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≫SUPER PANG(スーパーパン)
■発売元 カプコン
■開発元 ステイタス、ミッチェル
■ジャンル アクション
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 7875円(税込)
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 無し(※バックアップ機能・パスワードコンテニュー無し)
■総説明書ページ数 24ページ
■推定クリア時間 1時間〜2時間(エンディング目的)、5〜8時間(完全攻略目的)
世界中の綺麗な景色を見回ろうと、故郷の日本を旅立った少年。
そんな少年の前に突如、ボールの嵐が降りかかった!

「パァーン!」…と危機一髪、少年は無意識の内に持って来ていた、ワイヤー砲でピンチを切り抜けていた。
…あのボール達は一体…?

こうして、波乱万丈のワールドツアーは始まったのだった…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆画面内に存在する風船を全て割れば良いという、あまりにシンプルなゲームシステム
◆十字キーと一つのボタンしか使用しない、ビックリするほど簡単な操作(説明書を読まなくても直に覚える事ができる)
◆全40ステージと、ボリューム満点の内容で構成された『ツアーモード』(更に4つの難易度ごとに異なったステージも楽しめるので一粒で4度美味しい)
◆一度始めると止め時を失う程、強烈な中毒性を兼ね備えた『パニックモード』
◆一撃アウト制、制限時間制と言ったプレイヤーの心理を大きく逆なでさせる、数多くのスリル要素の存在
◆シンプルな内容とは裏腹に、結構歯応えのあるものに調整されている難易度バランス
◆初心者から上級者まで、幅広いユーザーが楽しめるように盛り込まれた、ツアーモードの難易度選択システム
◆舞台となる国の特徴を細部までよく表現している、美麗な背景グラフィック
◆同じく、舞台となる国の雰囲気とゲームの進行度合い(序盤〜終盤)を上手く表現している、完成度の高い音楽
◆可愛いらしいアクションを見せてくれる残機アイコン、時間切れ間近の点滅などと、丁寧に作り込まれている演出群
◆こじ付け感が否めないが、何か笑えてしまう謎のストーリー(笑)
◆ストーリー設定から大幅に逸脱している、嘘っぽさ満載の登場キャラクター達

--- Bad Point ---
◆理不尽さこそ全く無いが、それでも手強過ぎる印象が否めない難易度(簡単なEASYですら結構、手強い。もう少し下げても良かったような…)
◆その難易度の手強さを助長していると言ってもおかしくない、クレジット制システムの存在
◆初期に発売されたゲームと、シンプル過ぎるゲーム内容故の古臭さ
◆ちょいと酷過ぎな、ツアーモードのエンディング(あれは無いだろ…)
▼Review ≪Last Update : ≫
赤い少年よ、…お前は何者だ?

何の為に、そこにいるんだ…?


アーケードで登場し、シンプルなゲーム内容と抜群の中毒性で好評を博したミッチェル制作のアクションゲーム『ポンピングワールド』の続編にしてその移植作。制作は現在は金融業へと業務を移行したソフトハウス、ステイタスが担当。

風船を割っていくだけの超シンプルなゲーム性、そのシンプルさ故の中毒性、そして優れたゲームバランスが絶妙のハーモニーを奏でる、名作アクションゲームだ。

ゲーム内容は、ステージクリアタイプの2Dアクションゲーム。ワイヤー砲を武器として扱う主人公を操作し、ステージ上を漂う風船の群れを全滅させていく、実に単純明快なゲームだ。
しかし、普通のアクションゲームとは異なり、プレイヤーが挑む事になるステージは全て一画面内に納められた構成となっていたり、ワイヤー砲で攻撃できる方向が上のみである、更にほんの少しパズル要素があるなど、アクションゲームと言うよりは、パズル要素を少し含んだアクションシューティングゲームというのが妥当かもしれない。
ゲームモードは2種類。世界各地の名所を巡りながら全40にも渡るステージを順番に攻略していく、ステージクリアタイプの『ツアー・モード』、次々と天井から湧き出てくる風船の群れを割っていき、どれほどの高スコアを叩き出せるかを競う持久戦の『パニック・モード』が用意されている。どのゲームモードも説明書要らず、事前練習要らずのお手軽仕様。ゲーム初心者でも上級者でも、すんなりとゲーム本編へと入り込んでいける、大変敷居の低い作りとなっている。そんなゲーム初心者も上級者もすんなりと入り込め、気軽に楽しめるシンプルさへの徹底したこだわりが本作の最大の売りだ。
とにかく本作にはゲームシステム、操作性の面において『複雑』の2文字は無い。いずれの面もまさに説明書要らず、超シンプル且つ簡単なものに仕上げられているのである。特に操作性は、ファミコンのゲーム並に簡単。十字キーとAボタンかBボタンのいずれか1つしか使わないのだ。その他、スタートボタンやセレクトボタンなども使用するが、これは基本的にポーズ等のゲーム本編とはかけ離れた箇所での仕様がメインで、さほど使う場面は用意されていない。とにかく、十字キーとAボタンに触っていれば、それだけで楽しめてしまう。ある意味、恐ろしいと感じてしまうぐらいにシンプルなのである。スーパーファミコンと言うボタン数が多いハードにおいて、ここまで他のボタンの使用を禁じたゲームと言うのも珍しい。それ位、制作スタッフは「誰もが楽しめる」、そして「簡単である」という2つの事にこだわって本作を作ったのだなという事が伺える。本当に、このひたすら「簡単」にこだわりにこだわり抜いた姿勢には感服する次第。まさに、ゲームの本来在るべき姿がどういうものなのかを痛感させられる。
簡単なのは操作性だけではない。ゲームルールも操作性に匹敵する簡単さで、基本的に「ステージ内に漂う風船をワイヤーで全て壊す」という事だけを頭の中に叩き込んでおけば、それだけで普通に本編が楽しめてしまう。しかも、そんな簡単な内容であるが故の時間を忘れてのめり込める、圧倒的な中毒性をも引き出してしまっているのだから、なかなか飽きが来ない。これぞまさに、『シンプルなゲームの魔力』とも言うべきだろうか。簡単だからこそ生まれる、ゲーム初心者から上級者の誰もが味わえる強烈な中毒性。その恐ろしさまでも本作では痛いほどに思い知らされるのだ。
1つの事にこだわり抜いた姿勢、そしてこだわり抜いたが故の色あせない面白さ、それを嫌というほど表現している本作は、昨今の重厚長大なゲームを作り出そうとする制作姿勢へのアンチテーゼであるとすら感じさせられる。それぐらいに本作は、「男の中の男」ならぬ「ゲームの中のゲーム」とも言わんばかりの内容となっているのだ。

しかも、それで凄いのが難易度で全く簡単さを出してない事。このような内容であるにも関わらず、本作のゲームバランスは意外にもかなり高めに設定されているのだ。
基本ルールこそ「ステージ内に漂う風船を全て破壊する」という簡単なものだが、順番を誤って破壊したりすると取り返しの付かない事態に陥ってしまったり、それらの動きをよく観察しながら行動していかないと、あっという間に窮地に追い込まれてしまったり、挙句…ステージ内に登場するアイテムを誤ってゲットしてしまうと、優位だった状況が一斉に不利な状況に陥ってしまったりなどと、とにかく周辺に少しのミスも許されない不確定要素が満載。なかなか、そう簡単にはクリアさせてくれないのである。
おまけに、プレイヤーが操る主人公は、たかが風船に触れただけで死亡してしまう軟弱な体力の持ち主で全然強くない。挙句、各ステージには制限時間が設定されており、それまでに風船を割り切らないとミスになる制度まである。
これらの事を聞いただけでも、如何に本作が手強いゲームであるかは用意に想像ができたと思う。簡単な操作性とシステムという表面部分は優しくしておいて、内面部分では厳しくする…。非常にギャップの激しい作りになっているのである。
しかし、かと言って別に本作、腕のある人で無いとクリアは無理なほどの難しさではない。確かに難易度自体は高め。その事実に揺らぎは無い。実際、ステージ1からいきなりプレイヤーは命の危機に晒される。まさに背水の陣である。けど、どんなミスも基本的に大半はプレイヤーの不注意によって生じるもの。運が悪かったと言った理不尽なものの無い、理に適った難しさとなっているのだ。言い換えれば、誰もが楽しめる難しい難易度。そんな理想的な高めのバランスを、本作は全編を通じて保っているのだ。しかも、それに並行して誰もが味わえる確かな達成感をも演出。初心者から上級者も心地良い疲労感を味わう事ができるのである。まさに、芸術的とも言わんばかりのバランスだ。簡単な操作とシステムを保ち、それを通じて遊んだ誰もに確かな達成感を提供する。イタズラに高い難易度にするアクションゲームとは違って、遥かに高い難易度の説得力がある。如何に製作スタッフが遊び手の満足感を最優先してこのバランスにしたかが分かる。
また、初心者と上級者の棲み分けとして難易度選択機能を盛り込んでいるのも見事な配慮。全てのユーザーにこの手応えを味わって欲しいと言うこだわりが反映された格好だ。なお、このこの難易度の選択が可能なのは『ツアー・モード』のみで、『パニック・モード』は「簡単→難しい→激難しい」と流れが一貫したものになっているので、設定はできない。だが、最初から簡単な難易度で始まるようになっているので、初心者でも大丈夫。共に理想的且つ説得力に満ちたバランス調整が成されている。それだけに、ゲームオーバーのコンテニューがクレジット制で、嫌なシビアさを出してしまってるのが残念ではあるが、それもまたゲームとしての達成感の増強に一役買ってると見れば、これもまたアリと見て取れる。
簡単だけど手強い。けど、誰もが共通して味わえる手強さ。そんなバランスを保つ本作は、まさに理想的な高難易度のアクションゲームと言えるだろう。この敷居の広さと懐の広さは桁違いだ。

ゲームを彩るグラフィックと音楽の出来もなかなか。流石に発売された年がスーパーファミコンでは初期の頃という事もあって、貧弱な所があるのがタマにキズではあるが、それでも当時の水準で考えればかなり頑張っている方。
特にグラフィックでは、各ステージの世界各地をイメージした背景が印象的。如何にも画面構成がゲームしてるので、世界を旅行してるような雰囲気には浸れないが、それでも細かい所まで丁寧に描き込まれていて見応えがある。
音楽の完成度もなかなか。世界各地の童謡をアレンジしたものから、オリジナルと実に豊富な楽曲が用意されている。中でもイギリスステージの曲は秀逸だ。
演出に関しても地味ながら頑張ってる。特に制限時間があと僅かになった際に生じる(抑え目の)点滅演出と音楽は、プレイヤーの焦りを助長させる作りとなっており、なかなか好感が持てる。そして、アウトになると主人公と一緒にになって倒れる、残機アイコンのリアクションも良い感じだ。

他にも、何故かプレイヤーをサポートするペガサスやドラゴンと言った変なモンスター達、1回のプレイが短くて作りもトリッキーなステージ構成などと見所は満載。
あまりにシンプルに徹し過ぎてるが故に古臭さがある事やゲームオーバーのクレジット制、そしてエンディングの味気なさなど少々、気にかかる部分もあるが、それを抜いてもゲームとしての完成度は非常に高い。
まさに「ゲームの中のゲーム」と言わんばかりの敷居の低さと圧倒的な中毒性、そして優れたゲームバランスが光るこの『SUPER PANG(スーパーパン)』。ゲーム初心者から上級者まで幅広く楽しめる、最高にシンプルで熱い名作アクションゲームだ。昨今の複雑なゲームに疲れた方、簡単にはまれるゲームを求めている方には打って付けの一本。何の脈絡もなく現れた風船の群れをワイヤー砲でぶっ潰しながら、世界各国を駆け巡る快感。是非、味わってみて欲しい。
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