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≫ファミコン探偵倶楽部PARTII うしろに立つ少女
■発売元 任天堂
■ジャンル アドベンチャー
■CERO C(15歳以上対象) ※非合法な喫煙・飲酒描写あり
■定価 ニンテンドウパワー版 : 2100円(税込)、バーチャルコンソール版(Wii) : 800Wiiポイント
■公式サイト ≫スーパーファミコン版 / ≫VC版(Wii)
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 2つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■SFメモリ消費数 Fブロック:6、Bブロック:4
■推定クリア時間 3〜4時間(エンディング目的)、10〜12時間?(完全攻略目的)
私立探偵・空木 俊介(うつぎ しゅんすけ)の助手として働いていた主人公。
ある日、警察から川原からセーラー服を着た女子高生の死体が発見されたとの連絡を受けた二人は、すぐさま現場へと向かう。被害者の名前は小島 洋子(こじま ようこ)。私立丑美津(うしみつ)高校に通っていたこの少女は、どうやら何者かによって殺されてしまったらしい…。
空木の命で小島洋子の捜査を始めた主人公は、友人の橘(たちばな) あゆみ等からの証言から、彼女が『うしろの少女』という幽霊の噂を熱心に調べていた事を知る。

何故、彼女は幽霊の噂などを…?そして、その幽霊と事件にはどんな関係が…?

やがて、その真相は驚くべき形で明らかとなっていく…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆ミステリーとホラーの両要素が絶妙に絡み合った、練り込まれたストーリー
◆ストーリーを読み進めながら謎を解いていく、シンプルで取っ付き易いゲームシステム
◆章単位でストーリーが進行するようになり、区切りが付け易くなったゲーム展開
◆一度聞いた事のある話に限定してできるようになった、台詞の早送り
◆ストーリーの詳細確認の際に大いに活躍してくれる新要素『メモ帳システム』
◆同じく長期間プレイできず、ストーリーを忘れてしまった際のサポートとして活躍する新要素『あらすじシステム』
◆本編とは異なる文章表現で描かれた、『あらすじ』のストーリー(読み応え満点)
◆プレイヤーの恐怖心を大いに煽る、絶妙なカット割りが異彩を放つ、珠玉の演出
◆スーパーファミコンの限界とも言うべきクオリティで描かれた、美麗なグラフィック
◆懐かしの曲のアレンジから新曲まで、バリエーション豊かになった珠玉の音楽
◆ストーリーの各場面を大いに盛り上げる、不気味且つ質感溢れる高品質の効果音(特に終盤から聴こえるようになる不気味なうめき声は強烈)
◆ゲームが苦手なユーザーでもすんなり溶け込める、シンプル且つ快適な操作性
◆コマンドを触り倒して行くだけでサクサクと進行する、緩いゲームバランス
◆ストーリーを盛り上げる、個性豊かな登場キャラクター達(ひとみちゃんは必見)
◆固有の顔グラフィックが用意され、存在感がアップしたサブキャラクター達
◆アドベンチャーゲームとしては稀なやり込み要素(詳細は伏せる)
◆ディスクシステム版経験者には涙モノの演出で展開するオープニングデモ

--- Bad Point ---
◆一度聞いた話のみしか効かない、台詞の早送り(この辺りは賛否が分かれる…)
◆カメラのフラッシュが焚かれるシーンにおける、地味な処理落ち
◆未成年者には毒な描写の存在(そこまで酷い訳ではないのだが…)
◆コンプリートのトリックがいま一つよく分からない、やり込み要素
◆人によっては生理的嫌悪感を覚えるサブキャラ、酔っ払いのおじさん
▼Review ≪Last Update : 4/26/2008≫
ふり返ると、そこには…

続きは本編でご確認ください。


ファミコンディスクシステムで発売され、練り込まれたストーリーと恐怖感を煽る演出で根強いファンを獲得したコマンド選択型アドベンチャーゲーム『ファミコン探偵倶楽部』シリーズの第二弾、『うしろに立つ少女』のリメイク作。

システムからグラフィック、音楽が現代的にアレンジされ、遊び易さと面白さ、そして不気味さ共に劇的なパワーアップを遂げた、色褪せぬ名作だ。

ゲーム内容はコマンド選択型のアドベンチャーゲーム。プレイヤーは主人公となり様々な人物の聞き込みを行い、時にはトラブルを乗り越えながら、小島洋子殺人事件と『うしろの少女』なる幽霊の真相に迫っていく。
システム周りも基本的には原作のものを踏襲。しかし、原作では不便だった点の修正や新要素の追加等、随所においてリメイクならではの大掛かりなアレンジが加えられている。
代表的なものとして、テキストの早送り機能。部分的ではあるが、今作では十字キーの下、B、或いはLRボタンを押し続ける事で、テキストの早送りが行えるようになった。原作ではほとんど早送りが効かない作りになっていたので、当時のその仕組みに不満を持っていた方にとっては実に有り難いアレンジだと言えるだろう。
ただ、あくまでも早送りが効くのは一部のテキストだけで、全てに対応しているというのはかなり賛否が分かれる。欲を言うならば全ての台詞の早送りができるようにしておいて欲しかったところだが、原作と同様に一度聞いた台詞は無言(「……。」)で表示されるようになっているなど、ゲームテンポのダレを防ぐ処置はちゃんと施されているので、遊んでいてさほどストレスを感じる事は無い。その辺り上手く調整されているので心配御無用だ。
何よりも、このような仕組みとした事で原作の雰囲気がそのまま生きているというのがニクい所だ。守るべきものは守ると言う開発スタッフのこだわりが感じられる。
新要素である『メモ帳システム』も秀逸。今作では、スタートボタンを押す事で、ストーリーで出会った人物の情報や事件にまつわるキーワードが随時、確認できるようになり、よりストーリーの全体像が把握し易くなった。登場人物や事件の詳細がイマイチ理解し切れない、何らかの事情で長期間プレイする事ができず、ストーリーを忘れてしまったという方にとって、これは実に有り難い。また、ストーリーを進めていく事で少しずつ内容が深まって行く、メモ帳特有の「埋めていく楽しみ」が組み込まれているのも、なかなか面白い。「もっともっとメモ帳を充実させたい」というプレイヤーの欲を大いに煽ると言う、ゲームプレイを促進させる要素としてはこの上ない働きをしてくれている。本編のストーリー自体が一本道の為、最終的な完成系はプレイヤーごとに決まってしまっているのが少し寂しい所だが、この要素の追加によって、ゲーム展開の没入感が劇的に向上したのは大きな進化に値すると言っても過言ではないだろう。
メモ帳と同じ新要素の『あらすじシステム』も便利。これもまた、何らかの事情で長期間プレイする事ができず、ストーリーを忘れてしまったという方へのサポートとして大いに活躍してくれる。更にこのあらすじでは、本編を更に分かり易く噛み砕いたストーリーも楽しめるなど、本編とは違った楽しみが用意されている辺りもニクい所だ。他にも、ネタバレになる為に伏せるが、二周目以降のプレイを促進させるユニークなやり込み要素の導入等、まだまだ見所は多い。
早送り機能など多少、不便さが残る所もあるが、全体的にはこれぞリメイクの在るべき形とも言うべき、素晴らしいアレンジが成されており、原作プレイ済みのユーザーから原作未プレイの方まで、大いに満足できる仕上がりとなっている。まさに、名作は色褪せぬ…と言った所か。この当時の雰囲気を損なわない作り込みには本当に感心させられる。

本作最大の見所であるストーリーも相変わらずの素晴らしさで、関心を引く表現でプレイヤーを大いにのめり込ませ、最後に強烈なしっぺ返しをぶちかまして来る。
ただ、基本的なストーリーラインは原作と同じながらも、台詞が漢字混じりで、一部展開や表現が変更されているなど、リメイクならではのアレンジも多々加えられている。特に原作ではユーザーから不評だった、ストーリー中盤の迷路エリアが消滅し、普通のデモ(寸劇)へと変更されたのは、数あるストーリー上のアレンジの中でもでかい。これによってゲームテンポが更に向上し、よりストーリー本編に没頭できるようになると同時に、アドベンチャーゲームとしての色彩が濃くなった。ただでさえ、あの迷路に苦しめられた方にとっては、これはまさに狂喜モノとも言うべきアレンジと言えるだろう。その反面、一部の個性的なキャラクターが削られてしまったのは少々、残念な所だ。ファンには賛否が分かれるかもしれない。ただ、原作の迷路はただでさえ、ゲームプレイにおけるストレス材料となっていただけに、この判断はむしろ、英断だったと言えるだろう。やはり、あまりにストレスを感じさせる要素は、切り捨てるに限る…と言った所だ。
また、ストーリーが章単位で進行するようになったのも大きなアレンジだ。これにより、流れが分かり易くなったのみならず、止め時が作り易くなったのは嬉しい。原作の場合は連続してストーリーが進行して行く為に止め時が作り難かっただけに、これはナイス。地味ながらも、メモ帳システムと並行してストーリーの整理がし易くなったのも有り難い所だ。更に章ごとにはちゃんと章題も付けられており、これを一喜一憂するのも面白い。主に原作プレイ済みの方に対してだが「あそこはどういう章題なのだろう…」と先が気になってのめり込んでしまうこと、間違い無しだ。
そして、ストーリーを彩る登場キャラクター達のデザインも、スーパーファミコンにプラットフォームを移した影響で、大幅にモデルチェンジ。少し極端に言うならば、『金田一少年の事件簿』を髣髴とさせるようなアニメ風のタッチに全キャラクターが改まっている。また、今作では原作では姿すら出て来なかった、通行人のおじさん、おばさん、そして学生に酔っ払いと言った面々にも固有のグラフィックが用意され、ストーリーの彩りが劇的に増している。これもまた先のアレンジされた面々と並行して、実に個性豊かな顔ぶればかりなので必見だ。中でも酔っ払いの気色悪さは鳥肌モノ…かもしれない。
これら以外にも、作中に一枚絵のグラフィックが挿入される場面が増えたり、特定のオブジェクトが拡大される場面が増えたりなど、アレンジされた所はまだある。
しかし、先ほども言ったが、アレンジはされていてもメインのストーリーラインに変更は無いので、雰囲気はそのまま。あの衝撃的な結末も健在なので、プレイ済みユーザーも大いに満足できること間違い無しだ。勿論、未プレイのユーザーも衝撃を受けるのは必至。原作のストーリーを下手にいじり過ぎず、自然なレベルのアレンジを施すこの絶妙な職人技には本当に感心させられるばかりである。まさに、名作色褪せぬとはこの事だ。

操作性、ゲームバランスも申し分が無い。いずれもシンプル且つ快適、それでいて適当にコマンドを選んでいけばスイスイと進めてしまう単純明快さで、誰もが抵抗無く遊べる敷居の低さを実現している。加えて、無駄な要素が省かれた都合でテンポも良くなっているという実態。まさにこれぞ、鬼に金棒と言ったところだ。
グラフィックと音楽も素晴らしい完成度だ。グラフィックはとにかく、細部の描き込み具合が半端じゃ無く、スーパーファミコンの限界とも言うべきドット絵を表現している。各キャラクターもよく動き、また一枚絵の場面ではかなり凝ったアニメーションが展開されるなど、気合の入れ様は相当なものだ。これをただ眺めるだけでも、本作はかなり楽しめる。
音楽も名曲揃い。原作のアレンジ(かなり大掛かり)のほか、原作には無かった新曲も追加されているので、原作プレイ済みの方でも新鮮な気持ちで楽しめること、間違い無しだ。
また、効果音も素晴らしく、随所にて声が挿入されたりなどストーリーの不気味さを助長する表現が盛り込まれているのも要チェックだ。特に終盤のあるシーンで僅かに聴こえるようになる、謎のうめき声の不気味さは半端じゃない。
それらのグラフィックと音楽、効果音で織り成される演出群も強烈。重要な話になると台詞の音が変わったり、登場人物の表情が少し変わったりなど、細部までこだわって作られている。一枚絵によって展開する場面のカット割りもセンスがあって見応え抜群。リメイク作ならではの強みを心行くまで味わえるだろう。特に既に何度も挙げている、ラストの衝撃的なシーンはその恩恵を受けて原作以上に過激な仕上がりとなっているので、要注目だ。

他にもディスクシステム好きにはたまらないオープニングデモや、随所に盛り込まれた小ネタ、ひとみちゃんを筆頭とする(?)個性的なキャラクターなど、まだまだ魅力は尽きない。
非合法な喫煙・飲酒描写があったり、早送り機能の制限が少し厳しかったり等、細かな欠点もあるが、リメイク作品としての完成度、並びにアドベンチャーゲームとしての完成度は文句なしの名作に値する。
より快適さが増したシステムと高性能ハードでは決して表現できない職人技による演出、見応えのあるグラフィックと秀逸な音楽、そして衝撃的且つ練り込まれたストーリーとまさに、色褪せぬ名作というに相応しいこの『ファミコン探偵倶楽部PART2 うしろに立つ少女』。
アドベンチャーゲーム好きはもとより、スーパーファミコン(或いはWii)を持っているユーザーならば是非ともプレイすべき逸品だ。文句無しにお薦め。ゲームでしか味わえない恐怖と感動がここにある。
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