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≫テトリス武闘外伝
■発売元 BPS
■ジャンル 対戦型アクションパズル
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 8400円(税込)
▼Information
■プレイ人数 1〜2人
■セーブデータ数 無し(※バックアップ機能・パスワードコンテニュー無し)
■総説明書ページ数 29ページ
■推定クリア時間 4〜5時間(エンディング目的)、30〜36時間(完全攻略目的)
8人の個性豊かな者達が、様々な思いを胸にテトリス谷に住むドラゴンに挑む!
彼らの願いは叶うのか!?
▼Points Check
--- Good Point ---
◆相手にブロックを送り込むのみならず、フィールドを崩す攻撃まで可能なテトリス史上前代未聞のゲームシステム
◆ブロックに無数の穴を開ける『ボム』等、過激な性能を持った全32種類以上もの必殺技
◆それぞれ個性豊かな必殺技を所持する、全8人以上ものプレイヤーキャラクター達
◆落ちてくるブロックをテクニック次第で『横取り』できる、独特のブロック落下システム
◆必殺技などの各要素の存在もあって、尋常でないほど盛り上がる対戦プレイ(熱過ぎ!)
◆普通のテトリスが遊べるモードにスピード調整など、痒い所まで手の届いたオプション
◆まるで『ぷよぷよ』に似た手応えが堪能できる、斬新な『レンサテトリス』モード
◆選んだキャラによって異なるストーリーが楽しめる、やり応え満点の『1人プレイモード』
◆テトリスシリーズの伝統に乗っ取った、シンプルで取っ付き易い操作性
◆まるで絵本の世界のような、独特の可愛らしさと「ユルさ」が異彩を放つ世界観
◆独特の世界観を鮮明に描いた、可愛らしいグラフィック(キャラ周りのドット絵が秀逸)
◆世界観にマッチした、楽しげな曲が盛り沢山の音楽(妙な小ネタも満載)
◆まるで緊張感の無い「ユルさ」が微笑ましい、一人プレイの寸劇シーン
◆必殺技の仰々しさを限りなく表現した演出(いずれも凝った仕上がり)

--- Bad Point ---
◆強いと弱いの差が極端に出てしまっている必殺技(バランス的にまとまってない)
◆必殺技の問題もあり、決まって固定されてしまう対戦プレイ時のキャラ
◆冗長気味な各必殺技のエフェクト(カット機能とかがあれば良かった)
◆反則極まりないラスボスの必殺技(全て形勢を逆転させるものばかりで鬼…)
◆十字キーの上という、違和感の残る必殺技発動ボタン(別のボタンに割り振っても)
◆対戦に特化した内容の為、総じて乏しい感が否めない収録ゲームモード
▼Review ≪Last Update : 10/4/2008≫
もう、普通にブロックを消すのは時代遅れだ

進化した者達が送る乱撃に刮目せよ!


落ちモノパズルゲームのパイオニア『テトリス』の対戦プレイとキャラクター性を特化させた、文字通りの外伝作品。

テトリスシリーズ史上、最高の対戦ツールだ。

基本的なルール周りはこれまでのシリーズと同じ。画面上部から落下してくるテトラミノ(ブロック)を積み、列を作って消していくお馴染みのものを起用している。しかし、内容についてはこれまでとは劇的に異なる。何と、収録されているゲームモードは対戦モードしかない。テトリスではお馴染みである、一人プレイモードが今作には無い。対戦に特化した、いわゆる『ぷよぷよ』タイプの内容となっているのである。
更に従来のテトリスとの違いを決定付けるのが『クリスタルブロック』の存在。今作では、画面上部から落下してくるテトラミノにクリスタルブロックと呼ばれる、光るブロックが組み込まれており、これを従来のテトラミノと同様の手順で消すと、その消した際に巻き込まれたクリスタルが画面左端(2P側だと右端)にストックされる。そして、それを地道に溜めていくと…何と相手に対して強烈な『必殺技』を放つ事ができるようになる!普通にテトリス(4段消し)をし、相手にお邪魔ブロックを送り込むのよりも遥かに強烈、それでいて過激極まりない『必殺技』を叩き込めるようになるのである!
しかも、放てる必殺技はクリスタルブロックを溜めた数のレベルによって変化。例えばハロウィンと呼ばれるキャラクターの場合、溜めたクリスタルブロックの数がレベル1だと自分のフィールド下3ラインを埋める『フライ』、レベル2だと3ブロック落ちる間、相手のフィールドを暗くしブロックからの光でしか見えなくする『ダーク』、レベル3だと相手のクリスタルブロックを強奪する『バンパイア』、レベル4だと相手フィールドのブロックに無数の穴を開ける『ボム』と言った感じに、レベル高ければ高いほど、より強力な必殺技を放つ事ができる。
また、キャラクターによって必殺技も変化。ミルルンと呼ばれるキャラの場合、相手のフィールドブロックの一番高い所から、ブロックのある所と無い所を逆にする『スリトテ』なる技を持っていたり、アラジンと呼ばれるキャラは『ファックス』と呼ばれる自分のフィールドのブロックをそのまま相手に送る技を持っていたりと、それぞれ違った必殺技を所持。使い手によって、異なる戦略によるプレイを堪能できるのである。しかも、選べるキャラクターは全部で八人。八人分の違ったゲーム展開、違った戦略性を堪能できてしまうのだ。更に一人プレイモードでは各キャラクターごとに本編のストーリーとエンディングも変化するという贅沢な特典も付いている。これで今作が、従来の対戦型パズルゲームにも増してハチャメチャ、且つやり応えのあるものなのかはまざまざと思い知っただろうと思う。
だが、それ以上にこのゲームシステムそのものにビックリだろう。爆風が舞い、ブロックが切り替わる怪奇現象が起き、優勢が逆転したりと…その光景の数々は、それまでのテトリスでは一切、見受けられなかったものばかりだ。
テトリスとか言いながら、もはやこれはテトリスという名の別物。その名も『バトリス』!
テトリスを対戦型に特化させると、一体どのような変化が生じるのか?今作はその一つの疑問に挑み、それを具現化させた一種の実験作とも言うべき、革新的な内容となっているのである。ちょっと一つの要素を加えてみたら、とんでもないものが出来上がってしまった。まさに『偶然の産物』とも言ってもおかしくない一本なのだ。
だから、普通のテトリスが楽しめる対戦型ゲームだと思って本作をプレイすると、ちょっと痛い目に合う。ただ、普通のテトリスによる対戦プレイもちゃんと用意されているので、昔ながらのテトリスファンの為の救済処置は万全。その辺は今作、よく分かっている。しかし…断言する。通常のテトリスの対戦では今作、最大の魅力を味わう事は不可能だ。

そんな今作最大の魅力、それはバトリスがもたらした超白熱必至の対戦プレイにある。
単刀直入に言おう、このバトリスによる対戦プレイはテトリス史上、最高に面白い!
普通のテトリスによる対戦の3倍どころか、10倍は面白い!
最新作にも負けないほどに面白い!
その今作の対戦の面白さを演出する根源、それは必殺技にある。
先に紹介した性能を見ればお分かりの通りだが、どの技も滅茶苦茶強烈。対戦の流れを一瞬にして変えてしまう大胆なものしか用意されていないので、予測不能の波乱に富んだ戦いを終始、味わえるのだ。だからどう見ても絶望的、負けが確定したような戦いであっても、それが確定する保証は無い。そう言った状況でも例えば『コピー』なる、現在の自分のフィールドを相手も同じにしてしまう技を使えば、一瞬の内にして両者絶望的!…なんて状況に持ち込むことすらできてしまう。思い通りのブロックの山を作ろうとしたら、相手が自分の操作をダブらせる必殺技を発動させて、プランを滅茶苦茶にされてしまうなんて事も軽々とできる。そんな絶望的な状況も軽くひっくり返せるのみならず、プレイヤーのプランまでかき乱されてしまうから、戦いも否が応に盛り上がる。そして爆笑の嵐が起きる。
どう考えてもそれは、通常のテトリスでは味わえないものであるかは想像に難くない。だからこそ、今作のバトルは最高に面白い。通常のテトリスの3倍どころか10倍の面白さが秘められているのである。
更に対戦を盛り上げるのが、テトラミノの『ネクストブロック(次に落ちてくるブロック)』の特殊な仕様だ。後の『スーパーボンブリス』の対戦プレイにも実装されていたものなのだが、今作ではこれが何と1Pと2Pで統一されており、相手よりも先にブロックが落下すれば、一番手のブロックが次のブロックとしてスロットインされ、逆に相手よりも後に落下すれば、二番手のブロックが次のブロックとしてスロットインされるという、先手必勝の仕様となっているのである。その為、次はこのブロック…と思って想像していたら、二番手のブロックが落ちて来て、それまでに描いてたプランがかき乱されるなんてことがしばしば。この特徴を逆手にとって、素早くブロックを落として理想のブロックを手に入れる『横取り』もでき、相手のプランを潰すなんて事も可能。 従来のテトリスには無かった、エキサイティングな取り合いが楽しめるのだ。テトリスでブロックの取り合いをする、その仕様だけでもシリーズファンならば「凄く面白そうだ!」とワクワクしてしまうだろう。対戦を盛り上げるのは必殺技だけではない。こう言った地味な要素も対戦の盛り上げに一役買っており、全編に渡って「対戦型のテトリスとして申し分の無いものを作り上げよう」とする、スタッフの熱いこだわりが炸裂しているのである。
また、そんなこだわりの賜物とも言える、充実した対戦オプションも秀逸。先の旧来のテトリスユーザーに対応した『普通のテトリス』のみならず、必殺技が飛び交うハチャメチャプレイを楽しみたい方の為のパワー調整機能、シビアなプレイを楽しみたい方の為の落下スピード調整機能と言ったものが出揃っており、設定次第ではぶっ飛んだ対戦も楽しめてしまう。更に『普通のテトリス』には『レンサテトリス』なる、隙間にブロックが落下するようになる特殊なモードも収録。まるで『ぷよぷよ』のような、別物的なゲームによる対戦プレイも楽しめてしまう。
バトリス、テトリス、レンサと遊び方が三種類でオプションも充実。とにかく今作は対戦に対する力の入れようが尋常でない。そして、肝心の対戦プレイの面白さも良い意味で、常軌を逸してしまっている。対戦型のテトリスとしては及第点どころか、やり過ぎの域にまで達した、腰抜けモノの驚くべきクオリティを維持したテトリス史上、最高の仕上がりとなっているのである。まさに、やり過ぎバンザイだ。

しかし、実験作という裏の顔も合ってか、色々と細かい粗もある。特にキャラごとの必殺技の強さにまとまりがない、強い奴と弱い奴の差が激しい辺りはまさに実験作故の欠点。どうしてもやり込むとキャラが固定されてしまうのは、残念と言わざるを得ない。できればもっとバランス調整には時間をかけて頂きたかったところだ。
また操作性も悪くは無いのだが、必殺技の発動が『十字キーの上』と言うのは地味に違和感がある。誤って押してしまいかねない位置でもあるので、できれば他の使っていないYボタンやXボタンに割り振って頂きかった。いつもの操作にまとめようとした狙いがあったのかもしれないが、流石にこれは苦しいとしか言い様が無い。
そして各種必殺技のエフェクトが冗長気味で、テンポを殺ぐ存在と化してしまっているのも残念。対戦時はあまり気にならないが、せめてカット機能を実装するとか、そういうフォローを行って欲しかったところだ。技によっては、スピーディなものもある事はあるのだが。
逆にグラフィックや音楽は申し分の無い完成度。グラフィックは、ファンタジーの世界をベースにしているという事もあり、それまでのテトリスには無い『華やかさ』が描かれているのが新鮮。各キャラクターも可愛らしいデザインとなっており、中でもプリンセスは必見だ。音楽もファンタジーの世界観にマッチした、楽しげな曲が盛り沢山。時代劇の『必殺仕事人』をベースにしたパロディ曲もあったり、ネタ的な面白さに富んでいるのも秀逸だ。
更に一人プレイモードでは、各ステージの開始前にキャラとの掛け合いも挿入されるのだが、これもまた良い感じに「ユルい」。ある意味で『ぷよぷよ』を超えたとも言える、その脱力全開のテイストは是非とも要チェックだ。

とにかく、対戦。それに全てが集約される今作。必殺技による派手なエフェクトで埋め尽くされ、優勢が逆転し、奇怪な現象の数々が起きるその波乱万丈に満ちたゲーム展開は、昨今のテトリスでは決して味わえない…というよりもこの先、二度と味わえない面白さに満ち溢れている。
実験作という側面を持つ性質上、粗も目立ちはするが、仲間が集まった際の対戦ツールとしては抜群の存在感と機能性を発揮する、この『テトリス武闘(バトル)外伝』。テトリスの一つの進化系がここにある。パズルゲームファン、対戦ゲーム好きの方ならば是非とも要チェックの意欲作だ。文句無しにお薦めです!
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