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≫パックインタイム
■発売元 ナムコ(現:バンダイナムコゲームズ)
■開発元 Kalisto Entertainment
■ジャンル パズルアクション
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 8295円(税込)
▼Information
■プレイ人数 1〜2人
■セーブデータ数 無し(※パスワードコンティニュー形式)
■総説明書ページ数 21ページ
■推定クリア時間 10〜15時間
数々の冒険も昔話となり、パックランドで家族と共に平和に暮らしていたパックマン。
だがある日、パックマンは謎の光線に包まれ、見知らぬ土地へと飛ばされてしまった。

全ては宿敵『アビラスネッター』の仕業だった。
今までの作戦がパックマンの手によって阻止されてきた事に業を煮やした彼女は、今度こそパックマンを追い払ってしまおうと決心し、魔法の呪文でパックマンを過去の見知らぬ世界へと飛ばしてしまったのだ。

かくして孤立してしまったパックマン。何とか元の世界へと戻る為、彼は冒険に出るが、果たしてその先には何が待ち構えているのだろうか…。パックマンの運命やいかに。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆ドットを集めるシンプルさとパズル性の高さが程好く融合したゲームシステム
◆ジャンプにワイヤーアクション、炎の弾による攻撃など、サイドビュー形式ならではの多彩なパックマンのアクション
◆新アクション追加による行動範囲の拡大で、シンプルなゲーム展開にアクセントを加える『リングアクション』
◆全部で50以上と、当時としては破格のやり応え&ボリューム満点のステージ
◆フェイク(騙し絵)や特殊な扉など、バリエーションと嫌らしさに富んだギミック群
◆山に森、更には村、城など、バリエーションに富んだステージロケーション
◆基本、理不尽だが、実は意外と配慮の行き届いた奇妙なゲームバランス(難易度)
◆やたらと慣性がかかるが、意外にも動かす楽しさに秀でた操作性
◆緻密な描き込みが成された背景など、鬼気迫るこだわりが炸裂したグラフィック
◆手強いゲーム展開の緩和剤として機能してくれる、ノリが良くて名曲揃いの音楽
◆お馴染みのジングルに食べるアクションなど、パックマンシリーズ経験者ならばニヤリとしてしまう小ネタの数々

--- Bad Point ---
◆バリエーションに富んではいるが、陰湿さも否めないギミック群(フェイクの多さは問題)
◆隠された操作があったりと、意地悪な側面を持ったアクション
◆それらのアクションに何ら言及されていない、不親切極まりない説明書
◆同じく、それらのアクションができる事を暗に教えてくれないステージの不在
◆無駄に多い上、モチベーションを欠く存在にもなっている一撃死トラップの多さ
◆慣性がかかり過ぎる為に、かなりの慣れが要される操作性(ジャンプがきつい)
◆5面ごとに発行される仕組みが嫌らしいパスワード(毎ステージ発行にすべきだった…)
◆ただでさえキツいゲーム内容に不釣合いなクレジット制のコンティニューシステム
◆取って付けた感が見え見えなストーリー(オチとかあり得ない…)
▼Review ≪Last Update : 7/20/2008≫
目に見える物だけを信じたら、疑心暗鬼になるだけなのです!

信じちゃダメだ、信じちゃダメだ…。


ナムコの看板アクションゲーム『パックマン』シリーズの外伝。海外のソフトハウス『Kalisto Entertainment』が実開発を手掛けた、外注作品でもある。

目に見える物だけを信じちゃダメ!ダメったらダメ!
全編フェイクだらけの、良質で悪質なパズルアクションゲームだ。

ゲーム内容は、パズル要素を盛り込んだステージクリアタイプのアクションゲーム。パックマンを操作して、ステージ内に散らばる『ドット』と呼ばれるアイテムを一定数回収し、出口(ゴール)の扉のロックを解除して各ステージを攻略していくというものだ。基本ルールに関しては、正伝のパックマンシリーズと同じ。しかしながら、実際のゲームとしての手応えそのものは、正伝シリーズとは毛色の異なるものとなっている。
それを象徴するのが、画面構成。正伝シリーズは見下ろし形式…いわゆる、ステージを真上から見下ろしたタイプのものだった。対し今作は、サイドビュー形式…例えるなら『スーパーマリオブラザーズ』のような、2Dスクロールタイプのアクションゲームとなっている。
もう…見ての通りであるが、まるで違う。別物と言っても良い内容なのだ。
だから、当然のようにパックマン自身のアクションも違う。ジャンプして飛び跳ねたりなど、見下ろしタイプの正伝では一切見受けられなかった、躍動感溢れるアクションの数々が、今作では用意されているのである。
更に今作ならではの特徴として、アクションには『魔法のリング』を通過すると習得できる特殊なものがある。今作では各ステージ内にこう言ったリングが存在し、これを通過すると、そのリングの色によってパックマンが特別なアクションを覚えるのだ。リングを通過する事によって習得できるアクションは『ロープ』、『ファイア』、『スイム』、『ハンマー』の計4種類。いずれもユニーク且つ豪快なものばかりで、ドットを集めていくだけのシンプルなゲーム展開に、ちょっとしたアクセントを加えてくれるのである。勿論、アクションの中にはパックマンの代名詞たる『食べる』もある。今回は、敵への攻撃ができるファイアがある為、存在感こそ薄いが、相変わらずの何が何でも食べてしまう豪快さは健在。サイドビューになっても、パックマンはパックマンである事をとくと思い知らされるだろう。
また、他の正伝との違いとして、アクションよりもパズルを押し出したバランスもその一つ。アクションが豊富でありながも今作、実際はそれらのアクションを駆使して、ステージ内の仕掛け等を解除していく事に念頭を置いた作りとなっている。ただ何も考えずにドットを集め、敵を倒していくだけの単純な内容にはなっていないのだ。
だから、今作では単にドットを集めるだけでも、ワリと頭を使う。仕掛けを解除したり、或いは動かしたり、そしてリングからアクションを習得して、進行不能の通路を突破したりと、小手先のテクニックもさることながら、注意深い観察眼とちょっとした知恵が試されてくるのだ。まさに、目に見えるものだけを信じるな、もっと視野を広げろ。サイドビューならではの構成を活かした、やり応え溢れる内容となっているのである。
ちなみに、そんなプレイヤーが挑む事になるステージの総数は、全部で50以上と相当なもの。しかも、どのステージも本格的な作りで、パズルのヒントとかもないから、中途半端な気持ちで挑むと痛い目に遭うぞ。パックマンと言われて、シンプルで気軽に楽しめるものと侮る事なかれ。実際は想像以上に手強く、それでいてストイックなものとなっているのだ。まさにこれぞ、外伝作品たる由縁。差別化へのこだわり全開なのである。しかし、今作で突出しているのは、正伝との差別化のみならず。実は、それ以外にも今作には、ある意味で歪んでいると言っても良い、こだわりが炸裂している。

それが、難易度。厳密には、全編フェイクだらけで理不尽であり、絶妙でもある難易度である。どういう事かというと、今作は各ステージに張り巡らされた仕掛けやパズルに、異常なまでにフェイク…騙し絵が多い。「こんなの普通、気付くか!」と激高したくなるようなものが、これでもかと言わんばかりにプレイヤーの前に立ちはばかるのである。
代表的な物を挙げれば、背景と思われたツタやキノコ、草がトラップだったり、ゴールの扉が偽者だったりなどと。どう考えてもこれら、一度見ただけで回避できる類のものではない。そんな「最初は引っ掛かって当然」なものが、大量に出てくるのだ。しかも、問題はこれだけに留まらず。実はアクションにもとんでもない『罠』があり、ファイアが実は溜め撃ち可能だったり、ロープはワイヤーアクションのみならず、パイプなどの物を引っ張れると言った裏テクが用意されている事が本編、並びに説明書において全く示されない&記述されていないのである。つまり、これらのアクションは普通にプレイしていると100%気付かない。どん詰まりになってしまうのだ…。これで道中にそれらのアクションを自然と教える、レクチャー代わりのステージがあれば話が別だったのだが、実際、そう言う所は何処にも無いのでフォローのしようがあらず。
とにかく、陰湿で理不尽。全編において今作は、プレイヤーをバカにしているのだ。こんな仕掛けを目前にしてしまえば、モチベーションが低下するのも必至。第一、納得の行かぬ理由でミスする事自体、気持ちの良いものじゃないのだから、そりゃやる気だって失せる。幾らMの人だとしても、流石にこれはキレるのも必至だろう。
だけども、これまた笑ってしまうのだが…実は今作、決して誰もがクリアできない訳じゃない。そもそも、先の仕掛けは「ミスするのが前提」…裏を返せば、一度ミスをすれば、あとは楽に回避できるようになる。つまり、一回でも学習すれば、ラクに突破して行けてしまうのだ。それに解法が分かり難いパズルが出てくる場面においても、そこでは敵をなるべく出さないようにし、目前の問題に集中できるような工夫が凝らされている。陰険と見せかけて、実は意外と配慮はバッチリ、しかも粘り強く挑めば必ずクリアできるバランスにまとめられているのだ。だから、実質的に絶妙なバランス…と言えるのである。こんなにも理不尽な罠があるのにも関わらず!何とも言い難い、アンバランスさを醸し出しているのだ…。
理不尽であり、絶妙でもある難易度がどういうものなのか、これで理解頂けただろう。とにかく、陰険に見えて根は親切。今風の言葉で言うならば、ツンデレ風と言っても過言ではない、他ではあまり見ないバランス取りをしてしまっているのだ。本当、これには笑うしかない。意地悪して、その後に優しくして…訳が分からん…と。
確かに、騙し絵にやられた際の腹立たしさが半端じゃないのは事実。プレイヤーに分からせる事を徹底していないのは、姿勢からしてかなり問題だと言える。しかし、先に話したように「一回やられれば」分かってしまう。分かってしまうから、二回目以降は引っ掛からない。結果として、ストレスも覚えない。だから、ある意味では考え尽くされていて、絶妙なバランスであると…言えてしまうのだ。こんなにも良いとも悪いとも言えるバランスは、まさに今作ならではと言うに相応しい。特にゲーム好きは、このバランスは何が何でも体験してみるべき価値があると言えるだろう…。
とにかく、不思議。摩訶不思議。そうとしか言い様の無い、歪んだこだわりが炸裂したバランスを維持しているのである。一体、何を持ってこんな調整を施したのか、全く海外のスタッフの頭の中は計り知れない。

この他、操作性にも歪んだこだわりが炸裂。操作性はとにかく、移動に無駄に慣性がかかるので、プレイヤーの思うように動かせない…のだが、ロープのワイヤーアクション等は動かすだけでも気持ちの良いものがあったりと、これまた強烈な独自性を放っている。
逆にグラフィックや音楽は、普通にずば抜けてる。グラフィックはまさにドット絵の芸術とも言うべき美しさで、緻密な描き込みが成された背景など、地味なこだわりが炸裂している。音楽もノリの良い名曲が多く、ノーヒントな仕掛けを含んだステージとバランスの緩和剤として上手く機能している。特にフェイクの仕掛けが多いのがタマにキズだが、森ステージと終盤の城ステージの曲は要チェックだ。
ただ、演出周りについては派手なエフェクトがそんなにある訳ではないので、地味。オープニングでは一応、ストーリーも描かれるが、作中ではそれを象徴するようなデモもないので、無理矢理感が否めない。中でもストーリーは何も、ああもこだわる必要は無かったのでは無かったと言いたくなる。ネタバレになるので、詳しくは言わないが、オチが「あの話って何だったの?」みたいなものだから。あれなら別に今作、ストーリーなんて無くて十分だったのではないだろうか。

また、サポート周りもパスワードがありながら、発行されるのが5面ごとと変な制限があるのも辛い。このボリュームとシステムを考慮すれば、毎ステージごとに出た方が遥かにゲームとしてのやり易さが増しただろうに、何故、こうも嫌らしいものにしたのか。歪んだこだわりとは言え、流石にこの辺は自重して欲しかったところだ。 他にも、ゲームオーバー後のコンティニューのシビアさ(このきつさでクレジット制!)とか、必然性の薄い二人プレイなど、歪み故の欠点もチラホラ。
しかしながら、正伝シリーズとは異なる面白さに秀でたアクション、圧倒的なボリュームと魅力も多く、完成度自体は及第点で、遊べるゲームではある。だけども、致命的な欠点の存在もあってか、駄作に値するのも事実。それ故に総評としては、良質で悪質なパズルアクションと言ったところ。イライラとさせられる場面もあるが、他に無い珍妙さがとても新鮮なので、アクションゲームや思考型パズルアクションが好きな方なら、一度は挑戦してみるべき価値のある一本だ。
とにかく、目に見える物だけを信じるな。信じ過ぎたら疑心暗鬼に陥るだけ。
節度を持って、理不尽で絶妙なトラップ群を乗り越えていきましょう。
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