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≫ルインアーム
■発売元 バンダイ(現:バンダイナムコゲームズ)
■開発元 PLEX
■ジャンル アクションRPG
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 11340円(税込)
▼Information
■プレイ人数 1〜2人
■セーブデータ数 2つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■総説明書ページ数 34ページ
■推定クリア時間 25〜30時間
かつてこの世界は『ラーディウス』と呼ばれ、高度な機械文明と魔法学に支配されていた。
しかし、何者かの絶大なるパワーにより、『ラーディウス』は崩壊への道を余儀なくされた。

それから数世紀。『ラーディウス』の残した文明の産物は遺跡となり、世界では僅かな人類が剣と魔法の力で生き残るばかりとなった。そんな中、地上侵略を企てかつての科学力を復興させようとする謎の帝国『ライドロイド』が出現。その魔の手が各地に迫ろうとしていた…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆「二人で遊ぶ」のコンセプトを貫いた、徹底したこだわりが見事なゲームデザイン
◆多種多様な特殊能力を持った、使い分ける面白さにも富んだ2Pのパートナーキャラ達
◆「二人で遊ぶ」のコンセプトに則した仕掛けやイベントなどが徹底的に詰め込まれた、こだわり全開のフィールド&ダンジョンのマップデザイン
◆無意味に複雑でもなく、単純でもない絶妙さが見事なダンジョンの謎解き(冷静に観察すれば大抵のトラップは突破できるなど、バランスが適切)
◆『★』を振り分けて自由なステータスに変更できる、カスタマイズ的な面白さに富んだ強化システム(振り分け方でバランスも大きく変化する)
◆プレイヤー独自の武器が造れる強烈な魅力を秘めた、錬金術による武器練成システム
◆メニューを出さなくても切り替え可能の快適さが秀逸なアイテムセレクトシステム
◆常に自分好みのボタン配置に変更できる自由度の高さが異彩を放つ操作性
◆適度に温くて手強い、適切なレベルに抑えられた絶妙なゲームバランス
◆上に同じように短過ぎず、長過ぎずの丁度良さでまとまった総計ボリューム
◆王道一直線だが、雰囲気作りの巧さによって印象深いものに仕上がっているシナリオ
◆聴く者の心に染み渡ってくる強烈な旋律が素晴らしい音楽(しかも名曲ばかり!)
◆素晴らしい音楽との相乗効果が凄まじい、卓越した演出(特にオープニングデモは強烈)
◆外字エディット機能にファイルロックなど、無駄に充実したスペシャルオプション

--- Bad Point ---
◆お世辞にも賢いとは言えない、パートナーキャラのCPルーチン
◆ジャンプのアクションが絡んだ謎解きの異様な難しさ(はっきり言ってこの謎解きは2Pコントローラを使ってやらないと、解く事は適わない。致命的…)
◆パートナーキャラの移り変わりが激しく、キャラが安定しない2P側(しかも、全てのキャラが自由に選べるようになるのは終盤と遅過ぎる…)
◆過度なディフォルメ具合が賛否の分かれるグラフィック(デモ絡みは別)
◆序盤の歩行速度の遅さ(★を速度に割り振れば解決するが…)
◆メニュー画面などの切り替わりの異様な遅さ(1〜3秒ぐらいかかる。地味にストレス…)
◆攻撃チャンスが一瞬な為、ダメージが非常に与え難いラスボス第二形態(辛い…)
▼Review ≪Last Update : 10/18/2008≫
色んなキャラを操れる2Pが羨ましい。

キャラが固定の1Pが羨ましい。


数多くの原作付ゲーム(キャラクターゲーム)を多くリリースしてきたバンダイがひっそりとリリースした、完全オリジナルのアクションRPG。開発は同社の『甲竜伝説ヴィルガスト 消えた少女』を手掛けたPLEXが担当。

荒削りだが独特のシステムと雰囲気作りの巧さが異彩を放つ、アクションRPG意欲作だ。

意欲作だけにそのゲーム内容もかなり特殊。基本は『ゼルダの伝説』や『聖剣伝説』と同じ、ダンジョンの謎解きやイベントを乗り越えながら進めて行くアクションRPG。しかしその実態は『二人で遊ぶアクションRPG』。二人同時プレイ(パートナープレイ)を基としたゲームデザイン、バランス調整が成された、他に類を見ないタイプのアクションRPGとなっている。その為、今作ではプレイヤーキャラが二人存在。この二人を上手く使いこなしながら、ゲーム本編を進めていく事になる。最初から最後まで一貫して。当然のように、本編では二人プレイである事を想定したイベント、仕掛けが施されたダンジョンと言うものがこれでもかと言わんばかりに登場。それ故に基本的にどの局面も二人で力を合わせていかねば、突破するのは不可能。単機プレイは決して許さないという、『二人で遊ぶアクションRPG』としての基本コンセプトを尊重したゲームデザインが徹底されている。
そんな単機プレイが許されない性質上、一人プレイは全く遊べないのか…というと否。一人プレイも2P側はCPUが自動操作、オプションで細かな動作を設定できると言った配慮がしっかり行われているので、それなりに遊べるようにはなっている。ただ、細かな動作の設定ができるとは言え、流石にハードスペックの都合か2P側を万能なキャラにさせるまではできず。状況(主に謎解き)によっては2P操作に切り替え、2コントローラで無理矢理操作するのがベストだという、何ともお粗末な有様となってしまっている。結局、一人でやるにも限界あるのだ。この辺はまさに『二人で遊ぶアクションRPG』だけにある…とも言えるが、別の視点から見れば、調整不足。幾ら何でも二人にこだわり過ぎた故の弊害と言ったところである。だがそのこだわりによって、一人プレイでも2コン操作が求められるという、ユニークなプレイスタイルを実現させたのも事実。その意味ではこの一人プレイ、遊んでチェックしてみる価値は大いにある。
また、本作の売りは『二人で遊ぶ』にこだわったゲームデザインだけじゃない。キャラクターの成長システムにもユニークな試みが行われており、『★』を各ステータスに割り振って強化するという、これまた風変わりなものを起用している。なので、今作ではプレイヤーの好きなようにキャラをアレンジする事が可能。移動スピードの早い回避タイプにするのも、攻撃力だけが突出したパワータイプにするのも、全てが自由にできてしまうのである。しかも上手いのが『★』の数には制限があり、一部の能力に集中させると他の能力が著しく低下し、致命的な弱点ができてしまうこと。つまり、攻防などの全ての面において優れた万能キャラは創造できないようになっているのだ。おまけにゲームが終盤に進んでも、万能キャラが創造できるほど★は溜まらない。どうあがいても、「何処かの能力が突出したキャラ」を作るのには弊害が生じてしまう。そして、そんな弊害が生じるからこそ、それぞれのプレイヤーごとの個性が強調されてくる。カスタマイズ的なシステムとしては及第点と言っても過言ではないほど、バランス的にも丹念に調整された、見事なものに仕上げられているのである。そう言った個性が強調されるが故に、割り振り方によってはセカンドプレイ以降に大きな変化をつける事も可能。遊べば遊ぶほど、色んな楽しみが堪能できる。
この他にも錬金術による武器練成にボタンの組み合わせによるリアルタイム形式のアイテムセレクトシステムなどの斬新な試みもあるのだが、長くなる為に割愛。雑ではあるがこのように今作は、アクションRPGとしては稀有な遊び、手応えが満載。作りの粗さも見受けられるが他に類を見ない新しさが強烈なインパクトを放つ、意欲作としか言い様の無い仕上がりとなっているのである。その新たなものを創造しようとする熱の入れ様は、キャラクターゲームのバンダイとは思えぬほど。真の『本気』が満ち溢れているのだ。

そんな今作の魅力は、もう既に語ったがゲーム全体に一貫した『二人』に対する尋常なきこだわり、それに終始される。先の一人プレイの実態でお分かりの通りだが、今作はダンジョンの仕掛け(謎解き)からイベントにまで、「どうしてそこまでやるの?」とツッコミたくなるほど、二人に対するこだわりが炸裂している。
ダンジョンの仕掛け(謎解き)で言えば、二人一緒にスイッチに乗らないと開かない扉に片方が別行動を取らないと押せないスイッチなどと実に様々。一人のプレイでは手の下し様がない、実に厄介なものばかりである。
また、ダンジョン内では敵も多く登場し、場所によってはボスとの戦いもあるが、こちらにおいても二人に対するこだわりは炸裂。片方がおびき寄せを担当し、もう片方は攻撃に専念する…という連携プレイが求められたり、また2P側の特殊能力を使わないとまともに対峙する事すらできなかったりと、一人の無力さをヒシヒシと痛感させられる奴らが続々と立ちはばかってくる。勿論、そればかりではなく一人で戦う相手もいるが、数はそちらと比較すると少なめ。改めて、今作は二人で行動するのがメインなんだと、ヒシヒシと痛感させられる。
そしてシナリオ上で発生するイベントにも、二人である事への徹底したこだわりが炸裂。本編では全部で4人ものパートナーが出てくるのだが、その内の一人を連れて来なければならない場面があったり、強制的にパートナーが切り替わり、それと共に行動する場面があるなどと、まさに二人であるからこその起伏に富んだ展開の数々が、これでもかと言わんばかりに詰め込まれている。パートナーの切り替えが重要となる、すなわち2P側は常に違ったキャラを操作しなければならないという、ある意味ではきつい制約もあり、同時プレイ時にはストレスを感じる事が多々あるのも事実だが、それでもコロコロとキャラが変化する為に展開的には飽きが来ない。また、1P側もキャラが変わる度に異なるゲームプレイが堪能できるのも大きな魅力だ。これもまた、二人にこだわったが故にできた賜物。
それほどまでに今作は、二人に対するこだわりが尋常でない。アクションRPGの新しい形を提示したい!…という、制作スタッフの熱き思いが細部に渡って詰め込まれているのである。実際、その「アクションRPGとしての新しい形」は細かい粗はあれど、見事に具現化させる事に成功してると言える。そもそも、ここまで二人同時プレイによるゲーム性を尊重している時点で、アクションRPGとしてはかなり新しい。
それまでアクションRPGと言えば一人で遊ぶものがザラで、二人でプレイできるものも中にはあったりしたが、そこで提示されていたのは常にゲームバランス的な軟化(ボスと戦い易くなるなど)程度。ゲーム性を根本的に変えてしまうまでのものは、無いに等しかった。そんな無いに等しかったもの…二人同時プレイよるゲーム性の変化を成し遂げる。今作はあえてその困難な課題に挑み、それをやり遂げたのだ。
確かに、二人にこだわり過ぎた故、一人プレイが色々と制約のある出来になってると言った粗もあり、合格点とは言い難い箇所もかなりある。しかし困難な課題に挑戦し、不完全とは言えそのコンセプトに従った形を成し遂げたスタッフは流石の一言だ。不完全であっても新しい種を撒こうとした姿勢は、まさにクリエイター…創造主としての在るべき姿。恐れも知らずに挑んだその姿勢は、尊敬に値すると言っても決して過言では無いだろう。「何故、そこまで二人で無ければならないのか?」と言った尋常なきこだわりも、その賜物。この力強さは本当、一度でも目を通しておくべきだと思ってやまない。月並みだが、それ位に今作の新しい物を世に出そうとする意気込みは半端じゃないのだ。
先の繰り返しになるが、キャラクターゲームを多く出してきたバンダイとは思えぬほどに。

その他、二人に対するこだわりのみならず、今作は雰囲気作りの巧さも見逃せない。厳密に言うと音楽と演出なのだが、これがまた…とんでもないクオリティ。極端に言えば、心に深々と染み渡る作風で一貫された、実に印象深いものに仕上げられているのである。
グラフィックは変にディフォルメチック、ストーリーは王道一直線…と地味なのに、いざ遊んで見るとそれっぽさが無い!雰囲気作りがとてもしっかりとしているので、グイグイと作品の世界観に引き込まれていくのである。
更に音楽はその作風のみならず、曲のラインナップも9割がた名曲が占めていると、ドえらい事になっている。特にオープニングデモとタイトルの曲は絶品で、ゲームを始めようにも始められないスパイラルに陥れるほどの魔力を秘めている。更に本編でも海中フィールドやラスボス戦、エンドロールなど魅力的な曲は盛り沢山。正直、この素晴らしい楽曲の数々を聴く目的で今作をプレイしても決して後悔はしない。それ位、凄い完成度となっている。
操作性も申し分無し。ただ、序盤のみキャラクターの歩行速度が遅く、ストレスを感じ易いのが難ありだ。逆にゲームバランスは二人プレイが要される場面を除き綺麗にまとめられていて、特に謎解きの絶妙さは珠玉の一言。全体的に『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』と同レベルの程好さで、心地良い手強さに富んでいるのがお見事だ。

各ダンジョンの総計ボリュームもラストを除いて短過ぎず、長過ぎずの丁度良さで好感触。フィールドマップもバリエーション豊かで、城に屋敷、更には海中要塞に巨大ロボット(?)など、ゲームらしい嘘っぽさが炸裂している。
二人プレイにこだわり過ぎた欠点全般、メニュー切り替えの処理の遅さ、エンディングの素っ気無さなど、実験作だけに粗もかなり多い今作だが、駄作と決め付けるには失礼極まりないほどの捨て難い魅力があり、独特の作品に仕上がっている。二人である事への尋常なきこだわりによるゲームデザインと斬新なシステム、卓越した雰囲気作りに高品質の音楽とアクションRPGに革命作と言っても過言ではない、この『ルインアーム』。アクションRPGが好きなユーザーは勿論の事、真新しいゲームがやりたい方にはこの上ない時間を提供してくれる逸品だ。少し遊び難い所はあるけど、じっくりとプレイしていってみて欲しい。かの『ソウルブレイダー』の如く、きっと記憶に残る作品として貴方の心に刻まれるはずだ。
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