上に大勢のキャラが登場すると途端に処理が重くなる
◆人によってはかなり怖く感じるラスボスの第二形態以降の姿(デザインが…。)
◆面倒臭いお使いが連続する、『タライ・ジャブの穴』のイベント
◆敵の強さとマップの意地悪さが不快極まりない『ムーンサイド』
▼Review ≪Last Update : 8/25/2007≫
ネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサンネスサン…

や、やめろぉぉ…。


コピーライター、糸井 重里氏が製作総指揮を担当したファミコンのRPG『MOTHER』の続編。様々な紆余曲折を経て発売された、色んな意味で曰く付きの作品である。

遊び手を選ばない世界観と活きた台詞、そして臨場感満点のユニークなバトルシステム。斬新な遊びと感動を一度に体験できる、至高の名作RPGだ。

ゲーム内容は、前作と同様のイベントクリア型RPG。プレイヤーは主人公となるキャラクターを操作し、訪れた町などで起こる事件を解決したりしながらゲームを進めていく。
基本的な作りは前作と一緒で、最大の売りでもあった町とフィールドが地続きした特徴あるマップは今作でも継承。他のRPGのようにフィールドと町が差別化された、生活感に満ちたリアルな世界が本作には広がっており、新しくそれでいて身近な冒険が味わえる。また、リアルさを更に助長させる試みとして、フィールドだけでなく街中にもモンスターがうろついているという珍しい定式も本作には備えられており、ストーリーから来る「世界の危機」を思い知らされる説得力の高さも秀逸。ゲームとストーリーを違和感なく融合させた、理想の姿と言っても良いだろう。
その他、基本は一本道ながら、その流れを無視したくなってしまう、各マップ上に用意された寄り道要素もお見事。町を一つ一つ巡ってみたり、名所で写真を撮ってもらったり、更には別荘を購入したり、町の住民達を観察したり等と、できる事は実に多彩で、プレイヤーの意のままに世界を隅々まで満喫できるという冒険感をリアルに表現している。ストーリーもさほど性急感のあるものではなく、危機感があるのだけどそうではない、まったりとした展開が多いのもまた、そんな冒険感に更なる深みを与えており、ゲームとしての自由度をも増強させている(かと言って、ストーリー自体がそこまで浅い訳ではない。特にラストはかなり魅せてくれる)。RPGとはストーリーに引っ張られながら楽しむものではなく、自分の足で世界を冒険していくものだという、糸井氏並びに制作スタッフのRPGに対するこだわりが反映された恰好だ。
このように本作では血の通った世界が心行くまで満喫できる、自分なりのペースで楽しめる冒険が満ちた内容となっている。言い方を誇張すれば、如何にもRPGらしい内容となっている…とでも言うべきだろうか。
それほど、本作には束縛感というものが満ちていないのだ。

また、RPGの代名詞とも言える戦闘においても、本作ではユニークな試みが成されており、基本は前作と同じ…オーソドックスなコマンド選択型の戦闘システム…悪く言えば『ドラゴンクエスト』と全く同じものとなっているのだが、体力メーターの表示形式にドラム式(別の言葉で言えば、スロット式)なる新方式を採用。その名の通り、キャラがダメージを受けたりすると体力メーターがアナログ方式で下がっていき、受けたダメージの数値からキャラの体力の数値を引いた値になるとメーターの低下(ドラムの回転)が止まるというもので、この手のシステムには珍しい緊張感を打ち出した、実に画期的なシステムとなっている。
このシステムは新しさのみならず、RPG初心者に対する救済処置としても上手く機能しており、例え敵から瀕死となる攻撃を受けたとしても体力メーターが0になるまでは死亡扱いとならないので、その前に回復アイテムや回復用のPSI(本作で言う所の魔法)を使えば瀕死を回避できるという、電撃的な形勢逆転もできてしまう。勿論、体力が極端に低い際に致命的なダメージを喰らった場合は流石に無理があるが、このように例え致命傷を受けても応急処置を行えば復帰できる、このあまりに大胆な試みは新しいのみならず、RPG初心者にとっては実にフレンドリーな要素だ。それまで油断は禁物が定説となっていたRPGにおいて、油断してしくじっても全然大丈夫という大らかさを実現したのは、見事としか言い様が無い。道中、体力メーターの減りからくる緊張感を嫌でも味わせる為の展開が用意されてるのは不快ではあるが、このドラム式の体力メーターはRPG業界における新たな一石を投じた意欲的な要素だという事には一切の異論は無い。改めて、このシステムを発案した方には、ナインティナインの矢部氏の如く、「天才!」と言いたいほどだ。凄い。
更に、今作では戦闘の突入形式がエンカウント式(フィールドを歩いていると突然、敵との戦闘が始まる形式)から、シンボルエンカウント式(フィールドに歩いている敵と接触する事によって、戦闘が始まる形式)に変更されているのだが、この特性を上手く汲み取った、敵と接触した方向によって戦局の変化するという要素も実に異質。また、こちらが強くなると弱い敵は一目散に逃げて行ったり、それに接触すると戦闘に突入せずに倒せてしまう要素も実に親切だ。遊び手が気持ちよく楽しめる為の工夫として効果的に機能している。
更に、プレイヤーが操る事になる主人公自身に備わった特性『ホームシック』も面白い。どういうタイミングで発動するのか分かり難い所こそあるが、この症状に陥ると敵への攻撃ができなくなってしまったり、これを治す方法が『母親への電話』であったりするのは、如何にも本作が『MOTHER』という題名だけにある説得力の高さが滲み出ていて凄い。
その他、戦闘の流れについても無駄に冗長な演出は極力カットすると言った、プレイを快適にする気配りが成されてるなど、テンポについても完璧の域。
馴染み深いものをベースとしながらも、新しい遊びと手応えを演出している本作の戦闘のシステムは、まさにインスパイアの理想的な姿と言うに相応しいだろう。改めて、その全体的なアイディアとそのまとめ方には感服する限りだ。

ゲームシステム以外の部分にも、本作ではおかしなこだわりが炸裂している。例えばアイテム。『ボロのバット』、『いいバット』などネーミングが実にユニークで、それぞれの特徴の分かり易さを嫌と言うほど演出している。更に、回復アイテムも『ハンバーガー』や『クッキー』、『クロワッサン』等と異常に種類が多く、はたまた『タコ消しマシン』や『こけし消しマシン』と言った謎のアイテムも存在する。そして、極め付けは『たいしたことのないもの』…。もう、やりたい放題である。こんなおかしなアイテムの名前に一喜一憂するのもまた、本作ならではのお楽しみと言える。
この事は敵キャラ達に対しても言え、『おんしらずないぬ』や『つっぱりダック』等、奇妙な名前を持った面々が嫌と言うほどプレイヤーの前に立ちはばかる。中には今も尚、ゲーム史上最悪にして最低という高評価(?)を得ている”ゲップ”を放つ、気持ち悪さ1の敵キャラも…。アイテムと同様に彼らの名前を一喜一憂するのもまたなかなか面白い。紙に名を連ねてみるだけでも楽しめてしまうのもまた、妙に面白い(笑)。
言葉に関連したものとして他に、登場キャラクターが放つ台詞も結構ユニーク。一人一人がとても人間っぽく、それでいて何処か抜けてる笑いに満ちたその台詞は、ただ読むだけでも楽しいインパクトを放ってる。捻りの効いた表現も満載で、コピーライター糸井 重里氏のセンスの高さを伺う事ができる。
そして、グラフィックや音楽でもおかしな…というのは失礼だが、こだわりが炸裂しており、特に音楽は全体的にかなり気合いの入った作りとなっている。名曲も多く、特に町などで流れる曲と本作のメインテーマ『エイトメロディーズ』こと『SMILE & TEARS』は絶品。作曲担当がムーンライダースの鈴木 慶一氏、『Dr.マリオ』など多くの任天堂ゲームで名曲を生み出してきた田中 宏和(現:たなか ひろかず)氏という豪華な面々であるのも見逃せない所だ。

オプション周りも結構充実していて、サウンドモードの変更からメッセージスピードの変更、おまけにウィンドウカラーの変更とプレイヤーの好みに合わせたカスタマイズが可能で、ゲームだけでなく回りも好き勝手にいじくり回す事ができる。
根幹を成す操作性、ゲームバランスも優れていて、特にゲームバランスは前作以上に進行ヒントやフラグメッセージが盛り込まれ、ゲーム進行における詰まりと迷いが激減。より快適に本編のストーリーと冒険を満喫できるようになった。また初心者を意識してか、ダンジョン内に嫌らしい謎解きを配置してない事、各キャラのレベルが非常に上げ易い事も好感触。快適にゲームを楽しんで欲しいという工夫が随所に張り巡らされている。
マップ上に登場する敵の行動パターンがやや単調な事、大勢のキャラが一度に登場すると処理が重くなる事、ラスボスが子供には怖過ぎる(個人差あり)、そして先述で語ったが途中に瀕死の緊張感を嫌でも体験させようとする箇所があるなどの欠点などの欠点もあるが、いずれも致命的でなく些細なレベルに留まっているのは凄いの一言に尽きる。
血の通ったマップ構成、懐かしいけど斬新な戦闘システム、そして秀逸な音楽、まったりとしてはいるが最後、大いに魅せてくれるシナリオなど見所満載且つ高い完成度を誇る本作。総評は言うまでもなく、名作。RPG経験者のみならず、未経験者からゲームとはゆかりの無い方まで、幅広く楽しめるまさに”万人向け”の言葉が似合う、至高の一品だ。スーパーファミコンを持ってる方ならば、一度でも良いから遊んでみる価値あり。おとなもこどもも、おねーさんも…お試しあれ。
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