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  4. レッキングクルー'98
≫レッキングクルー'98
■発売元 任天堂
■開発元 パックスソフト・ニカ
■ジャンル アクションパズル
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 ニンテンドウパワー版 : 2000円(税込)、ロムカートリッジ版 : 3990円(税込)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1〜2人
■セーブデータ数 1つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■SFメモリ消費数 Fブロック:4 Bブロック:4
■総説明書ページ数 ニンテンドウパワー版所持の為、不明
■推定クリア時間 1〜3時間(エンディング目的)、10〜12時間(完全攻略目的)
ピーチ姫とのバカンスからの帰宅途中のマリオ。
緩やかに自宅への道を進んでいたが、家へと近づくなり急に周りが暗くなった。
ふとマリオが見上げてみると、何と彼の自宅の前に巨大な建設中のビルが!

事もあろうに、マリオ達の留守中にあのクッパが自らの勢力を伸ばさんと、キノコ王国の至る所に自らのアジトを建設していたのだ!しかもアジトによって王国のあちこちに影が増え、花や木と言った自然が大きな被害を受けていた。
このままでは王国が危ないどころか、自然までもが失われてしまう。マリオはクッパの野望を阻止する為、自宅に隠しておいたレッキングクルーのハンマーを手に、アジト壊滅に乗り出したのだった…。

だが、その影にはマリオをあざ笑う、サングラスをかけた謎の男の姿があった…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆キャラクターを操作し、ブロックを消していく斬新な手応え溢れるゲームシステム
◆各色のブロックを複数揃える等で簡単に発動する仕組みが面白い、お邪魔攻撃
◆敵の召還から鉄板の投下、塗装に上昇など、個性豊かなお邪魔攻撃のバリエーション
◆複数消しでも連鎖消しでも対等な試合展開が楽しめる、絶妙な対戦バランス(但し、対人戦に限る。)
◆簡単にお邪魔攻撃が行える仕組みもあって、大いに白熱する対戦プレイ
◆マリオテイスト溢れるゲーム展開や分岐要素など、見所満載の『ストーリーモード』
◆マリオファミリーから謎のキャラまで、個性豊かなプレイヤーキャラクター達
◆操作解説、ルール解説、テクニック紹介などNP専用ソフトらしい、充実したヘルプ
◆動かす気持ち良さと手触りの良さが上手く絡み合った、秀逸な操作性
◆マリオらしいほのぼのとした雰囲気が秀逸な温かみのあるグラフィック
◆グラフィックと世界観に程好くマッチした、心地良い音楽
◆書き手の奇妙なセンスが炸裂した台詞回し&テキスト(MOTHERファンが書いてる?)
◆オリジナル版経験者涙モノの忠実な再現振りが光る、旧作『レッキングクルー』

--- Bad Point ---
◆対戦に特化し過ぎたゲームモード(スコアアタックなどのやり込み系のモノが無い)
◆旧作『レッキングクルー』ファンには賛否両論な新作のゲームシステム(ほとんど別物なので、かなり賛否が分かれる)
◆強力過ぎる、黄色のお邪魔攻撃『鉄板投下』(このせいで少しバランスが崩れてる)
◆行動パターンにやや単調な所がある、『ストーリーモード』の対戦相手
◆モード選択に戻る際に便利な中断機能の不在(リセットするしかない。不便…。)
◆アレンジが一切加えられてない為、経験者には新鮮味が薄い旧作『レッキングクルー』
◆選曲ミスとしか言い様がない、『ストーリーモード』のラスボス戦の曲(隠しキャラ4体目の曲の方がラスボス向き…)
◆デザインからしてイッちゃってるクッパのドット絵(目が…)
▼Review ≪Last Update : 4/26/2008≫
13年の時を経て、遂に復讐の時が来た!

長かったねぇ…。


1985年にファミコンで発売された『レッキングクルー』と新作『レッキングクルー'98』を収録したカップリング作品。開発はゲームボーイ版『ドンキーコング』や『モグラーニャ』等を手掛けたソフトハウス、パックスソフト・ニカが担当。

原作ファン感涙モノの旧作と、化け過ぎたゲームシステムが異彩を放つ新作。
双方のギャップがあまりに微笑ましい、スーパーファミコンの隠れた傑作だ。

ゲーム内容は各作品ごとに大きく異なる。旧作『レッキングクルー』はパズルアクションゲームで、マリオを操作して各ステージ内にある壁やドアと言った建造物をハンマーで破壊していくというもの。
対して新作『レッキングクルー'98』は、キャラを操作してブロックの列を動かしたりハンマーで破壊しながら、同じ色のパネルを揃えて相手方のフィールドに邪魔を仕掛けていくという、旧作とは180度異なる対戦型アクションパズルとなっている。
当レビューではこの内、後者の新作『レッキングクルー'98』を主として取り上げる。
まず、先の内容紹介を読めば一目瞭然だが、新作は『レッキングクルー』の語る作品であるにも関わらず、旧作の面影など全く無いアクションパズルゲームとなってしまっている。その為、旧作の続編を期待していたユーザーには正直言って、期待ハズレな内容と言っても致し方が無い。しかし…だ。レッキングクルーの続編としてではなく、全くの新作として見ると、これがまた実に斬新なアクションパズルゲームとなっている。
その斬新さを体現するのが、基本となるシステム。
先の内容紹介の通りだが、今作ではアクションパズルなのにプレイヤーが操作する対象がブロックではない。ブロックが積まれたフィールド内にいるキャラクターなのである。これをプレイヤーは十字キーとボタンを使って動かし、フィールド端にあるハンドルを使ってブロックを横に動かしたり、或いは持っているハンマーでブロックを壊したりして、同じ色のブロックを3つ以上揃えて消していくのだ。
一般的な落ちモノ系のパズルゲームでは、上から落ちてくるブロックを順番に操作し、それを効率良く積んで消していくのが基本となっていたが、今作ではそれとは全くの逆。ブロックは対戦が始まった最初から積まれた状態で、それをキャラを使って上手く動かしたり、或いはハンマーで崩しながら揃えて消していかねばならないのである。
更にシステムのみならず、お邪魔攻撃の発動条件と効果も内容の斬新さを体現する。発動条件は一般的なアクションパズルゲームにならい、ブロックを4つ以上揃えて消すか、或いは連鎖消しを行うかと言った感じなのだが、今作が面白いのは揃えたブロックの色によって、お邪魔攻撃が異なってくるという事。全部で4色(赤、青、黄色、緑)あり、赤ならばフィールドにお邪魔キャラを送り込み、青ならばフィールドの特定の列を強制的に上昇させ、黄色ならばハンマーで壊せない鉄板を降らせ、緑ならばブロックに塗装をして壊し難くすると言ったように、実に多彩なお邪魔攻撃を繰り出す事ができるのだ。しかも、この一連のお邪魔攻撃は複数消しでも連鎖消しでも同じように発動するようになっているので、連鎖とかが組むのが苦手なユーザーに優しい仕組みとなっているのが嬉しい。また、色ごとの効果も極端で分かり易いというのも特筆すべき点である。加えてお邪魔攻撃には、最大9個揃える事によって発動する一撃必殺技も存在。しかし、簡単に発動する事はできないようになっているので、ゲームバランスが破綻する程の材料にはなっていない。この辺の調整の上手さは、流石任天堂と言ったところだ。
他にも、フィールドのブロックを全て破壊する事によって可能となる強力なお邪魔攻撃や先の敵キャラによる麻痺の概念など、斬新な要素は尽きない。
黄色のお邪魔攻撃が強過ぎる欠点もあるが、全体的にシステム自体の完成度は高く、正真正銘のアクションパズルとも言うべき手応えと戦略性が光る、驚くほどアクション要素の強い内容に仕上がっているのである。まさに、レッキングクルーと落ちモノパズルの奇跡の融合。新境地開拓と言っても過言ではない有様なのだ。

しかし、新境地を開拓しながらも、残念な事がただ一つ。ゲームモードだ。と言うのも、今作に収録されているゲームモードはお話を楽しみながらCPとの対戦を乗り越えていく『ストーリー』、友達との対戦やCPとの自由な対戦が楽しめる『対戦』、最大8人まで参加できる『トーナメント』と、どれも対戦絡みのものばかり。詰め将棋風のモードやスコアアタックが楽しめるモードとかが無く、やり込み甲斐に欠けるのである。
元々のシステムが対戦を想定した作りな為、このようなラインナップに特化したのだと思われるが、これはちょっと勿体無さ過ぎる。対戦に特化したからと言ってそれだけで終えてしまうのは、流石に宝の持ち腐れとしか言い様が無い。先のシステム紹介と特徴の所を見ればお分かりの通り、結構、拡張性はあっただけに、もっと可能な限り…このシステムだからこそできる遊びをもっと追求して頂きたかった。アイディア自体が良いのに、対戦でしか用いないだなんて本当に勿体無い。スコアアタックは難しいにしても最低限、詰め将棋風のモードとかはあっても良かったのではないだろうか。
ただ、対戦しか遊びの幅が無いとは言え、各モードの作りは丁寧だ。特にメインモードとなる『ストーリー』は、ゲーム展開やマップ画面、分岐ステージなど、全体的にマリオテイスト溢れる構成となっているのが印象深い。対戦相手として登場するキャラクターも、お馴染みのマリオファミリーを始め、ナスビ仮面など、懐かしいキャラクター達も続々登場する。勿論、あのレッキングクルーの代名詞とも言える存在『ブラッキー』も、13年という長き時を経て華麗に復活!旧作ファンにはたまらないシチュエーションが楽しめる。
更に「これはマリオキャラか!?」と突っ込みたくなる謎の新キャラも登場。片手に焼酎(!)を持ったおじさん、ト●レの●子さんなど、いずれも濃いメンツばかりなので必見だ。マリオファンならば、あまりの場違いっぷりに失笑してしまうかもしれない。勿論、『ストーリー』のみならず、ある意味、本作のメインディッシュとも言える『対戦』の面白さも相当なもの。基のシステムがよく出来ているだけに、白熱した試合展開が楽しめる。『トーナメント』も、一人プレイでは難易度選択によって多様な対戦が楽しめるようになっているので、ストーリーが満足できなかったユーザーはお試しの価値アリだ。
それでも遊んでいて、対戦だけに留めず、もっと発展させられる余地があったのではないのかと思ってしまうのが何とも惜しい所。総じて、モードごとの作りは良いのに、あと一押しが足りないと言った所である。本当、くどいけど、システムが良いだけにもっともっと…煮詰めて頂きたかったものだ。

システムやモード以外…操作性とバランスは任天堂らしい、丁寧な仕事が光っている。バランスに関しては、黄色の鉄板攻撃の強さだけが尾を引いているが、一撃必殺技のリスクの大きさ、ゲームオーバー条件である『ブロックが3秒以上規定ラインの上に留まってしまったらアウト』等、総じて絶妙な仕上がりとなっている。特にゲームオーバー条件である、3秒という設定は凄く絶妙で、対戦の白熱度を大いに助長させる。
ストーリーにおける対戦相手の強さもパズルゲーム初心者も粘れば何とかなるバランスに落ち着いているのが好印象だ。上級者には物足りない所があるかもしれないが。
また、そう言った初心者の為のサポートも充実。操作解説にルール解説、更にはスペシャルのお披露目など、いずれも丁寧で分かり易く仕上げられている。地味ながらも解説のテキストが若干、茶化した文体で書かれているのも必見である。
グラフィック、サウンドもまずまずの出来。特にグラフィックは、『ストーリー』における寸劇のほのぼのとしたドット絵が秀逸だ。音楽も多少、音量が低いが、マリオシリーズのフレーズを取り入れた曲など、楽しげなものが満載だ。
演出面もそこそこ。特にお邪魔攻撃が発動した際に繰り広げられるエフェクトは、地味ながらも中々見応えのあるものに仕上がっている。一撃必殺技の唐突ぶりも必見だ。
ただ、『ストーリー』のラスボス戦の曲で選曲ミスをしてしまっているのはちと痛い。どう考えても、隠しボスとの戦いの方がラスボス戦っぽいので、そっちを採用して欲しかった所だ。

この他、『ストーリー』にて展開するお話も地味に良い…というよりは、台詞に操作解説のテキストと同様に変なセンスが炸裂していて面白い。何処となく糸井重里氏っぽさがあるのは、MOTHERファンが手掛けている証拠だろうか?
また、当レビューでは具体的に紹介しなかった旧作『レッキングクルー』も、ファミコン版の忠実な移植という事で、当時、はまった方には懐かしさが味わえると同時に、全100面とかなりやり応えのある作りとなっているのもお見事だ。地味ながらステージエディットのセーブが、カセット本体で行えるようになったのも嬉しい。
対戦に特化した為にやり込み甲斐が薄く、旧作の面影も無く、そして当の旧作がファミコン版の移植で終わってしまっている辺りが賛否を分けるかもしれないが、全体的には中々よく出来たアクションパズルゲームであり、革新的な一作とも言える作りとなっている。
真の意味でのアクションパズルゲームとは何か、それを限りなく追及したゲームシステムとマリオらしからぬテイストが異彩を放つ本作。マリオファン、パズルゲームファン共に要プレイの隠れた傑作だ。ただ、旧作はもとより、新作はあまりに別物なので、オリジナルの『レッキングクルー』に愛着を持つ方にはお薦めしない。
それでもオリジナルがやりたいという方は、どうぞ。
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