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≫天地創造
■発売元 エニックス(現:スクウェア・エニックス)
■開発元 クインテット
■ジャンル アクションRPG
■CERO(推定) B(12歳以上対象) ※暴力、出血描写等あり
■定価 12390円(税込)
■公式サイト ≫スクウェア・エニックス:紹介ページ
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 3つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■総説明書ページ数 34ページ
■推定クリア時間 12〜25時間
かつてこの星に、光と闇の戦いがあった。
二つの力は、この星の地表から全てのものを消し去り、自らも深い眠りについた。

地裏という世界にある、小さな村『クリスタルホルム』。
ここに暮らす少年アークは、ひょんな事から村の外へと旅立つ事になる。
全ては、自らの過ちによって魂を抜き取られた村人達を助ける為。
だが、そんな彼の村人を助ける為の旅は、いつしか星を復興する為の壮大な旅へと変貌していく。大陸を、生命を、そして文明を取り戻しながら旅を続けるアーク。

その先で、アークを待ち受ける大いなる運命とは…?
▼Points Check
--- Good Point ---
◆ストーリーの都合と言った縛りが薄くなり、自由度が増したゲームシステム
◆マップがフィールドとエリアの二つに区分され、見た目としても世界の広さを感じられるようになったゲーム展開
◆アクションゲームに負けず劣らずの動かす面白さにこだわった、優れた操作性
◆同じくアクションゲームに負けず劣らずの爽快感を秘めた、多彩なアクション
◆多彩なアクションを活かすギミックと無駄な手数を踏ませない為の工夫が光る、ダンジョンのマップ構成
◆パズル的な面白さとアクション要素を上手く絡めた、絶妙な謎解き
◆力押しを極力封じ、着実に攻略していく面白さを徹底した歯応えのあるゲームバランス
◆『天地創造』の名に相応しい壮大なテーマと、悲劇的な展開が秀逸なストーリー
◆遊んだ誰もが先へと進める事の意欲を(良い意味で)失う、エンディング前のイベント
◆街の発展、プライムブルー集めなど、充実したサブイベント群とやり込み要素
◆スーパーファミコン成熟期ならではの丁寧な仕事ぶりが光る、美しいグラフィック
◆ストーリーの悲劇性を刺激させる、心に直接染み渡る深くて印象的な音楽
◆8メガの容量を要して実現させた、ド派手且つ美しいムービーデモ
◆スーパーファミコンのハード性能を効果的に取り入れた、見応えのある演出群(特に地裏のフィールドマップは必見)

--- Bad Point ---
◆魔法攻撃の使い勝手が悪過ぎる(と言うよりも、使用場面に恵まれない…)
◆構造が特殊すぎて、イマイチ使い難いメニュー画面『パンドラの箱』
◆遅いメッセージ表示がウザい、レベルアップ時の演出(いちいち報告しないで良い!)
◆説明不足な所が幾つかあるためか、多少中身がぼやけてしまう中盤のストーリー
◆やや長すぎる感のある、フィールドマップでの遠方移動時のデモ(もう少し短く…)
◆基本攻撃力も含めて、強く設定し過ぎな感が否めないボス『ブラッティマリー』
◆決してやられはしないのが救いだが、正直、反則過ぎるラスボスの回避不能攻撃
▼Review ≪Last Update : 1/26/2008≫
私達はきっと…何処かで逢える。

運命の赤い糸で繋がれている限り…。


聖書の『天地創造』をモチーフとした、壮大なストーリーを描いたアクションRPG。企画・開発は『ソウルブレイダー』等の名作を世に送り出してきたソフトハウス『クインテット』、キャラクターデザインは『ドラゴンクエスト ロトの紋章』等で有名な藤原 カムイ氏が手掛けている。

壮大且つ、あまりにも悲劇的なストーリー。優れたゲームシステムと操作性、演出がプレイヤーの涙を誘う、スーパーファミコン史上、最高級のアクションRPGだ。

ゲーム内容は、これまでクインテットが制作してきた『ソウルブレイダー』、『ガイア幻想紀』の流れを汲む、シナリオ型のアクションRPG。プレイヤーは『地裏』と呼ばれる地球の裏に住む少年『アーク』を操作し、様々なダンジョンやイベント等を攻略しながら、地上である『地表』の大地やそこに生息する生命達を復活させていく。
基本的な構成及びゲームの流れは、かつての『ソウルブレイダー』や『ガイア幻想紀』とは異なり、RPG色を強調した作りとなっており、行動面における自由度が飛躍的に向上。僅かながら制限こそあるものの、あまりストーリーに縛られる事も無く、ゆったりと作中の世界を隅々まで満喫できる内容にフルモデルチェンジした。
また舞台となるマップも、今作では『フィールド』と『エリア』の二つに区分し、フィールドではエリア間の移動がメイン、エリアでは敵との戦闘や情報収集、そしてダンジョン攻略(謎解き)がメインと言ったように差別化を図り、RPGっぽさを強化。あまりに一本道過ぎた為、展開としても単調になり易かった『ソウル』や『ガイア』における欠点を克服、起伏があって自由度も高いという、極めて飽きの来難いゲーム展開を実現している。
これまでの作品が、アクションRPGと言うよりはむしろ、『RPGアクション』としての手応えが強かった事への反省としてだろうか。そんな感じに今作は、随所において、「正真正銘のアクションRPGを目指そう」とする熱い意気込みを感じ取れる。
かと言って、もう一つのアクション要素が、逆に大幅に薄れた…という訳でもなく。むしろ、アクション要素はこれまでのシリーズを遥かに凌ぐ進化を遂げており、よりスムーズに!よりスピーディに!よりダイナミックに!…の三拍子が揃った、キャラを動かす面白さに徹底的にこだわった仕上がりとなっている。実際に触ってみると痛いほど分かるのだが、とにかく主人公『アーク』のアクションが凄い。基本動作でもある攻撃にしても通常攻撃の他、ダッシュ攻撃に連続突き攻撃、スライディングアタック、ジャンプ斬りと色んなバリエーション物が用意されているのである。その多彩な攻撃手段は、まさにアクションゲーム顔負け。操作感も非常に軽く、純粋に適当にボタンを触っているだけでも楽しい手応えを演出している。更に攻撃のみならず、移動のアクションもダッシュにジャンプ、泳ぎに物投げなど色んなパターンが用意されており、プレイヤーを飽きさせない。各マップやダンジョン等も、これらのアクションを最大限に活かす為の工夫やアイディアが随所に凝らされており、多彩なアクションの妙を心行くまで堪能できる。『ゼルダの伝説』のように、ゲームが進むにつれて少しずつ、新しいアクションが増えていくと言う流れもまた、とても自然且つ親切で、プレイヤーに対する気配りが満ち溢れていて素晴らしい。『ガイア』の変身のようなインパクトは無いが、今作でもクインテット製のアクションRPGならではの操作感に対するこだわりは健在。見た目は地味ながらも、着実に進化したアクションをその手を通して実感する事ができる。
見違えるほどに自由度の増した構成と、更なる進化を遂げたアクション性。このように今作はシステム、操作性共に一連のクインテット作品の集大成と言うに相応しい出来栄えで、アクションRPGというジャンルの「到達点」とも言うべきものが提示された、非常に印象深い作品に仕上がっている。「指先が物を言うアクションRPG」というパッケージ裏の謳い文句に偽りはなし。正真正銘にして、本気のアクションRPGの面白さが今作には凝縮されている。

また、進化したゲームシステムとアクションのみならず、進化(深化)したストーリーと演出からも目が離せない。『天地創造』というタイトルに乗っ取った、『破壊と再生』をテーマとした、如何にもクインテットのゲームらしい(それでいてシリーズを遊んだ事のある方ならば既視感のある)ストーリーが今作でも描かれるのだが、これがまた桁違いに内容が重い。
特にそれを体現しているのが、ゲーム中盤の地表に人間が復活した後に展開されていくイベント全般で、文明を発達させる事が必ずしも人々の幸せ…ひいては世界の幸せに繋がる訳ではない、それと共に失ってしまうものが沢山ある…という事を痛いほどに思い知らされる。その前のイベントで必死になって助けてきた動物達が、人間達の手によって次々と殺され、また不遇な運命を辿るハメになってしまったりと言った惨たらしい展開の数々には、遊んだ誰もが心を痛めると同時に、人の愚かさと言うものを思い知らされる事だろう。
また、そんな人間達の振る舞いに、メインのストーリーも中盤の山場を通り越すにつれ、次第に『地表の復活』が世界にとって本当に良い事なのかが曖昧になっていく。そして復興に対する疑問が強くなりつつある中、ゲームは終盤へと突入するのだが…。ここから先の展開は、実際にその目で確かめてみて欲しい。正直、あまりにも衝撃的な内容である為、ここでは一切話せない。繰り返しになるが、こればかりはそれぞれの目で確認して頂きたい。きっと誰もが、その「どうしようもなさ」に涙を流してしまうだろう…。それほどまでに、今作のストーリーというのは壮大でありながらも全体的に重く…悲劇的。スーパーファミコンのみならず数あるRPGの中でも、五本の指に入る程のインパクトを秘めた出来栄えとなっているのである。一昔前のゲームらしく、所々に説明不足な所があったり、少し展開として無理矢理な所もあったりするが…ラストのエンディングが見事に補ってくれているので、それほどまでに致命的になってないのが救い。また、あえて表現をぼやかす事で、プレイヤーに「正しい事とは何なのか?」と言った考える余地を与えている辺りは、如何にもクインテットらしい手法だなぁ…と感じさせられる。
ストーリーを盛り上げるグラフィックと音楽も素晴らしい出来栄え。特に音楽の完成度とストーリーへの溶け込み具合は半端じゃなく、荘厳でありながらも適度に抑えられた曲調が、各場面をより印象深いものに仕立て上げている。曲そのものも名曲満載で、序盤の地裏のフィールドマップで流れる曲は必聴の価値ありだ。
演出面も素晴らしく、8メガの容量を使い切ってまで表現した、地表の大地復興デモの美しさは圧巻。随所に盛り込まれた、スーパーファミコンの機能を最大限に活かし切った特殊表現(地裏のフィールドなど)も、プレイヤーの関心を大いに惹き付ける。これらの優れた表現と演出によって展開される本作のストーリーが、如何に強烈なものとなっているかは…もう想像に難くないだろう。故に、こちらから言える事は唯一つ。
「とにかく、やってみろ。やってみりゃ、分かる。」
ゲームだけでなく、ストーリーでも大いに楽しませてくれる、本当に豪華版としか言い様のない内容となっているのだ。まさに全てが一級品…と言うに相応しい。

魅力はシステムとストーリーのみに留まらない。クインテット製のアクションRPGの代名詞とも言える、無駄な手数を踏ませない為の設計が冴え渡る、ダンジョンマップの構成、絶妙なゲームバランスもまた、本作の魅力の一つと言える。
特にゲームバランスは、かつての『ソウル』や『ガイア』に比べ、やり応えが一段とパワーアップ。力押しが通用する場面がほとんど無いなど、より”ゲームらしい”ものへと進化を遂げた。プレイヤーの前に立ちはばかるボス達も今作は、どれも強敵ばかりで一瞬の油断が命取りとなるなど、それまでのシリーズにやり応えの乏しさを感じていた方にとっては、まさに涙モノの仕上がりとなっている。勿論、やり応えがアップしたとは言え、理不尽に…ではなく、基本は「頑張れば必ず突破できる」という理に適ったバランスとなっているので、初心者でも全然大丈夫。誰でもゲームらしい手応えを満喫できる仕様となってるので心配無用だ。
しかし、一つ苦言を呈すならば、ゲーム中盤に登場するボス『ブラッティマリー』は流石に強くし過ぎじゃないかと思ったが…。また、ラスボスが回避不能攻撃を放ってくる(と言っても、喰らい続けても体力はゼロにならない)というのもちょっと反則な感がある。それでも、全体的なバランスの良さはこれまで通りなので、統一感は取れてる。今作でも、鬼気迫る調整というクインテットらしいこだわりは健在だ。相変わらず、この丁寧な仕事振りには頭が下がる。

RPGらしいゲーム構成にモデルチェンジした事もあり、サブイベントややり込み要素も充実。特に『街の発展』は、クインテットがスーパーファミコンで最初にリリースした『アクトレイザー』を髣髴とさせるものがあって、なかなか面白い。発展の法則にも少しコツがあるなど、本格的な仕上がりになってる辺りもこだわりを感じさせられる。
他にも章仕立てによる構成で展開していくストーリー描写、リアルタイムメッセージシステム、エンディング前の切ないイベントなど見所は沢山ある。途中で会得する魔法とメニュー画面の使い勝手の悪さ、中盤のストーリーの中だるみと一部ボス、そしてフィールドマップでの冗長な移動デモと能力アップのメッセージがウザいレベルアップ時の演出などの欠点もある作品だが、アクションRPGとしての完成度とストーリーの完成度は紛れもなく、スーパーファミコンのゲームソフトの中では三本の指に入るクオリティに値する。総評は、文句無しの名作。ソウルやガイアをプレイしたユーザーのみならず、アクションRPGが好きな方やRPG好きの方なら、是非ともプレイすべき一本だ。この優れたゲームシステムと操作性、悲劇的なストーリーは何が何でも体験してみる価値あり。

貴方は、ゲームを全て終え、素直にエンディングへと移れますか?
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