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≫ワイルドトラックス
■発売元 任天堂
■ジャンル レース
■CERO(推定) A(全年齢対象)
■定価 9800円(税別)
■公式サイト ≫こちら
▼Information
■プレイ人数 1人
■セーブデータ数 1つ(※バッテリーバックアップ:リチウム電池形式)
■その他 スーパーFXチップ搭載
■総説明書ページ数 40ページ
■推定クリア時間 10〜12時間(エンディング目的)、20〜23時間(完全攻略目的)
ここはアメリカ、都会から少し離れた田舎町『トラックス・シティ』。特に観光名所も無いこの町だが、年にたった一度だけ、世界中の車好き人間達が押しかけてくる日がある。
『ワイルドトラックス』。
そもそものきっかけは町の若者が退屈しのぎに始めた草レースだったのだが、その迫力と興奮が噂を呼び、月日を重ねる内に町の一大名物となってしまった。

今年もレースの開催が目前に迫ってきた。そして、あらゆる地方から我こそはと自負する強者達が町にやって来る。ほんの少しの名誉と、大きな喝采を得る為に。
▼Points Check
--- Good Point ---
◆スーパーファミコンらしからぬ立体的な高低差が光る、フル3Dで構築されたレースコース
◆通常のレースに3D空間を走り回るアクションライクなものまで、個性豊かでやり応え抜群の全4種類のゲームモード
◆個性がよく表現されているほか、難易度選択の意味合いも兼ねた全3+1種類の車
◆広大な3D空間を走り回る爽快感、独特のルールが魅力的な『スタントトラックス』
◆巨大トレーラーを操作して特設コースを走る、大胆なゲームプレイが楽しめる『スピードトラックス』のボーナスゲーム
◆自動車工学に基づいた生々しい挙動と奥深さに秀でた独特の操作性
◆適切な総計ボリューム(コース総数20以上、難易度別チャレンジありと程好い量)
◆ポリゴン独特の味わいと玩具っぽい可愛らしさに秀でたグラフィック
◆玩具っぽい世界観にマッチした明るく、楽しげな音楽(名曲も充実)
◆トンネル通過時に反響したりなど、細かなこだわりが炸裂した効果音
◆ポリゴンならではの仰々しさと嘘っぽさ満載のエフェクト周りの演出(特に車がクラッシュした際の演出は必見)
◆スターフォックスのアーウィンが飛び入りで参加してくるなど、任天堂のゲームが好きなプレイヤーをニヤリとさせる小ネタの数々(更にあるコースにはマリオとカービィも…)

--- Bad Point ---
◆生々しい挙動は魅力的だが反面、癖があって慣れるまでが大変な操作性
◆挙動の生々しさ故に習得するまでに相当な時間を要する『ステアリング』と『スライドドリフト』(どちらもある程度、習得できないとエンディングまでの到達はほとんど無理と言ってもよい)
◆かなり厳しく調整されたゲームバランス(特にスピードトラックス後半は鬼畜)
◆走る楽しさを半減させてる、蛇足な『スピードトラックス』での制限時間システム
◆低めのフレームレート(さすがにハードの性能上、これは仕方が無い)
◆画面サイズが狭い為、若干やり難い『バトルトラックス』
▼Review ≪Last Update : 10/24/2010≫
この走り、シビれるゼ!

癖もあり過ぎて手が痛くなるゼ…。


スーパーファミコンで3次元コンピュータグラフィックスによる表現を可能とさせる特殊チップ『スーパーFXチップ』を搭載して作られた、完全新作のレースゲーム。1993年発売の『スターフォックス』に次ぐ、FXチップ搭載タイトル第二弾でもある。

スーパーファミコンでフルポリゴンという無茶に挑戦した、屈指の意欲作だ。

ゲーム内容は、スーパーファミコンとしては史上初の3D空間を舞台に展開されるレースゲーム。個性豊かな4台の車を操縦し、ライバル達と競い合いながら総合1位を目指すというものである。
システム周りは、障害物やライバルカーとの接触によるダメージ判定、4台の個性が露骨に表れた車、コース上に落ちたアイテムによる回復の概念など、任天堂が過去にリリースした『F-ZERO』や『スーパーマリオカート』の良い所取りで構成。また、コース内に設置された『チェックポイント』通過による制限時間制など、アーケードのレースゲームを髣髴とさせるシステムも導入。チェックポイントを時間内に通過しないと容赦なくその時点で失格になるなど、任天堂のゲームとしては珍しく、硬派寄りのバランス取りが成されてる。好き勝手に走行できた過去の『F-ZERO』などのレースゲームと比べると、自由度低めの作りとなっている。極端に言ってしまえば、まさにアーケードライクのレースゲームと言った感じである。
しかし、そこは『F-ZERO』で常軌を逸した高速スクロールを表現し、『スーパーマリオカート』でアクション要素の導入による斬新なゲーム性を演出した任天堂のレースゲーム。ただのアーケードライクなレースゲームにはなってない。例によって過去、スーパーファミコンでリリースしたその二作と同様、際立った特徴を持っている。
それこそが、出だしでも少し触れたが、3D空間を舞台としたレース展開。立体的な高低差から広大な箱庭空間、そして奥行きと、全てがフルポリゴンによる”本物の3D”で表現されたコースを走行し、順位争いをするという…スーパーファミコンとしては驚愕の描写が成されたレースゲームになっているのである。『F-ZERO』などの2Dで”擬似的に表現した”3D空間ではない。本当の3D空間を舞台に今作ではレースが展開される。だから、高低差のある部分に乗っかれば車体は傾き、急な下り坂を降りれば走行速度も上がる。2Dで表現された3D空間のように、ずっと平面が続くという事が無い。更に車がジャンプした際には、視点もそれに合わせて上空を向き、空間全体の奥行きを演出する徹底振り。あたかも、現実に実在するコースを走っているかのような、リアルな手応えが実感できてしまうのだ。単に立体的且つリアルにしただけでなく、その描写だからこそ表現できた落石や急勾配と言った仕掛けも充実。細かい所でも、トンネル内に入った際には、車のエンジン音がきちんと反響するなど、如何にもその空間が実在しているんだとプレイヤーに対し、問い詰めるかのような演出が充実している。スーパーファミコンという、3Dには適してないハードで、そんなリアルな3D空間を表現してしまったのは、もう衝撃的だとしか他に言い様が無い。特殊チップ『スーパーFXチップ』の恩恵だとは言え、ここまでチップを搭載するとできてしまうのかと、実際にプレイして見るとその完成度の高さには度肝を抜かれるだろう。
また、今作は『スーパーFXチップ』を搭載したタイトル第一弾の『スターフォックス』以上に3Dらしさを演出してるのも特筆に値するところ。フォックスもフォックスで、ポリゴンによるムービーデモ、3Dスクロールなど、チップの恩恵を活かした演出が盛り沢山だった。でも、ゲーム自体はどちらかと言うと、予め敷かれたレールの上を進んでいくのが基本で、3Dと言っても擬似的な域からは脱せれてない感が否めなかった。それに対し、今作は完全に擬似的な域から脱出。高低差に箱庭空間と、フォックスではいま一つだった3Dを見事に表現している。更に演出面にしても奥行きがよりリアルになり、本当にその場が存在しているかのような雰囲気まで醸し出すことに成功し、表現力の限界を突き詰めている。フォックスで出来なかった表現を成した事、チップの真のポテンシャルを発揮させた事等、それらのことから今作は、ある意味…スターフォックスのリベンジ作品と言ってもおかしくは無いだろう。レースゲームとしても斬新だが、それ以上の見所はやはり、そこ。フォックスで無理だった事が、今作では見事に表現されているのである。

また、フルポリゴンによって構築された3D空間だけが今作の売りではない。多彩なゲームモード、そして全4+1種の車の個性とその操作感もまた、見逃せない特徴である。
前者は、とにかくバリエーション豊か。ライバルとの競い合いをする『スピードトラックス』、タイムアタックの『フリートラックス』、対戦プレイの『バトルトラックス』など、レースゲームではお馴染みのものは勿論のこと、3D箱庭空間を舞台に星集めをする『スタントトラックス』なる奇抜なものまで収録。特に『スタントトラックス』は、今作最大の特徴である3D空間を存分に走り回る内容、アイテムを全て集めてゴールするタイムを競うユニークなルールなどと、見所が満載。純粋に最速を極めるタイムアタックとは一味違う、限界を極める楽しみに優れているのが実に秀逸だ。
舞台となるコースもこのモード専用且つ、通常のレースコースとは違い、広大な開かれた3D空間であるなど、スーパーファミコンとは思えぬ表現が炸裂しているのも見逃せない。基本的に縛りの多いレース本編は違い、こちらなら存分に3D空間を走り回れるので、今作の凄味をより味わいたいと思うプレイヤーには打って付けのモードと言えるだろう。まさに、フル3Dの今作ならでは。要チェックの価値アリだ。
後者も数こそ少ないが、『F-ZERO』のように初心者向け、中級車向け、上級者向けと難易度選択の機能を果たした性能付けがされてるのが、如何にも任天堂らしい。各種、車も操作性共に大変ユニークで、実際の自動車工学に基づいた、リアルな重みと動きに秀でてるのが印象的。LRボタンと十字キーの組み合わせによる『ステアリング』(滑らかにカーブを曲がるテクニック)、LRボタンによる『スライドドリフト』にしても、自動車工学に基づいているからこその独特の生々しさがあり、動かすだけでも楽しい。また、車の中には特定のモード、特定の状況下にしか仕えない特殊な車もあり、それらも先の三種とは異なる操作感が演出されてるのが見事。特に『スピードトラックス』のボーナスゲームにて操縦する、大型トレーラーはあらゆる意味で要チェック。巨大な車を動かす難しさ、そして自由に動かせるようになった際の爽快感は、まさに今作独特の操作性による賜物。ステージ内容も、トレーラーで暴れ回るという豪快な作りが大変面白い。少ししか操作できないのが残念な所だが、このステージもまた、先の『スタントトラックス』と同様に要チェックの価値ありのシチュエーションだ。フル3Dならではの快感が味わえる。
ただ、実際の自動車工学に基づいた操作性である故、例によって癖はかなり強い。特にカーブの際のステアリングは慣れるまでは難しく、レースゲームが苦手な人なら速攻で挫折しかねない。対策として練習モードがあるが、そこで習得するにしても結構な時間を要されるのは避けられず。独特の重みを始めとする手応えなど、大変魅力的なものに仕上がっているのは事実だが、相当好き嫌いの分かれる一面も備えてしまってるのは正直、惜しいところだ。何かと万人受けするゲームを得意とする任天堂のゲームにしては、らしくない敷居の高さが出てる。
全体のゲームバランスにしても、このテクニックの取得が必須であるなど、相当厳しく調整されてしまってるのが残酷だ。特に終盤はもはや、理不尽の域。それなりの精神力を持ってして挑まねばクリアできない辺り、さすがにこれは調整が甘いとしか言い様が無いだろう。これもまた任天堂らしくなくて、残念の一言に尽きる。
とは言え、3D空間である事を最大限に活かした遊び、操作性などその発想と作りの素晴らしさは鉄板。もう少し、緩くしてくれれば完璧だったのだが、それでもスーパーファミコンでこうもリアルな3Dの手応えを演出、並びに独自の遊びを導入したその手腕は評価に値すると言っても良いだろう。至らなさもあるとは言え、総じて無茶している印象は強め。誰もが遊べる傑作と言うのは難しいが、意欲作というにはおかしくない出来である。

ボリューム周りにしてもコースは20以上、難易度別のチャレンジなど充実。先の通り、任天堂のゲームにしては結構、手強いバランスとなっているので、やり手のゲーマーなら納得の満足感を得られるだろう。
コースのロケーションも多彩で草原、岩山、都会、海と盛り沢山。バックのグラフィックもなかなかの美しさで、スーパーファミコンにしては相当無茶をしている感じが滲み出ている。
また、あるコースにマリオやカービィの看板があったり、『スターフォックス』からアーウィン(プレイヤーの自機)が友情出演するなど、任天堂ファンには粋な演出も充実。如何にもこの当時の任天堂のゲームらしい、これらファンサービスもまた、今作の見逃せない見所だ。
音楽の完成度も高い。玩具の世界でのレースバトルという雰囲気に秀でた、楽しくて明るい楽曲が充実している。勿論、名曲も盛り沢山。特に海のコース(アクアトンネル)、湖のコース(レイクサイド)で流れる二曲は必聴の価値アリだ。地味ながら、1位でゴールした際に流れる短い曲もかなり気持ち良いものになってるので要チェックだ。人によっては、何処かのテレビ番組で聴いたようなデジャヴを感じるかも。
そして演出周りも個性的。ダメージを受けた際に車のパーツが分解したりなど、3Dポリゴンである事を最大限に活かした仕上がりになっている。特にクラッシュした際の演出は必見。ポリゴンならではの仰々しさが炸裂したものに仕上がっているので、見た人ならクスッと笑ってしまうだろう。人によってはトラウマになるかもしれないが…。

その他、タイムアタック(フリートラックス)やスタントトラックスを始めとするやり込み要素も万全、効果音も3質感満点のものが充実しているなど、作り込まれた見所はまだあるが、割愛。
自動車工学に基づいているが故の操作性の癖の強さ、ゲームバランスの理不尽スレスレの厳しさ、そして制限時間制の蛇足感など、至らぬところも多いが、スーパーファミコンとは思えぬ3D表現、リアルな挙動などは他のゲームに無い強烈な魅力に満ち溢れている。
さすがに60フレームが基本となった現代のレースゲームと比べれば、フレームレートは低くてガクガク。プレイするにも厳しいものがあるが、3D表現に弱いスーパーファミコンで、フル3Dのレースゲームを作り上げたその手腕は高い評価に値する。あらゆる意味で、スーパーファミコンらしからぬ作りのこの『ワイルドトラックス』。難易度が高く、操作性にも癖があるので万人には薦められないが、レースゲーム好きやFXチップ第一弾のスターフォックスをプレイしたユーザーなら、一度は体験する価値のある意欲作である。
少し荒削りな部分もあるが、スーパーファミコンの限界を突き詰めた3D空間がここにある。
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