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≫スーパータリカン
■発売元 トンキンハウス
■開発元 ファクター5
■ジャンル アクション
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 7875円(税込)
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 無し(※バックアップ機能・パスワードコンテニュー無し)
■総説明書ページ数 15ページ
■推定クリア時間 1時間半〜2時間(エンディング目的)、4時間〜6時間(完全攻略目的)
惑星自由連合軍のパトロール・宇宙船『アバロン1』。
その特殊戦闘員である主人公は、全銀河の暗黒を支配する邪悪な機械生命体の魔の手から惑星『カタキス』を解放するミッションを受けた。
ミッションを受領した主人公は、すぐさま攻撃用バトルスーツ『タリカン』を装着。
カタキスを侵攻する機械生命体を駆逐する為、現場へと向かった…。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆『魂斗羅』と『メトロイド』の良いとこ取りで作られた、オマージュ全開でありながらも独自性を秘めたゲームシステム
◆マシンガン、レーザー、バウンド弾など効果も含めて多彩な武器バリエーション
◆ボールになって突撃したりなど、地味ながらも充実したプレイヤーアクション
◆探索要素とアクションシューティングの要素が絶妙に入り交ざった珠玉のステージ構成
◆遺跡、火山、更にはエイリアンの体内などバリエーション豊かなステージロケーション
◆ステージそれぞれの特徴が綺麗に表現された、個性的なステージギミック(仕掛け)
◆迷い易いそうで迷い難い程好さが気持ち良い、ステージの探索要素
◆地味になりがちな探索を大いに盛り上げる、爽快感満点のシューティング要素
◆海外製ゲームとは思えないキビキビとした感触が素晴らしい、最高の操作性
◆暇つぶし程度に気軽に楽しめる程好さが素晴らしい、適度な総計ボリューム
◆同じく気軽に楽しめる程好さが色濃く現れた、温めのゲームバランス
◆三種類の難易度など、コアユーザー対策もバッチリなサポート機能群
◆まさにドット絵の芸術と言わんばかりの描き込まれたグラフィック
◆スーパーファミコンとは思えぬ透明感溢れる音質が素晴らしい音楽(名曲も盛り沢山)
◆拡大・縮小などスーファミらしさ全開の凝った演出

--- Bad Point ---
◆致命的までに少な過ぎるボス(全部で4体しかいない)
◆同じく致命的までに弱いボス(特に簡単にハメ殺しできるステージ1−3のボスは酷い)
◆やたらと多く目盛りがあるのに敵の攻撃によっては4つ減らされたりと、整合性からして無茶苦茶な体力ゲージ(あれじゃ初見の人は誤解する…)
◆やや物足りない感も否めない総計ボリューム(あと2ステージぐらいあって良かったかも)
◆1ドット単位のズレが命取りになるシビアさが酷いステージ4-2(他は悪く無いんだが…)
◆たったの3回と明らかに少ない、ゲームオーバー時のクレジット数
◆手抜きも同然なローカライズ(全メッセージを日本語訳してないなど適当な所が多い)
▼Review ≪Last Update : 12/31/2008≫
これは断じて「パクリ」ではない。

正真正銘のインスパイアだ。


1990年にコモドール64用ソフトとしてリリースされ、優れたゲーム性と素晴らしい音楽で「伝説のアクションゲーム」とまでユーザーから賞賛された、ファクター5の処女作『タリカン』シリーズのスーパーファミコン版。

芸術的な使い回しが異彩を放つ、傑作アクションゲームだ。

ゲーム内容は、探索要素を含むステージクリア型アクションシューティングゲーム。マシンガンやレーザーと言った多彩な武器やアクションを駆使して迫り来る敵を倒し、広大なステージを攻略していくというものだ。
……と、この時点で特に、ゲームに精通した方は頭の中で一つの疑念が湧き上がっただろうと思う。「あれ?それって何処かのゲームと同じじゃないか?」…と。
単刀直入に言ってしまおう。その通りだ。そう、今作は…その何処かのゲームと同じ。モロにタイトルを出してしまうと、コナミの『魂斗羅』シリーズと全く同じスタイルを持ったアクションシューティングゲームとなっているのである。
しかも、それのみならず何と本編で登場してくる武器周りも、その魂斗羅シリーズからの影響を受けたものばかり。広範囲に広がるスプレッドに一発の威力が高いレーザーと、まさに「あからさま」としか他に言い様が無いものが続々と出てくる。
勿論、中には今作独自の武器であるバウンド弾もあるが、それが作品全体を覆う『魂斗羅からの拝借』の雰囲気を取っ払っているとは到底言えず。ゲーム性も同じであれば武器も似ている、これまた潔過ぎる魂斗羅カラーバリバリな仕上がりとなってしまっているのだ。更に厳密に言うと、今作は魂斗羅のみならず任天堂の『メトロイド』シリーズの要素まで含んでいる。先に挙げた探索要素がそれだ。魂斗羅のように純粋に迫り来る敵を「虫ケラ」の如く倒していくだけでなく、今作ではマップの探索までやっていかねばならないのである。
とは言っても、基本はステージクリア方式、ゴールを見つけるのが主となるシステムとなっているので、多少違う。しかし、広いマップの隅々を潰していくその手応えはまさにメトロイド以外の何者では無い。もっと突っ込んで言うと、プレイヤーのアクションもメトロイド以外の何者では無い。特に敵を一時的に凍結させる『フリーズビーム(アイスビーム)』、『スパイクボール(モーフィングボール)』の二種類はどこからどう見てもメトロイド。後者に至ってはご丁寧にボタンのコマンドまで一緒で、開き直ったかのように「これはメトロイドのアクションですよ〜」とまで表現してしまっていたりする。前者も前者で、どんな強敵も簡単に凍結でき、余計なダメージを受けずに安全に倒せる…という時点で既にあからさまである。これがメトロイドからのネタじゃありませんとか抗議されても、いとも簡単に捻り潰せてしまうだろう。
このように、今作は全てが昔からある名作達の要素によって成り立っている。悪く言ってしまえば使い回し。真剣にゲームデザインを行ったとは到底言い難いほど、オリジナリティに乏しい作品となってしまっているのである。
スタッフのゲームを作る志、低過ぎるなぁ…とか、これでは言われても止むを得ない。そして同時に、今作が極めて出来の悪いパクリなのだと捉えてしまうだろう。 ところが…だ!実は今作、ゲーム自体の完成度は非常に高い!確かにネタは他のゲームからの拝借物ばかりでオリジナリティは薄い。だが、そんなネタで構築されていながらも、実際のゲームの手応えというものは実に魅力溢れるものになっているのだ。

その魅力こそが、今作独自の探索とシューティングの両面を絶妙に絡み合わせたゲーム性、適切なバランス、そして既にあるものを新たなものに仕立て上げようとする気概の高さの三つだ。
ゲーム性に関しては、魂斗羅とメトロイドが元ネタとされている為、正直言って…第一印象ではありきたりなものだと思ってしまうだろう。ところが、これがまた意外にも新しさ満点。迫り来る沢山の敵を多彩な武器で仕留めつつ、マップを調べていくその流れは、本来作業的になりがちなマップ探索をよりスリリングに、且つ飽きが来難いものに仕立て上げているのである。だから、マップをウロウロしていてもやる事が次々と見つかるので、ただ歩いているだけでも楽しい。地味さが売りだったメトロイドに魂斗羅の派手さを上手く付け加えた、秀逸なゲームデザインが図られた作りとなっているのである。その辺の単純に元あったネタを絡めただけのゲームとは格が大違い。両者の良い所と悪い所を潰す、まさに「これぞ真のオマージュ」とも言うべき、職人技が今作では光っているのだ。バランス周りも驚くほど適切。特に「探索はせずに純粋にアクションがやりたい!」というユーザーの為に、正規ルートにはガイドサイン(赤い矢印)を設置すると言った配慮を凝らす辺りは純粋に「凄い」の一言。適度にアクションと探索の両方が楽しめるその絶妙なバランスは、開発スタッフが如何に探索型ゲームの特徴と欠点の両面を深く研究したかの表れと言っても良いだろう。
肝心のステージ構成も、迷いそうで迷い難いという絶妙な地形設計がお見事。魂斗羅のアクションゲームとしての気持ち良さを活かし、メトロイドの探索の良さも残したその見事なバランス感覚には頭が下がるばかりだ。 更に難易度周りのバランスも少しの操作テクニックさえあれば楽にクリアできてしまう程好さが爽快。かと言って、高難易度によるゲームプレイも可能などと、上級者向けの配慮も万全。気軽に楽しみたい人、ガッツリやり込みたい人の棲み分けが成された親切な配慮には、プレイヤー想いの姿勢がヒシヒシと伝わってくる。そして元あるネタを単にそれだけで終わらせようとしない気概の高さも流石だ。先のステージ構成とバランスもそうだが、純粋に元ネタを拝借するのみならず、それを活かしてどんな新しい遊びが創造できるのかと言った検証力の高さには本当に圧倒される。
アクションや武器周りにも、さっきは魂斗羅とメトロイドと一緒とか言ったが、実際の手応えはほとんど別物。撃つ方向が固定されていたり、行動制限がかけられたりと、独自の工夫がちゃんと凝らされている。特に『スパイクボール』の「一定時間無敵となるが、自走する仕組みなのでプレイヤーが思うように動かせない」の仕組みは秀逸。状況に応じて無敵になって攻撃を回避すると言った独自のテクニックはまさに、今作でしか味わえない面白さが満ち溢れている。見た目はメトロイドのモーフィングボールだが使い勝手が違う、そんなものに仕立て上げたスタッフはまさにプロ。繰り返しになるが、単にネタを拝借しただけで終わらせない気概の高さには、本当に圧倒されるばかりだ。一歩間違えれば同人ゲームも同然なのに、ここまでちゃんとしたゲームにしてしまうとは本当に凄過ぎる。
元ネタがあからさまな時点で、出来の悪いパクリと思った人は多いだろう。だが、このように今作は単なるパクリで終始していない。元ネタはあれど、しっかりと新しいものを出す。そんな高い志が秘められた、言うならば正真正銘のオマージュ作品…とも言うべき、素晴らしいものになっているのである。既出ネタで構成されていながら、手応えが別物だなんてまさに今作ぐらいなもの。ある意味、オマージュの教科書とでも言ってもおかしくはないだろう。

その他、操作性も秀逸。海外製作のタイトルとは思えないほど、キャラの動きはキビキビとしたものになっていて、驚くほど自然に多彩なアクションの数々を味わうことができる。ボタン配置も総じて的確。気に入らない方の為の変更オプションもあり、配慮も万全。痒い所にまで手の届く作りになっている。
グラフィック、音楽の完成度も非常に高い。いずれも1993年の時点にしてこのクオリティは桁違いだと言っても過言では無いほどだ。中でも音楽の完成度はずば抜けており、スーパーファミコンとは思えぬ透明感溢れる高音質には、誰もが衝撃を受けるだろう。曲自体も素晴らしく、序盤のステージ1-3にステージ3-1、エンディングの曲は必聴の価値ありだ。
そして演出周りもスーパーファミコンらしい、拡大・縮小機能を効果的に使ったエフェクトなどなかなか凝っている。しかし、元ネタである魂斗羅と比較してしまうと、地味。特にボス絡みはもう少し派手にしても良かったんじゃないのかと、物足りなさが出てしまってるのが残念なところだ。

また、ボスも数が少ない上に弱かったり、体力ゲージの説得力が薄い(多くの目盛りがあるのに、敵の攻撃によっては4つも減らされたりなど)、ステージ4-2のジャンプ地帯があまりにシビア過ぎるなどの欠点があるのも惜しい。簡単な難易度であってもコンティニューはクレジット制限だという辺りも、できれば廃して欲しかった所だ(しかも、3回と少ない)。
そんなちょっと至らないところもありはするが、出来の良さは本物。既にあるネタで構築されていながらも、まるで別のゲームな手応えは、多くのゲームファンが体験してみるべき価値がある。
単にネタを拝借するだけで終わらず、そこからどんな面白いものができるのか。そう言った開発スタッフの高い志とゲーム愛が秘められたこの『スーパータリカン』。スーパーファミコンを持っているユーザーならば是非、遊んでみて頂きたい傑作だ。音楽目的でプレイするのもアリ。それでも十分、元は取れます。
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