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≫ファイアーエムブレム トラキア776
■発売元 任天堂
■開発元 インテリジェントシステムズ
■ジャンル シミュレーションRPG
■CERO B(12歳以上対象) ※犯罪描写あり
■定価 ニンテンドウパワー版:2500円(税別)
プリライト版(※予約限定生産):6480円(税別)
DXパック版(※予約限定生産):9800円(税別)
パッケージ版:5200円(税別)
バーチャルコンソール版(Wii、WiiU) :926円(税込)
■公式サイト ≫SFC版 / ≫VC版(Wii)/ ≫VC版(WiiU)
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 3つ+中断セーブ1つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■総説明書ページ数 69ページ(※プリライト版、ROMカセット版のみ)
■SFメモリ消費数 Fブロック:8 Bブロック:16
■推定クリア時間 40時間〜50時間(エンディング目的)、160〜200時間(完全攻略目的)
後に『混迷の時代』と呼ばれたユグドラル統一戦争の初期、トラキア半島の小国レンスターに一人の英雄がいた。聖戦士ノヴァの血を受け継ぐ王子、その名をキュアンという。
グラン暦761年、グランベル王国シアルフィの公子シグルドは宮廷内における勢力争いと、これを利用するロプト教団の策謀によって反逆者の汚名を着せられ、イード砂漠に孤立してしまう。苦境に立つ友を救うべく、キュアンは一軍を率いてイードに向うが、その途上、背後よりトラキア軍の奇襲を受け配下のランスリッターと共に全滅。後に『イードの虐殺』と呼ばれるこの戦いでレンスター王国の希望であったキュアンは愛する妻とともに、その短い生涯を終えた。

そして、王子夫妻の戦死によるレンスターの弱体化、皇帝アルヴィスによるグランベルの統一はトラキア地方の勢力図を激変させた。半島統一を悲願とするトラキア王トラバントはこの機を逃さじと侵攻を開始し、瞬く間に北部諸国を制圧する。しかし、時を移さずグランベル帝国軍がトラキアに侵攻、メルゲン谷の戦いで大敗北を喫したトラバント王は野望虚しく南へと敗退する。一方、レンスター王家の生き残りキュアンの遺児リーフは、レンスター落城の際、騎士フィンに抱えられ、数少ない仲間と共に辛くも脱出に成功する。

その後、リーフたちは、アルスター、ターラ等のトラキア各地を巡る逃避行の末、東海岸の小さな開拓村、フィアナにた辿り着く。フィアナの女城主エーヴェルは、彼らを快く迎え入れ、リーフは、彼女の元で、彼女を慕って集う若者達と交流を重ねながら、次第に大人へと成長を重ねていった。時折しも、大陸東方イザークの隠れ里ティルナノグでは、シグルドの遺児セリスを中心とする勢力が着実に力を付けつつあり、着実に新たな時代への胎動は始まっていた。

そしてグラン暦776年、リーフ15歳。
彼にとっての「聖戦」が、今始まろうとしている…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆前々作の『紋章の謎』のスタイルへと回帰し、癖の強さが大幅に緩和されたゲームシステム
◆敵を捕まえ、装備類を剥ぎ取るという大胆且つ、背徳的な快感を持ち味とする新システム『捕縛』
◆捕縛システムが演出する、厳しい資金繰り(寄せ集めの軍隊という設定が活きている)
◆移動力の低いユニットのフォロー、ピンチに陥っているユニットの離脱支援など、戦術性をより高める自由度の高い作りと快適性の高さが異彩を放つ新システム『かつぐ』
◆絶対的な確率が存在しなくなり、より緊迫感に溢れる展開が描かれるようになった戦闘シーン
◆新たに対アーマー、騎士用の武器が追加されたほか、使用ユニット周りでも刷新が施されて、これまで以上に使い勝手が良くなった斧(今までの不遇っぷりを吹き飛ばす改善)
◆従来の制圧以外に離脱、到達、防衛と言った攻略条件が追加されたほか、『ゲームボーイウォーズ』の索敵も新規に登場するなど、よりバリエーション豊かになったマップ(敵配置も非常にエグい)
◆ユニット使用の偏りを防止させ、先を見据えた戦略の重要性を演出する新システム『疲労度』
◆必要最低限のものに留められ、性能面も見直されて多少、シェイプアップしたスキルシステム
◆回復アイテムの使用、装備品の回収等、非常に人間臭い動きを見せるようになった敵ユニット
◆シビアな環境下に置かれている軍隊を導いていくというストーリー上の設定が効果的に活かされた、シリーズ屈指の高難易度設定(だが、決してクリア不可なバランスでは無い)
◆軽快なレスポンスと敵ターン時の高速化機能など、より洗練された操作性とオプション周り
◆分岐要素の導入により、前作以上に肥大した総計ボリューム(更にあのやり込み要素まで実装)
◆前作の使い回しながら、色彩面の手直しなど、質の向上が随所で図られているグラフィック
◆同じく前作の使い回しながら、フレームレート向上など、劇的な変化が見受けられる演出周り
◆前作より曲数は落ちるが、相変わらずの重厚で印象深い楽曲が盛り沢山の音楽
◆王道ながらも戦争の悲惨さを思い知らされる名場面が盛り沢山のストーリー

--- Bad Point ---
◆シリーズ初心者お断りの高難易度(シリーズ入門編にするのは危険)
◆増援の出現ポイントなど、初見殺し要素で高難易度を演出している感が否めないマップの存在(逆にそれに気付けば大して難しくない、なんてケースもあったりする)
◆難易度面の理不尽さを加味している感が否めない再移動システム
◆シェイプアップされたが、相変わらず能力面での問題を抱えたスキルシステム(特に『待ち伏せ』と『怒り』、『盗む』の三つは強力極まりなく、これらを持つユニットほど重宝されがち)
◆フリーズバグの存在(書き換え版のみ。後発のカセット版、バーチャルコンソール版には無い)
◆何故か自由に位置設定ができなくなってしまった出撃準備画面(このようにした意図が謎)
◆奇怪な必殺率(何故か30%程度なのに90%並の確率で発動する)
◆進捗状況如何では詰みが確定しかねない危険性を孕んだマップ『総攻撃』
◆主人公の周囲のみで、他の部分は黒く塗りつぶされているという極端な描写がタマにキズな索敵マップ(見えない所は半透明の灰色で描くとか、できなかったのだろうか?)
◆前作ファンには賛否が分かれるストーリー(主に前作関連の部分。相違点が幾つかある)
▼Review ≪Last Update : 12/28/2014≫
「英雄とは自らの意思でなるものではなく、必要に応じて作り上げられるものなのです」

その者は望まれた英雄か、或いは未熟な若者か。


一度死亡したユニットは復活できないシビアな設定と高い難易度、重厚なストーリーで根強いファンを獲得したシミュレーションRPG『ファイアーエムブレム』シリーズの五作目。前作『聖戦の系譜』の続編で、ゲーム書き換えサービス『ニンテンドーパワー』向けに製作された作品でもある。開発はこれまでのシリーズと同様、インテリジェントシステムズが担当。

斬新な試みの数々と説得力抜群の高難易度で送る、シリーズ屈指の野心作だ。

ゲーム内容はターン制で展開する、マップクリア型のシミュレーションRPG。カーソルを操作してユニット(駒)を移動させ、マップ上を徘徊する敵兵達を倒しながらその拠点となる施設、玉座の制圧を目指すというものである。本編の世界観及び設定は前作『聖戦の系譜』と一緒。主人公は前作第二部7章にて登場したレンスター王国の王子リーフで、彼が前作の主人公であるセリス達の解放軍に出会うまで、『トラキア半島』の各地で繰り広げた戦いを重点的に描いた、いわゆるサイドストーリー的な内容となっている。その為、前作のキャラクター達が登場したりもするのだが、ストーリーは独立しており、前作の事は知っているとニヤリとできる程度となっている。なので、前作のプレイ経験が無くても大丈夫。全く知らずともすんなり入っていける、敷居の低い作りになっている。
反面、システム周りの敷居は高い。今回のシステムは前々作『紋章の謎』をベースにしており、マップの大半が局地型で、城の内部と言った室内マップも登場するほか、騎兵ユニットの乗馬・下馬のコマンドが復活。また、前作で初登場した武器の三すくみ、スキル、騎兵ユニットの再行動も一部、仕様の変更を施して継承。簡潔に言えば、『紋章の謎』に前作の新要素を加えた正当進化系的な作りとなっている。この感じだと、敷居が高いというよりは、シリーズ経験者なら難なく入っていける内容に見えるだろう。だが、実際にはこれらの他に経験者でも苦労必至な厄介な新要素が追加されている。
第一に『捕縛』。今作ではユニットのステータスに『体格』なるものを追加。これが敵よりも数値で上回った時に限り、敵を捕まえるという特殊な攻撃を行えるようになった。この攻撃は体格の条件を達成した際に現れる『捕まえる』のコマンドを選ぶ事で実行され、攻撃して見事、止めを刺せれば捕縛成功となる(※武器を持たないユニットに対しては『捕まえる』のコマンドを選択するだけで捕縛が成功する)。捕縛に成功すると、ユニットは捕まえた敵を担いだ状態へと移行。そして、その時にコマンドメニューの『交換』を選ぶと、何と敵の装備を一通り剥ぎ取って、自分のものにできてしまう。犯罪めいた仕組みだが、そんな事までもが今作ではできるようになり、今までに無い戦略の妙味が味わえるようになっている。
だがこの捕縛、敵も使ってくる為、逆にこちらが捕まる事もある。仮に捕まってしまうと、装備品は全て没収。しかも、その敵を捕縛しない限り、奪い返す事はできない。普通に倒してしまうと、全紛失となってしまうのである。更に味方を捕縛したユニットは最終的にマップ上からの離脱を試みる。そのまま離脱を許してしまうと、捕まったユニットは『捕虜』になり、特定のマップで助け出すまでは使えなくなってしまうのである。今まで、シリーズでは『死亡』だけがユニットのロスト条件として設けられていたが、今作ではそこに更なる条件を追加。その為、これまで以上に慎重な立ち回りが求められてくるようになっている。武器類が奪えるようになった一方で、こちらの危険も増大。決してプレイヤー有利なシステムではないのだ。むしろ、手強さを増強させるシステムとして存在感を発揮している。
そして、更なる慎重な立ち回りを要求する第二の新要素が『疲労』。今回は主人公のリーフ以外のユニットに『疲労値』なるものが設けられ、これが体力(HP)を超過する数値に達すると、次のマップに出撃できなくなってしまうのである。この為、今回はエースユニットに頼った戦略自体が自殺行為同然となっている。一応、疲労値をリセットするアイテムもあるのだが、稀少品な上に値段も高いので、気軽に使えない。その為、あらゆるユニットをまんべんなく育てていく事が求められる。むしろ、そうしないと最悪、詰む。それほど今回は長期的な視点での戦略と計画が求められるのだ。まさに従来の方法を封じる新要素。如何に経験者と言えど、苦戦必至なのはその仕組みだけでも容易に想像が付くだろう。そしてこの要素があるが故、今作が気軽に遊べるゲームではない事も痛感させられること請け合いだ。
この他にも今作ではアイテム・武器の相場も高めに設定されている上、捕縛で手に入れた武器を売り払うか、『闘技場』で戦うぐらいしかお金を手に入れる方法がなかったり、戦闘でも命中率の最高値が99%、最低値が1%になって『絶対的な現象』が無くなるなど、今まで以上にシビアになっている。また、先ほども触れたがユニットを『かつぐ』という行動ができるようになって、進軍が遅れているユニットを支援する戦術が取れるようになったり、マップの勝利条件に『離脱』、『防衛』、『到達』が登場、更に『ゲームボーイウォーズ』や『スーパーファミコンウォーズ』にあった周囲数マスしか地形や敵の姿が確認できない『索敵マップ』が逆輸入されるなど、ゲーム性の強化を図る新要素も大量に追加。それまでの方法論が通じない戦闘が、これでもかと言わんばかりに画面いっぱいに繰り広げられる。
外見こそ、『紋章の謎』の原点回帰にして正統進化だが、これらの新システムの存在もあり、そのゲーム性はほとんど別物。難易度も数多くの新要素の所為で跳ね上がっており、手強いシミュレーションを謳うファイアーエムブレムとしての本領発揮。いや、それ以上にリミッターを解除してしまったかのような感じだ。それほどまでに、あらゆる面において挑戦的な姿勢が炸裂。もはや続編というよりは、新作も同然な内容に仕上げられている。

そして、今作最大の魅力は歴代史上最凶クラスの難易度だ。今までのように好きなユニットに愛情を徹底的に注げばどんな困難も乗り越えられるだなんて、そんな生易しい場面など皆無!ユニットの立ち回り、育成計画と、あらゆる面において知略の限りを尽くさなければ将来的な詰みは確定と言ってもいいほど、非情なバランスとなっている。
特に『捕縛』、『疲労』の二つが醸し出す厳しさは桁違い。前者は活用しなければ慢性的な武器と資金不足に悩まされるし、後者に至っては好きなユニットだけを限定して使うという事が無理なので、なるべく二軍、三軍を編成しないと後半の展開が持たない。更に戦闘では命中率に絶対値が無くなるなど、確率によるランダム要素も今まで以上に強化されている為、これまで以上に予期せぬ事故が発生し易い。『再移動』なる、『♪』のマーク表示と共に二回目の行動に出る敵ユニットも居たりするので尚更だ(※一応、味方側にもそういうユニットが居る)。先の事を考えずに進めていく事が今作では御法度というのは、これだけでも容易に想像が付くだろう。
また、マップにしても今回はエグい。主に敵配置だが、プレイヤーの一手先の動きを見据えたかのようなものになっている。更に今回は敵のAIも賢い。ピンチになると同時に回復行動に出たり、武器を店まで購入しに撤退するなど、非常に人間臭い動きをする。おまけに同じユニットでもマップによっては全く違う行動を取るなど、汎用性も高め。他にもマップでは物量で勝る敵の大群相手に特定地点の防衛をするもの、周りが見えない策敵系など、相当数のバリエーションが用意されており、プレイヤーの戦略的判断を執拗に迫ってくる。それも先の武器、ユニット、資金周りの管理と並行しなければならないので、とにかく厳しいこと極まりない。そうも色んな事を求められるが故、少しでも安易な考えの元で進めてしまえば、一瞬で詰みの悪夢へ一直線。ストーリー性重視で、少し大味な部分もあった前作を払拭するかのようなその激烈な難易度は、冗談抜きにシリーズをやり込んだプレイヤーですら血反吐を吐くほど。もはや手強いを通り越した、地獄の有様となっているのだ。
しかし、しっかり戦略を組み立てて進めれば意外と難なく行けてしまうバランスになっているのがニクい所。実際に難しいとは言え、敵のステータスをインフレさせた安易な調整ではなく、配置とAIで上げている具合なので、状況に応じた戦術と計画を練った上で挑めば必ず攻略可能なバランスになっている。マップにしても、敵配置がエグいとは言え、その完成度は非常に高い。地形から何まで、あらゆる要素を活用して戦う、戦略シミュレーションの醍醐味を徹底追及したその作り込みの深さは、歴代シリーズでも随一と言っても良いほどだ。
また、この辛口な難易度自体がストーリー設定と絶妙に融合しているのも素晴らしい。没落貴族、一般市民や元山賊と言った、文字通り『寄せ集め』の軍隊だからこそ、物資は不足してて当然だし、その補充方法が追い剥ぎという汚い手になるのもまた然りだ。これで仮に力押しでどうにでもなる簡単な難易度で、物資も不足し難かったりでもしたら、ここまでの説得力の高さは出なかっただろうし、設定も死んでいただろう。ゲーム部分をストーリーと自然に融合させ、唯一無二の経験をプレイヤーに提供させようとしたその作り込みは脱帽モノ。この違和感の無さだけでも、今作が単に難しさだけを追求して作られたゲームでないというのがよく分かる。
とは言え、しんどい内容なのは事実。ユニットによって必殺攻撃の発動率に極端な違いがあるほか、明らかな初見殺しな場面があったり、出撃編成で個々のユニットのスタート地点を自由に決められないなど、そこまで厳しくしなくても…と、首を傾げたくなる部分もある。そして、この難易度設定からして明らかだが、シリーズ初心者に薦められた作品でないのは当然。今作をデビュー作なんかにすれば十中八九、ファイアーエムブレムと言うゲームが嫌いになってしまうだろう。
そんな極端な内容の今作だが、戦略性重視の全く違った続編を作ろうとする姿勢とゲームデザインの上手さなどには特筆すべきものがある。作りは紋章の謎と同じながら、求められる戦術は別物という点での差別化も素晴らしく、誰もが同じスタートラインに立った上で苦しめるという点では続編ではなく、新作としても名乗れる資格がある。まさに野心的の一言。敷居の高い作りではあるが、それだけでは済まされない魅力がたっぷり詰まった作品に仕上げられている。前作とは趣が異なるが、シリーズ屈指の意欲作と言っても過言ではないだろう。

また、操作性も前作のものをベースに大幅に改善。敵ターンにおける移動スピードが早くなったほか、クリア後にはボタン押しっぱなしで更に早くする事ができるなど、より快適なプレイができるようになっている。キーレスポンスのサクサク感も相変わらず。手触り感も申し分無しだ。
ボリュームも難易度の高さもあってか、エンディングまでに費やされる時間は膨大。人によっては100時間を超過するだろう。また、今作では特定の条件を達成する事でプレイ可能となる追加マップ『外伝』、そしてシナリオ上の分岐と言った新要素が盛り込まれているので、2周目以降の楽しみも充実。非常に極め甲斐のある内容になっている。
グラフィックに関しては、大半が前作の使い回し。しかし、微かにデザインが改められているほか、色使いが非常に綺麗になり、全体的な質感が劇的に向上している。実際に前作のグラフィックと比較してみれば、その大幅な質の向上がよく分かるだろう。音楽は全て新曲。但し、曲数自体は前作よりも少なくなってしまっている。だが、曲の出来は申し分無し。特にシンプルながらも、妙に熱い戦闘曲は要チェックだ。
ストーリーも主人公リーフの苦難と成長を重点的に描いた王道の英雄物語でありながら、高い難易度設定と絶妙にリンクした陰惨な展開の多さが印象的。特にリーフに様々な助言を行う軍師、アウグストの台詞全般は素晴らしいものばかり。何故、戦争では英雄と呼ばれる者が誕生するのかと語る場面は、作中、屈指の名場面なので必見である。

また、今作は前作『聖戦の系譜』のサイドストーリーという事で、前作のキャラクターが登場すると言ったファンサービスも充実している。ただ、プレイヤー側で自由に設定できた設定が固定化されているなど、物議を醸す要素が幾つかあるのは前作に魅了されたファンには賛否が分かれる。あくまでも、パラレルワールドの話と捉えた方がいいだろう。
他に演出も、マップ戦闘のエフェクト全般が新規のものに作り変えられていたり、戦闘シーンにおいても前作からの流用となっている一部魔法のアニメーションが60フレームに改められ、ビックリするほど滑らかでヌメッとしたものになっているなど、スーパーファミコン後期作品ならではの成熟した職人技が炸裂している点も見逃せない。
書き換え版に限り、フリーズバグがあるなど、少し残念な所もあるが、全体的な完成度と独自性の高さは折り紙付き。難易度が非常に高いのもあって敷居は高いが、意欲的な試みと職人技がこれでもかと言わんばかりに炸裂した、この『ファイアーエムブレム トラキア776』。
シリーズ初心者には絶対にお薦めできないが、逆にこれまでのシリーズの難易度に物足りなさを覚えていた方ならば自身を持ってお薦めできる、シリーズきっての怪作である。どちらかと言うと、ゲーム性重視のプレイヤー向け。キャラクター性を求めるプレイヤーにはしんどい部分が多数あるので、手を出すのなら覚悟を決めてから挑みましょう。
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