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≫ミスティックアーク
■発売元 エニックス(現:スクウェア・エニックス)
■開発元 プロデュース!、ミント
■ジャンル ロールプレイング
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 12390円(税込)
■公式サイト ≫スクウェア・エニックス:紹介ページ
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 3つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■総説明書ページ数 43ページ
■推定クリア時間 25〜40時間(エンディング目的)、60〜80時間(完全攻略目的)
気が付くと、主人公は神殿の中で倒れていた。
周囲を見回すと、天上の高い厳かな雰囲気の漂う広間である事が分かる。
主人公の周りには、6つの燭台に似たものがあり、その上にはまるで生きているかのように見事な人形(フィギュア)が乗っている。そう、彼等は元々、こことは別の次元にある世界で生活していた者達だった。何者かの意思によってこの神殿に連れてこられたに過ぎない。魂を抜かれたフィギュアとなって…。

そして、主人公もそんな者達の一人だった…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆猛烈な嘘っぽさと丁寧な作り込みが素晴らしい、7つの不思議な世界
◆RPGの新しいエンカウントシステムのあり方を提唱している、画期的な『クリスタルレーダー』
◆フィギュア(人形)である事を徹底した、無口で何処か奇妙さの漂う仲間キャラクター達
◆制作者の並々ならぬこだわりが満載の、ダンジョンの謎解き群(アイディア満載)
◆シンプルで分かり易く、尚且つ詳細なオート戦闘プログラムを組める、画期的な要素を取り入れたバトルシステム
◆全体的に希薄ながらも、要点はしっかりと抑えている秀逸なストーリー
◆隠しボス、隠しイベントなど充実したやり込み要素の数々(ミニゲームも盛り沢山)
◆ド派手なムービーやホラー映画並の恐怖表現など、地味ながらも丁寧に作り込まれている演出群(恐怖表現は必見)
◆イラストレーター山田 章博氏の画風をしっかりと表現している、美しいグラフィック
◆神がかった音楽(特に戦闘曲全般の出来は圧巻)
◆不思議な世界観と相染まっている、個性的な登場キャラクター達(特に、2番目の世界で出会うキツネの親玉は必見)
◆何処となく不思議なエンディング(最後に一瞬だけ流れる効果音がまたニクい)

--- Bad Point ---
◆アイディア自体は素晴らしいが、嫌らしいものが多過ぎる謎解き(特に後半に登場する謎解きは尋常でない)
◆進行ヒントが皆無で、道中迷う事が多い(特に2番目の世界の詰まりは酷い)
◆アイテムを捨てるコマンドを選択すると、何故か今、開いているウィンドウが全て閉じてしまう(地味に不満…)
◆仲間キャラの能力バランスが雑(強いキャラと弱いキャラの差が出過ぎている)
◆プレイヤーの移動スピードが、若干”重い”(言葉では説明し難い…)
◆いま一つなラスボス戦(戦闘内容や演出面で物足りない部分が多い…)
▼Review ≪Last Update : 10/6/2007≫
元居た場所へと帰る為…

ボクらは歩き続ける。


エニックスから1995年にリリースされた、完全新作RPG。1993年に発売された『エルナード』のゲームシステムを継承した続編と称してもおかしくない作品でもある。開発はエルナードと同様にプロデュース!、ミントの2社が担当。そしてキャラクターデザインは山田 章博氏、そしてモンスターデザインは米田 仁士氏が手掛けている。

童話のような幻想的な世界観と、それを盛り立てるクールな音楽。意地悪な謎解きがタマにキズながらも、ハイレベルな充実感と達成感を味わえる、力作RPGだ。

ゲーム内容は、オーソドックスなイベントクリア型のロールプレイングゲーム。プレイヤーは主人公となるキャラクターを操作し、全部で7つの童話のような世界を駆け巡りながら、様々な謎を解いたり、敵と戦闘しながら各地で発生するイベントを攻略していく。全体的なゲームとしての作りは古くからあるロールプレイングゲームそのもので、プレイヤーが本編においてこなしていく事も大半はお使いであったり、フラグ立てや謎解きだったりと、悪く言えば”ありきたり”なものばかりとなっている。故にゲーム全体を通しての遊びそのものに新鮮味というのは無い。
だが、本作はそんなオーソドックスな作りを斬新なゲームシステムと独特の世界観でコーティング。古いんだけど新しい…不思議な手応えを醸し出しているのである。
特にシステム面では、『クリスタルレーダー』が実に面白い。別名『レーダー式エンカウントシステム』とも言うべき代物で、フィールドマップやダンジョン内において主人公の周囲を徘徊する敵の動きや重要アイテム、そして街の位置をレーダーで事細かに表示してくれるのだ。しかも、レーダー上において敵の行動は完全にリアルタイムで表示され、プレイヤーが敵に近づくと徐々に近寄ってくるなど、実に人間臭い動きを披露する。そして、この敵と主人公がレーダー上で重なるとエンカウントが発生して戦闘に突入。逆に敵をレーダー上で振り切れば、戦闘を回避できるのである。あまりにも斬新。それでいて実に革命的なシステムだ。ロールプレイングにおける、新しいエンカウントシステムの形と言うものを見事に提示しており、それまでとは異なるRPGの緊張感を打ち出している。これを革命と言う以外に何と言えようか。実にユニークな試みである。しかも、この方式を導入した事によって「接近してくる敵を回避する面白さと緊張感」というアクションゲームのような手応えを打ち出しているのも実に面白い。しかも、それでいてロールプレイングとしての手応えを強めにしており、まるでそう感じられない作りになっているのだから凄い。
それにランダム方式とは違っていきなり敵が出現したりしないので、心臓に弱い方に優しい仕様になっているのも好感触。シンボルエンカウント(マップ上に敵がいて、それに触れる事で戦闘に突入する)形式に次ぐ、ランダムエンカウント嫌いへの対策として見事に機能しており、適度な安心感を演出している。
欲を言えばレーダー上の敵の表示は白い点ではなく、赤い点の方が返って分かり易かったが、システム自体を破綻させるまでには至ってないので特に気にするまでも無い。総じて見事にRPGの歴史に一石を投じる革新的なシステムとして、見事な仕上がりをみせており、プレイヤーにこれまでに無い新しい手応えを提供してくれるのだ。全く持って、ナインティナインの矢部氏じゃないが「天才!」と言いたくなるばかり。
このクリスタルレーダーの他にも本作には、台詞を一切喋らず、人形としての無個性さが印象的な仲間キャラ、自分なりの行動プログラムを組み立てられる機能を備えた戦闘のオートモードなど斬新なシステムは盛り沢山。プレイヤーにそれまでのRPGには無かった、新しい手応えと珍妙さをこれでもかと言わんばかりに提供してくれる。

それ以外にも、本作でプレイヤーが駆け巡る事になる世界も実にユニーク。本作では全部で7つの特色ある世界で起こるイベントを攻略しながら、ゲームを進めていくことになるのだが、この7つの世界と言うのがどれもこれも非常に濃い。例えば、ある世界では猫と猫同士の戦争が行われていたり、またある世界では建物が全部果物だったり、更にまたとある世界では住民達が全員子供で大人がいなかったり、極め付けは建造物から植物、人が全て白黒、一部の町は無音だったりなどと、どれもぶっ飛んでいるのである。
あまりの奇天烈っぷりに耳を疑った方も多いだろうが、こんなおかしな世界をプレイヤーは全編を通じて巡っていかなければならないのだ。はっきり言って、面白過ぎ。それでいて、非常にゲームらしい。そもそも住民達が全員子供、建造物とかが全てモノクロ、尚且つ音楽が全く流れない…って嘘にも程があり過ぎ。ここまで露骨な仮想現実を大胆に描いてしまってる事自体があまりにも潔い。しかも、それでいて凄いのがこのような世界を舞台にしながら、メインのシナリオ自体はかなり真面目だという事。ギャップあり過ぎである。
だが、そんな奇妙な世界を舞台にしているからこそ、プレイヤーは次の世界が見たいが為に、ついついコントローラを取り、ゲームを進めていきたくなってしまう。一見、ふざけているようにも見えなくもないが、実は本作の不思議な世界観は、プレイヤーのボルテージを継続させる…探索心を刺激させる効果を発揮しているのである。
誰しも、奇妙な世界が舞台であるなら、その世界の全貌が見たくて、先へ先へと歩を進めたくなる。本作がこのような変な世界観にしたのも、全ては「プレイヤーに隅々と本作を堪能して欲しい」という狙いがあったからこそなのだろう。そういう意味では、この不思議な世界観の採用は、見事だったと言える。また、各世界ごとに異なった特徴を持たせたのも好印象。結果として、プレイヤーの飽きを最小限に抑え、ゲーム展開をダレさせない為の配慮として効果的に機能している。まさに、ゲームである事にこだわったが故の賜物。ゲームとはグラフィックや音楽に凝るのでは無く、まず第一にアイディアに凝るべき…、この斬新なシステムと世界観には、そんな任天堂の故・横井 軍平氏の理念を大事にしたかのような気配りが成されており、如何に本作がプレイヤーを楽しませる事を徹底して作られたかをうかがい知れる。基本は古いだけど、新しい。そんな非常にアンバランス且つ刺激に満ちたゲームに本作は仕上がっているのだ。ここまで新しい刺激を追及したRPGも珍しい。改めて、制作スタッフの力量の高さには感服する限りだ。こだわり過ぎにも程がある。

だが、その一方で謎解きへのこだわりは残念ながら悪い方向へと作用してしまっているのが痛い。ヒントが少なく、どう考えても常人で無いと気付かないようなトリックがあったりなどと、無駄にストレスを溜めるものが多く、解いていて全く気持ちよさが無い。その分、ゲームとしての手応えを強めてもいはするが、せめてもっと遊び易くする為にヒントを豊富に盛り込むなどと言った配慮をして頂きたかった。システムや世界観が頑張ってるのに、これでは大損も良い所だ。
しかし、一方でバトル方面のバランスについては安定したレベルを維持。多少、シビアな所もあるが、キャラクターのレベルを一定量上げればどうにかなるようになっているので、元は取れている。なお、バトル自体はシンプルなコマンド選択式のものとなっており、これと言って真新しさは無い。ここに関しては、流石にあまり新しい試みが盛り込めなかったのか。だが、変わらない良さもあるので、これはこれで良い感じだ。
またグラフィック、音楽の出来も相当なもの。グラフィックは流石、成熟期のゲームという事もあってか、鬼気迫る完成度となっている。特に街の建造物関連のグラフィック、モンスター関連のグラフィックは一見の価値ありだ。
音楽も凄いというか、神がかってる。奇妙な世界を舞台にしたゲームにも関わらず、クールでカッコイイ曲が満載なのだ。しかも、その曲の1つ1つの出来も凄く、音質もクリアで、完成度自体も尋常でない。正直、この音楽を聞く為だけでも、本作をプレイしてみる価値は十分にある。特に戦闘曲関連全ては必聴の価値あり。ゲームの世界観からは想像のつかないカッコ良さなので超要チェックだ。
そしてストーリー、演出面も秀逸。特に見事なのが演出面で、6つ目の世界で展開する恐怖描写は凄いの一言。スーファミの機能を逆手にとった、実にインパクト大の仕上がりになっている。その世界のフィールドに配置されている「日記」を読みながら進行させて行けば、恐怖指数は倍増すること間違いなし。これもまた、音楽と同様に一見の価値ありだ。

この他にも濃い登場キャラクター、『アーク』なる精霊を扱った謎解きと成長システムなど見所は満載。謎解きの難易度が異様に高い、進行ヒントが少な過ぎると言ったかなり痛い粗があるのがタマにキズだが、独自性に満ちたゲームシステムと不思議な世界観、そして完成度の高い音楽と秀逸な演出と、全体的には十分に傑作の域には達している本作。
少々、手強いので初心者にはお薦めし難いが、それ以外の上級者、そしてRPG好きの方には文句なしでお薦めの逸品である。是非とも本作の、不思議な世界観と特徴のあるゲームシステム、そしてとんでもない完成度を誇る音楽を味わってみて欲しい…。きっと、新しい手応えと快感、そして衝撃を嫌というほど味わう事が出来るはずだ。お試しあれ。
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